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第2回東方最萌トーナメント 30本目

100あなたと生きること 8/9:2005/02/14(月) 23:40:28 ID:DLXoAs.E
「・・・アリス」
紫が躊躇いがちに声をかける。そんな紫の声は初めて聞いた。
「魔理沙に会いたいのよね」
「会いたい・・・会いたいわ、友達だもの!」
帽子を抱きしめ、絞り出すように言う。馬鹿な夢を見た私への罵倒と後悔と、そしてそれでも断ち切れない願いを込めて。
「ここにいないのは分かってるのに!もう会えないことだってずっと前から理解してるのに!それでも・・・やっぱり会いたいのよ・・・!」
妖怪も人間も関係ないと思っていた。あのままの関係が続くと思っていた。私が、一番幸せだった頃。
楽しかったことを思い出にして、私は魔理沙のことを忘れようとしていた。自分の気持ちを誤魔化して。
「アリス・・・私ね、今のみんなを見てもらうことであなたにも今のあなたを見つけてもらおうと思ったの」
私を気遣ってか、紫は穏やかに語る。私は黙って聞くことしかできない。
「でも、違うのね。あなたは・・・私たち妖怪じゃなくて、人間にずっと近いんだわ。身体ではなく、その心が。魔理沙の影響かしらね」
魔理沙。魔理沙が教えてくれたこと。その全てを理解したかった。だから私は・・・人間に、近付きたいと願ったのだろうか。
「あなたは他の妖怪のように誰かの死を割り切ることができない。失ったものを嘆く心は、妖怪のものではないから。私だって・・・心の隙間を埋める術は知らない」
「どうすればいいの・・・こんなに苦しいのに、魔理沙はもういない!私はどうにもできないじゃない!」
あまりにも酷い皮肉だ。魔理沙が最後に残していったのが、解決できない悲しみだなんて。
「あなたの苦しみは、あなたにしか解らない・・・私にできるのはここまで」
紫が私の肩を抱き、そして魔理沙が愛用した机に向けさせる。
「魔理沙が最後に残したものがそこにあるわ。あとは・・・あなた次第」
そうして背中を押し、隙間へと消える。一瞬の静寂の後、私はよろよろと机に歩み寄り、それを見つけた。
机に、文字が彫られていたのだ。

『これを読んでるってことは・・・死んでるよな、私は
 本当は色々書き留めておきたいけど、きりがない
 だから本題だけだ
 私のものは全部お前にやる
 魔導書だろうが、欲しいなら私の服だろうが好きに持っていけ
 どれも私の分身みたいなものだ、持ってればお前は独りじゃない
 捨てたりするなよ、私だってお前と永遠に離れ離れはちょっと寂しいんだ
 だから、さようならはなしだぜ?
 私もお前が死ぬまで一緒に付き合ってやる
 それじゃ、お前がこれを読んで、私の欠片を持っていってくれることを願って

 霧雨魔理沙の友人、アリス・マーガトロイドへ』

短い文章。それが魔理沙の残してくれたもの。
いや、これだけじゃない。この家の全てが魔理沙のくれたものだ。魔理沙が、私にくれたもの。二人の思い出が詰まった数々の品。
まだ、私たちはさようならじゃない。
「ただいま、魔理沙・・・遅くなったわね」
涙で視界が滲む。私は、もう一度魔理沙の帽子を抱きしめた。




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