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スタンド小説スレッド3ページ

504ブック:2004/06/01(火) 05:06





 夕暮れも近くなった頃、教会の入り口から一人の子供が出てきた。
 辺りを見回し、力ない足取りで外へ出る。
 そのまま、独りぼっちでとぼとぼと帰路を歩んでいた。

「…おい。」
 教会から大分離れた事を見計らい、
 俺はその子供の後ろから声を掛け、肩に手を置いた。

「……!」
 子供がびっくりして振り返る。
 そして俺の顔を見ると、すぐさま逃げ出そうとした。

「待て、ちびしぃ!」
 俺はちびしぃの腕を掴んで、彼女を引き止める。
 教会の前に張り込んでて正解だった。
 やっぱりこの子はあそこに居た。

「一人で街に来ちゃ駄目だ、って言われてたろ?
 何でこんな事したんだ?」
 出来るだけ優しい声で、ちびしぃに尋ねる。
 怒ってはいけない。
 怒ったら、全くの逆効果だ。

「お願いです、皆には言わないで…!」
 俺から逃げられないと察したちびしぃは、泣きながら俺に懇願した。
 その体が小刻みに震えている。

「…?
 どういう事だ?」
 確かに一人で街に来たのはいけない事だが、それでもこの震えようは異常だ。
 あのおばちゃんは、そこまで厳しく怒るのか?

「…何があった。
 俺に、話してみろ。」
 ちびしぃの目を真っ直ぐ覗き込む。
 目を逸らす、ちびしぃ。

「何でもないです。だから…」
 ちびしぃが俺の腕から逃れようとする。

「嘘吐け、何でもないって事はないだろう?」
 俺が逃がすまいと力を加えると…

「嫌ぁ!!!」
 ちびしぃが、悲痛な顔で拒絶の声を上げた。
 おかしい。
 尋常の、恐がり方ではない。

「…大丈夫だ。
 今聞く事は、絶対に誰にも言わない。
 だから、一人で抱え込まないで話してみな。
 何があったのか知らないけど、俺はお前の味方だ。
 大した力にゃなれないけど、二人で一緒に考えようぜ?」
 俺は腕から力を抜き、ちびしぃを見据えて言った。

「…本当に、誰にも言わない?」
 おずおずと聞き返すちびしぃ。
「ああ、約束する。」
 俺は微笑みながら返した。

「…言ってみろ。
 何が、あったんだ?」
 俺はゆっくりとちびしぃに尋ねた。
 ちびしぃはしばし沈黙した後、やがて意を決したように口を開く。
「私―――…」


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