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矢吹健太朗のBLACK CAT★ 黒猫No.236

437例の899:2003/11/11(火) 01:54
関係の無い話題が長々と続いているが、俺の心は乱れることはなく、逆に鋭く研ぎ澄まさ
れていた。
グレイグは、饒舌過ぎる。
そこに焦りなどは感じられないが、俺には『腹の中まで見せているぞ』『俺はお前達の味
方だぞ』というジェスチャーのように見えた。
掃除屋になってまだ日が浅いトレインは、会話による駆け引きを心得ていない。部屋に漂
っている張り詰めた空気を嫌い、雑談でガスを抜いて緩めようとしただけなのだろう。
この思わぬ収穫に、とてもじゃないが食えそうもないグレイグがこれから見せようとする
“面白い物”というのがどれだけ信用できる物なのか、厳しい目で判断しなければならな
いと改めて心構えた。
「それじゃあ、そろそろ見てもらおうか。きっと気に入って貰えると思うゼ」
そう言ってグレイグは、書類を俺の方に押しやった。
書類は六枚ほどの束である。チラッと見ただけでは、なにやら表の中に数字が書いてある
ことしか分からなかった。
俺はゆっくりとした動作で手元に引き寄せ、書類の内容に目を通していった。

――― 3/25  500,0000           6588,4550  D
――― 4/ 6            20,0000  6568,4550  T

五列に分割された表には、一列目に日付らしきものが記され、二列目と三列目、四列目に
数万から数千万桁の数字が、最後にアルファベットの一文字が入っていた。
見終わった一枚目をトレインに渡し、二枚目に移るとそこにも同じような表があった。日
付だけが少しずつ進んでいる。三枚目をめくってみたが、やはり同じだった。
「出納帳……か」
俺は呟いた。
「市長の?」
「しかも裏帳簿だ」
トレインの疑問に、グレイグが答えた。
俺は顔を上げてグレイグを見た。
本物ならば確かに面白い代物である。しかし、そんな物を手に入れられるハズもなく、ま
たそれらしく見えるような物など誰にでも簡単に作成できるのだ。
俺の眉根は自然と皺を作っていた。
そんな俺の視線を受けて、グレイグは『本物だ』といわんばかりに大きく頷いてみせた。
「どうやって手に入れたか、説明くらいはしてくれるんだろうな」
俺の頭の中には、トレインが見たという二人組のことが浮かんでいた。一人は女で、もう
一人はこの店の従業員だったと、あの時トレインは言っていた。
グレイグは懐から煙草を取り出し、火を点けた。
「泥棒請負人って……知ってるか?」


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