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矢吹健太朗のBLACK CAT★ 黒猫No.236

467例の899:2005/04/04(月) 01:05:38
「ふぅん、そりゃあ仕方ないねェ」
「そう、仕方ないんだよ」
「馬鹿言ってんじゃないよ!!」
もう片方の耳もやられた。もう一度、携帯を右耳へ回す。
「こっちは今回の件でアンタ達に優先で情報を送ったり人を紹介してやったりしたんだよ。
それもこれも、アンタ達に稼いでもらってツケを払ってもらうためじゃないさ!そこまで
しといてもらって、こっちへの金の払いは後回しってどういうことだい!?」
「その言い分はもっともだと思うよ。思うんだが、ここは一つ勘弁してくれないか?」
「だいたいアンタ達はね……」
彼女はその後二十分近く、俺達がいかに無能で恥知らずで恩知らずで地獄へ落ちるべき人
間であるかということを、様々な表現を使って教えてくれた。
 ようやくのことでアネットから開放され、次の行動を起こす気力がなくなっていた俺は、
ベッドに寝そべりぼんやりとニュース番組を見ていた。
現職刑事の掃除屋襲撃という事件は、当然というべきか世間の耳目を集めているらしく、
夜のニュースでもヘッドライン扱いにされていた。その中で、同じ街で警官が一人撃ち殺
されているという事件にも触れられていたが、後はここ数ヶ月の間に起きている警察の不
祥事を羅列し、その体質に苦言を呈すという無難な作りになっていた。
 画面が今日のスポーツの結果を映し始めた頃、トレインが帰ってきた。
「お、やってるやってる」
トレインは、まるで最初からそれが目的だったかのように、自分のベッドに腰掛けてさも
興味深そうにTV画面を見つめた。もちろん、俺は騙されない。
「そういうヤツだよ、お前は」
「向き不向きさ。交渉事はアンタ。危ない仕事は俺」
悪びれもせず言ってのける。
俺は鼻を鳴らして軽い不満の意を表明した。危ない仕事をトレイン一人に任せたことなど
ないのだから。
「まぁそんなに怒らないでくれよ。やることはやってきたんだから」
そう言ってトレインは、いつものとぼけた人懐っこい笑みを見せた。それにも俺は騙され
ない。しかし、報告だけは聞くことにした。
「どうだった?」
「尾行はついてたよ。まぁ、当然だけどな。市庁舎の方まで行ってみたけど、手を出して
くることもなかったしバタバタする素振りもなかった。餌にするつもりだよ、俺らを」
「では、市長やダラタリ・ファミリーの方から仕掛けてこない限り、警察もIBIもただ
の見物人だな」
「俺らに対してはそうだろうけどよ、警察やIBIはこのヤマのことをどの程度まで掴ん
でいて、この先どう動くんだ?」
「市警はレイノルズ止まりさ。その先は見えちゃいないし、レイノルズが吐かなきゃ動き
ようがない。ただ、署長の首は確実に飛ぶだろうな。現署長は一度、カジノの建設計画で
市長と対立している。計画の中止には住民の意向もあったから、その時は市長自身のイメ
ージを大事にして首のすげ替えは出来なかったが、今度のことでその意趣返しができる」
「黒幕は自分の癖にか」
「そんな世界さ」
煙草を取り出して火を点ける。
「じゃあ、IBIは?」
「ヤツらのターゲットは市長であり、その先のジェシー=ヤンデン上院議員だ。その息子
のトマス=ヤンデン市長とダラタリの関係も掴んじゃいるが、確証がない。あったとして
も、議員が指を一本動かすだけで簡単に潰されちまうようなモンだろうな。それに、俺達
が刑事に襲われたことで、市長と市警の関係も疑っているかもしれないが、レイノルズの
身柄引き渡し要求を市警は呑まないはずだ。市警察にとって、ヤツは唯一の手札だからな。
つまり、こと市長に関しては、IBIも大した動きは出来ないってことだ。市長と俺達に
見張りをつけるくらいで、殆どの人員は上院議員の周囲とダラタリ・ファミリーの締め付
けに回っているだろう」
「じゃあ、俺達が引っかき回すのを望んでいるってことか」
トレインは、指をくるくる回してかき混ぜるジェスチャーをした。
「いや、逆だ。引っかき回されることは望んじゃいない。恐らく持久戦狙いだろうな」
言い終わると、俺は煙草を一口吸った。紫煙を中空に向かって吐き出すと、トレインは肘
を立てた腕枕を作って寝転んだ。
「ふーん。でさ、ヤツらはそれでいいとして、俺達はこれからどう動くんだ?」
「それだよ」
俺は煙草の先でトレインを指して言った。


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