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スタンド小説スレッド3ページ

64:2004/04/18(日) 17:45

 フスマは馬鹿共が吹っ飛ばしたので、廊下と居間の間にしきりはない。
 女は、頭を下げて居間に入ってきた。
 そして、左手で持ったアタッシュケースを置く。
 そのケースには、包帯やベルトが何重にも巻かれていた。
 凄まじく厳重である。
 それにしても、この女性にはどこかで見覚えがあった。
 こんな綺麗な人なら、そう忘れる事はないと思うんだが…

「あ――っ!! もしかして、ヌルテレビのリル子さん!?」
 モララーが大声を上げた。
 そうだ。見覚えがあったはずだ。
 彼女は、ヌルテレビでアナウンサーや料理番組のアシスタントをやっている女性だ。
 結婚したい女子アナのベスト1に輝いたこともあるほどの人気アナウンサーである。
 副業で公安五課をやっているのか、アナウンサーの仕事が副業なのかは分からないが…

「僕、リル子さんの大ファンなんです。サインして下さい!
 …ってか、もうお見合いするんだからな!!」
 興奮して、大声で騒ぎ立てるモララー。
 こいつ、両刀だったのか…

「…あら、光栄ですね」
 そう言って、リル子はモララーに微笑みかけた。

(…10年早いわよ)

 …なんだ? 今の思念は。
 『アウト・オブ・エデン』が、一瞬妙な思念を捉えたぞ。

「リル子君、遅すぎますよ。一体何をしてたんです…?」
 局長は、リル子に言った。
「少し、身支度に時間がかかりまして」
 リル子は無表情で局長に告げる。

「まったく… 私は、たった1人で代行者3人と戦ったんですよ。
 指を鳴らしても君が来なかった瞬間、私はどれだけ途方に暮れたか。
 まあ、咄嗟に誤魔化せたから良いようなものの…」

「それは失礼。私には役不足と思いましたもので…」
 澄ました顔で答えるリル子。
 局長は煙草を灰皿で揉み消した。
「…それは、どっちの意味で取ればいいのかな。
 まあ、念入りに化粧しないと、もう年齢的に人前に出れないと言うのは分かりますがね…」

 リル子は、冷たい微笑を浮かべた。
「フフ… 今は、彼等を説得しているんじゃないんですか」
(フフ… 本当、いっぺん焼き殺しますよ…)

 うわっ。まただ。
 またもや強烈な思念が伝わってくる。

「おっと、そうでしたね…」
 局長は俺達に視線を戻した。
「さっきも言った通り、要人救出に手を貸してほしいんですよ。
 現在の公安五課は、致命的に人手が足りません。
 ただでさえ職員が少ないのに、『蒐集者』のせいでほとんどの精鋭が殉職してしまった。
 実力者は、私とリル子君だけという状態です」

 『蒐集者』と戦った…?
 公安五課は公安五課で、『蒐集者』をマークしていたのだろう。
 リル子は、いつのまにか局長の隣に腰を下ろしている。

「さっきモナーも言ったが、お前達を簡単に信用すると思うのか…?」
 リナーは局長を睨んで言った。
「まあ、あなた達がそう思うのも当然でしょうね。だが…」
 局長は煙草を咥えると、軽くリル子に視線を送った。
 リル子はライターを取り出すと、局長の煙草に火を付けた… と見せかけてスーツの袖に火をつけた。

「………」
 メラメラと燃える袖をじっと見つめる局長。
「失礼、手許が狂いました」
 リル子は表情を変えずに言った。

「さっきの礼、と言うわけかな…?」
 ゆっくりと袖をはたく局長。火はすぐに消えた。
「君は少しカリカリし過ぎだな。生理かね?」

「…その発言はセクハラです」
 リル子が局長を鋭く睨む。
「そうですね。さっきの発言は撤回しましょう」
 局長は懐から手帳を取り出すと、パラパラとめくった。
「順調に行けば、来週からのはずですしね」

「…なんで私の周期をメモってるんです?」
 リル子が軽く微笑んだ。
(フフ… どうやって殺そうかしら?) 
 『アウト・オブ・エデン』が、強烈な思念を受け取っている。


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