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スタンド小説スレッド3ページ
518
:
ブック
:2004/06/02(水) 19:35
・ ・ ・
「百五十一…百五十二…百五十三……」
口で数を数えながら、三月ウサギが右腕だけで腕立て伏せをしていた。
彼の体中からは汗が流れ、それが玉となって滴り落ちる。
しかし、それでもペースが乱れる様子は一向に無かった。
「…百九十七…百九十八…百九十九…二百…!」
そこで右腕での腕立て伏せをやめ、
汗を拭って小休止を取った後で、今度は左腕での片腕立て伏せを始める。
これも、右腕と同じく二百回。
その後、続けて両腕での腕立て伏せを二百回。
しかも、その後半の百回は指でのプッシュアップだった。
「百九十九…二百…!」
この一連の動作を、計二セット三月ウサギは行った。
それから、今度は腹筋とヒンズースクワット。
それらが全て終わった後に、丹念にストレッチをして筋肉をじっくりほぐす。
「……」
ストレッチを終えた後、三月ウサギはマントの中から一振りの剣を取り出した。
そしてそれを左手だけで握り、上段に大きく振りかぶって勢いよく下ろす。
この時、剣は下まで振り切るのではなく上段の位置でしっかり止める。
いわゆる、素振りというものであった。
「一…二…三…四…五…」
三月ウサギは、この素振りを左腕だけで千本、右腕だけで千本、
そして両腕を添えたもので千本繰り返す。
これを、全部で三セット。
腕立て伏せなどの筋力トレーニングは、
超回復の為の時間を空けておく必要があるので毎日は行わないが、
この素振りだけは一日たりとも欠かす事は無かった。
勿論、只漫然と素振りをするのではない。
鏡を見ながらフォームを確認しつつ、一本一本全力を込めて振り下ろす。
振り切った時に手で絞りを入れるのも怠らない。
実戦ではこのような基本技など何の役にも立たないと、
知ったような事を抜かす輩もいるが、
戦闘で使う応用技は基本の上にこそ成り立つのである。
故に基本をしっかりと身に染み込ませ、
錆付かせない為にも、反復練習は決して欠かせないものだった。
「五百三十三…五百三十四…五百三十五…」
取り憑かれたように、三月ウサギは剣を振り続ける。
もっと強く。
昨日より強く。
今日より強く。
明日はなお強く。
その飽くなき力への渇望こそが、三月ウサギをこの荒行に駆り立てていた。
彼は何故、ここまでして力を求めるのか。
それはオオミミですら知りはしない。
全ては三月ウサギの心中にこそ秘められていた。
それが白日の下に晒されるのは、まだ少し先の話である。
・ ・ ・
「……!」
三月ウサギがトレーニングを行っている頃、
奇しくもタカラギコもまた研鑽を積んでいた。
「…!……!」
片手に拳銃を持ち、壁に書いた点に照準を合わせて構えを取る。
そのまま、照準をコンマ一ミリもずらさずにその体勢を堅持。
既に、タカラギコが銃を構えて一時間が経過しようとしていた。
「!!!!!」
と、机の上に置いてあった時計のベルが鳴る。
丁度一時間が来た事を、タカラギコに告げたのだった。
「ふぅ…」
汗を拭い、息を整えた後で今度はウエイトトレーニングを始める。
銃の反動を抑え、あらゆる種類の銃を自在に操る為にも、
膂力を鍛える事は銃使いにとって不可欠である。
ましてやタカラギコの使うのは、
『パニッシャー』という規格外の化け物兵器。
並大抵の筋力では到底御し切れない。
彼は、強くなる必要があった。
死ぬ訳には、いかないから。
死ぬのが、恐いから。
それが、タカラギコが強くあろうとする理由だった。
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