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矢吹健太朗のBLACK CAT★ 黒猫No.236

470例の899:2005/04/04(月) 01:08:55
「誰だって?」
「ユーク時代の同僚の娘さんだよ」
どこか楽しんでいるような口調だった。エリスのことだ。
動悸が耳に痛い。膝も震える。
「馬鹿な真似をしたモンだ」
乾いた唇を無理に動かして、俺は言った。
「そうか?」
「ああ、後はここの警察がお前らを潰して、それで終わりさ」
「どうかな」
「終わりだよ、じゃあな」
俺は一方的に通話を切った。
急いで店内に戻り、伝票を掴み取った。
「どうした?」
「行くぞ」
多くを語らなくても、俺の表情からなにかが起こったことを悟ったようだ。
「あいよ」
すぐにトレインは席を立った。
車に戻り、発進させる。
「なにが起こったんだ?」
「グレイグの野郎が、エリスを誘拐したそうだ」
「エリス?」
「ジョーの娘だ」
「なんでまたそんなことを」
「ヤツは赤龍を切ってダラタリにつくつもりだ。その手打ちに、今夜ディーンズのヤツら
と取り引きをするらしい。市長も同席でな。俺達が裏帳簿の存在を忘れることも、手打ち
の条件の一つらしい。その場に、俺達も引っ張り出すつもりだ」
「それで人質かよ。んで、どうするんだい?」
「今の電話だけじゃ、本当にエリスがヤツらと一緒にいるのかどうか分からない。だから、
まずはウラとりだ」
「ハッタリじゃあないだろう」
「で、あってくれればいいんだが、違うだろうな。しかし、どこでさらわれたかだけでも
分かればいい。ヤツらは、俺達がレイノルズを捕まえたことを知ってから誘拐を計画した
ハズだ。捕まえたのが小物だったから、自分達で行動を起こす気になったんだ。下調べな
どの準備もロクにせずに、な。目撃者がいるかもしれないし、エリスの悲鳴かタイヤのス
キッド音くらいは聞いている人間がいると思う。手掛かりならなんでもいい。少しでもヤ
ツらに近づくことができるんなら」
 外観を見る限りでは、その家は数日前に訪れた時となんら変わりがなかった。
それが余計に、俺の不安をかきたてる。
チャイムを鳴らした。
家の中で、犬が吠えた。
パタパタと走り寄る音がした。ドアが開かれ、
「エリス?」
と、スーザンが尋ねた。その彼女は、俺の顔を見て驚いた。
「スヴェン……」
「スーザン、エリスはどこです!」
「エリス?朝、病院へ行ったきり、まだ帰ってこないのよ。連絡もしてこないし、携帯
も繋がらないの。事故にでもあったのかと心配で……。でも、どうしてアナタがエリス
を……まさかあの子!?」
彼女の顔が恐怖の色に染まった。警官の家族、とくに女房ともなると、この手の被害へ
の恐怖は、常に頭のどこかにある。
「ど、どうして!?ジョーは死んでしまったわ!なのに、なぜあの子が!?」
俺は、彼女の両肩を力強く掴んだ。
「落ち着いて、スーザン。お願いだから、俺の話を聞いてくれ」
一時的な恐慌状態にあった彼女の瞳が、ゆっくりと光を取り戻していく。
やがて、彼女は身体を小刻みに震わせながら、弱々しく口を開いた。
「アナタに関係しているの?」
胸に突き刺さる。しかし、答えないわけにはいかない。
「すまない」
「ああ、神様!」
彼女は両手で顔を覆った。


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