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187『die Hoffnung』その3@28:2004/03/17(水) 00:52
 目の前で頭を下げて名を告げたナヤトレイを見て、ボリスは頭が混乱していた。
 「一体どういう事だ?俺が選ばれた審判者とは?」
 「ウィンタラーは神が作った武具の一つ。そして、それを持って力を振るえるあなたは、
神に選ばれた審判者。」
 顔を上げたナヤトレイの言葉にボリスは驚いた。
 「この呪われた魔剣があの有名な神の武具の一つだと?」
 神の武具とは、意思を持って自らの主を選び、強大な力を振るう物の名称だった。だが、
ボリスはこの魔剣のせいで、色々な厄介事に巻き込まれたりしていた。
 「そう。苗族がどのような部族であるか解るのなら私の言葉が真実。」
 遠い過去に読んだ本に苗族の事が書かれていたが、まだ幼かったボリスには完全に理解することは
できなかった。しかし、苗族の守護者が審判者と呼ぶ者は、神の武具を用いて運命を変える
者だと書かれていた。
 「……駄目だ。俺に近づく者は死を迎える。俺はもう誰もこの魔剣の呪いに捕らえさせたく
ない。」
 ボリスは過去の事を思いだして首を振った。
 死を運ぶ少年と言われて周囲から拒絶された過去が、今でもボリスの胸を捕らえて放さなかった。
 「私は守護者として審判者を守る運命にある。それで死ぬのなら、私の運命がそうだっただけ。」
 それが自分よりも年下の少女の言葉だということは、ボリスにとってとても衝撃的だった。
 (死さえ運命として受け入れているナヤトレイは、やはり苗族の者なんだな。)
 ナヤトレイの銀の髪に紫の瞳は苗族の証であり、その思考もやはり苗族特有の物だった。
ボリスは、自分の運命を素直に受けとめて生きるナヤトレイが羨ましく思えた。
 「立ってくれ、ナヤトレイ。俺が君も含めた運命を左右する審判者なのは解った。だが、
君がそう畏まる事は無い。」
 そう言ってボリスはナヤトレイを立たせようと手を差し出した。しかし、ナヤトレイは
その手を取ろうとはしなかった。
 「では、私を守護者として認めて、同行するのを許してくれる?」
 そのナヤトレイの質問に、ボリスの動きが止まった。
 「君は、シベリンというパートナーがいたのではないのか?」
 その質問にナヤトレイは少しだけ寂しげな表情になると、ボリスから視線を外した。
 「シベリンは……記憶を取り戻して自分の運命に帰った。今でも私の命を助けてくれた
主ではあるけど、私の本当の主は審判者であるあなただから。」
 「そう……か。」
 ボリスも膝を地面につけてしゃがむと、ナヤトレイの手を持って一緒に立ち上がらせた。
 「よろしく、ナヤトレイ。君を呼ぶ時は、シベリンと同じくレイでいいか?」
 認めてくれたのが嬉しいのか、ナヤトレイは笑顔になった。その笑顔を見てボリスは、
自分もできるだけナヤトレイを守ろうと心の中で誓った。
 「シベリンは私をナヤと呼んでいた。レイの方は、私の名前を知らない者がいる時の名前に
なっている。」
 「では、シベリンに倣ってナヤにしよう。さあ、行こうか、ナヤ。」
 ナヤトレイは頷くと、先に歩き出したボリスの後をついていった。


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