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我の名は新人! 新時代の先駆者!!
532
:
名無しさん
:2013/07/24(水) 22:31:57
知ってから間もない場所ではあるが、ここにも随分と思い出がある。
正光寺を信じ込んでしまった場所であり、初めて薬物を使用した場所であり、文香と身体を重ねた場所であり、そして彼女と結ばれた場所でもある。
この場所では特に濃い時間を過ごした。文香もそんな日々を懐かしんでいるのか、部屋の様々な場所を入念に眺めていた。
もしこの場所に来なかったら、ここまで正光寺に踊らされることはなかったのだろう。
それでも総合的に考えると、あの時の選択を後悔していない。何より文香に出会えたことを俺は幸せに思っている。ニートになった時点で、端から未来などないのだから。
暫く部屋の中を見回していると、文香が口を開いた。
「新人さん」
突然の呼び掛けも彼女からだと耳触りが良い。
「なんだ?」
答えながら振り向く。
彼女は感情を殺したように無表情だった。
「愛しています」
それは、何かを決め込んだような、意志の強い告白。
充実していた“今”の終わり際には相応しい。
「嬉しいが、それはちょっと早いんじゃないか?」
「まだ行く場所があるのですか?」
文香は意外そうだった。
無理もない。彼女は未だ、あの屋上を知らないのだから。
俺と江嵜、そして正光寺も知っている。俺に似て狭く汚いあの場所を。
「俺が区切りを付けるに相応しい場所がある」
それは死に場所を求めるような心理なのだと思う。
予想される末路は、小川の、いや正光寺の身代わり羊として警察に捕まるというもの。それは死に比べればいくらか軽い。
だが、至上の今が終わってしまう事に変わりはない。それはニートにとって、実質的な死だ。
あの屋上は、最後の場所として文句なしのロケーションだと言えるだろう。
最後の最後であの場所に文香を招き入れることができるのだから、何一つ文句がない。
俺達は最後の場所、この806号室のあるビルから少し離れた所にあるテナントビルの屋上へと向かった。
恐怖か武者震いかも分からない手の震えは、文香に握ってもらう事で何とか抑えられた。感謝を伝えると、お互い様だと言われてします。彼女もまた自分の中で区切りを付ける心算なのかもしれない。
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