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スタンド小説スレッド3ページ

313:2004/05/10(月) 23:54

「…そろそろです」
 黙って運転を続けていたリル子は言った。
「なるべく、正面玄関の近くまで行って下さいね。
 救急車を出てから邸内に侵入するのを、3秒で終わらせなければいけませんから…」
 局長は、後部席から運転席に呼びかける。
「了解しました…」
 リル子はアクセルを強く踏んだ。

 救急車は、そのまま正面玄関目掛けて直進する。
 スピードを緩める気配はない。
「あの… 止まる気あるんですか?」
 局長は、運転席のリル子に訊ねた。
「なるべく近くまで行けとの御命令でしょう…?」
 リル子は平然と答える。

 そのまま、救急車はガラス張りの正面玄関に激突した。
 ガラスをブチ割り、エントランスホールに突入する。
 警備していた自衛隊員が4人ほど、ボーリングのピンのように撥ね飛ばされた。
 異常に広いエントランスホールのほぼ真ん中まで来て、リル子はようやくブレーキを踏む。

 警備していた自衛隊の連中が、一斉に救急車に銃口を向けた。
「撃てッ!!」
 掛け声とともに、引き金が引かれる。
 周囲に響き渡る銃声。
 救急車は、20人以上からの銃撃を受けた。
 銃弾が車体に当たり、金属質の音を立てる。

「きゃっ!!」
 しぃは悲鳴を上げてかがみ込んだ。
「大丈夫、ある程度は防弾処理を施していますよ…」
 身をかがめて局長は告げる。
「ある程度はね…」 

 救急車は完全に囲まれていた。
 20人近くの自衛隊員が救急車に銃弾を撃ち込んでいる。
 おそらく、すぐに応援も押し寄せて来るだろう。

 運転席の防弾ガラスが、銃撃に耐えきれなくなった。
 亀裂が次々に入り、それから粉々に割れてしまった。
 運転席に座っていたリル子は、素早く救急車後部に移動する。
「…リル子君、何を考えているんです?」
 局長はため息をついて言った。
「これが最善の方法です」
 リル子は相変わらず表情を変えない。

「ですが…」
 言いかけた局長の言葉を遮るリル子。
「本当に5人以上もの人数で潜入できるとでも思ったんですか? こちらには素人までいるんですよ?」
「人質…」
 局長の言葉は、リル子の冷たい口調に掻き消される。
「侵入者がいるのに、わざわざ人質を殺害しに行く手勢がいるとは思えません。
 テロリストの立て篭りとは警備の性質が異なります」
「無茶…」
「無茶は承知です。そもそも強襲作戦はこちらの専門なので、素人はすっこんでいて下さい」
「で…」
「『でも』も何もありません。現場の判断で、失敗すると分かっている作戦を破棄しただけです」
「…」
 とうとう黙り込む局長。


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