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我の名は新人! 新時代の先駆者!!
534
:
名無しさん
:2013/07/24(水) 22:33:39
仕方がない。俺は最後の手段を取ることにする。
ポケットから錠剤を取り出し、江嵜に向けて差し出した。
「何これ」
江嵜は不機嫌そうな顔で聞いてくる。
「ドラッグだ。依存性が高いが、使うとぶっ飛べる」
Motiveではないケミカルの一錠。
母親の部屋から回収して持ち出した、依存性と副作用が極めて高い部類の薬物。こんな場所で使用すれば激しい幻覚に惑わされて地上に転落する恐れもある。
「どういう心算?いけない薬でしょ?」
「これを飲む覚悟もない奴が、俺の決着に立ち入るな」
これを使用する以上に、悪い状態になる恐れだってある。
正光寺の事だ、何を仕掛けてくるか分からない。そうなれば江嵜の身の安全など保障できようもない。
「私に犯罪者になれっていうの?」
「ああ。そのくらいの覚悟もなく、入ってくるな。お前は、真っ当に生きられるんだから」
厳密に言えば、このドラッグも未だ法規制が追い付いていない。
だが、効力からいって時間の問題だろう。異常な幻覚作用と依存性、身体へのダメージ。どれをとっても規制されているドラッグと比べて遜色ない代物だ。
「私にだって、覚悟くらい・・・」
江嵜は錠剤に震えた手を伸ばす。何度も、それを手に取ろうとする。
だが、結局それには至らない。彼女の中の良心、所謂“箍”がそれを妨害する。
やはり江嵜は、俺達に関わるべきではない人間だった。
確りと自制の利く、真っ当な人間。この場所の関係者の中で、江嵜だけは唯一まともな人間性を持っている。
俺はこれ以上待っても意味がないと判断した。
彼女に差し出した錠剤をさげて、再びポケットに仕舞う。江嵜が俺の挙動を制止することはなかった。
「消えろ」
最後に冷たく声を掛ける。
それ以上、江嵜は何も言わなかった。ただ俯いてゆっくりと去ってゆく。
昔から変わらず頭が良い女だと思った。どれだけ踏み込んでいても、彼女は必要なところで確りとブレーキを踏める。
雨音の中、江嵜が階段を下る音が小さく聞こえてくる。
やがて建物内へ入る扉が閉ざされる。その音を確認するまで、俺達は何もせずに彼女を見送った。
本番はここからだ。
俺は携帯電話を取り出して、大きく息を吸った。
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