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スタンド小説スレッド3ページ

509ブック:2004/06/01(火) 05:08

「よせ、セイギコ。」
 と、横の犬男がモララー目のギコを諌めた。
「ですが、ギコ犬さん…!」
 何か言いた気な目で犬男を見るセイギコと呼ばれた男。

「お前も『切り札』(テトラカード)のJだろう?
 それが、そんなに取り乱してどうする。」
 その言葉に、セイギコとかいう男は押し黙る。
 やれやれ、少しは静かになったか。

「…見苦しい所すまないな。
 そういえば申し遅れた。
 私はギコ犬。
 『聖十字騎士団』、『切り札』(テトラカード)のKだ。」
 丁寧に自己紹介する犬男。
 物腰こそ柔らかいが、この男、恐らく横のセイギコより実力は上…!

「…ふん、そこの下種のお仲間さんか。」
 司教の死体を一瞥し、俺はそう口を開く。

「僕達を愚弄する気か…!」
 と、セイギコが再び牙を剥く。

「よせ。」
 ギコ犬と名乗った男が、セイギコを抑える。
「……!」
 悔しそうにセイギコが俺をねめつけた。

「…私達も児童性的虐待の件で、そこの司教を連行しに来たのだ。
 対処が遅れて、誠に申し訳なかった。」
 ギコ犬と名乗った男が、俺に深々と頭を下げる。

「…謝るなら、俺じゃなくて傷ついた子供達に謝るんだな。」
 俺はそう言うと、外へ出ようと窓を開け放った。

「どこへ行く!?」
 後ろから、セイギコが声をかけてくる。

「外へ、金を稼ぎに行く。」
 俺は振り返らないまま答えた。

「待て!
 人を殺しておいて、逃げれると思っているのか!!」
 空間が圧縮されたかのような緊迫感。
 どうやら、セイギコとそのスタンドが臨戦態勢に入ったらしい。

「…俺はあの子と約束した。
 俺が助けてやる、と。
 絶対に何とかしてやる、と。
 だから、俺はどんな事をしてでも金を手に入れる。
 その邪魔をするってんなら、お前らを殺してでも行かせて貰う…!」
 『オウガバトル』発動。
 鬼の姿をしたビジョンが、俺の横に現れる。

「貴様!!」
 セイギコが吼えた。
 いいのか?
 そこはもう俺の射程距離だ。
 瞬き一つで、その首を斬り落とせるぞ…!?

「待て。」
 俺とセイギコが攻撃を繰り出そうとした瞬間、ギコ犬がその間に割って入った。

「……」
「……!」
 気を外され、俺とセイギコは一旦矛を収める。

「…そこの君、取引をしないか?」
 と、ギコ犬が俺に向き直って告げた。
「取引…?」
 思わず聞き返す。

「そうだ。
 見た所、君は相当凄腕のスタンド使いらしいし、
 根っからの悪人という訳でもなさそうだ。
 今回の件にしても、情状酌量の余地は充分にある。
 いや、寧ろ対処の遅れた我々にこそ非があると言えよう。」
 ギコ犬が一歩俺の前に進み出た。

「そこで、だ。
 君、『聖十字騎士団』に入ってみるつもりはないか?
 もし入隊するならば、この一件は私が上手く揉み消しておくが。」
 つまり、罪は見逃してやるから仲間になれ、か。
 この男、見かけによらず食えない野郎だ。

「ギコ犬さん、何を言ってるんですか!!
 俺は反対です!!
 こんな奴…」
 信じられないといった顔をするセイギコ。

「そう言うな。
 それに、『切り札』(テトラカード)も、
 Jには君が就任したが、Aは未だに空席のままだ。
 『聖十字騎士団』も人材不足で困る。」
 ギコ犬が苦笑する。

「…どうする?
 選択は自由だ。
 但し、断るのであればこちらも全力で君と闘うが。」
 膨れ上がる闘気。
 負ける気はしないが、二人掛かりでは流石にしんどいか。

「…一つ、教えろ。」
 俺はギコ犬を見据えて言った。
「その仕事は、儲かるのか?」


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