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スタンド小説スレッド3ページ

297:2004/05/09(日) 19:19


 首相官邸の近くの空き地で、救急車は停車する。
「少し着替えるんで、降りてくれませんか…?」
 リル子は言った。
 局長とギコ達は車から降ろされる。
 当然ながら、周囲に人影はない。

「かなり警備は厳しいな…」
 近くに臨む首相官邸を見上げて、ギコは呟いた。
 ここに来るまでに、多くの武装した自衛隊員を目にしたのだ。
「僕達は、着替えなくてもいいの?」
 モララーが訊ねる。
「君達はどんな格好をしたって不自然なので、そのままでいいですよ。
 誤魔化すのは外の見張りだけです。中に入った後は、進路上の見張り全員に眠ってもらうんで」

「応援を呼ぶ前に全員ぶっ倒すのか!? この人数じゃ無理だろう…?」
 ギコは驚いて言った。
 官邸の外ですら、石を投げたら自衛隊員に当たるほどの有様なのだ。
 官邸内の警備はかなり厳しいだろう。
 音も立てずに全員を倒せるとはとても思えない。

 局長はネクタイの位置を正した。
「その為のリル子君ですよ。彼女は単なる嫁き遅れじゃありません。
 嫁き遅れには、嫁き遅れる理由というものがあります。
 何せ、彼女は公安五課におけるたった1人の強襲班員ですからね」

「たった1人なのに、強襲班…?」
 ギコは呟いた。局長は静かに頷く。
「彼女にとっては、1人で敵地に飛び込む方が楽なんですよ。
 余計な足手纏いがいませんし、攻撃に巻き込む心配もありませんからね。
 今回は、要人救出後の護衛という事で私達が同行する訳ですが…」

 救急車の後部扉が開き、白衣を身に纏ったリル子が降りてきた。
 どう見ても立派な女性看護隊員だ。
 ただ、異様なアタッシュケースだけは浮いているが。
 
「なかなか女装もサマになっていますね…」
 局長は薄い笑みを浮かべて言った。
「局長殉職後は私が後を継ぎます。迷わず逝って下さい」
 リル子がアタッシュケースを開こうとする。
「…冗談ですよ。『アルティチュード57』の発動は、突入時まで控えるように…」
 局長はため息をついた。

 ギコは、一同の顔を眺める。
 そして、右手を真っ直ぐに差し出した。

「しぃ!!」
 ギコは、大声でしぃの名を呼んだ。
「はい!」
 しぃが、ギコの差し出した握り拳の上に自らの掌を重ねる。

「モララー!!」
 さらに叫ぶギコ。
「おう!」
 モララーが、ギコとしぃの手の上に掌を重ねる。

「レモナ!!」
「はーい!」
 3人の手の上に、レモナは掌を置いた。

「つー!」
「アッヒャー!」
 最後に、つーの小さな手が被さる。

「死ぬ気でやるぜ! でも死ぬな! 以上!!」
 ギコは叫んだ。
「オ―――ッ!!!」
 全員が気合を入れる。

「私は無視ですか…?」
 その様子を見て、局長は呟いた。
「仲間に入りたかったんですか?」
 リル子は局長に冷たい目線を送る。
「…まさか」
 局長はそう言って、スーツのポケットに腕を突っ込んだ。

「じゃあ、そろそろ始めましょうか」
 ポケットの中で、局長は発火装置のボタンを押す。
 轟音が響き、首相官邸正面門付近から火の手が上がった。
「今の爆発で、警備兵が何人か負傷したでしょうね」
 局長はそう言って、全員の顔を見る。
「『騒ぎを起こして、要人達が殺される…、と言うのは最悪の結果』って言わなかったか、ゴルァ!」
 ギコは呆れて言った。
「公安五課では、あの程度を騒ぎとは言いませんよ」
 そう言って、局長は背を向ける。
「さて、救急班のお出ましと行きましょうか…!」


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