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我の名は新人! 新時代の先駆者!!
535
:
名無しさん
:2013/07/24(水) 22:34:20
携帯電話を操作して正光寺の連絡先を探す。
小川健一の名前で登録されている電話番号、メールアドレス。その中から電話番号を選択して、表示された番号に電話を掛ける。
文香が励ますような視線で俺を見守ってくれている。
トゥルルルと無機質な電子音が鳴る。
緊張、不安、恐怖。数度繰り返しただけの電子音が厭に長く感じられた。
『おう、新人か』
電話に出たのは、小川だった。
正光寺は未だに小川を演じている。凄みの利いた声も、それが正光寺の物だと思うと迫力に欠ける。
「もう無理するなよ、正光寺」
本当の彼に話し掛けるのは、随分と久しい。それこそ高校で暴力沙汰を起こしたあの日以来のことだ。
正光寺は驚かない。極めて冷静に対応する。僅かに生じた変化と言えば、カチカチと音が聞こえ始めた事くらい。
『案外、早かったな』
「前にお前が言ってただろ。髪を黒くして、ピアスを外してってやつだ。あれでピンと来た」
実際は江嵜に聞いて知ったのだが、それを答えてしまうと彼女を巻き込むことになる。
『そうか、あの時は分かってねぇと思ってたが、すっとぼけるのは上手いんだな。苛められてる時も、何もねぇよみたいな顔してやがったし』
頭に血を上らせてしまえばドツボ。俺は彼の挑発を無視する。
正光寺は狡猾さで俺よりも勝っている。下手を打てば、そこに付け込まれてしまう。石橋を叩いて渡る慎重さが必要だ。
「お前も悪目立ちだけは得意みたいだな。なんだよ、金髪カチューシャ鼻ピアスにスウェットって、今時そんなやつ田舎に言ったっていないぞ」
『景気付けのまじないみてぇなもんだ。それより今、何処にいやがんだよ。周りが五月蝿くて声が聞えねえ』
「お前こそ何処にいるんだよ。声が聞えにくいなら出向いてやるぞ。何ならまた病院送りにしてやってもいい」
度重なる俺の挑発にも、彼は乗ってこない。
小川らしさの残る粗暴な言動や外見でありながら、中身は狡猾な正光寺なのだ。そう簡単に出し抜ける相手ではない。
『俺は関東には居ねえよ。今は仮宿でカツ丼食ってる。お前はどうせあの町にいるんだろ?』
「旅行かよ、いい気なもんだな。田舎不良見てお勉強でもする気か?」
『雨が五月蝿くて聞き取りにくいんだよ、さっさと屋内に入れ』
正光寺はしつこく言ってきた。だが、それはしたくない。
今更この場所から離れる心算はなかった。
「俺はこの場所でお前に向き合おうと決めた。動く気はねえよ」
『そうか』
そんな言葉の後、暫く不自然な間があった。
電話の向こうで何やらがさがさと動く音がする。
『俺が静かな場所に移動した。勝者の余裕ってやつだな』
「何が勝者だ。病院送りのひきこもり君」
『元ひきこもりの掌で転がされていた気分はどうだ?』
「最悪だな。死にたい気分だ」
カツ丼を食いながら笑っている、憎たらしい正光寺の姿が浮かぶ。
腹立たしかったが、今回は完全に負けていた。
高校時代と違って一発逆転も難しいかもしれない。
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