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スタンド小説スレッド3ページ
329
:
ブック
:2004/05/12(水) 18:30
「あ〜あ、見てらんないわね。
だからやめとけって言ったのに。」
と、後ろから厭味な声がオオミミに掛けられた。
いや、待て。
この声は覚えがあるぞ。
この声は―――
「天!何で来たんだ!?」
オオミミが絶句した。
そこには、天が相変わらずの可愛気のないむっつり顔をして佇んでいたのだ。
「何って、わざわざアンタを助けに来てあげたのに、
その言い草は無いんじゃない?」
助けに来た!?
君が!?
馬鹿な。
笑えない冗談にも程がある。
「ふっ、思いがけずしてと言ったところか…」
吸血鬼が、意味ありげに笑った。
対して表情を固くする天。
…?
どういう事だ?
「オオミミ、二分…いえ、一分だけ時間を稼ぎなさい。
そうすれば、アタシの『レインシャワー』を発動出来るわ。
勝つ事は無理でも、それ位は出来るでしょう?」
真剣な顔つきで、天が吸血鬼に聞こえないよう小声でオオミミに告げる。
そうだ。
僕が見えるという事は、彼女もスタンド使いだったんだ。
『レインシャワー』、それが、彼女のスタンドの名前か?
だけど、どんな能力かも分からないのに、時間稼ぎなんて…
「…分かった、やってみる。」
そんな僕の懸念とは裏腹、オオミミは覚悟を決めた顔で吸血鬼の前に立ちはだかった。
(馬鹿、オオミミ。逃げるんだ!)
勝算も定かではないのに、これ以上闘うのは無謀過ぎる。
ここは一旦退くんだ!
「…今逃げたら、天にまで危険が及んでしまう。
闘うしか、無いよ。」
オオミミが吸血鬼を見据えた。
ああ、もう…!
分かったよ、やってやる!!
「RUOOOOOOOOOHHHHHHHH!!!」
吸血鬼がオオミミに向かって飛び掛かった。
「『ゼルダ』!!」
こうなっては、もう多少の傷は気にしていられない。
天を信じて、何としても一分だけ持ち堪える事に専念する。
「…始まりはいつも雨。
終わりはいつも雨。」
と、天が何やらブツブツ言うのが聞こえてきた。
まさかあれだけ大口叩いて、困った時の神頼みじゃないだろうな。
吸血鬼の攻撃を、体に残された力を振り絞りながら防御する。
(無敵ィ!!)
やられているばかりにもいかない。
吸血鬼のガードが甘くなった所に、左のフックを叩き込んだ。
吹き飛ばされ、壁にぶちあたる吸血鬼。
「我同胞(はらから)を失いて、
道無き道を、独り往く。」
…?
天の体から、何かの力が湧きあがって来るのを感じた。
いや、この感じ、どこかで覚えがある…!
「渡るその身を雨は打ち、
凍て付く身体は心を亡くす。」
「NNUUUUUUUUUAAAAAAAAAHHHHHH!!!」
吸血鬼が壁に当たった時の反動を利用して、オオミミに反撃する。
爪が、オオミミの胸を深く抉った。
まだか、天。
君のスタンドはいつ発動するんだ…!
「乾いた大地は時雨を湛え、
其処に出(いずる)は水鏡。」
……!
何だ、この感じは。
世界が、何か別のものに変わっていくような。
これは、これは間違い無い。
この力は…
「其処には何がと覗きてみれば、
映るは己の貌だった―――…」
「…―――Identity disappears.(そして総ては自分(イミ)を失う)」
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