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スタンド小説スレッド3ページ

246ブック:2004/05/05(水) 19:55
     EVER BLUE
     第五話・GUN=HALBERD 〜血塗れの鋼〜 その一


「うわ〜、本当に船が空を飛んでますよ!
 何度見ても信じられませんねぇ。」
 デッキ上の手すりで外の景色を眺めながら、タカラギコが感嘆する。
「…?別にそんなの珍しくもないでしょう?」
 オオミミが不思議そうにタカラギコに尋ねた。
 変だな、この人。
 船が雲の海を飛んでる位、日常茶飯事の事なのに。
 ここまで驚く程のことでもないだろう。

「あ…いえ、実は田舎の出でしてね。
 失礼、忘れて下さい。」
 慌てた様にタカラギコが会話を切る。
 田舎って…
 どんな辺境に住んでれば飛空挺を見ずに暮らせるんだ。

「…しかし、本当に素晴らしい。
 私の同僚にも見せてあげたいものですね。」
 タカラギコが寂しそうな目で呟いた。
 僕はそんなタカラギコの目を見て驚いてしまう。
 この人、いつもニコニコしているばかりかと思ったら、
 こんなに哀しそうな目もするんだ。

「そういえば、タカラギコさんってどんなお仕事してるんですか?」
 オオミミがタカラギコの方を見て言った。

「私、ですか?
 そうですね…『元』正義の味方ですね。」
 タカラギコが苦笑する。

「正義の味方って…『聖十字騎士団』ですか?」
 オオミミがそう聞き返した。
 成る程、『聖十字騎士団』ならば、先程のあの体術の切れ味の鋭さも頷ける。

「いえ、違います。
 それに、さっき言った通り『元』正義の味方です。
 今はもう関係ありませんよ。」
 タカラギコが再びうっすらと寂しそうな目を見せた。
 が、すぐに元の笑顔に戻る。

 …不思議な人だ。
 まるで、どこか別の国から来た異邦人と話しているみたいに、
 そんなどこか噛み合わない感じ。
 それでいて、昔から知り合いだったかのような…

「じゃあ、一体どこに勤めて…」
 オオミミが質問を続けようとする。

(駄目だよ、オオミミ)
 僕はそんなオオミミに注意した。

「『ゼルダ』…?」
 オオミミが僕に言葉を返す。

(それ以上は、多分聞いちゃ駄目だ。
 初対面の人に、あんまり踏み込んだ質問をするものじゃない。)
 本当は僕もタカラギコには興味があるのだが、
 流石にこれ以上プライバシーに触れる質問をするのはまずい。
 それにさっきまでの様子から察するに、
 仕事の話は多分この人にとって地雷だ。

「ご、ごめんなさい!
 タカラギコさん、俺…」
 オオミミがタカラギコに平謝りする。
 しかし君は、いつでも誰にでも謝っているな。

「いいんですよ。
 私も、お喋りが過ぎました。」
 タカラギコがそっと目を閉じる。


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