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我の名は新人! 新時代の先駆者!!

547名無しさん:2013/07/27(土) 11:12:22

 
 
俺と文香は雨の降る屋上にいる。
共にバケツの水を被ったようにびしょ濡れになりながら、文香は焦った顔で此方を見据え、俺は正光寺と電話をしている。

正光寺に『ビルの下を見てみろ』という指示を出され、俺は東側、文香は西側をそれぞれ見に行った。
俺が確認したのはパトカーで、文香は追っ手のヤクザが来たと言っている。電話の向こうの正光寺も、今一つ状況が飲み込めていないらしい。
 
状況を冷静に分析する。
正光寺の反応をみるに、彼が意図していたのは西側の出来事、ヤクザの到着なのだろう。そこに、無関係とも思えない警官が噛みあった。それが現状なのだと思う。
最悪、連れ去られそうになっても、大声を出せば警官が助けてくれるかもしれない。
 
「こっち側にはパトカーが停まってる」
文香に話し掛けた心算だったが、携帯電話を持ったままだった為、正光寺まで反応をしてくる。
『は?何言ってんだよ、俺がさっき連絡を入れたのはヤクザの方で、』
戸惑いを隠しきれない様子の正光寺。
彼の言葉で、漸く不自然な優しさの意図が分かった。
真意は、電話を切らせず、その場に止めるためだった。序盤のやり取りで俺の居場所を確認して“俺の顧客”を騙りヤクザに通報を入れたのだろう。
途中に挟まった不自然な間は、俺の居場所を知らせるためにメールを打っていたのだと思う。

引っ掛かりが解消されたところで、正光寺に聞く事など一つを除いて何もない。
最後に、無駄だと分かっていながら、その一つだけ問うてみることにする。

「俺はあの屋上にいるわけだが、お前は何処にいるんだ?」
 
当然ながら、答えなど返ってこない。
正光寺は黙っていた。
言うわけがない。もう彼にはそんな余裕がない。
それどころか、もし俺が逮捕拘留されてしまえば、ヤクザは新犯人である彼に目標を変える可能性すらある。報復の対象など納得さえできれば誰でもいいのだから。
「まぁ答えられないだろうな。だが、これだけは覚えておけ。今回の事は、いつか必ず清算させる」
正光寺はうんともすんとも言わずに電話を切った。


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