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我の名は新人! 新時代の先駆者!!

543名無しさん:2013/07/27(土) 11:10:24

正光寺は再び語り始める。通話用スピーカーの裏側に耳を当てている文香に聞えているかは分からない。
 
『一日中ネットを見て、クソみてえな日常を過ごしていた。細かい刺激はあったにはあったが基本的にくだらない毎日だった。
そこで偶然、ある書き込みを目にした。アングラ系のサイトやSNSなんかによく書き込まれてる薬物売買に関するマルチポスト宣伝の一つだ。
普通は読みすらしねえんだろうが、ニートは暇だ。何となく読んで、興味本位でそこに書かれていたリンクを踏んだ。当然繋がらない、または釣りか何かだとおもったんだがな、これが不用心な事に繋がっちまったんだよ。販売用サイトに。
あんなに沢山の薬物があるとはしらなかったから、商品一覧を眺めているだけで面白かった』

「それで買って使ったってわけか。俺が言えたことじゃないが、意志弱すぎだろ」
『買うまでには色々と悩みもした。ニートは金が無いからな。普通買えねぇんだよ、薬物なんか』
「じゃあどうしたんだよ」
『力尽くで奪うことにした。好奇心と金への欲で、それ以外の事を考えられなくなった。薬は高く売れる。それが魅力だった』

正光寺もニート。そして彼はあまり親から金を吸い上げることができなかったのだろう。

いつか必ず訪れる金銭的不満や危機感、それが彼の場合はすぐにおとずれたらしい。
ニートを味わうと誰もが今の楽さに嵌りこんでしまう。そして落ち着かなくなる。未来が無いことや金銭面、一人で過ごす時間は常に圧迫感を覚えるほどだ。
だから、それを解消しようと金を求める。それを得る手段を欲する。あくまでニートという立場を捨てず、強欲に他者から奪おうとするのだ。
 
正光寺にとって宣伝の書き込みとそれに対する発想は転機だったのだとだろう。
俺がこいつを小川と呼んで信じ込んでいたあの時のように。
 
『ドラッグっつーと、正直怖ぇイメージがあった。暴力団だとか半グレだとか。
だからそういう感じの見た目した奴が来るのかと思ったんだよ。だが、実際に会ってみるとバイヤーは細っこいガキだった。
宣伝方法から取り引き、受け渡しの手段まで随分と雑だなぁと思ってはいたが、流石にガキが来るとは考えてもいなかったわ。
しかも、不用心も極まってて、大袋にいっぱいの商品を取引場所に持ってきやがった。何故必要分だけもってこないいのか聞いたら、それだと商売にアドリブが利かなくなる、とか言ってたな』

恐らく、急に購入量を増やしたがる客への対応を重視していたのだろう。
「細かな利益にまで貪欲なんだろ」
俺も取引の際には、多少の予備を持っていく。流石に大袋いっぱいの量を持ち歩く事などないが。

『その小さな意地汚さが大損害の原因になったんだから割に合わないだろうな』
「それがお前の持っていた薬物の在庫ってわけか。幾らでも仕入れられるのかと思ってたが、一纏りきりだったのか」
『だからとりあえずは手元のモンを何とか高く捌こうと頑張ったわけよ。それで機会を見てヤク中の紹介でバイヤー見つけて、そいつからも奪おうとか考えてた』
「最早仕事だな。お前ニート向いてないよ」
そうは言ったものの“今を生きる”という意味に於いてはこの上なく適しているとも思う。
きまった仕事をせず、悪逆非道の犯罪三昧。完全に未来を放棄している。或いはそっちの業界では将来有望なエリートなのかもしれない。
『だが、運はなかったらしい。俺がボコボコにして薬を奪ったガキがヤクザの直営薬局だった。当たり前だよな、ただのガキがあんな大量に仕入れられるわけがない。金に目が眩んでたが、俺はもう少し冷静になるべきだった』
電話口で聞く正光寺の声は、振り返って悔いるというよりも、寧ろ、むかっ腹を立てているようですらあった。


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