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我の名は新人! 新時代の先駆者!!

530名無しさん:2013/07/24(水) 22:30:26

俺達は再び電車に乗っていた。
「次は何処へ向かうのですか?」
隣に座る文香が問う。彼女はどこか楽しそうだ。
思えばこのように色々な場所を巡るデートらしいデートをしたことが無かった。
「俺が江嵜と再会した場所」
「なんだか複雑な気分なのです」
文香の気持ちは分からないでもない。
俺だって、彼女に『ここは私が処女を捨てた場所です』などと案内されては萎えてしまう。
だが、何でも知りたいと言った以上、とことん付き合ってもらう。遠慮などしない。もとより俺達はそういう関係だ。
 
終点まで電車に揺られて目的地へと至った。江嵜との再会の瞬間を懐かしもうとするも、時間帯の違いからか雰囲気が出ない。
俺はこの場所で、江嵜に呼び止められた。思い出の駅構内。
「寂れた駅ですね」
「言ってやるなよ。確かにろくなもんじゃねぇが」
改札を抜けて、自販機の前で暫く立ち止まった後、駅の外へと出る。
無断駐輪の自転車が乱雑に並ぶ駅前。そこで俺はポケットから煙草を取り出した。あの時と同じく。
「そういえば文香は煙草吸わないのか?」
「吸いません。私は高校生ですから」
言っていることは正しいのだが、文香が言うとどうもしっくりこない。
「お前が言うと滑稽だな」
拳銃を持ち歩いている奴が『あぶないからカッターをもって歩くな』と言っているようなものだ。それは滑稽でしかない。
何となく文香には煙草が似合うと思う。アレはろくでなしに例外なく似合う嗜好品だ。少なくとも、江嵜よりは様になるに違いない。
「江嵜さんは吸うのですか?」
「ああ、あんな可愛い顔してな。意外だろ?」
「煙草が吸える娘の方が好きですか?」
「まぁその方が気楽だってのはある。だからといって無理に吸う必要はないぞ。ろくなもんじゃないからな」
文香は俺が吸う姿を眺めるばかりで、吸おうとはしなかった。
臭いや煙が苦手なのかもしれない。今回も含め、何度か目の前で吸ってしまって申し訳ないなと思った。この反省を活かすことはもうないのだろうが。
 
その一本を吸い終えて、最後に駅前から見えるラブホテルを軽く眺めた。
もうこの場所に未練はない。


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