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スタンドスレ小説スレッド

1新手のスタンド使い:2003/11/08(土) 01:58
●このスレッドは『 2CHのキャラにスタンドを発現させるスレ 』の為の小説スレッドです。●

このスレでは本スレの本編に絡む物、本スレ内の独立した外伝・番外編に絡む物、
本スレには絡まないオリジナルのストーリーを問わずに
自由に小説を投稿する事が出来ます。

◆このスレでのお約束。

 ○本編及び外伝・番外編に絡ませるのは可。
   但し、本編の流れを変えてしまわない様に気を付けるのが望ましい。
   番外編に絡ませる場合は出来る限り作者に許可を取る事。
   特別な場合を除き、勝手に続き及び関連を作るのはトラブルの元になりかねない。

 ○AAを挿絵代わりに使うのは可(コピペ・オリジナルは問わない)。
   但し、AAと小説の割合が『 5 : 5 (目安として)』を超えてしまう
   場合は『 練習帳スレ 』に投稿するのが望ましい。

 ○原則的に『 2CHキャラクターにスタンドを発動させる 』事。
   オリジナルキャラクターの作成は自由だが、それのみで話を作るのは
   望ましくない。

 ○登場させるスタンドは本編の物・オリジナルの物一切を問わない。
   例えばギコなら本編では『 アンチ・クライスト・スーパースター 』を使用するが、
   小説中のギコにこのスタンドを発動させるのも、ギコにオリジナルのスタンドを
   発動させるのも自由。

 ★AA描きがこのスレの小説をAA化する際には、『 小説の作者に許可を取る事 』。
   そして、『 許可を取った後もなるべく二者間で話し合いをする 』のが望ましい。
   その際の話し合いは『 雑談所スレ 』で行う事。

713ブック:2004/01/12(月) 00:56
      救い無き世界
      第八話・幕間 〜危険牌は通らない〜


「―――「○○デパート爆破テロ事件」の事件での被害者は、
 死者五十六名、重軽傷者二百三十一名、行方不明者四十八名と、
 甚大な数に昇っており、
 事件から一夜明けた今現在もなお、負傷者、行方不明者の
 捜索が続けられています。
 専門家の意見では今回の―――」
 ニュースキャスターが、四角い画面の中で喋っている。
 俺はSSS内にある医務室のベッドに、ぃょぅと並んで横たわりながら、
 テレビから放送されているニュースを見ていた。

「現場のズザギコさー…」
 ピッ
「…病院はどこも事件の被害者でいっぱいで…」
 ピッ
「…やはりこの国は自衛隊をもっと強化…」
 ピッ

 どこのチャンネルを見ても、やっているのは同じニュースばかりである。
 まあ、あれだけの事があったのだから、
 当然と言えば当然であるが。
 我ながら、よく生きて帰ってこれたものだ。

「でぃ君、傷はもう大丈夫なのかょぅ。」
 隣からぃょぅが話しかけてきた。
『もう、平気です。』
 ホワイトボードにそう書く。
 俺の怪我は、みぃのおかげで既に完治しかけていた。
 ぃょぅも、おそらくほとんど治っているはずである。

「でぃ君、あの時の事、何か思い出せたかょぅ。」
 ぃょぅの問いに、俺は黙って首を横に振った。
 あの時、瓦礫に道を塞がれて立ち往生していた時、
 俺は俺の内の『何か』に呼ばれて…
 そして、気付いたときには、瓦礫は跡形も無く消えていた。
 あれが俺のスタンドの『力』…?

 いや、違う。
 あんなものじゃない。
 たぶん、瓦礫を消し去るなんてほんの一端に過ぎない。
 何故か、そう確信することが出来る。
 あいつは、俺の中にいるあいつは、一体何なんだ…

「そうかょぅ…
 何か思い出せたら、些細なことでいいから教えてくれょぅ。」
 ぃょぅの言葉が俺を現実へと引き戻した。
 もし、俺が今さっき考えた事をぃょぅに伝えたら、
 ぃょぅは、そしてぃょぅの仲間達は俺をどうするだろうか。
 俺を一生監獄の中に閉じ込めるだろうか。
 それとも殺すのだろうか。
 漠然とした不安が、俺を襲った。

714ブック:2004/01/12(月) 00:57

「お邪魔するわよ。」
 不意に部屋のドアが開けられ、ふさしぃとみぃが部屋に入って来た。
 俺とぃょぅは、ベッドから体を起こす。
「お見舞いに来たわ。お二人とも、具合はどう?」
 果物の詰め合わせの籠を近くの机に置きながら、ふさしぃが尋ねてきた。
「ぃょぅは大丈夫だょぅ。
 今日にでも、復帰出来るょぅ。
 それもこれも、みぃ君のおかげだょぅ。」
「そ、そんな。
 私は大したことなんか何も…」
 ぃょぅの言葉に、みぃが恥ずかしがって縮こまる。
「でぃ君は、どう?」
 ふさしぃが俺にそう聞いてきた。
『はい。もうすっかり治りました。』
 俺はそう答えた。
「そう、なら大丈夫ね。」
 そう言ってふさしぃは微笑むと―――


 首から上が吹っ飛ぶような衝撃。
 ふさしぃの平手が、俺の顔面を正確に捉えた。
 俺はそのあまりの威力にベッドから転げ落ちる。
「でぃさんっ!!」
 みぃが俺に駆け寄り、体を抱える。
 あまりの平手の速さに、
 俺は一瞬何が起こったのか、理解できなかった。

「馬鹿…っ!
 自分がどれだけ他人に心配をかけたか、分かってるの!?」
 ふさしぃが怒った。
 ある程度覚悟はしていたが、やっぱりか。
 まあ、しょうがない。
 あんな所で、勝手な行動をとって、皆に迷惑をかけたのだ。
 しかも迷惑をかけたのが俺みたいなでぃなら、
 余計に腹も立つだろうさ。
 所詮俺は―――

 次の瞬間、俺は目を見開いた。
 ふさしぃの目に、光るものを見つけたからだ。

 俺は、困惑した。
 何で、この人は泣いてるんだ?
 俺を怒るのは分かる。
 だけど、なんで泣く必要がある?
 いや、そもそも俺みたいなのが死のうが生きようが、
 この人には何も関係無いんだから、怒る必要すら無い。
 なのに、何でこの人は俺の事で、怒ったり泣いたりするんだ?

 ふと隣のみぃを見る。
 みぃも、泣いていた。
 分からない。
 なんでふさしぃも、こいつも、
 そんなに俺なんかに構う。
 両親だって、俺を見捨てたっていうのに…

 打たれた頬が酷く痛む。
 だけど、俺の胸の辺りは何故かそれよりもずっと痛かった。

715ブック:2004/01/12(月) 00:57


     ・     ・     ・


 私はふさしぃとタカラギコ、そしてギコえもんを相手に闘っていた。
 私は先程タカラギコから深手を負っており、
 おそらくこの四人の中では最も不利な状況にあると言える。
 それにも関わらず、彼らには油断の色はかけらも見られない。
(相手は百戦錬磨の兵ぞろい。
 簡単に勝てるとは思ってはいなかったけれど、
 まさかここまで追い込まれる事になるとはょぅ…)
 そして今、私は絶体絶命の窮地に立たされていた。
 三人は、私に止めの一太刀を浴びせようと身構えている。

 だが、同時に今は最大のチャンスでもあった。
 リスクは高い。
 しかし、これさえうまく行けば、大逆転が可能である。
 どうせこのままではじわじわとやられるだけである。
 やるしか…無い!

 私は最後の賭けに出ることを決心した。

 いくぞ!これが私の最後の手だ、喰らえ!!!


「リーーーーチ!!」
 私は牌を横に倒し、場に千点棒を置いた。
 私達は、SSS内の私達の職場となる部屋で、麻雀をしていた。
 誤解のないように言っておくが、もちろん勤務時間外である。

 チャッ、タン
 チャッ、タン
 チャッ、タン

 三人は案牌のみを切り出す。
 だが、問題は無い。
 この流れなら、間違いなく一発で上がり牌を引いてくる…!

「ツモっ!!!」

 一二三(12399)12233 ツモ1
 一…マンズ (1)…ピンズ 1…ソーズ

 リーチ一発ツモ純チャン一盃口ピンフ
 倍満できっちり逆転トップである。

「ちっ!!」
 ギコえもんが卓へと八千点を投げつけた。
 オーラス親っかぶりで最下位転落したからである。
 気の毒ではあるが仕方が無い。
 これが真剣勝負の世界だ。
「それじゃあ次の半荘といきますか。アハハ。」
 タカラギコが金を支払いながら言った。
 しかしその笑い声とは裏腹に、笑顔の裏には殺気にも似た
 気迫が見え隠れしている。

 そして次の半荘が開始された。
 レートは千点=千円。
 一瞬の気の緩みが致命傷となる。

716ブック:2004/01/12(月) 00:58

「…でぃ君に悪いことしてしまったかしら。」
 ふさしぃが(9)を切りなが言った。
「今日のビンタのことかょぅ?」
 私は白を切った。
「ポン。」
 タカラギコが白を鳴いた。
 捨て牌からしてマンズの混一?

「それもあるけど、違うの。でぃ君をデパートに連れて行ったこと。」
 ふさしぃは發を切る。
「ポン。」
 タカラギコがそれも鳴いた。
 ヤバイ。
 まさか大三元か!?

「あの事件に巻き込まれたのは、
 別に君の所為じゃ無いょぅ。
 不可抗力だょぅ。」
 私は牌をツモった。
 あろうことか中。
 これだけは死んでも切れない。
 私は仕方なくタカラギコの安牌である(7)を切る。

「ううん、違うの。
 私は、彼に自分がでぃであるなんて下らない事なんかで、
 他人から逃げるように生きて欲しくなかった。
 だから、あえてデパートに一緒に買い物に連れて行ったの。
 けど…」
 ふさしぃが、(4)を切った。
「けど…それは私の一方的なエゴの押し付けで、
 ただでぃ君を傷つけただけかもしれない…」
 ふさしぃが表情を暗くする。

「…心配ないと思うょぅ。
 でぃ君はきっとふさしぃの事を、
 分ってくれている筈だょぅ。」
 私はそう言った。
 そして、そうあって欲しいと願った。
「…だと、良いんだけどね。」
 ふさしぃは溜息をつく。
「大丈夫。
 悪い奴なら、みぃ君があそこまで懐いたりしないょぅ。」
 私はそう言って、2を切った。

「御無礼ロンです。満貫。」

 一一三三三22 白白白 發發發  ロン2

 …大三元はブラフだったか。
 私はしぶしぶ八千点を支払う。

「そのでぃ君なんですけどね、どうするんです?」
 タカラギコが点棒を受け取りながら言った。
「?どうって?」
 ふさしぃが尋ねた。
「彼の処遇ですよ。
 ぃょぅから聞いた話しか情報はありませんが、
 相当の能力と言えるでしょう。
 今も密かに監視はさせてますが、
 何か起こる前に、何らかの手を打っておくべきだと思うんですけどね。」
 タカラギコはそう答えた。
 私とふさしぃは、顔を曇らせた。

717ブック:2004/01/12(月) 00:58

 私は、そしておそらくふさしぃも、このことは
 努めて考えないようにしていた。
 だが、そうもいかない。
 彼の『力』は放置するにはあまりに物騒すぎる。
 最悪の場合、「処分」される事も有り得るだろう。

「けっ、だからでぃなんかさっさと始末するに限―――」
 ギコえもんは悪態をつこうとして、止めた。
 ふさしぃと、私の刺すような視線に気付いたからだ。
「…悪い。言い過ぎたゴルァ。」
 いつもならばふさしぃは即座にギコえもんを殺している
 はずである。
 だが、ふさしぃはそれをしなかった。
 ふさしぃも、ギコえもんの過去を知っているからだ。

「ま、この話はもうここら辺で止めときましょう。
 最終的にどうするかは、上が決めることです。」
 タカラギコはそう言って軽く伸びをした。
 我々対スタンド制圧特務係も、立場的には相当上に位置してはいる。
 が、流石に今回のことは我々だけでは決められない。
 しかし、それでも私は…

「…最悪の場合はあらゆる手段を使ってでも何とかする
 といった顔ですね、お二方。」
 タカラギコは私とふさしぃを見やった。
「全く、信じられませんね。
 自分の立場が悪くなるのは火を見るより明らかじゃないですか。
 会ったばかりの、音楽の好みすら知らない相手に
 そこまで入れ込むとは。」
 タカラギコはやれやれと言ったように肩をすくめた。
「でも、あなた方のそういう所、嫌いじゃありませんよ。」
 タカラギコはそう言って白を切った。
「それロンだょぅ。跳ね満。」

 (123456789)西西白白  ロン白

「…前言撤回。ぃょぅさんは好きになれそうに無いですね。」
「さっきのお返しだょぅ。」
 私とタカラギコとの間に、火花が散った。

718ブック:2004/01/12(月) 00:59

「そんなことより、結局あのデパート事件の犯人の
 スタンド使いは何だったんだゴルァ。」
 ギコえもんが口を開いた。
「残念だけど、分からないょぅ…
 済まなぃょぅ。
 生け捕りに出来なくて…」
 私は面目無い気持ちでいっぱいだった。
「まあ、仕方ありませんよ。状況が状況でしたから。
 犯人がスタンド使いと分かっただけでも見っけものです。
 その点では、でぃ君に感謝しないといけませんね。」
 タカラギコはそう言った。
「…いずれにせよ、早く背後を突き止める必要があるわね。」
 ふさしぃが深刻な顔をで呟いた。

「お、ツモだょぅ。
 1000・2000.ラストだょぅ。」
 再び私のトップでその半荘は終わった。
「か〜〜〜っ、うっそだろう。
 馬鹿ヅキじゃねえか、ぃょぅ。」
 ギコえもんが半分キレかけている。
 そろそろパンクといった所か。
「しかたないわね、次の半荘を…」
 ふさしぃがそう言いかけたところへ、
 いきなり小耳モナーが割り込んで口を挟んだ。
「さっきからじっとしてたら、皆酷いモナーーー!
 モナばかり仲間外れにして、モナも麻雀打ちたいモナー!!」
 後ろで観戦してばかりでは、さすがに退屈だったようだ。
 というか、さっきまでその存在をすっかりと忘れてしまっていた。
(ごめんょぅ。小耳モナー。)
 心の中で、小耳モナーに謝罪した。

「それじゃあ、ぃょぅと交替するょぅ。」
 私は小耳モナーに席を譲った。
 これ以上勝っては、命を狙われる可能性がある。
「わーい。勝って勝って勝ちまくるモナ〜〜!」
 小耳モナーは無邪気にはしゃいだ。

「ロン!跳ね満だゴルァ!!」
「あわわわわわわわわわわわわわわわ。」

「御無礼ロンです。
 親の倍満。トビましたね。」
「うやうやうやうやうやうやうやうやうやうやうや。」

 小耳モナーはあっという間にトバされた。
 何て弱いのだ。

「も、もう止めるモナー!!」
 小耳モナーが叫んだ。
 しかし、ふさしぃが小耳モナーを睨みつけて、
 抜けるのを許さない。

「さあ、どうしたの?
 まだ一度トバされただけよ。
 かかって来なさい。」
 ふさしぃが凄む。
「リーチ棒を出しなさい。
 鳴いて流れを変化させて。
 大物手を構築して立ち上がるのよ。
 役満をツモって反撃なさい。
 さあ夜はこれからよ。
 お楽しみはこれからよ。
 早く!
 早く早く!
 早く早く早く!」

「ひ、ひいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」
 小耳モナーが憐れな悲鳴を上げた。
 お終いだ。
 彼はもうお終いだ。
 彼は一騎当千の猛者が集う戦場に丸腰のまま放り出された
 赤子も同然。
 彼の末路はもはや唯一つ。
 搾取されつくし、
 無様に屍をそこにさらすのみ。
 私は小耳モナーに黙祷を捧げた。

719ブック:2004/01/12(月) 00:59


     ・    ・    ・


「アサピーが戻らなかったそうだな、梅おにぎり。」
 男が梅おにぎりに語りかけた。
「申し訳ございません…
 この責任は、必ず…」
 梅おにぎりは深々と頭を下げた。
「いや、いいんだ。
 狼煙は仔細なく上がったのだから。
 何ら問題は無い。」
 男は満足そうに言った。
「しかし…やはり動きましたか、SSSが。」
 梅おにぎりは顔を強ばらせた。
「構わぬ。
 むしろ歓迎したい位だ。
 邪魔者は多ければ多いほど面白い…」
 男が心底愉快そうに呟いた。
「さて…彼らはどこまで私を楽しませてくれるのかな?」


   TO BE CONTINUED…

720N2(ギコ屋):2004/01/12(月) 13:40

   /;二ヽ
   {::/;;;;;;;}:}   私をズラして掲載し、10日以上も放置するとは              ∩_∩     ドウモスミマセン
  /::::::ソ::::)     いい度胸だな、N2…                           |___|F ヾ  スミマセンスミマセン
  |:::::ノ^ヽ::ヽ                                             (´Д`;)、      コノトオリデス
  ノ;;;/UU;;);;;;;ゝ.                                              ノノZ乙

721N2(ギコ屋):2004/01/12(月) 13:41

シャイタマ小僧がやって来る! 後編

「ナンド ヤッタッテ 無駄ナンダゼ! カカカ!!」

…やはり正攻法では何度やっても駄目だった。
どんなにどんなに気を付けても、こいつはどこかでオレの隙を見付けては、
オレをこの「50」へと帰してしまう。

「オ前ハ 一生 俺ノ本体ヲ 見付ケラレナイバカリカ ココデ 不様ニモ 野垂レ死ニスルニ 決マッテンダ!
イイ加減 諦メテ ココデ 餓死デモスンノヲ 大人シク 待ッテヤガレヨ!!
俺様ダッテ 暇ジャネーンダヨ!!」

時計はもう11時を回った。
皆がオレのことを探しているかも知れないが、そんなのを待ってはいられない。
…ならば。


「・・・何シテンダ テメーハ? ヤッパリ トチ狂ッタカ?」
じっと時計を見つめるオレに、奴はまた難癖を付け始めた。
「…お前、オレがただの馬鹿だと思ってるのか?」
「ソリャオメー、 始メッカラ 分カリ切ッテイルジャ・・・」
酷い話だ。
ま、たかが遠隔操作型スタンドごときの考えにゃオレの策は見破れないか。

「じゃあお前は、オレが何も分からない迷子同然とでも思ってるのか?」
奴は当然の如く即答した。
「アッタリメージャネーカ! ンナモン サッキノ 馬鹿カドウカノ 質問ヨリモ 明ラカ・・・」
オレは続ける。
「今日は晴天…綺麗な秋晴れが広がっている。空にはさんさんと輝く太陽の光を遮るものは何も無い」
「・・・?」
何が何だか分かっていないらしい。
敵にさえも親切なオレは更に続けて差し上げる。
「そこの電柱を見ると、ここの番地は『南町』となっている…。オレ達が運動会をしていた運動場は町内の中央に位置しているから、
つまり大体北の方角に進めば帰れるということだ。
…お前、太陽とアナログ時計で方角を知る方法を知らないのか?」

「・・・???」
これでも分からないようだ。
本体はよっぽどの無知なのか。
敵にさえも寛大なるオレはその広き御心で丁寧に御説明なさる。
「確か太陽は一時間に約15度移動するはずだ。180÷12だからな。
そして時計の短針は一時間に360÷12…つまり30度動く。
と言うことは、時計の短針を太陽に向けると、そこと12時の方向の丁度真ん中が南ってことになる。
ってことは、その反対のこっちに直進すれば運動場に着けるってことさ!」
流石オレ。ナイス説明だ。
無駄に知識を披露するギコ兄とは訳が違う。

722N2(ギコ屋):2004/01/12(月) 13:42

「・・・オメー、 ヤッパリ 馬鹿ダロ?」
って何でさ!!
「コノ 一本道ガ ドッチノ方角ニ 延ビテッカ 分カンネーノカ!? オメーノ目ニハ ココニ広ガル ブロック塀ガ 見エナイノカ!?」
…まあ、確かにごもっともだ。
「ソレデモ テメーガ 突ッ走ルッテンナラヨー・・・、 俺ハ容赦無ク テメーヲ コノ塀ニ 衝突サセテ 一気ニ アノ世ヘ 送ッテヤルゼ!!」
「…好きにしてな」

こいつの警告など関係ない。
無視して俺は塀向けて走り出す。
「餓死ガ嫌デ 激突死ヲ選ブノカ・・・ ソレナラ 手間ガ 掛カラネーデ 丁度イイゼ!!
ホラヨ! コンクリニ 血ノ海ヲ 作ッテナ!!」
予想通り、加速が始まる。
だが、始めっからこんなものは気にしていない。

「…さっきっから思ってたんだけどさ〜」
「アア!?」
「お前、オレのスタンドの事をちゃんと予習したのか?」
「・・・ンナモン スル訳ネーダロ! ソンナ事シナクテモ テメーニャ 楽勝ダカラヨ・・・」
どうやらこいつ、戦闘者としては三流らしいな。
オレが言えた話じゃないけど。

「『クリアランス・セール』!!」
壁激突寸前でスタンドのラッシュを打ち込む。
同時に細切れ状になって楽に通り抜けられるようになったコンクリート。

庭の植え込みの木も分解する。
木はそのまま倒れて屋根瓦を破壊したが…、ま、不可抗力と言う事で。

民家の壁もそのまま分解。
さっきから完全には分解していないので、こういう硬い物はくぐる時に身体に当たって痛いが、
そんな悠長にやってる暇も無いので、これは仕方ないか。

食堂で昼ご飯をとっている一家。
ちょっと痛いかも知れないが、食事ごと巻き添えにテーブルも、そして家族も分解。
上半身だけ宙に浮くおじいちゃんの驚いた顔がシュールだ。

「・・・テメー、 ヤッパリ トチ狂ッタダロ!? コンナ 突然ニ 民間人ヲ 巻キ添エニシヤガルナンテヨー!!」
こいつにだけは、そんな事は言われたくない。
オレも流石に突然偽善ぶる態度は頭に来た。
「だったらよ…、始めっからこんなざけた真似すんじゃねえ!クラァ!!」
本当は、オレだってこんな事したくはない。
出来ることなら、普通に道を通って運動場まで帰りたさ。
…けど、こいつがそれを許さない。
こいつはどんな手を使ってでもオレを帰さないつもりだ。
…たとえ無関係な人を殺してでも。
ならオレは、必要最小限の損害に留めながら、市民の皆さんに迷惑をかけてでも帰らなくてはならない。

723N2(ギコ屋):2004/01/12(月) 13:43

「・・・ウザッテー野郎ダ、 コウナッタラ 意地デモ 苦シミヲ伴ウ 死ニ方ヲ サセテヤル!」
次の瞬間、地を蹴ったオレの足が浮いた。
瞬間的にオレの脚力を強化し、大ジャンプさせたのか。
その先には、電線。
無論、分解する。
何世帯停電になるかな…。
そのまま何事も無く着地。まだ止まらない。

「・・・ナラヨー、 今度ハ コレデ ドウダッ!!」
車道に平行に近い角度で突入したオレに、小刻みに暴走をオン・オフにする。
突入してくる車・車・車。
こうなったらオレもヤケだ。
「クラクラクラクラクラクラクラクラァッ!!」
次から次へとやって来る車を片っ端から分解。
…高級車とか、ボンネットが凹んでいたりしなきゃいいが。

「・・・チクショー、 コイツ、 正気ジャネエ・・・」
正気じゃないのはどっちだ。
…と、遠くにあの運動場が見えてくる。
もう一息だ!!





「遅レタゼ! 呼ンダカ!?」





明らかに今までのものとは違う、しかしどこか似ている機械的なガラガラ声。
そこには、『暴走スタンド』が2体存在していた。

「畜生! オセーンダヨ コノノロマ! オ陰デ 今ヤバイトコマデ 行ッチマッタジャネーカ!!」
「悪リー悪リー、 チト オメーガ ドコニインノカ 分カンナクッテヨ・・・ マ、 来タダケ 有リ難イト 思イナ!!」

…これは一体。
何故同じスタンドが2体も…!?

「オイ! テメーハ 俺ノコトヲ 戦闘ニ関シテ ド素人ト 思ッタカモ知レネーガ、 ソリャ テメ-ノ方ダゼ!!」
「似通ッタ 信条トカ思想トカ・・・ ソウイウモンヲ 共通シテ 持ッテイル奴ラニャ 同ジスタンドガ 発現スルコトダッテ アンダヨ!
ソウ! 俺達ミタイニナ!」

…なんて骨体!!
確かにそう言われれば分からないでもないが、でもまさかこいつが2体もいるなんて考えもしなかった。
じゃあ、こいつまで協力したら……オレ、一体どうなるんだ?

724N2(ギコ屋):2004/01/12(月) 13:43

「コウナンダヨ! ホラッ!」
激!加速!!
「んなああああああああああああああああ!!!!」
加速度がさっきまでの比ではない!
こりゃ時速100キロくらい出てるんじゃないのか!?
ってか冷静にんなこと考えていられん!!

運動場がッ!目前にッ!
な、何としても止まらなくては!!
おおーっと、目の前に再び『50』が!!
こうなったら、意地でも飛びついて止まってやる!!
「クラァッ!!」



ボキッ……



折れた…。

「カーカカカ! 暴走シテンノハ オメーノ足ダケジャネエ! 握力モ何モカモ、全身ナンダヨ!!」
奴の言葉さえももう耳に入らない!!
ってかまだ止まらん!

725N2(ギコ屋):2004/01/12(月) 13:43

『さあこの運動会の目玉競技、団体リレーがいよいよスタートです。
………始まりました、スタートしてすぐ、赤がダッシュを決めて周りとの差を付けた!
負けじと負う、青・黄色・緑・白!
…っとお、ここで何者かがこの会場に乱入してきた!!
何だあれは!?何だあれは!?
あれは……ギコ屋だァ――――ッ!!
ってか今までどこほっつき歩いてたんだ!皆心配したんだぞ!
それでもギコ屋、先程から更にスピードアップして走る!走る!
そしてコースに乱入!おおーっと、その先には白の選手が!
危ない白!よけろ白!
しかし……蹴散らされたァ―――ッ!!
ギコ屋止まらない!ああ緑も!黄色も!青さえも!!
残ったのは赤!頑張れ赤!逃げ切れ赤!
しかし……吹っ飛ばされたァ―――!!
ギコ屋まだ走る!ギコ屋まだ走る!
そしてコーナーを曲がらず、まだ直進!そっちにはまたフェンスがあるぞ!
ギコ屋やっぱり止まらない!やっぱり止まらない!
そしてフェンスを…
今度は飛び越えたァ―――ッ!!
ってか高すぎだ!遠すぎだ!!
走り高跳びも幅跳びも世界記録を更新する気かギコ屋!
お前は北京原人かァ―――ッ!?』
『…選手の皆さん、んなとこで突っ伏してないでとっとと競技を再開して下さい』

726N2(ギコ屋):2004/01/12(月) 13:44

…もう何キロ運動場から離れたんだ!?
依然止まる気配すらしない!ってか疲れない!!
もう勘弁してくれよォ―――ッ!

「マダダ、終ワランヨ」
「ソロソロ 時間ナンダガナ・・・」



「ヘイ! ヤット見付ケタゼ! オメーラ シッカリ ヤッテンノカ?」
…三体目?
「イイ加減ニシロ! テメー 遅刻シスギナンダヨ、 コノウスラボケナスガ!!」
「マア待テ、文句・苦情ハ後ニシロ。 マズハ アノ『矢』ヲ持ツオ方カラ 真ッ先ニ 始末スルヨウ 言ワレタ コノギコ屋ヲ ヌッコロス・・・ダロ?」

『矢』を持つお方…だって!?
「おいお前ら、あの男と何の関係があるんだ!」
だがオレの質問を聞いても、こいつらは何も答えようとはしない。
「死ニユク テメーニャ、 言ウ価値ナシ!」
「マサシク『逝ッテヨシ』ダナ!」
「カカカカカ!」
くそっ、やはりあいつの部下か…。

「ンジャ ソロソロ イクカヨ・・・」
「俺達ノ MAX暴走ノ 恐ロシサ・・・」
「トクト 味ワウンダナ! 冥土ノ土産ニ 喰ラットケ!!」

『Hail to SAITAMA!!』

悶絶。
苦悩。
思考停止。
無我境地突入。

野原。
河川敷。
鉄道。
彼方物体発見。
…新幹線?

…嫌予感。

加速。
加速。
加速。
音速突入。
停止兆無。

走・走・走・走・走。
線路向突進。
予感成現実。
無策。無術。無勝目。

………危険!!!!


「・・・ソロソロ 準備スンゾ!」
「『セーノ』デ 一気ニ イクカラナ!」
「イクゾ・・・・・・・・・セーノッ!!」



一気に解放される肉体。
新幹線は今まさにオレの肉体を木っ端微塵にしようとしている。
「クリアランス・セール」で攻撃を仕掛けたが、もう間に合わない。
最後に耳に入ったのは、奴らの勝ち誇ったような高笑い声であった。

727N2(ギコ屋):2004/01/12(月) 13:45

「ヤッタッ!」
「勝ッタッ!!」
「シトメタッ!!」
三者はお互いの顔を見合わせながら勝利の余韻に浸っていた。
「遂ニ 俺達モ 人ヲ殺セタゼ、カカカカカ!!」
「『山椒ハ 小粒デモ ピリリト辛イ』ッテノハヨー 俺達ノタメニアル 言葉ジャネエカ? カカカカカ!!」
だがうかれる二者はじきにある異変に気付いた。
1人の様子がおかしい。
線路を見つめたまま、じっと固まっている。
「オイ、オメーモ ナンカ言エヨ!!」
「ソウダゼ! ・・・マサカ 人殺シノ道ヲ 歩ミ始メタコトガ ソンナニ嫌ダトカ 言イテエノカ!? ダトシタラ ブッ飛バスゾ!」
しかし、沈黙の理由はそこにはなかった。
「・・・ギコ屋ノ 死体ハ ドコダ?」
完全に自分達が勝ったものだと思っていた残りの二人も、事態の異常性に不安を抱き始めた。
「待テ、 奴ノ能力ハ 『分解』ダッタハズ! モシカシタラヨ、 ソレデ ヤリスゴシタトカ・・・」
1人の言葉に、残りの者も段々と不安を感じ始めた。
「ソウダゼ、奴ダッタラ 新幹線ガ 通ッテル間ニ 分解ヲ 解除シテ ソノママ 逃ゲルコトダッテ 出来ルハズダ!」
「・・・ドウスンダヨ、ソレジャ?」
答えは1つしかなかった。

擬古谷第一小学校、校庭。
そこには3人の少年が、何かを待つようにして木陰に腰掛けていた。
ふと、彼らの目に期待していたものがやって来る。
「ヤッテ来タミタイダ!」
上空から校庭向け降下するスタンド達。
3人はそこへと走り出す。

少年達は、嬉しそうに彼らのスタンドに質問した。
「ソレデ? チャント ギコ屋ハ シトメラレタノ?」
だが、スタンドの表情は暗い。
「・・・ソレガマスター、 作戦通リ 奴ヲ 新幹線ノ目前マデ 誘導ハシタンデスワ。
トコロガドッコイ、 ソレカラ 奴ノ姿ガ 消エチマイマシテ、 ヒョットシタラ ソノママ 新幹線ニ乗ッテ 逃ゲタンジャナイカトイウ 結論ニ至ッテ・・・
ソレデ 指示ヲ 仰ギニ来タンスワ」
報告を受け、1人の少年は激怒した。
「何ダト!? コノ、 役立タズメ! オ前達ハ 何ノタメニ ソンナ能力ヲ 持ッテルト 思ッテルンダ!」
スタンド達が一斉に下を向く。
すかさず、宙に浮く少年が右側の少年の怒りを抑えた。
「マアマア待チナヨ。 ・・・ジャアオ前達ハ 引キ続キギコ屋ヲ ソノ場所ヲ中心ニシテ 探スコト! 分カッタ?」
その言葉を聞き、スタンド達は少し元気を取り戻したようであった。

「落チ着キナヨ、ミギ。 マダ 始マッタ バカリジャナイカ。 イズレ ギコ屋モ 再ビコノ町ニ 姿ヲ見セルサ。
ソノ時ニ モウ一度 アイツヲ 殺シナオセバイイ・・・ダロ?」
宙に浮く少年は左側を向く少年を見た。
その少年も右側の少年に語り出す。
「ソウダヨ、 アンマリ 短気ナノハ スタンド使イニトッテハ 不利ダッテ、 アノオジチャンモ 言ッテタダロ?
大丈夫、 次ハ絶対ニ・・・」
だが、右側の少年の怒りは収まらない。
そして我慢ならなくなったのか、突然火山の噴火の如く怒鳴り始めた。
「・・・オ前達ハ ノー天気スギルンダ! イイカ、 僕達ハ 暗殺ニ 失敗シタンダゾ!?
下手スレバ 僕達ダッテ 始末サレルカモ 知レナインダ! ・・・ソレナノニ オ前達ハ マダアイツラヲ 擁護スルノカ!!
アソコデ 命令ヲ受ケテモ ボサット 突ッ立ッテルアイツラヲ!!」
2人が右側の少年が指差す方を見ると、なるほど3体のスタンドがまだそこにいた。
「オイ、 オ前達、 命令ヲ受ケニ 来タンダロ? 早ク行カナイト、 マタミギガ キレチャウゾ」
だがスタンド達は動かない。
…いや、むしろ反応しない。動けない。

「オイッ、 ドウシタンダ 一体・・・」
左側の少年が近寄ろうとすると、スタンド達の肉体は突然異様な変形を始めた。
そして、その変形が限界まで達した時、スタンド達は爆竹の如く炸裂し―――
消滅する幽体の中から実体の『破片』が飛び出し、集合し―――
そしてそれは、ギコ屋になった。

728N2(ギコ屋):2004/01/12(月) 13:46

「・・・!!!!」
「オマエハッ! 逃ゲタハズノッ!」
お約束通り、オレは親指を立てた右手を振りながら「チッ♪ チッ♪」と口を鳴らす。
「ギコ屋!!」

「YES I AM!」

「全く、ホント人をなめた真似をしてくれたな、お前達はァ―――ッ!
さんざ人を挑発した挙句、オレを新幹線に衝突させようとするなんて、子供の策とは思えないぞ…。
まあ、オレが急にいなくなったことで慌てたスタンド達が本体の居場所まで帰らずあそこに居座ってたら
オレの分解も時間切れになってただろうけど、ここはオレの作戦勝ちで決まりってところか」
やはり子供、いや子供でなくてもこうなったら動揺しない訳がない。
全身は痙攣し、中には腰を抜かした奴までいる。
「・・・デ、デモ! オ前ノ能力ハ 『分解』ノハズ! ナラ ドウヤッテ・・・!!」
釈然としないのか、子供達が問う。
本当はここまで馬鹿にされたら何も答えず問答無用で分解したいところだが、
ここはオレの聖母にも匹敵する海よりも深き慈愛でその答えを教えて進ぜよう。
「今まではただ分解して元に戻る…それだけだった。
でもオレは考えたんだ、分解して原子レベルまで小さくすれば、その間は形は自由に出来るんじゃないかって…」
こいつらはまたまた分かっていないらしい。
子供だからか、これじゃあスタンドの理解力が足らなかったのも無理はない。
                  ・ ・
「つまり分解中にオレの体を紙状にして3つに分け、そのスタンドの中に潜伏した。
これでかさ張らずに楽々入っていられるって訳さ!」

「・・・ア、ソウ」
って何じゃその冷めた返事は!
…まあ、それはともかく。
「いずれにせよこの『鬼ごっこ』、オレの勝ちで決まりらしいな。さ!諦めろ」
オレが近寄ると、少年達は観念したのか立ち上がってオレに手を差し伸べた。
そしてオレが捕まえようとすると…。
「馬鹿ガ! 最後ノ最後ニ 油断シタナ、 コノオヤジ!!」
お、オヤジだって!?失礼な、オレはそんなに歳食ってないぞ!
「サッキ スタンドガ 破裂シテモ コッチガ 無事ダッタノヲ 忘レタノカ?」
あ、そう言えば。
「シカモ 僕達ノ スタンドハ 『自動操縦型』! パワーナンゾ イクラデモ 持ッテルンダ!
更ニ 僕達ノ場合ハ、 破壊サレタクライジャ 死ニハシナイノサ!!」
おいおいおい、それじゃ…。

「自分達ノ身体ヲ『暴走』サセルッ!」
「アバヨ、駄目オヤジ!!」
「次ハ 絶対ニ オ前ヲ 仕留メテヤル! 覚悟シテイロ!!」

…言ったはずだ。
オレの勝ちは決まったはずだと…。
「お前達、やっぱり予習足りないだろ?」
理由が分からず、当惑する子供達の顔。
「ナ・・・何デ!!」
別にもう慈悲も慈愛も関係ない。
最後はただ負けゆく奴らに最後の精神的追い討ちを掛けるためだけだ。
「こんな至近距離で、たとえ暴走しようが『クリアランス・セール』のスピードから逃れられるか、ってこと」

729N2(ギコ屋):2004/01/12(月) 13:46

「ハッピー・マ『クラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラァ―――ッ!!』」
ラッシュを食らって吹っ飛んでいく子供達。
もう彼らは逃げられない。
それにも気付かず起き上がろうとする3人。
「見ロ、都合良ク 奴カラ 離レラレタゾ!」
「今ノ内ダ! 逃ゲロ!!」
…本当は完膚無きまで叩きのめしたかったんだが、やっぱり相手が子供じゃあな…。
それにあくまでこれは『鬼ごっこ』。最後はやはり捕まえて締めなくてはならない。
「だから手加減しつつ手足だけを狙って叩いたんだ…寛大な慈悲に感謝しろよ。
『Crumble(解体されてな)』」

たちまち達磨と化す少年達。
最早逃げる術は皆無。
「そして…つーかまーえたー!!
あー終わった終わった、こんなハードな鬼ごっこは生まれて初めてだぞ!!」
少年達にはオレの言葉は聞こえていなかった。
完全に負けを認めた表情。
しかも今度は諦めがついているようだ。

3人の身体から飛び出す幽霊。
…やはり、相棒同様悪霊によって操られていたのか。
道理で凶悪すぎると思った。
でも、どこかその表情が清々しいのは気のせいだろうか。

「今回ハ 完敗ダ!」
「チックショー、 勝ッタト 思ッタノニヨー・・・」
「オイ、 今度 マタ 再戦スルゾ!!」
オレには最後に彼らの声が聞こえたような気がした。
だが…誰がやるか!!



「しかし困ったな…、問題はこの子達を家まで送らなきゃいけないことだ。
『クリアランス・セール』で果たして運び切れるかどうか…。
親はどこのどいつなんだよ、全く…!

…てかそう言えば…、
ここ…どこ?」

  /└────────┬┐
. <   To Be Continued... | |
  \┌────────┴┘

730N2(ギコ屋):2004/01/12(月) 14:06
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃           スタンド名:ハッピー・マンデーズ            ┃
┃               本体名:シャイタマー                 .┃
┣━━━━━━━━┳━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━┫
┃  破壊力 -E   ...┃   スピード -A   ┃  射程距離 -A   ...┃
┣━━━━━━━━╋━━━━━━━━━╋━━━━━━━━━┫
┃  持続力 -A    .┃  精密動作性 -D  .┃   成長性 -B  ......┃
┣━━━━━━━━┻━━━━━━━━━┻━━━━━━━━━┫
┃取り憑いた相手の肉体を『暴走』させる自動操縦型スタンド。      ┃
┃本体は3人のシャイタマーで、それぞれが同じ能力のスタンドを持ち  ...┃
┃(厳密に言うと、ヴィジョンについている顔はそれぞれの本体の  ....┃
┃顔であるので、全く同じスタンドではないが)、               .┃
┃取り憑いた数に比例して暴走の度合いも変化する。         ..┃
┃暴走している者は自分の運動を自分で制御出来なくなるが、    .┃
┃その間自身の体力を消耗することは一切無く、全てスタンドの     .┃
┃パワーによって運動エネルギーは賄われる。               .┃
┃ちなみに本体にも憑依可能であり、またスタンドが破壊されても   .┃
┃本体にはダメージは無く、すぐに再生可能。               ..┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

731丸耳作者:2004/01/12(月) 21:28
乙と言わせて頂こうッ。

732アヒャ作者:2004/01/12(月) 22:04
こちらからも乙!
N2さんの作品を参考に自分もがんばろう。

733302:2004/01/12(月) 22:16
N2さん乙です!

今夜辺り、やっと第2話できそうです。

734新手のスタンド使い:2004/01/12(月) 23:08
>>733
ガンガレー

735N2:2004/01/13(火) 00:24
>>733
頑張ってください。オイラも出来る限りガンガリマス。

皆様もどうもです。

736302:2004/01/13(火) 00:59
「スロウテンポ・ウォー」

イソギンチャクと最後の秒読み・2


「まったく、検査入院やなんてツイとらんなぁ〜」
「悲観すなや、のーちゃん。お陰様で休みが出来たんやし」

ここは、某大学病院の病室。ウチとニダやんが高熱で運び込まれて1日過ぎましてん。
不思議な事に検査した結果…「高熱」はあっても「怪我」は無い…っちゅう事ですねん。

…おかしな話やで。ウチらは確かに、あの黒マントの八頭身に「矢」で刺されたはずや…
それなのに、怪我は全く無い…でも、高熱はある…それに、何や…誰かに見られてる気がするんやわ。

「のーちゃーん。」
「ん?」
「そっちに新聞あるやん?ちょっと、取ったって?」

さっきまで読んでた新聞を持って、ウチはニダやんに渡す為にカーテンを

「これで…ええ……よ、な?」

「ああ…あり……がと…さん…」

開けた瞬間……ウチらは絶句しましてん……

737302:2004/01/13(火) 00:59
『………』

(ゴゴゴゴゴゴゴ……)

ニダやんの後ろに…何や、変な男がおったんです。
両腕が、ツタのようなのが何十本もある…変な香具師が……
ニダやんも、ウチも…鳩が豆鉄砲を食らった顔してましたわ……

そんで

「「何やそれぇぇぇ!!!」」

お互い指差しあって絶叫して

「「はぁ!?何をゆーてん…」」

お互い振り返って

「「何やこれぇぇぇぇ!!!」」

お互い、後ろを見てまた絶叫しましてん…

『………』

ニダやんだけやない、ウチにもその「変なの」がおったんですわ…
ウチのは、妙にメカニカルで…額に「10」とデジタル数字があったのを、覚えてますわ。


「……病室で騒ぐのは、感心しないな」

低い声がしましたわ。ごく、最近聞いた声ですわ……

「あ、エライスイマセンなぁ、ホンマ!いやいや、ついビックリってコラァ!!」

点滴を引き千切り黒マントの男に近寄っていきましてん。

「おうおうおう!!あんさん、よーこんなとこに顔を出せたもんやな!!」
「うるさいと言っている。…やはり、お前達は“素質”があったか」
「ここで会ったが100年目やでぇぇ―――!!謝罪とぉ!!賠償をぉ!!要k(ry」

ニダやんが五月蝿いので、スリーパーをキュッとキメて…ウチは黒マントの男…
いや、「八頭身フーン」に尋ねましてん。

「…素質?この……後ろの人の事か?」
「ああ、それはスタンド能力。…矢で射抜かれた者に、発現する具現化された精神の像だ。」
「……精神の…像?」
「俺では説明が下手でな…まぁ、座れ。それと、そこのエラ張った香具師を起せ。」

738302:2004/01/13(火) 01:00
言われるがままに、ウチは八頭身フーンのスタンドや色んな事を説明してもらいましてん…

今、矢は二本ある事……スタンドを悪用させ、日本を混沌に落とそうとしている組織「ZERO」が居る事…
そして、ウチらを対「ZERO」組織にスカウトに来た事…

「……正直、ウチらがアンタらを信用するだけの“証拠”があれへん」
「…ワイもや。確かに!ワイらにそのスタンドっちゅーのが発現したのは認めるわ。」

いきなりの事でパニックになりそうやった頭を、無理矢理働かせて出た答えを告げましたわ。
八頭身フーンは…微動だに、せーへんかったんです。

「……マズイな。屋上に移動するぞ。」
「「ハァ?」」
「…俺のスタンドが鳴いている…“ZERO”だ!ZEROのスタンド使いが、お前達を狙っているっ!!」


……。


「「何でやねーんっ!!」」

二人でツッコんでもフーンは意に介さず…
そのまま、抱き上げられてウチらは屋上へと逃げ込んだんですわ……

739302:2004/01/13(火) 01:01
「……な、何でウチらがいきなり襲われなあかんねん!」
「ZEROの目的は“スタンド悪用での秩序破壊”だ。お前らを強制的にスカウトに来た…と言った所か。」
「だ、だ、だったらぁ!!こんな狭いとこに逃げんでもええやんかぁ!!」
「…お前達に、スタンドの使い方を教えるためだ。もし、我々の組織に入らずとも…いつかは襲われる。
ならば、早い内にスタンドを使いこなせるようにならなければ…待っているのは死だ。」

屋上の扉が、砕ける音が会話を遮りましてん。
其処には、確実に…フーンが言う所の「スタンド使い」がおったんですわ……

「…フーンよぉ…ゲヒュ…舐めた真似してくれんじゃんよぉ…ゲヒュヒュ…俺らの新人掻っ攫う気かぁ?」

気色悪い笑いを浮かべた男が…一歩ずつ、近寄って来たんですわ…。
ウチは、ただの漫才師見習いやけど…わかりましてん。…こいつは、最っ低最悪のクズいうんが…。

「……丸モラか。末端とは言えスタンド使いがわざわざ……必死だなw」
「な、何を挑発してんねん!!うわっ!来るぅ!!あんさんのスタンドで何とかしてーや!!」
「 断 る 」
「はぁ!?」
「お前達だけでやってみろ。集中し、怖れず…スタンドと心を通わせれば、出来るっ!!」
「何じゃそりゃあ!!」

ニダやんの抗議にも、判定は覆らず…ウチは、ニダやんの肩に手を置いて

「……やるで、ニダやん。ここで殺されたら、M1に出る夢も断たれてまうわ。…集中するんや…」
「……あーもう!!わーったわ!!浪花のど根性、見せたるわぁぁ!!」

「…ゲーヒュッヒュ…!!なりたてのスタンド使い二人ぃ?俺様の“狂気”に勝てるかぁ?!」

「………(そうか……お前の名前はそういうんか……)………」
「………(頼むで…ワイはのーちゃんと、未来を生きたいんや…!!)………」

「……!…出るかっ!」


「うおおお!!いくでぇ!!シー・アネモネぇ!!」
「…ファイナル・カウント・ダウンッ!!……さぁ、ウチらが相手やぁ!!」

<To Be Continued>

740N2:2004/01/13(火) 18:05
乙ですわ。関西弁 (・∀・)イイ!!

741新手のスタンド使い:2004/01/13(火) 23:40

「―― モナーの愉快な冒険 ――   ぼくの名は1さん・その3」



          @          @          @



 フサギコは、机の上に広げた世界地図を眺めていた。
 雨が窓を叩いて、煩雑な音を立てる。
「国防の基本方針…」
 フサギコは呟いた。
 ここは、彼の自宅である。
 今日は、一歩も家を出ていない。
 ASA… あの恥知らずなスタンド使いの集団が、洋上に艦隊を展開したという。
「直接及び間接の侵略を未然に防止…」
 太平洋の真ん中にチェックを入れる。
 雨の勢いは増す一方だ。

 先日、防衛庁長官からの電話があった。
 ASAとは既に密約済みだという。
「ちゃんと、話はついている」
 長官はそう言っていた。
 …何が、話はついているだ。
 政治家ごときがしゃしゃり出てくるな…!

「防衛戦争の定義は…?」
 フサギコは、東京の位置にバツ印を付ける。
「専守防衛…!」
 ペンを床に投げ捨てるフサギコ。

「この国に武器を持って踏み込むという事が… どういう事が分かっているな、ASA!」
 フサギコは叫ぶと、電話の受話器を持ち上げた。
 そして、素早くボタンを押す。
「もしもし、フサギコだ。極秘裏に、陸上幕僚長・海上幕僚長・航空幕僚長の3人を私の家に呼んでくれ。
 内局には勘付かれるな…」



          @          @          @


 
「おはようなのです!」
「おはよう、簞ちゃん」

 うん、快適な目覚め。
 やっぱり、女の子に起こしてもらうというのは新鮮だ。
 僕は、布団から体を起こした。
 美味そうな朝食の匂いがする。
 まるで、新婚みたいだな…

 流石にいつまでも畳には寝てられないので、昨日新しい布団を買った。
 簞ちゃん用の布団である。
 つまり、簞ちゃんはしばらく僕の家で暮らすという事だ。
 乗りかかった船というか、何とやらだ。

742新手のスタンド使い:2004/01/13(火) 23:40

 簞ちゃんは、もうすでに制服に着替えている。
 今日から、一緒に学校に通うのだ。
 …って、何の為?
 この町には人を探しに来たんだよな。
 もしかして、僕と一緒に学校に行きたいとか?

「簞ちゃん、何しに学校に通うの?」
 僕は、テーブルの向かいに座って朝食を食べている簞ちゃんに話しかけた。
「聞いた話なのですが… 私が探している人と関係の深い人が、おにーさんの学校に通っているらしいのです。
 だから、その人に会って話を聞くのです」
「ホントにそれだけ…?」
 僕は、簞ちゃんの顔をじっと見た。
「おにーさんに隠し事はできないのです…
 私が探している『異端者』のターゲットが、学校に潜んでいるという話なのです。
 だから、学校を重点的に調べてみたいのです」
「その為に、わざわざ転校か…」
 代行者って大変な職業なんだな。
 簞ちゃんは笑った。
「催眠をちゃんと習っておけば、転校の手続きとかをしなくてもよかったのです…」
「催眠って、あなたはだんだん眠くなる…ってやつ?」
「眠らせちゃ駄目なのです。暗示を与えて、記憶をなくしたりすり替えたりするのです。
 代行者になる人は、みんなやり方を習っているのですが、私は苦手なのです。
 …と言うか、実際に催眠が使える人は代行者の中にもほとんどいないのです」
「みんな習ってるって…学校みたいに?」
 僕は訊ねた。
「代行者になるための厳しいカリキュラムがあって、任務を遂行する上で必要となる技術を叩き込まれるのです。
 催眠もその一つで、どこかに潜入する時などに、覚えておくと便利なのです。
 代行者の中には、この催眠技術をスタンド能力にまで昇華させた人もいるのです」
「スタンドに昇華って?」
 簞ちゃんは言った。
「スタンド能力は、その人の嗜好や性格が反映される事が多いのです。
 …おにーさんのスタンドの能力が気になるのです」

 …そう。僕には、簞ちゃんのスタンドが見えてしまった。
 実は、スタンドはスタンド使いにしか見えないのだという。
 だから、簞ちゃんのスタンドが見えた以上、僕もスタンド使いだったという事になる。
 しかし、僕はそんなもの出せない。
 どうやら簞ちゃんの話では、僕は潜在的なスタンド使いというやつで、まだヴィジョンは形成できないらしい。
 『自分の身を守ろうとする』とか『怒りをぶつける』という気持ちになればいいらしいが…

「スタンド…ねぇ。便利な能力だったらいいな…」
 僕は呟いた。
 あの8頭身を何とかできる能力だったらいいんだけどなぁ。

 そうだ、一つ注意しておかないと…
「簞ちゃん、もしかして、学校に武器を持っていくの?」
 簞ちゃんは答えた。
「持っていくのです。でも、武器には見えないので大丈夫なのです」
 そりゃよかった。
 銃とか剣とかを学校に持ち込まれたら、エラい騒ぎになるだろう。
 でも、少し興味が湧いた。
 武器には見えない武器ってどんなんだ?
「簞ちゃん、その武器っての見せてほしいな…」
「どうぞなのです」
 簞ちゃんは、メジャーのような物を僕に手渡した。
「わっ、触って危なくない?」
「波紋を流していないから、大丈夫なのです」
「メジャーみたいだね…」
 僕は呟いた。
 掌に収まるくらいの四角いケースに、引っ張れば伸びるワイヤーが収納されている。
 真ん中の突起を押すと、たちまちワイヤーはケースの中に戻っていった。
「構造は、ほとんどメジャーと同じなのです」
 簞ちゃんは言った。
 メジャーと違う点は、そのワイヤーが5本もついているという事である。
「私は非力だから、剣は重くて持てないのです」
 簞ちゃんは恥ずかしそうに言った。
 なるほど、これなら軽そうだ。
 もう一つ、同じ物を取り出す簞ちゃん。
「これを両手に持って、ワイヤーの部分に波紋を流すのです。波紋の収束作用を利用しますので、スパスパ切れるのです。
 でも、あまり使いたくはないのです…」
 そうだろうなぁ。
 簞ちゃんは、他者を傷付けるのがよほど嫌らしい。

 僕は朝食を食べ終えた。
 そろそろ登校の時間だな。
「私は、最初に職員室に行かないといけないので、少し遅めに出るのです」
 簞ちゃんは洗い物を片付けながら言った。
 なんだ、今日は一緒に登校できないのか…
「じゃあ、先に行ってるよ」
 僕は家を出た。

743新手のスタンド使い:2004/01/13(火) 23:41

 教室に入って、いつものように席に座る。
 …変だ。
 絶対変だ。
 一昨日から、8頭身どもの姿をさっぱり見ない。
 そう、簞ちゃんが家に来てからだ。
 何か企んでいるのだろうか…
 いたらいたでキモイけど、いなかったらいなかったでキモイ。
 ほんと、キモイ奴等だ…

 ガラガラと戸を開けて、先生が入ってきた。
「急ですが、このクラスに転校生が編入します…」
 おっ、来た来た。
「イギリスからの帰国子女です。じゃ、入って」
 先生の言葉と共に、扉が開いた。
 てくてくと入ってくる簞ちゃん。
 それにしても、イギリス? またでっちあげたもんだなぁ。 
「簞なのです。よろしくお願いします」
 ぺこりと頭を下げる簞ちゃん。

「可愛い…」
「帰国子女!?」
 ヒソヒソと囁き声が教室中で巻き起こる。
「じゃあ、そこの空いている席に座ってもらえるかな…」
 先生が指差した先には、当たり前のように空席があった。
 これも学校の七不思議。
 簞ちゃんはその席に腰を下ろした。
 座る時に、僕にふと視線を合わせて微笑んだ。
「えー、では出席を取ります…」
 HRはそのまま進行していった。
 すぐに1時間目が始まる。


 はやる心に流されるように、1限の授業は終わりを告げた。
 簞ちゃんが、僕の机の横に立つ。
「それにしても… クラスまで一緒なんだね。年は違うのに、変な感じだなぁ…」
 僕は頭を掻いた。
「『異端者』について知っている人と同学年の方がいいと思ったのです」
 でも、考えてみれば妙な話だ。
 『異端者』という名前からして、簞ちゃんと同じ代行者だろう。
 そうすると、『教会』の同僚にあたるはずである。
 『教会』は『異端者』の居場所を知らないのか?
 まあ、『異端者』なんて名前をつけられるくらいだから、『教会』を裏切ったのかもしれないな。
 僕は、それらの疑問を簞ちゃんに訊ねた。
「分からないのです… まあ、『教会』の秘密主義は今に始まった訳ではないのです。
 現に代行者同士でも、誰がどの任務を扱っているのかは分からないのです。
 それに、この任務に与えられた期間は半年と長過ぎるのです。多分、いろいろ込み入った事情があるのです」
「ふーん。で、その『異端者』ってどんな人なの?」
「ものすごく強い人なのです。直接戦闘のエキスパートで、全身に武器を隠し持っているのです。
 吸血鬼を物凄く嫌悪している人で、吸血鬼の殲滅数も、代行者の中で2番目なのです。
 1番の人はちょっとズルをしてますので、実質最も吸血鬼をやっつけている人と言っても差し支えないのです」
 僕は、ゴリラのようなムキムキのオッサンを想像した。
「重火器や兵器にも通じていて、現行兵器のほとんどのマニュアルが頭に入っているとも言われているのです。
 吸血鬼の間でも恐れられていて、『十字の死神』や『塵の鬼神』などと呼ばれているのです」
 顔面に十字の刺青を入れて、「HAHAHAHAHA!!」と笑いながらマシンガンを連射するオッサンが僕の脳内で暴れている。
 まあ、それくらいでないと吸血鬼とは戦えないのかもしれないな…
「とんでもない人を探してるんだね… で、その『異端者』について知っている人は、何て名前だい?」
 簞ちゃんは口を開いた。
「モナーさんと言うのです」

 …モナー?
 それって、B組の有名な女たらしじゃないか?
「次の休み時間、その人と会ってみるつもりなのです」
 僕の脳裏に、爽やかハンサムボーイ(モナー想像図)が簞ちゃんの肩に腕を回す情景が浮かんだ。
「ダ、ダメだ! そんな奴と一人で会ったら、簞ちゃんが食べられちゃうよ!!」
「…私、食べられてしまうのですか?」
 少し怯えた表情を見せる簞ちゃん。
「いや、詩的表現なんだけど… とにかく、簞ちゃんが一人でそいつと会うのは危険だよ」
 僕は少し考えた。
 そんな野獣の前に、簞ちゃんの清らかな身を晒す訳にはいかない。
「…だから、僕が一人で会ってみる」

 簞ちゃんはうなづいた。
「…じゃあ、そうしてもらうのです」
 自分で提案したものの、少し不安になってくる。
「まあ、簞ちゃんが一人で会った方が情報は引き出せるんだろうけど…」
「任務には半年も期間があるのです。多少マターリしても大丈夫なのです」
 そう言われればそうだな。
 今回失敗しても、あと半年あればいくらでもチャンスはある。
 2限開始のチャイムが鳴った。続きは2限後だ。

744新手のスタンド使い:2004/01/13(火) 23:42

 2限終了。
 簞ちゃんは、授業が終わるとすぐに僕の所まで来た。
 こんな事ばかりしていて、簞ちゃんはクラスに馴染めるのだろうか。
 僕がいるから、クラスのみんなが近付いて来ないも同然である。
 まあ、簞ちゃんは学校生活を楽しむのが目的ではないだろうが、せっかくだしね。
「じゃあ、モナーさんに話を聞くのは、おにーさんにお任せするのです」
 僕の心を知ってか知らずか、簞ちゃんは言った。
 僕は席から立ち上がる。
「…おっと、話を聞くとき、簞ちゃんの事はどこまで話してもいいの?」
「別に、全部しゃべっても構わないのです」
「えっ! そうなの?」
 本当にいいのか?
 いろいろ、マズイと思うんだけど…
「関係ない人なら、どうせ信じないのです」
 確かにそうだな。
 僕自身、実際に吸血鬼やスタンドを目撃していなければ、とても信じられないだろう。
 でも、モナーが何も知らなかった場合、アレな人扱いされるのはイヤだなぁ…
「じゃ、行ってくるよ…」
 簞ちゃんに手を振ると、僕は教室を出た。

 B組の教室に入る。当然だが、教室内にはたくさんの生徒がいた。
 さて、誰がモナーだろう…?
 僕は教室中を見回した。
 …あれか?
 見るからにモテオーラを放っている男子生徒が目についた。
 机の上に座って、女の子と何やら会話を交わしている。
 多分、彼がモナーだな。
 ちょっと怖そうな人なので、話しかけるのは気が引ける。
 だが、このまま逃げ帰るわけにはいかない。
 僕は、彼の肩をつついた。
「あの…すみません…」
「何だゴルァ!」
 彼は、こっちに振り返った。
「えーと、君がモナー君?」
 僕はおずおずと訊ねる。
 彼は、ハァ? と言いたげな表情を浮かべた。
「いや、俺はギコだ。モナーなら… ほら、あそこだ」
 ギコと名乗った生徒が指差した先には、机に突っ伏して眠るタヌキの姿があった。
「えっ…あれが?」
 さすがに当惑した。
 伝説の女ったらしじゃなかったのか?
「あれが? って言われてもなぁ、しぃ…」
「うん。あれがモナー君だよ」
 ギコと話していた女子生徒が言った。
 どうやら、間違いないらしい。

 僕は2人に例を言うと、モナーの机に近付いた。
「あの…モナー君?」
 僕は呼びかけた。
 しかし、彼は机に突っ伏したままで反応はない。
「ちょっと、聞きたい事があるんだけど…!」
 僕は彼の体を揺すった。
「ウフフ…リナー…ウフフフ…」
 駄目だ。寝言を言ってるよ。
「起きてー! おーい!」
 ゆさゆさと彼の体を揺さぶる。
「おい、そんなんじゃコイツは起きやしねぇぞ!」
 さっきのギコが横から入ってきた。
「コイツを起こすには…こうやるんだよ!!」
 ギコは、モナーの頭にかかと落しを叩き込んだ。
「ギャー!」
 飛び起きるモナー。
 ギコは無言で去って行った。意外と、いい人なのかもしれない。

「い、痛いモナ…」
 頭をさすりながら呟くモナー。
 やはり、伝説の女ったらしには見えない。
 やっぱり、ものすごいテクを持ってるんだろうか。いろいろな…
「ん? 君は誰モナ?」
 モナーはようやく僕に気付いた。
「僕は、A組の1さんって言うんだけど…」
 とりあえず自己紹介からだ。
「は、はぁ…」
 戸惑うモナー。
 どうしよう。何て聞こう。
 単刀直入にいってみるか。
「…『異端者』って知ってるかい?」
 モナーは細い目をカッと見開いた。
「…知らないモナ」
 今の反応はただごとじゃない。
 やっぱり、彼は何か知っている。

745新手のスタンド使い:2004/01/13(火) 23:43

「…で、『異端者』って何モナ? なんでモナに聞いてくるモナ?」
 モナーは逆に質問を投げかけてきた。
 一応、許可はもらっている。
 僕は、簞ちゃんが家に来た事、吸血鬼の事、スタンドの事を全て話した。
 もちろん、考えなしの行為ではない。
 ちゃんと反応を観察する事は忘れない。
 吸血鬼の話でもスタンドの話でも、彼は特に驚いた素振りを見せなかった。
 こんな話、普通の人が聞いたら一笑に付すだけだというのに。
 やはり、彼は何かを知っている。

 話が一通り終わると、モナーは口を開いた。
「その簞ちゃんが探している『異端者』に心当たりはないモナ。でも、簞ちゃんに会ってみたいモナ」
 モナーは困った事を言い出した。
 女ったらしの血がうずいたのか、それとも何か企んでいるのか…?
 もっとも、簞ちゃんは吸血鬼を一瞬で灰にしたのだ。
 このタヌキに大した事ができるとは思えない。
「分かった。すぐ連れてくるよ」
 僕はそう言ってB組の教室を出た。


 簞ちゃんを連れて、B組の教室に戻ってくる。
「簞なのです…」
 モナーに頭を下げる簞ちゃん。
「モナはモナーモナ」
 そう言いながら、モナーはじっと簞ちゃんを見つめている。
 何か、妙な感じだ。
 鋭い視線。
 先程までのマヌケなしゃべり方が嘘のようである。
 まるで、全てを見通すような眼…
「『脳内ウホッ! いい女ランキング』に追加モナね…」
 何を言っとるんだこのタヌキは…

「本当に、『異端者』を知らないのですか…?」
 簞ちゃんは訊ねる。
「知らないモナよ。それより、よく吸血鬼なんかと戦えるモナね…」
 モナーは言った。
「色々訓練したのです」
 それに答える簞ちゃん。
 何か、僕はどうでもいい人みたいだ。
「…この町はどうモナか?」
「かなりの数の吸血鬼が潜んでいるようなのです。でも、なぜか大人しいのです」
 簞ちゃんはモナーの瞳を見据えて言った。
「まあ、代行者がこれだけ町に集まれば、大人しくなるモナね…」
 そう言って、モナーは慌てて口を押さえた。
 今、確かに代行者が町に集まっていると言った。
「…とにかく、モナは何も知らないモナ。さてと、もう一眠りするモナ」
 モナーはいきなり机に突っ伏した。
 明らかに、拒絶の態度だ。
 これ以上話しかけても、無視されるだけだろう。
 仕方ない、今日は諦めるか…
 僕は簞ちゃんと目を合わせてうなづいた。
 簞ちゃんを先頭に、教室を出ようとする僕達。
 しかしモナーは、突っ伏した姿勢のままで、僕の制服の裾を掴んだ。
 それに気付かず、簞ちゃんは教室から出て行ってしまう。

「な…何…?」
 僕はモナーに言った。
 モナーは手を離すと、机から頭を起こした。
「さっきの話だけど… 簞ちゃんと会った日、1さんは簞ちゃんに自分の年齢を教えたモナ?」
 いきなり何を言い出すんだ?
「教えてないけど。名前を名乗るのも遅れたからね」
「でも、『私は、おにーさんよりも1つ年下なのです』って言ったモナね…」
 …!!
 そうだ。確かにそう言った。
 簞ちゃんは、偶然僕の家に着いたはず。
 それなのに、僕の年齢を知っていた…!

746新手のスタンド使い:2004/01/13(火) 23:43

 呆然とする僕を見ていたモナーが口を開いた。
「偶然は信用しない方がいいモナ。その偶然も、たぶん仕組まれたものモナ」
 仕組まれただって…? 一体、誰に…?
 その時、僕は気付いた。
 さっきモナーが、代行者が町に集まっていると言った。
 あれは、口を滑らせたんじゃない。
 僕達の… いや、簞ちゃんの反応を見るためにわざと言ったんだ。
 そして、簞ちゃんは特に反応しなかった。その事を知っていたのだろう。
 だとしたら、妙な話だ。
 今日の朝、簞ちゃんは、代行者は誰がどの任務を扱っているのか分からないと言っていた。
 決定的な矛盾とまではいかないが、どこか収まりの悪い話だ。

「…でも、僕は簞ちゃんを信じたいんだ」
 僕は、自分に言い聞かせるように呟く。
「その気持ちはよく分かるモナ」
 モナーは意外にも同意してくれた。
「簞ちゃん自身、『教会』に騙されている可能性も高いと思うモナ」
 …なるほど。
 僕もそんな気がするな。
「そういう事モナ。今度こそ本当に寝るモナ…」
 そう言って、モナーは机に突っ伏してしまう。
 僕は、自分の教室に戻った。

 自分の席につくと、簞ちゃんが話しかけてきた。
「…何かあったのですか?」
「いや、別に…」
 僕は答えた。
「で、簞ちゃん的には、モナーはどうだった?」
 とりあえず話を変えた。
 視線を落とす簞ちゃん。
「あの人は、とても怖い人なのです…」
 そうかなぁ。
 簞ちゃんは怖がりだな。
「あの人の言動は、鈍さと鋭さが表裏一体なのです。それと、あの眼。何人もの人間の死を見てきた眼なのです。
 あんな目をした人間が、あんなに普通に振る舞えるはずがないのです。
 多分モナーさんは、人を殺した事があると思うのです…」
 ええっ!?
 いくらなんでもそれは…
「彼は、相反するものをたくさん抱えているのです。生と死。罪と赦。善と悪。
 あの少し呑気すぎる振る舞いも、彼自身の防御機構に過ぎないと思うのです。
 あんな状態になっても、通常の精神を保っているのが、私は怖くて仕方がないのです」
 簞ちゃんはそう言って黙ってしまった。
 ただのタヌキでない事は分かったが、そこまでのヤツなのか…?

 3時間目が始まった。
 授業中も、僕はずっとモナーの事を考えていた。



  /└────────┬┐
. <   To Be Continued... | |
  \┌────────┴┘

747302:2004/01/14(水) 02:01
「スロウテンポ・ウォー」

イソギンチャクと最後の秒読み・3


「ゲヒュ…♪なーかなか、いいスタンド持ってるじゃんよゥ…!」

ウチらの敵…丸耳モララーは、“素手のまま”こっちへと近寄ってきましてん。
こいつらが…日本の秩序を壊そうとしてる……!!

「……ああ、言いそびれてたんだがな。そいつは、日本町(ひのもとちょう)を本拠地にしたストリートギャングだ。」
「え?…日本町って、茂名王町から一駅隣りの?」
「ああ。」
「………」

……なんか、急に体の力抜けましたわ……要するにDQN同士の縄張り争いやないかい!!

「だが、スタンドなんか使われたら一般人に迷惑だ。だから、我々はこいつらを取り締まる自警団ってわけだ。」
「……なんか、微妙にモチベーション下がるわあ……」
「…そう言うなや、ニダやん…なんとなくやけど、コイツ間違いなく人殺しとる…!」

…そう、ウチが感じた悪寒…それは。

「ヒトコロシにしか、出せないオーラって…あってよぉ〜…ゲヒュ…♪」

「…やっぱ、殺すにはよぉ〜、ちょーっとだけ狂気が必要なんでよぉ〜♪」

「……“マッド・ブラスト”…つまり、俺のスタンドでよぉ〜…殺しちゃってるわけよぉ。」

いつの間にか、丸モラの背後に「イカレた男の像」が浮かんどったんです。
右腕がバズーカ砲みたくなっとって、左腕は注射器状でしてん。

748302:2004/01/14(水) 02:02
「…ヤバイっ!!あっちもスタンド出してきおった!!…いくでぇ、F・C・Dぃ!!!」
「シー・アネモネぇ!!あのスタンドの腕を絡め取るんやぁ!!」

ウチがスタンドとダッシュで突っ込む両横を、ニダやんのスタンドの“無数の触手”がうねりながら突っ込んでいったんや。
ファイナル・カウント・ダウンは遠距離攻撃には向かない…逆にニダやんはある程度射程が長い…
なんていうんか、長年相方やってるとわかるもんですわ。

「せいやぁっ!!!」
(ブオン!!)
あかんっ!!慣れてないせいか知らんけど、遅いし非力ぃ!!

「ゲヒュヒュ…♪パワーもスピードもイマイチ…いや、イマサンかぁ?てめぇのスタンドはよぉっ!!」
(バキャッ!!)
バズーカ砲を振り回してきおった!!何とかガードは出来た…それに…!!
「くぅっ!!…今や、ニダやん!!!」
「はいなぁ!!シー・アネモネっ!!薙ぎ払うんやぁ!!」
ウチの背を踏み台に、ニダやんのスタンドの触手が丸モラの背を薙ぎ払った!!ナイスや、ニダやん!!

(ベシイッ!!)

「チィ…喰らっちまったかぁ…!」

ジリ…ジリと後退りする丸モラの表情が、なんとなくやけど笑っとったんです…
言いようのない、悪寒…それと、予感が…ウチの背筋を走り抜ける…!!

「ゲヒュ…♪ゲヒュヒュヒュヒュ!!!ゲヒュアアアアア――――――!!!!!」

「ニダやん!!深追いすなっ!!何か来るでぇ――!!」
「のーちゃん、心配すなぁ!!ワイのシー・アネモネは遠くからでも攻撃出来るっ!!
奴は、このまま近寄る事すら出来ずっ!!ザ・エンドやぁ!!シバキあげたらああああぁぁぁっ!!!」

それを言うなら「ジ・エンド」やろがぁっ!!とツッコむ暇もなく……


( D O O O N N ! ! ! )

749302:2004/01/14(水) 02:02
「カハッ……な、何や……っ…!?」

異常な爆発音と、炸裂音…ニダやんのスタンドの肩が抉れ、フィードバック現象でニダやん自身の肩も抉れてましてん…!!
何や、これはっ!?まさか……まさかっ!?

「そう…察しがいいね、ツー族のお兄さん…いや、お姉さんかな?」

(ゴゴゴゴゴゴ……)

「狂気って言うのは、エネルギー……抑えきれぬ、精神エネルギーの暴走だと僕は考える……」

(ゴゴゴゴゴゴ……)

白煙の向こうに、今までとは別人のような丸モラが居ましてん……しかも…。
スタンドの“右腕のバズーカをこちらに構えて”…そして、“左手の注射針を丸モラ自身の頭に突き刺した”姿で……!!

「僕の“マッド・ブラスト”は……“狂気を吸い上げて”…それを“弾丸にして打ち出す”……つまり」

( ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ … … ! ! ! )

「僕の方が……ゲヒュ♪……より、遠くから攻撃出来るんだよ、このヘボどもがぁぁぁ!!ゲヒュヒャハアッ…!!」

再び、奴の顔が狂気に歪んでいくのが見えましてん。それも、さっきよりも更にイカレた顔に……!

「…キチガイに刃物(スタンド)やな。お前、本気で腐っとる。……ウチの癪に障るわ、ホンマ……っ!!」

今、決めた。ZEROがこんなんしかおれへんなら、ウチがぶっ潰す。ヘタすりゃ、ウチらのファンまで怪我してまう…!!
ウチの中の“正義感”が!!“倫理観”がっ!!「コイツを許すな」って、叫んどるんやぁ!!!

『……認証ヲ。カウントダウン認証ヲ、マスター。マスター。MASTER……!』
「っ!!?」
(ゴゴゴゴゴ……)

聞こえた。スタンドの声、F・C・Dがウチに何かを伝えようとしとる……!!

<To Be Continued>

750302:2004/01/14(水) 02:02
人物&スタンド紹介(スタンドの詳細はこの話が終わってから…)

本体名:のーちゃん
スタンド名:ファイナル・カウント・ダウン(F・C・D)
詳細
茂名王町の隣町、日本町(ひのもとちょう)に住む18歳の専門学生。
“ニダやん”と漫才コンビを組む大のお笑い好き。
正義感が強く妥協を好まない性格で、モットーは「人に優しく、自分に厳しく」
ひょんな事からストリートギャング集団「ZERO」と「自警団」のスタンドを使った抗争に巻き込まれてしまう。

本体名:ニダやん
スタンド名:シー・アネモネ
詳細
日本町に住む20歳の大学生。韓国人っぽい顔だが、関西人である。
“のーちゃん”と漫才コンビを組み、お笑い界を覇権する夢を持っている。
どちらかといえば、「面倒はキライ」だが、親友“のーちゃん”を守る事には苦労を厭わない。
“ZERO・自警団抗争”も、のーちゃんに付いていくように足を踏み入れていく。

本体名:八頭身フーン
スタンド名:(不明)
詳細
“日本町特別自警団”の幹部連の一人。実際は元DQNの23歳。
自分達がDQNから足を洗った後、表裏問わず秩序を乱しまくる“ZERO”を潰すと決意。
警察へと“ZERO”メンバーを引き渡す事を条件に、多少の不法行為を不問にしてもらっている。
その為か、割と無茶をする。

本体名:丸耳モララー(丸モラ)
スタンド名:マッド・ブラスト
詳細
“ZERO”の末端メンバー。ただし、スタンド使いなので下っ端の中では割とエライ。
普段は何処にでもいる若者だが、破壊行為・犯罪行為を行う姿はまさに「狂人」。
矢を持ってうろつくフーンの始末&自警団側スタンド使いの引き抜きを行っていた。

751新手のスタンド使い:2004/01/14(水) 18:44
乙です

752ブック:2004/01/15(木) 00:59
     救い無き世界
     第八話・美女?と野獣


 仕事も終わり、家へと愛車を走らせる。
 沈んでいく夕日がとても綺麗で溜息が出そう。

 おっと、紹介が遅れたね。
 僕の名前は小耳モナー。
 可愛いくってドジでお茶目なSSS一のアイドルさ。
 最近の悩みは、麻雀で同僚の皆から根こそぎ金を巻き上げられたせいで、
 財布の中身がすっからかんって事かな。
 でも、健気な小耳たんは挫けない!
 不幸で貧乏なのも、萌えるアイドルとして人気を得るのに必要だもの。
 これ位の試練、ガッツで乗り切ってやる!

「…人気はいらないからお金が欲しいモナ〜。」
 目から自然と涙が溢れる。
 素寒貧になってから早三日、
 あれから、僕は水しか胃の中に入れていない。
 次の給料日まではまだ半月近くある。

「…いっそ、この車を質に入れ…」
 僕はそう言いかけて慌てて頭を振った。
 絶対駄目だ。
 せっかくローンを組んでまで買ったばかりなのに、
 そんな事出来るもんか。
「でも、明日からどうやって暮らせばいいモナ…」
 考える度、気持ちが益々沈んでいく。
 皆に金を貸してくれと言ったって、
 どうせ法外な利息をふっかけてくるに決まっている。
 特にタカラギコあたりにそんな話を持ちかけたら、
 気づかないうちに変な契約書にサインさせられてそうだ。

 赤信号にかかったので、僕は車を停車させた。
 ふと窓の外の景色を除いてみる。
 すると、通りで募金活動をしている少年少女の姿が目に入った。
 どうやら、先の「デパート爆破事件」の被害者支援の為の募金のようだ。
 そういえば、あの事件の被害者救済の為に
 どこぞの宗教系列の慈善団体とかが積極的に義援活動をしているとか
 ニュースでやってたから、あれもその一環だろうか。
「そこの子供達〜、モナも今恵まれてないモナよ〜…」
 何というか、不謹慎なのは承知の上だが僕にも少しくらい恵んで欲しいものだ。

753ブック:2004/01/15(木) 01:00


 信号が青に変わり、僕は車を走らせる。
 すると、いきなり後ろから車が僕の車を追い抜き、
 すれ違いざまに窓から手を出し僕の車の車体を触ってきた。
「?変わった悪戯モナー。」
 こんな事で怒るのも馬鹿らしいので、僕はあまり気に止めなかった。

 次の瞬間、いきなり僕の車が反対車線へと飛び出した。
「!!!?なっ!?」
 慌ててハンドルを切る。
 しかしハンドルを切れども車は構わず動き続けた。
 とっさにブレーキを踏む。
 だが、速度は遅くなったものの車は動くのを止めない。

 と、信じられない光景が僕の目に飛び込んだ。
 一台の車が、僕の車目掛けて避けようともせず突っ込んで来るのだ。
 急いでそこから逃げようとアクセルを踏んだ。
 が、スピードを出した瞬間僕の車はその車に引き寄せられるように
 接近していった。

 そんな馬鹿な。
 あの車とは逆の方向にハンドルを切っているはずなのに、
 何故車は逆に近づこうとするのだ!?

「うわあああああああああああああああああ!!!」
 金属と金属がぶつかり、砕け、ひしゃげる音が響き渡った。
 衝突により大破して、僕と相手の車はようやく停止した。
 体中が痛む。
 しかし、幸いにも骨折などはしていないようだ。
 僕は、体を引きずりながら取り敢えず車を降りた。

「!これは!?」
 僕は自分の目を疑った。
 一度だけ、僕は交通事故が起こった瞬間というものを
 目撃したことがある。
 その時は、現場のあちこちに車の破片やら何やらが散乱していたはずだ。
 だが、何だ「これ」は。
 辺りにはガラス片一つ転がっていない。
 いや、違う。
 そもそも車同士が「吸い付いているかのように密着している」のだ。

「うう…」
 相手の車の中からの呻き声に、僕ははっと我に返った。
(そうだ、向こうの人は無事なのか?)
 急いで車相手の人の車のドアをこじ開け、安否を確認する。
 …一応息はあるみたいだが、気を失っているようだ。
 早く、救急車を…

「うわああああああああああああ!!!!!」
「きゃああああああああああああ!!!!!」
 その時、周りから幾つもの絶叫と衝突音とがあがった。
 周りを見回す。
 そこでは僕の時と同じように、何台もの車がお互いに
 引き寄せ合うかのように、接触事故を起こしていた。
 中には、人と車とがぶつかるようなものもあった。
 さっきまでの何気ない日常の風景が、一瞬にして地獄絵図と化す。

 警察と救急車に連絡を済ませた僕は、
 何がおこているのか調べる為に、次々と事故が起こった方向へと走った。
(何だっていうんだモナ…
 まさか、スタンド能力!?)
 僕の頭に、先日の「デパート爆破テロ事件」の事がよぎった。
 ぃょぅの話だと、あの事件の犯人はスタンド使いだったらしいが、
 まさか、これもそうなのか―――?

754ブック:2004/01/15(木) 01:01


 交差点の中央に、そいつは居た。
 全身を黒いタイツのようなもので包み、
 その顔の中心部にはぽっかりと穴が開いている。
 そいつの傍らには、フルフェイスメットをかぶった男の像があった。
 その右手にはN、左手にはSの文字が大きく張り付いている。

「よい子の諸君!
 天災は忘れたころにやって来るというが、
 天災みたいな最悪な出来事は無理やりにでも早く忘れたいものだよな!
 そう、例えば実の妹に妹系エロ同人誌を見つかるとかな!」
 男は誰に言うでもなく一人で何やらわけの分からない事を
 大声で喋りだした。

 間違いない。
 あいつは、スタンド使いだ。
 そして原理は分からないが、十中八九この惨事は
 あいつが引き起こした事だ。
 感覚で分かる。
 あいつはこの事態を楽しんでいる。
 一つの罪悪感さえ持つ事無く…!

 僕は応援を呼ぶために携帯電話を取り出して
 僕の所属するSSSスタンド制圧特務係へと連絡を入れた。
 ワンコールですぐに電話が繋がる。
「もしもし、どうしました?
 小耳さん。」
 声からするとどうやらタカラギコのようだ。
「大変モナ!
 今、四丁目のパチンコ屋の近くの交差点で、
 恐ろしい事が起こってるモナ!
 相手はスタンド使いモナ!
 すぐに応援を――」
 そう言いかけた所で、いきなり携帯電話を持っている手を
 後ろから掴まれた。
 突然の出来事に、思わず携帯電話が手から落ちる。
 見ると、交差点の男とは対照的に、
 今度は全身白タイツに包み、背中から羽を生やした男が、
 彼のスタンドらしき物の腕で、僕の腕を掴んでいた。
 その顔には、五芒星が描かれている。
「もしもし?小耳さん?もしもー…」
 そこで携帯電話は男の足に踏み砕かれ、
 その機能を停止した。
 今日は何て日だ。
 車だけでなく、携帯電話まで壊れるとは。
 いや、そんな事を考えている場合じゃない。

755ブック:2004/01/15(木) 01:01

「…お前今、『スタンド』と言ったな。
 そして、『応援をよこせ』とも言いかけた。
 お前、もしかしてSSSの一員か?」
 男が僕に喋りかけてきた。
「だったら……どうしたモナ!」
 柄にもなく声を荒げて威嚇する。
 ここで、気持ちで負けるわけにはいかない。
「なら丁度良い。お前には、SSSについて色々と喋ってもらう。」
 男は淡々とした声で話しかけた。
「そんなの…お断りモナあぁ!!」
 僕は自分のスタンドを発動させた。
「行け!『ファング・オブ・アルナム』!!」
 大きな黒い狼がそこに姿を現す。
 喰らえ、これが僕のスタンドだ!

「くっ!」
 白づくめの男は僕から手を離し、急いで距離を取った。
 だが少し遅い。
 『ファング・オブ・アルナム』の爪は男の右腕を捉え、
 男の服と腕の肉をごっそりと奪い取る。
 今だ。
 男が怯んだ隙に、応援が来るまで逃げる。
 男の相手は、『ファング・オブ・アルナム』に任せればいい。
 急いで逃げ―――

「うあああああああああ!!!」
 僕は痛みに叫び声を上げた。
 振り返って逃げようとした瞬間、
 地面の石につっかけて転びそうになり左手を着いた。
 だが…それだけで腕が「折れた」のだ。
 何故!?
 いわゆる骨粗鬆症ってやつか?
 いや、僕は毎朝たっぷりと牛乳を飲んでいる。
 多分そんな事は有り得ない。
 だが、現実にちょっと腕を着いただけで腕が折れたのだ。
 これは一体どういうことだ。
 まさか、これが奴のスタンド能力!?

「今お前は、何故あんな事で骨が折れたのか考えている。」
 男が腕から血を流しながら僕に近づいて来た。
 『ファング・オブ・アルナム』のビジョンは消えている。
 まずい、さっきので集中力を切らしてしまったか…!

「『ファング・オブ・アルナ…』!」
「させるかよ!」
 僕がスタンドを再び発動させようとした瞬間、
 男が僕の脚を踏みつけた。
 そしてそれだけでまた脚の骨が折れる。
「ぎゃああああああ!!!」
 本日二回目の悲鳴。
 やっぱりだ。
 いくらなんでもこんなに簡単に骨が折れるのは「おかしい」。
 分かったぞ、こいつの『能力』は…
 モノを「脆くする」能力…!!
「流石にもう気づいているだろう。
 察しの通り、俺のスタンド、『スペランカー』の能力は、
 『触れたモノを脆くする』能力!
 そして、さっきお前には十分に触らせてもらった。
 もう、お前はロクに逃げる事も出来ない。
 チェックメイトってやつだ。」
 男が勝ち誇ったように俺を見下す。
 やばい。
 悔しいが男の言う通りだ。
 僕がスタンドを出そうとしても、その前に男は僕に攻撃を入れるだろう。
 そして、男が軽く当てるだけで、僕は致命傷を負う。

756ブック:2004/01/15(木) 01:02

「どうした、ペンタゴン。
 何をして遊んでるんだ?」
 …状況は益々最悪な方向に傾いた。
 黒タイツの男が、こちらにやって来たのだ。
 これで二対一。
 万が一にも、僕に勝ち目は無い。
「おお、ブラックホール。
 いや何聞いてくれ。
 たった今SSSの一味を捕獲したところだ。」
 白タイツが誇らしげ喋る。
「おお、それは大手柄じゃないか!
 これで我ら『四次元殺法コンビ』の株も、
 大幅急上昇といったものだな。」
 黒タイツも嬉しそうな声で話す。
 何を勝手な事を。
 お前らの出世のネタになるなんて、願い下げだ。

「さて、君には可及的速やかにSSSについて吐いて貰いたいのだが。
 いちいち君を人気の無い所へ運んで拷問するのは
 我々も出来れば面倒くさいので避けたい。」
 白タイツが僕の方を向いて言った。
「…糞でも喰らいやがれ、だモナー。」
 僕がそう言うと、白タイツは僕の折れていない方の脚を踏んだ。
 骨がまるで発泡スチロールのように折れる。
「ひいいいいいいいいいい!!!」
 本日三回目の悲鳴。
 だが、死んでもこいつらの言いなりになんかなるものか。
 下種な裏切り者になる位なら、死んだほうがマシだ。

「では仕方が無い。
 君を連れ去って思いつく限りの拷問をさせてもらおう。」
 男が僕に手を伸ばした。
 もうお終いだ。
 小耳モナー二十三歳。
 恋人も出来ないままこの世を去ります…

757ブック:2004/01/15(木) 01:02


「『キングスナイト』!!」
 僕が覚悟を決めたその時、
 覚えの有る声が聞こえると共に、
 男達が僕の近くから飛びのいた。

 間に合った。
 ようやく来てくれたのか、応援が。
 声の方を向く。
 そこには、美しい艶やかな毛並みを持った女性が、
 黄金の騎士を従えて、優雅に佇んでいた。

「…遅いモナ…ふさしぃ…」
 僕は咽から声を絞り出して、彼女の名を呼んだ。
「御免なさい。
 でも、ヒロインは遅れてやって来るものよ。」
 ふさしぃはそう言って僕に軽くウインクを投げかけた。
「さて…貴方達、ここまでやって、
 よもや五体満足で帰れるとは思っていないでしょうね。」
 ふさしぃがスタンドの剣先を男たちに向けてかざした。

「いったん離れるぞ、ペンタゴン!」
「応!」
 男達は一瞬の互いに顔を見合わせると、
 すぐに振り返って逃げ始めた。
「!待ちなさい!!」
 ふさしぃは白黒の男達を追いかけようとした。
 が、僕を気にして追うのを止めようとする。

「僕の事は気にせず行くモナー!
 ふさしぃ!!」
 僕はありったけの力で叫んだ。
「モナは大丈夫モナ!
 心配してる暇があるなら、すぐに追いかけるモナー!
 あいつらは、前の『デパート爆破テロ事件』の犯人の
 関係者である可能性が高いモナ!
 逃がしちゃ、駄目モナー!!」
 逃がしてはならない。
 絶対にならない。
 こんな事をする奴らを、野放しにする事は、許されない!
「分かったわ…小耳。
 行ってくるわね…!」
 ふさしぃも今何を優先すべきか理解したようだ。
 その目に迷いの色は欠片も、無い。
「さっき白タイツの男の『服の切れ端』と、『肉』を
 少し頂いたモナ。
 僕も『これ』を使ってすぐに『ファング・オブ・アルナム』に
 援護させるモナー。」
 ふさしぃはそれを聞くと、一度頷いてすぐに白黒コンビを追い始めた。

「さて…モナも自分の仕事に取り掛かるモナー…」
 僕はふさしぃを見送り、『ファング・オブ・アルナム』を発動させた。
「『アルナム』。こいつを追跡して、やっつけるモナー。」
 僕はそう言って『ファング・オブ・アルナム』に
 白タイツの服と肉の切れ端を差し出した。


   TO BE CONTINUED…

758:2004/01/15(木) 23:22

「―― モナーの愉快な冒険 ――   ぼくの名は1さん・その4」



 僕は、食堂から戻ってきた。
 簞ちゃんは、教室でクラスの女の子とパンを食べていた。
 どうやら僅かな間に、大分クラスに打ち解けているようだ。

 僕はため息をつきながら席に着いた。
 簞ちゃんの為を考えるなら、あんまり僕がベタベタしない方がいいんだろうけど…
 でも、ちょっと寂しいな。
 そんな事を考えていたら、予鈴が鳴った。
 次は世界史の授業だ。
 最近赴任してきた世界史の先生は、最初はイケ好かなかった。
 なんか爽やかだし、この季節なのにロングコート着てくるし…
 見た目も若く、最初は教育実習生と見誤ったほどだ。
 また、そのルックスから女子には大人気のようだ。
 でも、なかなか面白い話をしてくれるので、今ではそれなりに気に入っている。


 五限開始のチャイムが鳴った。
 みんなが席につき始める。
 ガラガラと戸を開けて、先生が入ってきた。
「きりーつ、れーい!」
 日直が号令をかける。
 だが、起立も礼もしない人が目についた。
 …簞ちゃんだ。
 簞ちゃんは、呆然とした表情で固まっていた。

 全員が着席する。
 先生は、簞ちゃんの方を見て微笑んだ。
「まさか、君が来ているとはね…」
「…」
 これまで見た事もないような表情で、先生を睨む簞ちゃん。
 この二人、知り合いなのか?

「そう睨まないで下さいよ。私は別に何もしません…」
 先生は両手を広げた。
 ロングコートがはためく。
「あなたの言う事は、信用できないのです」
 簞ちゃんは厳しく言った。
 クラスの全員が仰天して注目している。
 一体、なんなんだ?
 この二人、知り合いなのか?

「ところで、私は昨日までちょっとヨーロッパに行っていたんですよ」
 先生は全員に向き直ると、教卓に手を突いて話し出した。
「で、知り合いの神父さんに会ったんですが…
 最近、神父の間に小児愛好者が増えているのが問題になっているらしいですね。
 それの対策に、神学校ってありますよね。神父になりたい人達が通うところです。
 そこに精神科医を派遣して、カウンセリングを行っているそうです。
 何か悲しくなりませんか? 神に仕える者が精神科にカウンセリングとはね…」
 先生は笑って言った。
 確かに、もっともな話だ。
 懺悔を聞くべき神父が精神科医にカウンセリングなんて、ギャグにもならない。

「さて、では授業を始めましょうか。
 11世紀末から13世紀にかけて、西ヨーロッパのキリスト教徒が聖地エルサレムを奪回すべく、
 数次にわたって行った十字軍の遠征については、前回に説明しましたね」
 僕は慌てて教科書を開けた。
 とは言っても、この先生は余り教科書に沿った授業をやらない。
 だが、この学校は特に進学校ではないのと、その教科書に沿わない授業が面白いので、文句を言う人は少ない。
「…ですが、みなさんは同じ頃にもう一つの十字軍があったことをご存じでしょうか。
 十字軍がイスラム教という異教との戦いで東方へ進出して行くものであったのに対して、
 こちらはキリスト教世界内部での異端とされた者との戦いで、南フランスが舞台になったのです。
 これをアルビジョワ十字軍といいます」
 それにしても、キリスト教内部の異端との戦いで、軍隊を差し向けるもんなのか?
 異教徒に対して激しく弾圧をしたのは知っていたけど…

「アルビジョワ十字軍とは、アルビジョワ派を討伐するために派遣された十字軍という意味です。
 ではアルビジョワ派とは何かと言うと、一般的にはカタリ派と呼ばれ、組織を持った始めての異端です。
 この新種の異端は独自の典礼と禁欲を掲げて、フランス、スペイン、イタリア、ドイツに蔓延しました。
 フランス南部のラングドックに根をおろしたカタリ派は、この地からローマカトリックの教権支配を駆逐してしまいます。
 そうして、ローマカトリック教会にとってカタリ派は最大の脅威になりました」
 組織を持った異端…か。
 僕はふと簞ちゃんを見た。
 まだ先生を睨みつけている。この2人の関係は一体…?

759:2004/01/15(木) 23:23

 先生は授業を続ける。
「そして、カタリ派の支持者による教皇特使暗殺をもって、
 インノケンティウス三世はカタリ派を撲滅する十字軍の派遣を決定します。
 こうして1209年7月、30万というアルビジョワ十字軍の兵士が、ラングドックをめざし進撃しました。
 そしてベジェという町で、同市の司教を通じて、市内に立てこもるカタリ派を引き渡すよう勧告します。
 それを住民が拒否したため、十字軍は大虐殺を始めました。
 ベジエの全住民はカタリ派であろうとなかろうと、守るはずのカトリック信者や女子供まですべて殺害されました。
 その数、約3万人。そして略奪・放火が行われ、町は二日間にわたって燃え続けたと言われています」
 十字軍による大虐殺か…
 キリスト教って愛に満ちてるんじゃなかったのかなぁ。
 やっぱり、宗教ってのはいろいろ大変そうだ。

「殺戮の途中、異端と救出すべきカトリック信者とをどうやって判別すればよいかを問う騎士がいました。
 その問いに、十字軍の指導者の一人であったシトー院長アルノー・アマルリックはこう答えたそうです。
 『みんな殺せ。その判別はあの世で神様がなしたもうであろう』
 そして1229年、パリ和約で南部制圧が完了し…」

「それを、あなた方は再びこの町でやろうと言うのですか…!?」
 簞ちゃんは机を叩いて立ち上がった。
 教室中の注目が集まる。
 一体どうしたんだ?
 僕は簞ちゃんを見つめながら唖然とした。

 簞ちゃんは、先生を睨みつけたまま口を開いた。
「カトリックの異端問題も、三位一体説など純教義的な範囲で収まっていたときは、
 論争を通じての勝利者側による異端者の破門で済むことだったのです。
 十字軍遠征が始まってから生じた異端者が、カトリックの組織そのものをターゲットにするようになったのは…
 …あなた方の無軌道な弾圧の代償なのです!
 結局、アルビジョア十字軍から『異端審問』という名の新たな十字軍が生まれたのです!」
 簞ちゃんは厳しく言い放った。

 静まり返る教室。
 先生は、簞ちゃんと目を合わせると言った。
「宗派である限り、教義的純粋性と組織的統一性を保つために異端者を排除するのは当然です。
 ローマカトリックも、成立から教義論争が何度も繰り返されたし、異端の教義を唱える者は破門というかたちで排除してきました。
 ローマ法皇庁は、政治的機能と宗教的機能を同時に志向した組織ですから、異端者の存在にはより過敏にならざるを得ません。
 異端者は、信仰的異物という存在にとどまらず、国家を転覆する革命家となる可能性が高いからです」

 簞ちゃんはそれに厳しく反論する。
「それは詭弁なのです。十字軍というのは、神の名を騙った略奪・殺戮行為としかとらえようがないのです。
 異教徒を殺せば天国に行けるという認識と、異教徒から解放するという情熱が相まって生まれた最悪の狂騒なのです。
 それをこの町で繰り返そうとしているあなた達は、東方正教会との分裂やホロコーストから一体何を学んだのです!!」

「何も学ぶ必要はありません。歴史は勝者のものですからね…」
 先生は、微笑を浮かべて言った。
 …禍々しい笑みだ。

「勝者が敗者を裁く欺瞞を仮に認めたとしても…
 異端であることが罪と言うならば、あなた達が千数百年に渡り周囲の民に強いてきた行いは――
 ――罪ではないと言うのですか!!」
 激昂する簞ちゃん。
 僕は、こんなに激しい口調で話す簞ちゃんを見た事がない。

「罪なものか。――あれは正義だ」
 先生は薄ら笑いを浮かべて言った。

 その瞬間、簞ちゃんは両手を広げて高く跳んだ。
「正義という言葉の裏で、どれだけの屍を転がせば気が済むのです!」
 シュル… という音がする。
 空中で、簞ちゃんは両手を素早く動かした。
 胸の前で両手を交差させる。
 教卓に2箇所のラインが入り、そこからバラバラになった。
 わずかに、ワイヤーらしきものが光を受けて反射する。
 あれは… 波紋の収束作用で物質を切断するという、簞ちゃんの武器だ。

760:2004/01/15(木) 23:25

 先生は二本の大型のナイフのようなもので、ワイヤーを受け止めていた。
 大型ナイフにはワイヤーが巻き付いている。
 簞ちゃんは、先生の目の前に着地した。

 先生が持っていたナイフの刀身が、バラバラになって床に落ちた。
 柄だけになった大型ナイフを床に投げ捨てる先生。
「何を憤慨する事があるのです。
 ローマカトリックは絶対の正義であり、『教会』は神罰の地上代行者であるはずでしょう?」

「その絶対の正義とやらが、歴史において何の力になったのです…?」
 簞ちゃんは、先生を睨みつけて言った。
「インノケンティウス三世やパウルス四世の布告と、ナチスのニュールンベルグ法との類似は見紛いようもないのです。
 最下級民、大地の汚染者、神殺害の犯罪種族として、家屋、土地の没収、強制移住、強制抑留、そして大量抹殺…
 ファシズムによる民族圧迫を黙認する習慣は、1932年にピウス十二世が就任した時に始まっていたのです。
 1942年、カンタベリー大司教が彼自らとイングランド国教会、および非国教会派を代表して
 ナチスのユダヤ人大量虐殺を告発した時も、聖ペテロの後継者たちは沈黙したままだったのです…」

 先生は可笑しそうに簞ちゃんを見ている。
 再び口を開く簞ちゃん。
「ヒトラーには、世界でただ一人、その証言を恐れる人間がいたのです。
 何故なら、彼の軍隊には数多くのカトリックがいたから…
 だが唯一であるこの人間が口を開くことは、遂になかったのです。
 第二次大戦中、ワルシャワにおけるポーランド人の絶望的な反乱を指揮した指導者の一人は、
 全世界の指導者たちの沈黙を嘆いてこう叫んだのです。
 『世界は沈黙している。世界は知っている。世界が知らないということは不可能である。
  それでも世界は沈黙している。ヴァチカンの神の代理人は沈黙している』…
 あなた達は、正義でも神の代理でもない…、ただの独善者です!
 自分が『悪』だと気付いていない、もっともドス黒い『悪』なのです!」
 簞ちゃんの左手が上がった。
 先生に向かって煌くワイヤー。
 しかし、先生はそれを素手で受け止めた。
 簞ちゃんの両手から伸びたワイヤーが、先生の突き出した右手で握り止められている。
 それは、まるであや取りの糸のようだ。
 ワイヤーがキリキリと音を立てた。
「そうであったとしても、貴方も共犯だ。『教会』に所属している以上はね…」
 先生は勝ち誇ったように言った。

 簞ちゃんはワイヤーを引く。
 しかし、先生は握り止めたまま動かない。ワイヤーを握った手から、血がポタポタと床に落ちる。
「私は、吸血鬼から人々を守る事においてのみ『教会』に協力します。
 もしあなた達が、この町を… いや、この国を焦土に変えようとするなら、
 私はそれを絶対に許さないのです…!!」

 二人の様子を見つめながら、呆然としている僕達。
 ふと、先生は固まっている僕たちを見た。
 そして、ロングコートの中から何かを取り出す。
 あれは…ライター!?

「おにーさん、見てはいけないのです!!」
 簞ちゃんの叫び声。
 僕は、慌てて目を閉じた。

761:2004/01/15(木) 23:26

「――私は、この時間、ずっと居眠りをしていました―― はい、復唱を…」
 訴えかけるような先生の声。
「…私は、この時間、ずっと居眠りをしていました…」
 僕以外のみんなが、声を揃えて言った。
 これは、もしかして催眠術というヤツか?
 代行者はみんなやり方を習うと簞ちゃんが言っていた。
 と言う事は、やっぱりこいつも代行者なのか?

「まったく… 私は、学校では騒ぎなど起こしたくないというのに…」
 先生は呟いている。
 それにつられて、僕は目を開けた。
 バラバラになった教卓が炎上してチリになるのが目に入る。
「それに、しばらくは何も起きませんよ…」
「あなたの言動は、信じられないのです!」
 簞ちゃんは先生を睨みつけている。
 他のみんなは、机に突っ伏して居眠りをしていた。

 そこで、五限終了のチャイムが鳴った。
「じゃあ私はこれで。あなたも学校に通っているのなら、もう少し適応した方が良い。
 授業中に暴れ回るなどもっての他だ。学生は学生らしく、ですよ…」
 そう言って、先生は教室から出て行った。
 簞ちゃんはその後姿を睨みつけ、ワイヤーを引っ込めると自分の席に戻っていった。

「ふわ〜ぁ… よく寝たなあ…」
 みんなが次々と起き始める。
 僕は自分の席を立つと、簞ちゃんの席まで行った。
「…一体、どうしたんだい?」
 僕は恐る恐る訊ねた。
「あの人は、物凄く悪い人なのです。だから、私もちょっと怒っちゃったのです…」
 簞ちゃんは申し訳無さそうに言った。
 これ以上、問い詰めるのも気が引ける。

「…少し調べる事ができたので、私は早退するのです」
 簞ちゃんは席を立った。
「あ、うん…。気をつけてね」
 何に気をつけるべきなのか分からないが、とりあえずそう言った。
「じゃあ、また家でなのです」
 簞ちゃんは、カバンを持って教室を出て行った。
 6限開始のチャイムが鳴る。

 6限の間もずっと、先生と簞ちゃんの言い争いの事を考えていた。
 簞ちゃんの様子も尋常じゃなかったが、その時の話も気になる。
 理解できない事も多かったが、『教会』がこの町で虐殺をやろうとしているように受け取れた。
 モナーも、簞ちゃんは『教会』に騙されている可能性が高いと言っていた。
 一体、『教会』っていうのは何を企んでいるんだ…?
 そんな事を考えていたら、いつの間にか6限は終わっていた。
 …家に帰るか。
 いろんな不安を抱えながら、僕は帰宅の途についた。



          @          @          @



 フサギコの自宅で、4人の人間が居間のテーブルを囲んで座っていた。
「これではまるで、私服での幕僚会議だな…」
 海上幕僚長は冗談めかして言った。

「さて… 知っての通り、ASAが我が国に『戦力』を持ち込んだ」
 フサギコは立ち上がって言った。
「そこで、諸君の考えを伺いたい」

 航空幕僚長がまず口を開いた。
「政府とは、話がついていると聞いたがな…」
「役人や政治家は、スタンド使い共の危険性をこれっぽっちも理解していない」
 フサギコは吐き捨てる。
「そんな密約など、俺は認めんよ」

「するとあんたは、ASAを外部からの侵攻と思ってる訳だ…」
 航空幕僚長は、フサギコに言を横目で睨んだ。
「当然だ」
 間を置かずフサギコは断言する。

「伝家の宝刀を抜くのか? 自衛権の行使を…」
 陸上幕僚長が口を開いた。
「無理に決まってるだろう! 長官も首相もASAには及び腰だ。世論だって許すはずがあるまい!」
 航空幕僚長は大声を上げる。
「そう興奮しなさんな。なにをカリカリしている? 雨の中、こんな用件で集められたのが気に入らんのか?
 それとも… 行使したくてもできないからか?」
 落ち着いた声でそれを諌める海上幕僚長。
「自国を蹂躙されて喜ぶ自衛官など、この世に存在しない… そして、私も自衛官だ」
 航空幕僚長は、腕組みをしたまま椅子にもたれて呟いた。

「で、君はどうなんだ?」
 フサギコは海上幕僚長に聞いた。
「自衛とは、外国からの急迫または現実の不正な侵害に対して、国家が自国を防衛するためにやむをえず行う
 一定の実力行使である… 今動かずして、いつ自衛権を行使すると言うんだ?」
「君は?」
 陸上幕僚長に視線を送るフサギコ。
「所詮、我らは違憲の軍隊… ならば、職務を全うするだけだ」
 陸上幕僚長は言った。

「全員一致だな。以上、我々『居間の内閣』は集団的自衛権を行使するに至った、と…」
 海上幕僚長はそう言って笑った。

762:2004/01/15(木) 23:27

「で、どうやってそれを上に認めさせるかだな…」
 航空幕僚長は再び腕を組む。
「私達制服組は、首相官邸にも入れてもらえんぞ」
 陸上幕僚長はため息をついた。
 フサギコは口を開く。
「そんなもの、強引にやるに決まってる。国会審議など邪魔なだけだ…!」

 三人の幕僚長は唖然とした。
「国会審議も無しで、首相決定も無く… それで、隊を動かそうとあんたは言うのか…!?」
 航空幕僚長が言葉を放った。
 フサギコは口を開く。
「俺は… 百年、二百年先のこの国の事を考えている。ファシズムと言われようが、軍の専横と言われようが構わん。
 悪鬼として歴史に名を残す覚悟は出来てる。
 だが… この国の為を思えばスタンド使いなど危険なだけだ。
 我が国の平和を願うなら、奴等は絶対に排除しなきゃならないんだよ!!」

 三人の幕僚は黙り込んだ。
「我らが独断で動くとなれば、事実上のクーデターだな。我々は全員内乱罪で死刑だ」
 航空幕僚長は腕を組んだまま口を開く。
「それだけじゃない。刑法93条の私戦予備・陰謀罪にも引っ掛かるぞ?」
 口に手を当てる陸上幕僚長。
「自首した場合、刑は免除だよ」
 海上幕僚長は笑って言った。

「ところがな、そう勝算がない話じゃないんだ。これを見てもらいたい…」
 フサギコは、一本のビデオテープをデッキに突っ込んだ。
 そして、再生ボタンを押す。

「これは…」
 陸上幕僚長は思わず呟いた。
 画面に戦闘ヘリが映っている。
 それを見て、陸上幕僚長はフサギコに視線をやった。
「RAH−66か? 米陸軍でも、配備は早くて2006年のはず…」
 フサギコがそれを受けて口を開く。
「ASA所有のヘリだ。9月19日、ASAは事もあろうに市街戦をやらかした」
「ほう、初耳だな…」
 海上幕僚長が画面を覗き込む。
 フサギコは忌々しそうに言った。
「情報が統制されてたからな。知っているのは次官より上のクラスと、公安五課だけだ」
「私は知っていたぞ。帳尻を合わせられたからな…」
 航空幕僚長は憎々しげに言った。
「おっと、そう言やそうだったか…」
 この事件は、一般には自衛隊機の墜落という事で処理されている。
 そのせいで、航空自衛隊はいわれのない避難を受けたのだ。

 画面には、戦闘ヘリの姿があった。
 撮った人間が下手なのか、手ブレがもろに伝わっている。
 そして、ヘリに対峙するように立っている不気味な男。
 夜なのではっきりとは顔が見えない。
「こいつは…?」
「通称、『矢の男』。スタンド使いだ」
 フサギコは答えた。
 幕僚長三人は、画面に見入っている。

763:2004/01/15(木) 23:27

 ヘリから、次々とミサイルが発射された。
 それらの発射物は、男に向かって飛来する。
 カメラワークが男の方に寄った。
 男に直撃するミサイル。
 爆音が割れて、不快な音が流れた。
 画面はもうもうと舞い上がった白煙で包まれる。
「これは…本当に我が国での出来事なのか?」
 陸上幕僚長の問いに、フサギコは無言で頷いた。

 数十秒ほど経って、じょじょに煙が薄くなっていく。
「そんな、馬鹿な…」
 航空幕僚長は思わず呟いた。
 男は、そのままの姿で立っていたのだ。
 周囲は炎上している。
 しかし、彼の体には損傷は全くない。
 ほんの少し、口の端が持ち上がったように見えた。
 …笑った?
 だが、映像が鮮明ではないせいで確認はできない。
 そこで映像は途切れた。
 画面に映る砂嵐を、三人は呆然と見つめていた。

「公安五課が押収した証拠映像だ。この後、ヘリは撃墜される」
 フサギコは言った。
「ヘルファイアの直撃を喰らって無傷…?」
 航空幕僚長はフサギコに視線を送った。
「いや、公安五課の分析によると、直撃はしていないらしい。
 『矢の男』の身体に当たる前に、ミサイルのほとんどが消失している。
 逸れて爆発したミサイルからの爆風すら、『矢の男』の身体に当たってはいない」
 そう言いながら、フサギコは視線を落として腕を組んだ。
「消した…? ミサイルも、爆風も…?」
 信じられない、といった表情で呟く海上幕僚長。

「だが、最も重要な点は、このビデオが存在する事だ」
 フサギコは言った。
「このビデオの存在は、我々にとって大きな武器になる。
 前半部だけを流せば、『軍事組織ASAによる民間人攻撃の瞬間』。
 フルに流せば、『これがスタンド使いだ! 政府が隠すその恐るべき力』。
 …ちょっとイマイチだな。
 まあ、見出しはマスコミが考えてくれるだろ。とにかく、世論はこっちに傾く」
 フサギコはビデオを片付けると、ソファーに腰を下ろした。

「フルに流すのはまずくないか? 下手すりゃ、魔女狩りの再来だ」
 海上幕僚長は言った。
「確かにそうだが… 治安維持の為には、この国からスタンド使いを完全に追放するのも有効ではないか?」
 航空幕僚長が口を開く。

「ビデオの前半部だけで喧伝すれば、世論は動かせる。
 国際法上も問題ないどころか、人道的にも問題があるとみなされるだろう。つまり――」
 フサギコはそこで言葉を切った。
「――専守防衛を行使できる」

 その言葉が響き渡った。
 一座は静寂に包まれる。
 しばしの間の後、フサギコは口を開いた。
「後半を見せるのはそれからだ。あくまで段階的に… だな。
 数による優位が戦闘での優位とは必ずしも一致しせず、多くの情報とメディアを制した者が勝利を収める。
 とりあえず、先程のビデオの前半と… 吸血鬼殺人についてマスコミにリークしよう」

764:2004/01/15(木) 23:28

「吸血鬼殺人?」
 航空幕僚長が聞き返す。
「ASAが情報を統制している機密だ。この町で、吸血鬼によるとしか思えない殺人事件が継続して起きている。
 その犠牲者の数はすでに20人にも達するという…」
 フサギコは答えた。
「なるほど。スタンド使いの存在が大きく世に出れば、その事件と結び付けて考える連中も出て来るだろう。
 そうなれば… 世論はますます我々に優位に傾くな」
 陸上幕僚長が言った。

「…ASAの大量派兵による米軍の対応は?」
 フサギコが、航空幕僚長に尋ねた。
「三沢や厚木、沖縄基地は、P−3C対潜哨戒機が昼夜問わずパトロール中だ」
 航空幕僚長は腕を組んで答えた。
「洋上では、第七艦隊が動いている。横須賀の司令部は大慌てだ。第三艦隊もパールハーバーで常備出撃可能」
 海上幕僚長は可笑しそうに言う。
 フサギコは口の端を持ち上げて笑った。
「無論、彼等にも協力してもらおう。我が国は、ASAの侵攻を受けている。
 アメリカには、安保条約を守ってもらわなくてはな…」

 しばしの沈黙の後、フサギコは海上幕僚長の方を向いて口を開いた。
「では、横須賀の第1護衛隊、佐世保の第2護衛隊をしばらく動かしてくれないか? ASAの艦隊への牽制でいい」
「了解…!」
 海上幕僚長は敬礼のポーズを取った。
 陸上幕僚長が口を開く。
「じゃあ私は、練馬の第1師団にハッパでもかけておこう。
 それと… 極秘裏に、東千歳の第7機甲師団を関東に移動させる」
 それに続いて、航空幕僚長が言った。
「まあ、ウチは常時警戒態勢だがな… より一層の警戒に当たろう」
 フサギコは再び海上幕僚長を見る。
「あと… 海中への威嚇も必要だな。ASAの潜水部隊の艦種は分かるか?」
 海上幕僚長は腕を組んで答える。
「セヴェロドヴィンスク級SSN(攻撃原潜)が3艦に、ボレイ級のSSBN(戦略原潜)が2艦ですな。
 ASAはよっぽど最新技術が好きと見える…」
 フサギコは立ち上がった。
「で… それだけの潜水艦を相手に、月単位での長期に渡って牽制を続行できるだけの人物が海自にはいるか?」
 海上幕僚長は笑顔を見せる。
「海上自衛隊の対潜技術は世界一だ。その中でも、一番優秀なヤツを派遣しよう」

 フサギコは窓の外を見た。
 雨はすっかり止んだようだ。
 表情を緩めて、ため息をつくフサギコ
「粗暴だの何だのと周囲から言われ続けて… 気がついたら、この俺が統合幕僚会議議長だ。
 そして、この国を戦渦に巻き込もうとしている。だが、俺はそれを正義として疑わない…」

「いや、決して疑ってはならん。正義という御旗を失えば、我々は単なる国賊だ」
 真面目な顔で言う海上幕僚長。
 それを受けて航空幕僚長が呟いた。
「我々は、まともな死に方はできんだろうな…」

765:2004/01/15(木) 23:28

 押し黙る4人。
「…で、勝算は?」
 航空幕僚長は訊ねた。
「勝算のない戦をやる軍人などおらん。そうなれば、もはや軍人ではない。
 最新のテクノロジーなど、奴等には過ぎたオモチャだ」
 フサギコは、つかつかと窓の方に歩み寄る。 
「恐れるべきは、スタンドのみという事だな…」
 そう呟きながら、海上幕僚長はテーブルに肘を着く。
 フサギコは窓の傍に立って息巻いた。
「例え人間単位で強力な力を持とうが、今は戦国時代ではない。歩兵が闊歩する戦争は過去の遺物だ。
 近代兵器の前では、スタンドなど何の役にも立たん事を教えてやる…!」

「スタンド使いか… 考えれば悲惨なものだな。
 なまじ異能を持ってしまったばっかりに、社会から排斥されようとしている…」
 陸上幕僚長は呟いた。

 …ガチャリ。
 突然に響く、玄関のドアが開く音。
 一座に緊張が走った。
「ああ、大丈夫だ。あれはウチのせがれだな。学校から帰ってきたんだろう」
 フサギコは言った。
 一同は胸を撫で下ろす。
「密室会談は、小心者には向かんな…」
 そう言って、海上幕僚長は笑った。
「俺達は、政治家にはなれんという事だな」
 フサギコもそう言って笑う。
 陸上幕僚長と航空幕僚長も笑みを見せた。

「ただいまだ、ゴルァ!」
 ドスドスと廊下を歩く音が近付いてくる。
「あれ、オヤジいるのか? 仕事は…?」
 豪快に居間に入ってくるフサギコの息子。
 そして、驚いた顔で一同を見回す。
「あ、…こりゃ失礼しました。来客中でしたか… でも、靴の数が… アレ?」
 彼は首をかしげる。

「おぅ、ギコ君。私の事を覚えているか…?」
 海上幕僚長は笑みを浮かべて言った。
「えーと… すいません。どちら様でしょうか…」
 かしこまるギコ。
「君がほんの小さい頃に、会った事があるんだが… そうか、小さかったもんな…」
 海上幕僚長はしみじみと言った。
「なかなか見込みがありそうだね。いい自衛官になりそうだ」
 陸上幕僚長は、ギコの瞳を真っ直ぐに見て頷いた。
「な… こいつは自衛官にはならんぞ!」
「な… オレは自衛隊には入りませんよ!」
 二人揃って同音異句に声を上げる親子。

「剣道の県大会で、いい成績を残しているようだね。君の父上がよく自慢しているよ」
 航空幕僚長が口を開く。
「今度、手合わせ願おうかな。私も二段を持っている」
「あ、是非お相手させて頂きます」
 ギコはかしこまって頭を下げた。
「別に自慢はしていないぞ!」
 フサギコは脇で文句をつけている。

「さて、話もまとまったところだし… そろそろお暇させてもらうよ」
 三人はソファーから立ち上がった。
「おう、帰りに気をつけろよ」
 フサギコは目配せしながら言う。
「君も自重しろ。無理はするなよ…」
 そう言って三人は、居間から出て行った。
 フサギコは見送りには出なかった。

 居間は、ギコとフサギコの二人だけになる。
「俺、邪魔だった?」
 ギコは言った。
「いや、ちょうど話は終わったとこだ」
 フサギコはソファーに腰を下ろした。

「客が来るんなら、あらかじめ言ってくれたらいいのに… なんか威圧感がハンパじゃない人達だったな」
 ギコは冷蔵庫を漁りながら言った。
「そこそこ偉い連中だからな。まあ、俺ほどじゃないが…」
 ソファーの上でふんぞり返るフサギコ。

「馬鹿か、オヤジ…」
 ギコは呆れてため息をついた。



  /└────────┬┐
. <   To Be Continued... | |
  \┌────────┴┘

766丸耳作者:2004/01/16(金) 00:08
新作乙!と言わせて頂きます。ペース早いなー。

767302:2004/01/16(金) 21:51
「スロウテンポ・ウォー」

イソギンチャクと最後の秒読み・4

『MASTER…カウントダウン・承認ヲ……!!』
「承認…っ!?ど、どうやって…!」

突然聞こえたスタンドの呼び声に、ノーは浮き足立った。
丸耳モララーが、狂気を“吸い上げて”いるのに気付かず…

「ゲヒュヒュヒュヒュ!!!よそ見は死!死!死ぃ―――っ!!!!マァーッド!!ブラストォォォ!!!」

(D O O O O N N ! ! ! ! )

爆発。
足元のコンクリートが溶けた…一体どれだけの狂気のエネルギーを打ち込んでいるのか、わからない。
これを直撃すれば、大怪我大火傷じゃすまないだろう。
ニダーは未だにフラフラしている、ノー自身はスタンドの言葉の意図を飲み込めない。
八頭身フーンは静観…そして、丸耳モララーは再び狂気を充填している…

「か、カウントダウン…?ど、どうすればええの?」
『簡単ナコトデス、MASTER…“カウントダウン・開始”…ソウ言ウダケデス、ソレダケデス』
「それを言うと、どうなるんよ?わからへんのに、使うほど無茶できんよ…!?」
『今カラ、10分ダケノ間…私ノ“POWER”ガ上昇シマス。最後ノ一分間ハ、最高ノ“POWER”ヲ得レマス。』
「わ、わかった…とにかく、10分だけ強くなるんやな!?」

768302:2004/01/16(金) 21:52
「スタンドとおおぉぉ!!相談してる暇がぁぁ!!テメーにあんのかぁぁぁ!!?ゲヒュヒュヒュヒャアア――!!!!」
「な、なんや…!?し、しまった……!!!」

ノーに向かって飛んでくる、“マッド・ブラスト”の狂気弾…

「(あかん!殺られる!!!間違いなくっ!!)」

(Z D O O O N N N ! ! ! ! )

弾丸は、ノーに達する前に爆発した。
白煙の中から現れたのは、全身で狂気弾を防いだニダーとシー・アネモネの姿だった。

「…い……ったぁ……。流石に……これはキツイわ……ゲホッ……」
「に、ニダやんっ!!なんで……!?」
ノーの問いに、ニダーは“いつもの”笑顔でこう言った。
「…こ、ここで……相方守れんよーな奴が、他に何できる…?」
「……っ!」

「オイオイオイ…うつくしー、友情ごっこ……だーっいっきらーい!!ゲヒュヒャハーッ!!」
丸耳モララーの目は既に…オーバードラッグになった男と、同じ様な目をしていた。
一歩ずつ、近寄る。確実に射撃を当てるために。

「(さぁ…これで、こいつらもオシマイだァ…“ヘッド”にゃ、自警の新人ぶっ殺したって言えばOKだァ…!!)」

「……カウントダウン・発動…!」
ノーの声が、冷たく…響く。

『OK,MASTER…LET ME FINAL COUNT DOOOWN!!』

769302:2004/01/16(金) 21:52
ガチイィッ!!

額の数字が、一秒ずつ減っていく…『<09:57>』

「…お前はクズや。……狂って、殺して、反省などしない…!お前はぁ!お天道様が許してもぉ!!ウチが絶対許さん!!」
「(ケッ…吠えてろ、負け犬ぅ…どーせどーせ、テメーのスピードなんざ…)」

バキャッ!!

「がはっ……!(な、何だ…さっきよりスピードとパワーが上がってやがる……!!)」
「…残り、8分50秒…残りの時間は、お前の反省の時間や。」
「ち、チイイイィィッ!!(クソッ、この威力は半端じゃねえ…もし、これ以上パワーが上がったら…!)」

「テメエエエ!!近寄るんじゃネエエエエ!!!!」
バックステップで、ノーから距離を取り…スタンドの銃を構えて
「マッド・ブラストォォォッ!!!乱れ撃ちダァァァ!!!奴を近寄らせるんじゃネエエエエ!!!」

(DONN!!DONN!!DONN!!!)

「くっ…流石に、使い慣れとる…スタンドを……」

『<08:03>』

770302:2004/01/16(金) 21:53
(DONN!!DONN!!!DONNN!!)

後ろを振り向いた。屋上の金網フェンスは既に狂気弾で破られている。
「仕方ない…退くも地獄、進むも地獄…なら、ウチは!!“進む地獄”を選ぶっ!!」
「ファイナル・カウント・ダウン!!強行突破や!!!」
『OK,MASTER……!GO!GO!GO!』

狂気弾の暴風雨を潜り抜け、丸耳へと接近していくノー…だが、敵も然る者…

「近寄るなぁ!!テメーの大事な親友君がどうなっても…いいんだなぁああ!?」
そう叫んだ丸耳が踏みつけ…スタンドの銃口を向けていた先には…
「…す、すまん……のーちゃん…!」
傷つき、逃げ送れたニダーが居た。
「……どこまで卑怯なんや…お前はぁぁぁ!!!」
怒りに任せて、突進しようとした次の瞬間…

(DOON!!)

ノーの足元に、狂気弾が打ち込まれる。一歩も近づけさせない、そう主張するように。
「近寄るな…って、俺は言ったんだぜぇ…!?テメーの耳は“でぃ”と同じで使い物になんねーかぁぁ!?」
「……くっ……!!」
最悪の状況に陥ってしまった。丸耳モララーとの距離は5m…
それを残し、ノーは一歩も動けなくなってしまった。
「(奴を倒すより先に、ニダーを安全な場所に移すべきやった…クソ…ウチの甘さが憎いっ…!)」
「のーちゃん…何を迷っとる!ワイの事は気にするなぁ!!コイツにぶちかましたれぇぇ!!」
「…そんなん、できんよ…ニダやんっ……!」
「ああ!出来ないよなぁ!!お前ら“大親友”だもんなぁぁぁ!!ゲヒュハヒャハハハハハ!!!!」

時間は止まらない…ファイナル・カウント・ダウンのカウンターは確実に減りつづける……

『<05:22>』

<TO BE CONTINUED>

771新手のスタンド使い:2004/01/17(土) 18:49
乙。

772丸耳作者:2004/01/17(土) 19:03
「爺ィの心配してる暇はねぇぞ〜♪」
 不定形のスタンド使いが、挑発するように踵を打ち鳴らした。
「お前の『スタンド』…弱っちいだろ?」
「…何でそう思う?」
「長年虐殺やってるからな。面構え見れば判るのよ。
 『お前は絶対俺には勝てません。 汚らしく命乞いしながらブッッッッッ殺されて絶望の中で死んでいきます』ってなぁ!」
男の挑発にも、マルミミは動じない。警棒を中段に構えて、静かに応える。
「うん…確かにお前の言うことは的を射ているよ。僕の『ビート・トゥ・ビート』は、決して強いスタンドじゃない。
 無尽蔵にラッシュが出来るような『スタミナ』があるってわけでもないし、地球の裏側まで行けるような『射程距離』も、
 相対速度百キロ以上で走ってくるトラックを受け止められるような『パワー』もない。
 『能力』にしたって『鼓動の探知』以外は大したことは出来ないし、これ以上大きな成長もしないと思う。
 けど…僕は負けない。弱いヤツが判るだって?馬鹿が。一番弱いのは…お前だよ」
マルミミの切り返しに、青筋が男の額にびきりと走る。
男の体にまとわりついていた不定形のスタンドが、触手となってマルミミへと撃ち出された。
だがマルミミは眉一つ動かすことなく、半歩右に動くだけで触手をかわす。
 男の眉がしかめられ、再び触手が撃ち出された。
視認できるギリギリの速度で次々と襲い来る触手を、むしろゆっくりとした動作で避け、あるいは手元の警棒で受け流しながら距離を詰めていく。
「―――物事って言うのは『短所』が即ち『長所』になる。たとえ一メートルぐらいしか離れられなくても」
 また一歩、足を進めた。近付くたびに攻撃が激化しているというのに、涼しい顔でかわし続ける。 
「たとえ四歳児程度のパワーしかなくても。たとえ並の人間以下のスタミナしかなくても。
 僕には今お前の攻撃をかわしてるような『精密な分析』と―――」
踏み出した足が、頭の中で引いた『一メートル』のラインを超えた刹那、瞬時にビート・トゥ・ビートが具現化する。
「誰にも負けない『スピード』がある」

773丸耳作者:2004/01/17(土) 19:05

―――――1997年、アメリカ・フロリダ州のとある少年が、公園で友達と遊んでいた。
彼等がキャッチボールに興じていると、受け取り損なった少年の胸に軟式のボールがポンとぶつかった。
それだけなら、何のことはない遊びの中の一場面だろう。
ボールを拾い上げ、再びキャッチボールを続けると誰もが思うだろう。
                         ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
 だが、その少年はいきなり苦しみだして数時間後に死亡した。
国内ではあまり知られていないが、この現象は『心臓震盪』と呼ばれている。
              ・ ・ ・ ・ ・ ・
 心臓の『鼓動』。その僅かな隙間に、ボールの衝撃が偶然入り込んだのだ。
それが引き起こされるのには『パワー』も『スタミナ』も要らない。
ほんの僅かな衝撃を数発、絶妙のタイミングで入れればいい。
                             B ・ T ・ C
 それが、マルミミの編み出したスタンド攻撃『ビート・トゥ・クール』
スタンドを触手に変えたせいで、男の防御は穴だらけになっている。
B・T・Bの拳を阻む鎧はもはや無く、スタンドを引き戻すにも遅すぎた。

                      クゥゥ――ゥゥゥルッッ
「刻むぞ静寂のビート」「凍テツクホドニCoooooooooolllll!」


 マルミミの呟きにB・T・Bの声が重なり、閃光のラッシュが打ち込まれた。
男は反応すら出来なかった。B・T・Bの感覚を通して、急速に弱まる鼓動が伝わって――――――

774丸耳達のビート:2004/01/17(土) 19:07
(―――来ない!?)
 鼓動に変化がない。不定形のスタンドが再び動きを取り戻す。
「ッ戻れB・T・Bッ!」
 B・T・Bがマルミミの体内へと吸い込まれ、慌てて後ろへと飛び退いた。
「…ッチ」
 男が小さく舌を鳴らした。
数メートル後方に着地したマルミミが、再び構えをとる。背筋に冷たい汗が流れたのがわかった。
「服の中に『スタンド』を潜ませていたのか…」
 朝っぱらから虐殺などやっているから頭のネジがすっ飛んだ電波かと思っていたが、間違いだったようだ。
先を見通して布石を打っておくなど、ゆんゆん脳で出来ることではない。
(待てよ…ってことはまさか…素面で虐殺やってるって事!?)
 恐ろしい考えが頭に浮かんだ。狂気にも犯されないまま、正気の状態で虐殺を行う。
それがどんなに異常なことか。この男の中では、殺人が食事や睡眠と等列に考えられている―――!
 マルミミの戦慄を知ってか知らずか、男が更に言葉を続ける。
「俺の『アシッドジャズ』はあらゆる衝撃を吸収して、拡散させる。 ただでさえ弱っちいテメェの攻撃なんざ消えちまうのさ」
言葉の端々から余裕を漂わせ、挑発するようにスタンドの鎧を見せつけた。
      ビート・トゥ・クール
(マズいな…『B・T・C』は精密な動きが要求される…あんなグネグネしたモノ越しじゃあ上手く衝撃が伝わらない)
「さあまだテメェは策があるのか?無いよなぁ?その弱っちいスタンドで醜く抵抗してこの俺に絶望の表情見せながら死んでけ!」
まとわりついた不定形のスタンドが再び蠢く。今度の形は、ぬらぬらと光る巨大な腕。
「スゲェよなぁ、コイツは。コイツを使えば何が起こったのかすら判らないうちに虐殺されていくんだぜ?
 楽しいよなぁ面白いよなぁ最高だよなぁ!んでテメェもそんなカンジに苦しめ絶望しろ虐殺されろ!」
異様なまでのハイテンションに、マルミミが顔をしかめた。
「…『絶望しろ』?やだね。もう一つだけ僕のB・T・Bには『策』がある」
「何?」
 訝る男をよそに、B・T・Bがマルミミの体内に入ってしまった。

775丸耳達のビート:2004/01/17(土) 19:09
                                    ・ ・ ・ ・ ・ ・
「オイオイオイオイ、ひょっとしてその『策』っつーのはまさか降参することか?
言っとくが、泣いて土下座しても俺は許してやんねぇぞ? まぁ・それならそれで命乞いしてるテメェを思ッッッッ糞!」
男が構える。蠢く腕が抜き手の形を作り、引き絞られる弓の如く力を溜める。
「ブッ・殺・す!」
 今まで見た中で最も重い、最も早い男の一撃。
それを見据えて、口の中だけで小さく呟いた。
「刻むぞ灼熱のビート」
 体内のB・T・Bがそれに続ける。
「焼キ尽クスホドニHeat!」
  〇,一秒にも満たない時間が幾分にも感じられる。
  心臓が高鳴り、耳の中でごうごうと血流の音が聞こえる。
  右手の警棒を握り締める。体の重みが消失する。
  マルミミの中の、もう一つの鼓動が目を覚ます。
  その快感はまるで千年の獄から解き放たれた虜囚の如く。
  迫り来るスタンドすらも、快楽の一つでしかないと思えるほどに。
    B ・ T ・ H
「『ビート・トゥ・ヒィィィ―――――――――ト』ッ!!」

 マルミミの腕が霞み、襲い来る拳を警棒で打ち据えた。
「が…ッ!?」
 男の腕に、拳の受けた衝撃が伝わってくる。
生身でスタンドを打ちのめしたその力とスピードに、男の目が驚愕に見開かれた。

776丸耳達のビート:2004/01/17(土) 19:13
 ウ リ ャ ァ ァ ァァァ
「URYAAAAAAA―――――――――ッッッッッ !! !! !!」
 甲高い声で一声叫び、地面を蹴った。
ハリウッドのワイヤーアクションの如く、数メートルほどの高さまで跳躍する。
そのまま壁を蹴り、路地の両脇にそびえる廃ビルの間をゴムボールのように反射しながら男へと向かった。
「アシッドジャズ!」
 男の体から、再び不定形のスタンドが滲み出て、男の体を被う。
だが、スピードの乗ったマルミミの一撃は不定形のスタンドを超えていた。
衝撃をガードの向こうの本体にまで浸透させて、男の体が吹き飛ばされる。
 勢いのままに廃ビルの壁を突き破り、中へと転落した。
粉塵の立ちこめる廃ビル内に、マルミミの声が響き渡る。
  ビート・トゥ・ビート
「僕のB・T・Bは『鼓動』のスタンド…自分自身の鼓動が操れないとでも思ったのかい?」
「オイ…嘘だろ…?」
―――考えてなかった訳じゃない。あのスタンドを自分に叩き込むって事は、ある程度予測してた。
  だが、アレは間違いなく常識を外れてる。
  虐殺やってた俺だからわかる。人間の体はどれだけの力を加えれば壊れるか。
  どれだけの力に耐えられるか。だけど、アイツの動きはまるで違う。
「あんな動きが出来るわけがねぇ…鍛えてどうこうとかじゃねぇ…物理的に限界の筈なのに!テメェは何で動けるんだよ!!」

777丸耳達のビート:2004/01/17(土) 19:14
               ・ ・ ・ ・ ・
「限界…そうだな。僕が普通の人間ならな」
ととんっ、ととんっ、ととんっ―――――
 いつの間にやら、マルミミの爪先が細かいタップを刻んでいる。
「『吸血鬼』というのを知っているかい?」
ととんっ、ととんっ、ととんっ―――――
 言葉の合間にも、一定の間隔でビートが響く。
「古代アステカで、『石仮面』っていう物が発掘された。そいつを使って、人間をやめた人間」
ととんっ、ととんっ、ととんっ―――――
「人の血を啜り、日光で気化する化け物…おとぎ話かもしれない。だけど、僕の母親は」
ととんっ、ととんっ、ととんっ―――――
「『太陽アレルギー』とかで決して外に出なかった」
ととんっ、ととんっ、ととんっ―――――
「診療所の輸血パックが、いつも減っていた」
ととんっ、ととんっ、ととんっ―――――
「そして僕も、『B・T・H』を使っている間は太陽の光で肌が灼け…」
ととんっ、ととんっ、ととんっ―――――
「本能的な『渇き』に襲われる事がある。…まぁ、信じようが信じまいがどっちでもいいさ」
ととんっ、ととんっ、ととんっ―――――
「この際そんなことはどうでもいい。それよりも重要な事は、お前等が母さんを殺したこと」
ととんっ、ととんっ、ととんっ―――――
「父さんは母さんを愛してた。それをお前等みたいな虐殺者達が壊したんだ」
たんっ!
 爪先が一際高く地面を叩いた。刻まれていたビートが途切れ、静寂が訪れる。
「そしてお前等はまたそんな悲しみを増やそうとしてる」
 気が付けば、もうマルミミの姿は男の目前にあった。
先程のような穏和な表情は掻き消え、血の色をした瞳の奥に深い憎悪が燃えている。
「―――アシッドジャz」
 ウ リ ャ ァ
「URYAA!」
 スタンドを具現化させる時間すら与えず、マルミミの警棒が男の両肘に食い込んだ。
関節が潰れる音。もう虐殺はおろか、ナイフとフォークも持てないだろう。

778丸耳達のビート:2004/01/17(土) 19:16
「がっ…あぁぁあっ!!」
「殺された側の痛み、残された家族の心、その友人達の気持ち。お前にそれが理解できるのか…!?」
 冷たく熱い、憎悪の瞳。その視線にあてられて、男の体が恐怖にすくみ上がる。
「あっ…いっ、ひあっ…すいませんでしたっ…!もう…虐殺も…!しません…っ!」
 がたがたと震えながら、折れた腕を地面につける。
「私の負けです!改心します悔い改めます悪いことしてました靴もなめます!」
 本当にペロペロ靴をなめだした。靴が汚れるじゃないか。
「いくら殴ってもいい!ブッてもいい!蹴ってもいい!だから命だけは許してくださいっ!」

ごぐゅっ!

 無言のまま、今度は膝を砕く。
「があああっぁあっ!! !! !! !!」
「その両手足の痛みで、シュシュの…あの路地裏で虐待されてたしぃの痛みは支払ったことにしてやる」
そのままB・T・Hを解除し、男に背を向けた。
「だからもう、僕の前にその顔を見せ…!」

ばがっ。

 唐突に、何の前触れもなく地面が割れた。
踏みしめるべき床が無くなり、浮遊感が体を包む。
「―――――ッ!!」
 上の方から、狂ったような哄笑が響き渡った。
「ヒッヒヒッヒヒヒャァアハハハハッハ!! !!馬ァ―――鹿ァッ!どうだァ!『アシッドジャズ』の強酸の粘液は!
 じわじわジワジワテメェの足下を浸食させた!」
マルミミの体が自由落下を始めようとする中、不定形のスタンドが闇の中でぬるりと光った。
反応する間もなく、ぐわっと不定形に飲み込まれる。酸に浸食され、体中の皮膚がぶすぶすと焦げ始めた。

779丸耳達のビート:2004/01/17(土) 19:20
B・T・Bを具現化させようとするが、ガッチリとスタンド自体が捉えられている。
 下の方で、警棒が落ちる音が聞こえた。いつの間にか落としていたらしい。
「ぐっ…!」
「どうだ?どうだ?どうだ!?自分の優位が一瞬でひっくり返される気分は!
 このまま溶かされたいか?それともグジャグヂャのジャムにされてぇか!?
 …いや決めた!タダじゃ殺さねぇ!ゆっくりゆっくりゆっくり溶かして苦しめながら握りツブしてやる!! !! !!」
逆さ吊りにされてスタンドも出せず、体中の皮膚は炎症を起こしている。
 挙げ句の果てに身動き一つとれない状況だが、マルミミの表情に恐怖はない。
「…っんだァ?テメェ…虚勢張ってんじゃねぇよ」
 顔面に酸をかけられた。まだあどけなさを残すマルミミの顔に、無惨な火傷の後が刻まれる。
「っぐぁ…!」
「スタンドも!武器も!テメェの身を守る物なんざ一ッッッッッッつも無ぇんだよ!」
口の端から涎を飛ばす男に向けて、苦痛に耐えながら声を振り絞る。
         ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「…お前は…もっとも愚かな選択をした…」
「ああ?」
 耳を澄ませてようやく聞こえる程度の小さな声で、ぼそぼそと呟き続ける。
「『僕に嘘は通じない。僕がお前の便所コオロギの糞にも劣る『心』を見抜けないとでも思ったのかい?』
 ―――――僕はお前に四日前、そう言ったはずだ。
 お前が『改心する』と言ったとき…それが『本心からいった言葉』だったらその折れた手足を治してやった…
 『その場を誤魔化す嘘』だったなら…まぁ救急車くらいは呼んでやった……そして―――――」
一呼吸の間をおいて、再び言葉を紡ぎ出す。  ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「―――『不意打ち』をしようとしたら―――――もっとも惨たらしく殺してやった」

780丸耳達のビート:2004/01/17(土) 19:21


ばずっ。


 言葉が終わるのとほぼ同時。何の前触れもなく、男の腕が爆発した。
損傷がスタンドへフィードバックし、マルミミを拘束していたスタンドも弾け飛ぶ。
「…!…!?…な…!…?」
 マルミミの体が宙づりの状態から解き放たれ、くるりと一回転して綺麗なフォームで着地した。
「骨が折れてもお前のような不定形のスタンドなら影響は少ない。その上遠隔操作もできるのか…
 いや、油断してたよ。でも、流石に腕をぶっ飛ばされちゃあ動くのは無理だろう?」

ととんっ、ととんっ、ととんっ―――――

 B・T・Bが具現化し、再び廃ビル内でタップが始まった。
具現化したそのピエロは、右手首から先が無くなっている。           サ・ノ・バ・ビ――――ッチ
「先程殴ッタ時、貴様ノ心臓ニ私ノ右腕ヲ埋メコンダ。イツマデ『加速』ニ耐エキレルカナ?Son・of・a・Biiiiitcccch」
 マルミミに行うように精密でも、複雑でもない操作。乱暴に、単純に、只々鼓動を『加速』させていく。

ととんっ、ととんっ、ととんっ―――――

「あっ…ああぁっ…!」
 体が熱い。爆散した左手から、ぶしゅぶしゅと血が吹き出てくる。


ととんっ、ととんっ、とたんとたとたとたたたたタタタタ―――――

どくんっ、どくんっ、どぐんどぐどぐどどどどどドドドド―――――

781丸耳達のビート:2004/01/17(土) 19:23
「……………!!」
 ようやく男は、マルミミの奏でるタップの意味に気が付いた。
マルミミの爪先が奏でるリズムと、増幅された己の心音が重なっている。
「聴コエテイルカ?コレガオ前自身ノ『絶望ノビート』…」
「命…だけ…は…!お願いだ……!!」
「許しはお前が殺した被虐者たちに乞え。僕は最初からお前なんか許す気は―――」

ばすっ。

 加速されたビートに耐えきれず、今度は左腕が爆散した。
「無いのさ」
「あ、ぁあ、やめ、やめ゛―――――」
 眼球の毛細血管が破れ、血の涙を流しながら懇願する男に向けて、冷ややかに言う。
「僕は四日前に一回、お前に『警告』した。そしてさっきが『二回目』…『三度目』は無い。
 僕は仏でも聖人君子でもないからね。しかし…『自分の優位がひっくり返される気分』か…」
「例エテ言ウナラ…一分シカ潜レナイ男ガギリギリマデ潜リ、空気ヲ吸オウトシタソノ瞬間、『グイッ』ト足ヲ掴マレテ、水中ニ戻サレル…ソンナモノカ?」
「ん、なかなかいい例えだね」
「恐レ入リマス。…ダガシカシ…」
 背を向けて返り血が掛からない距離まで離れたところで、壁にもたれて座り込んだ。

「たの゙む゙…ゆ゙ る゙ じ」


ばっ。


 同時に、加速されたビートに耐えきれなかった男の体が爆散する。
ちょうど、マルミミの両親を殺した虐殺者達のように。
「オ前ノ場合―――全然カワイソートハ思ワン」
 物言わぬ躯に向けて、B・T・Bが言い放つ。
「…やれやれ…倒せたのはいいけど…とてもおじいちゃんを助けられるような状態じゃないね…」
 爆散した死体を前に、荒い息を吐いた。満身創痍の上に、B・T・Hの反動で既に疲労は限界に近い。
「No.問題ハアリマセン。茂名様ナラバ、キット生キテオラレルデショウ」
「そっか…じゃ、ちょっと…寝る…よ…」
 ようやくそれだけ絞り出して、マルミミはくたりと意識を失った。

782丸耳達のビート:2004/01/17(土) 19:28

          __
         /    \
        |/\__\
       ○  ( ★∀T)    サ・ノ・バ・ビ――――ッチ
         _ )8888888( _  Son・of・a・Biiiiitcccch…
        |♪(  ⌒Y⌒ )♪|
         |ヾ' \   /|'ヘ  ,、ヘ !ヽ_て
         (ミゞル゙ \/  ヾハソヾリ _()―' そ
          ̄ ソ       ̄ ̄`ソ   て

          ∩_∩
         (∀`  )
         Σ⊂    )
          人 ヽノ
         (__(__)


           __ 
          /    \ 
         |/\__\
         ○  ( ★Д)
             )88888( ─=_─三⌒)
          .  (  |♪|─ 三_─{⌒)
             \ ヽ= ̄─_三{⌒)
              \/ 

┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃  スタンド名  ビート・トゥ・ビート(B・T・B)                    ┃ 
┃  本体名  マルミミ                                ┃ 
┣━━━━━━━━┳━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━┫ 
┃   .パワー - E .   ┃  スピード - A  .  ┃ 射程距離 - E(1m) .┃
┣━━━━━━━━╋━━━━━━━━━╋━━━━━━━━━┫
┃  持続力 - D   .┃ 精密動作性 -. A   ┃  成長性 - D.     ┃
┣━━━━━━━━┻━━━━━━━━━┻━━━━━━━━━┫
┃ 周囲の人間の鼓動を感知する。パワーは全くないが、          ┃
┃ 鼓動のリズムで嘘を見抜いたり、索敵などに使用できる。.      ┃
┃ 鼓動を感知できるのは半径一キロまで。                 ┃
┃ 近づけば近付くほど正確に感知できる。                    ┃
┃ 唯一の攻撃法『ビート・トゥ・クール』(B・T・C)は、           ┃ 
┃ 正確に心臓を殴りつける事で『心臓震盪』を引き起こす。.      ┃
┃ 拳自体の威力は幼稚園児並だが、相手は『心臓震盪』         ┃
┃ によって心臓が強制的に停止させられる。                  ┃
┃ 『生命のビート』自体を止める事ができるので.               ┃
┃ スタンドにも有効だが、機械形・不定形などの、             ┃
┃ 心臓の存在しないタイプには効かない。                  ┃
┃ マルミミの鼓動がエネルギー源となっている。             ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

783丸耳達のビート:2004/01/17(土) 19:29

       -二三_∩
     ー二三( `Д´)    ウリャァァァ―――――――――
    ―=二三三  ⊃  「URYAAAA――――――――ッ !! !!」
   一二≡≡三  ノ
  ―===二三__)

┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃  スタンド名  ビート・トゥ・ヒート (B・T・H)                 ┃ 
┃  本体名  マルミミ                                ┃ 
┣━━━━━━━━┳━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━┫ 
┃  パワー - B    ┃  スピード - A    ┃ 射程距離 -E(0m). ┃
┣━━━━━━━━╋━━━━━━━━━╋━━━━━━━━━┫
┃  持続力 - E   .┃ 精密動作性 - C  ┃  成長性 - A    ┃
┣━━━━━━━━┻━━━━━━━━━┻━━━━━━━━━┫
┃自分自身の鼓動を変化させ、吸血鬼の                 ┃
┃パワーとスピードを引き出す。                          ┃
┃鼓動を変化させない限り、本体は普通の人間と変わらない。     ┃
┃(太陽も平気だし、血も吸わなくて良い)                      ┃
┃スタンドは本体の中にいるので、 発動中はスタンドが出せない 。.  ┃
┃本体への負担が大きいため、長期発動・連続発動は不可能。    ┃
┃鍛えれば強くなる年齢なので、成長性は高い。                ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

784新手のスタンド使い:2004/01/17(土) 19:33
乙!

785:2004/01/17(土) 22:10

「―― モナーの愉快な冒険 ――   ぼくの名は1さん・その5」



          @          @          @



 港で、でぃはじっと海を見ていた。
「ヒガシ…」
 そう呟くでぃの眼前には、母なる海が広がっている。
 そのまま1時間ほど立ち尽くすでぃ。

「オイオイオイ、なんだ? このクソ猫は〜?」

 不意に、背後から声がした。
 ゆっくりと振り向くでぃ。
 そこには、学生服を着た三人の不良が立っていた。
「こんな汚いクソ猫、焼いちまった方がいいんじゃないのか、あァ?」
 三人はでぃを取り囲む。
「『汚物は焼却だ〜!』っていう格言もあるしなァ、ヒャハハハハ…」
 リーダー格の男は下卑た笑い声を上げた。
「…」
 でぃはその三人をじっと見ている。

「ウダラ、何ニヤついてんがァ――ッ!」
 リーダーは、でぃの顔面を平手で叩いた。
 その勢いで地面に倒れ込むでぃ。
「ナンデ、コンナコト スルノ…?」
 でぃは地面に這ったまま言った。
「テメーがゴミムシだからだよスッタコが!! 薄汚ねぇヤツをブッ殺したって文句いうヤツはいねーさ!
 この世は弱肉強食だから、弱っちぃヤツは何されても文句言えねーんだよッ!!」
 リーダーは大声で叫んだ。

「…いい事言うな。弱い奴は何されても文句は言えない、か…」
 不良たちの背後から声がした。
「誰だ、テメーはッ!!」
 三人は振り返る。
 そこには、ギコが立っていた。

「オイオイオイ、何を…」
 不良の一人が、ギコの胸倉を掴もうと近付いて…
 腹を押さえて崩れ落ちた。
 ギコは足元の不良を見下ろして、ため息をつく。
「自分から俺の間合いに近寄ってくるなんざ… お前等、まともに喧嘩した事ないだろ?」

「この野郎!」
 不良二人が一斉に飛び掛った。
 ギコは不良の拳をなんなくかわすと、二人の頭を掴んで打ち付けた。
「ぐえっ!!」
 悲鳴を上げて倒れる二人。

「な、何すんだテメェ・・・」
 リーダーがフラフラと起き上がりながら言った。
「ん? 弱い奴は何されても文句は言えないんじゃなかったか?」
 ギコはそう言って笑う。

 リーダーは胸の内ポケットに手を突っ込んだ。
「これ喰らっても笑ってられッかな…?」
 取り出したのは、1mはある伸縮式の警棒だった。
「出た! モル田さんの「殺人警棒」!!
 ドス持ったチンピラ五人… こいつで半殺しにしたのは有名な話だぜ!」
 倒れている不良は解説した。

「武器を使うからには… これは戦いだと見なしていいんだな?」
 ギコはリーダーを睨みつけた。
「…ひっ!!」
 リーダーはその迫力に気圧される。
「俺は、武器を持ってかかってくる相手は、どんなに小物だろうと容赦しないが…
 …本当にいいんだな?」

 リーダーは顔中から脂汗を垂らしている。
 ――絶対負ける、勝てっこない!
 そう悟るリーダー。
「きょ、今日のところはこのくらいで勘弁しといてやるぜ!!」
 リーダーは警棒を放り出すと、一目散に駆け出した。
「ま、ま、待って〜!」
 不良二人が後に続く。

786:2004/01/17(土) 22:10

「アリガトウ…」
 でぃは言った。
 浮浪者だろうが… 意外に年を取ってるんだな。
 でぃを間近に見て、ギコは思った。
「いいって事よ。熱心に眺めてたようだけど、海が好きなのか?」
 ギコは訊ねた。
「ムカシ、ハタライテタカラ…」
 でぃは先程のように海を眺めて呟いた。
「ふーん、漁師か何かか?」
 ギコの言葉にでぃは頷いた。
「かっては海の男、って訳だな。今度は絡まれるなよ。じゃあな」
 ギコは、そのまま立ち去ってしまった。

 しばらく、でぃは海を眺めていた。
「ヒガシ…」
 再びでぃは呟く。

「イテテテ… テメー、よくもやってくれたな…」
 背後から、聞いた声がした。
 ゆっくりと振り向くでぃ。
 そこには、先程の三人の不良が立っていた。
 その表情は怒りで歪んでいる。
「テメーのせいで、アザができたじゃねーか!!」
「三倍にして… いや、百億万倍にして返してやるぜ…ヒヒヒ」

 その背後から、音もなく現れる男達。
「こ、今度は何だ…! ギャッ!!」
 不良達は、突然現れた男達に押さえ込まれた。
 地面に頭を押し付けられ、腕を逆方向にねじられた不良達が、うめき声を上げる。
 そのまま、不良達はどこかへ連れて行かれた。

 男達がでぃの前に並ぶ。
 その中から、水兵のような制服を着こなした男が前に出た。
 男は敬礼のポーズを取る。
「お迎えに上がりました、でぃ一等海佐!」

 でぃはその男をじっと見た。
「…ドコ?」

「…東です。太平洋に展開する予定です」
 男は口を開く。
「ASAの組織的領海侵犯に対して、威嚇措置をとります。
 奴等の原潜を向こうに回して戦える潜水艦乗りは、我が国ではでぃ一佐だけでしょう?」

787:2004/01/17(土) 22:11

          @          @          @



 僕のアパートの前に、一台の車が停まっていた。
「邪魔だな…」
 僕はそう呟きながら、横を通り抜けようとする。
 運転席に座っていた男がこちらを見た。
「君が1さんかね?」
 ウィンドウを開けて、男は言った。
「あ、そうですけど…」
 僕はとりあえず返事をする。
 誰だ? 全く会った事がない人だ。
 助手席にも人が座っている。
 何か爽やかなヤツだ。
 目がキラキラしていて、口許には微笑を湛えている。
 僕には、二人とも心当たりは無かった。

「え〜と、どちら様でしょうか?」
 僕は訊ねる。
「言葉を慎みたまえ! 君はラピュタ王の前にいるのだ!」
 何か分からないが、運転席の男に理不尽に怒られてしまった。
「す、すみません…」
 揉め事はゴメンなので、僕は頭を下げておく。
「ふむ、君は素直だな。自己紹介といこうか。おっと、君の事はすでに知っているので省略したまえ。
 私は『暗殺者』、横の彼は『狩猟者』だ」
 『暗殺者』、『狩猟者』…?
 名前からして、代行者なのは間違いない。
「ぼくはきれいなジャイアン」
 助手席の人が口を開いた。
 簞ちゃんの代行者のとしての名が『守護者』なのと同じく、この「きれいなジャイアン」と名乗る爽やかな男の
代行者名が『狩猟者』なのだろう。
 おそらく、運転席の方に座っている男の本名も別にあると思われる。
 それにしても、『暗殺者』なんて物騒な名前だなぁ…
 当の『暗殺者』が口を開いた。
「今、君の部屋で『守護者』と『支配者』が話をしているよ」
 …簞ちゃんが?
 僕は、とりあえず部屋に戻る事にした。


 テーブルを挟んで、簞ちゃんと『支配者』と思われる男は座っていた。
 その男は、上下とも真っ黒のスーツを着込んで、サングラスをかけている。
 マフィアかスパイかシークレット・サービスにしか見えない。
 その格好は怪しさの極みである。
 その『支配者』は、立ち尽くす僕の姿を見て言った。
「ここの家主か? 座りたまえ。やましい話はしてはおらんよ」
「は、はぁ…」
 僕は簞ちゃんの横に腰を下ろす。

「まあ、話は以下の通りだ。しばらくは動かない方がいい。諦めろ」
 『支配者』は言った。
 どうやら、話のほとんどはもう終わったらしい。
「分かりました…」
 簞ちゃんは頷く。
「この家にでも待機しておけ。君の任務は、私達の任務とは異なるからな」
 そして、『支配者』は僕の方を見た。
「そういう訳で、しばらくの間、彼女を泊めてやってはくれないか?」
 僕は最初からそのつもりだ。
「は、はい…」
 僕は頷く。
「じゃあ、これを受け取れ」
 『支配者』は封筒を差し出した。
 僕は戸惑いながらそれを受け取る。
「…!!」
 中には、万札がぎっしりと入っていた。

「彼女の事は、もちろん他言無用だ」
 『支配者』は僕を見据えながら言った。
 簞ちゃんの許しがあったとはいえ、すでにモナーに喋ってしまっている。
 まあいいか。彼も一般人とは言い難いし。
「話は以上だ。じゃあ、諦めろ」
 『支配者』は腰を上げた。
 何を諦めればいいのかは分からない。
「任務、がんばって下さいなのです」
 簞ちゃんは言った。
 『支配者』は、そのまま部屋を出て行く。
 ドアを閉める音が、アパートの一室に響いた。

788:2004/01/17(土) 22:11

「あ、怪しい人だったね…」
 簞ちゃんと二人きりになった僕は呟いた。
「代行者というのは、みんな個性的な人達ばかりなのです」
 簞ちゃんは言う。
「で、何の話? 言えない話なら別にいいけど…」
「そんな事はないのです」
 簞ちゃんは首を振った。
「『支配者』さんの話ですと、何やら上の方の事情が変わってきたらしいのです。しばらくは待機という命令なのです」
「つまり、『異端者』と会うっていう命令は中止?」
「中止ではなく、待機なのです」
 中止になった訳ではないのか。

「『支配者』ってのは、『教会』で一番偉い人なの?」
 僕は訊ねた。
「違うのです。代行者の名前というのは、スタンド能力・『教会』内での立場・本人の意向などを考慮して
 付けられるのです。9人の代行者の中で、身分の高低はありません」
 なるほど。ついでだから、僕は気になっていた疑問を解消する事にした。
「『教会』ってのは、一般的な教会やキリスト教とどう関係があるの?」
 簞ちゃんは口を開いた。
「イタリアのローマ市内に、ヴァチカン市国という都市国家があります。
 これは、ローマ教皇を元首とした、ローマカトリック教会の正当な総本山なのです」
 そう言えば、世界で最も小さい国として聞いた事がある。
「そして、ヴァチカン市国に存在する組織はローマ教皇庁と呼ばれているのです。
 トップがもちろんローマ教皇で、枢機卿、大司教、司教、司祭、助祭、神学生と続くのです。
 ちなみに教皇は一人ですが、枢機卿に任命されている方は百人を超えます。
 この国で、一般の教会を預かっている方はほとんど司祭ですね。
 『教会』というのは、このローマ教皇庁に属する機関の一つなのです。
 その仕事は、言うまでもなく吸血鬼退治なのです」
 なかなかややこしいな。
 つまり、『教会』はローマ教会の内部組織なわけか。
「『教会』の直接指揮権は、ある枢機卿が持っていますが、最高決定権は教皇にあります。
 その下に、実行部隊として私達代行者が存在します。代行者は幹部でも何でもなく、指揮権もありません。
 だから、戦闘力のみに特化した変人が多いのです」
 変人って… 簞ちゃん何気に口が悪い。

「うん、大体分かったよ」
 僕は床に寝転がった。
「とりあえず、簞ちゃんはこれからどうするの?」
 簞ちゃんは口を開く。
「しばらく待機という事で、この家にご厄介になりたいのですが… 構いませんか?」
「お金も受け取っちゃったからね。別に構わないよ」
 僕はなるべく感情を込めずに言った」
「じゃあ、これからもよろしくお願いしますなのです…」
 簞ちゃんはぺこりと頭を下げた。
 寝転がっていると、頭がボーッとしてきた。
 今日もいろいろあって疲れているのだろう。


 …僕は目を覚ました。
 寝転がってから、そのまま眠りに落ちてしまったらしい。
 周囲は暗い。
 僕は体を起こすと、電気をつけた。
 簞ちゃんは、テーブルに突っ伏して眠っていた。
「風邪引くよ…」
 僕は、簞ちゃんに布団をかける。
 時計を見ると、なんと午後9時。
 我ながら、よく寝たな…
 腹が鳴った。夕食を食べていないのだから当然だろう。
 コンビニで弁当でも買いに行くか…
 僕は簞ちゃんを起こさないように、ゆっくりと部屋を出た。

789:2004/01/17(土) 22:12

 コンビニで僕と簞ちゃんの分の弁当を買って、家路を急いだ。
 夜道を歩いていると、吸血鬼に追い回されたあの夜を思い出す。
 …何か嫌な予感がした。
 僕は歩を進める。
 街灯の下に、何かが転がっているのが目に入った。
 あれは… 死体?
 いや、泥酔しているだけか?
 確認しないと、警察に通報も出来ない。
 …死体だったらやだなぁ。
 早くなる心臓の鼓動を抑えて、僕は近寄った。

 女性だった。
 その目は、虚空を見ている。
 首筋から血を流していた。
 それ以外の外傷はないが、間違いなく死んでいる。

 …えらいモン見つけちゃったなぁ。
 こんな時間に外出するんじゃなかった。
 僕は、携帯を取り出した。

 ――背筋がゾッとした。
 何かがいる。
 ここから離れないと…!!

「う、うわぁぁぁぁぁ!!」

 僕は悲鳴を上げて、無我夢中で駆け出した。
 背筋がゾクゾクする。
 あのままあの場にいたら、間違いなく命を落としていただろう。
 一目散に夜道を疾走する僕。
 その僕の目の前に、不気味な奴が立っていた。
 あれは…!?

 そいつは僕と目を合わせて言った。
「ちょうどいい、腹が減ってたところだ… SYAAAA!!」
 間違いない。こいつ、吸血鬼だ。
 たぶん、さっきの女性をやったのも…
 そいつは、こっちに疾走してくる。
「ひ、ヒィィィィ!!」
 僕は身を翻すと、そいつから逃げ出した。
 だが、前に会った吸血鬼よりも遥かに足が早い。
 あっという間に、僕は首根っこを掴まれた。

「観念しろ、人間…」
 そのまま、吸血鬼は片手で僕の体を持ち上げる。
「うわぁぁぁぁ!!」
 僕は足をバタつかせた。
 しかし、当たり前だが効果が無い。
 僕の首を掴んでいる吸血鬼の手が、首筋にめり込んだ。
 強烈な痛み。
 こうやって、僕の血を吸い取る気だ…!

 そうだ、思い出した。
 僕はスタンド使いなんだ。
 簞ちゃんに、スタンドの出し方も教えてもらった。
 『自分の身を守ろうとする』とか『怒りをぶつける』という気持ちを強く持てば、スタンドが発動するはず。
 強く心で念じる僕。
「出て来い、僕のスタンド!!」
 僕は思いっきり叫び声を上げた。

「スタンドだと…?」
 吸血鬼は手を離した。
 僕の体が地面に落ちる。
 しかし、スタンドは現れない。
 地面に転がっている僕を見て、吸血鬼は口を開いた。
「私にはスタンドが見えないが、その恐ろしさは知っている。ハッタリのつもりなのか知らんが…
 お前が本当にスタンド使いならば、私など軽く撃退されているだろう。 …なァ?」

 そう言いながら、吸血鬼は手を伸ばしてきた。
 やっぱり、僕はスタンド使いなんかじゃない。
 ただ関わってしまっただけで、僕自身ただの小市民に過ぎなかったんだ…

 その瞬間、吸血鬼の背後に影が翻った。
 そして、吸血鬼の胸から刃が突き出す。
「な… が…!!」
 刺された部分が気化している。
 まるで、簞ちゃんに倒された吸血鬼にように…
 吸血鬼は、その刃を掴もうとした。

 ズドドドド…
 肉を刻む音と共に、その吸血鬼の体はハリネズミのようになった。
 体中に大型の刃物を打ち込まれ、50本近い刃を全身から生やす吸血鬼。
 その一つ一つが、吸血鬼の身を焼く。
「GYAAAAA!! こんなァァァ…」
 吸血鬼は、そのままチリになった。

「Dust to Dust, Ash to Ash… 土は土に、灰は灰に、塵たる貴様は塵に還れ…」
 …女性の声?

 その影は、確かに女性だった。
 暗いので、顔は見えない。
 吸血鬼よりも遥かに小柄である。
 服に刻印された十字が目に入った。
 頭に被っている帽子のようなものにも、十字が刻まれている。

 強打した腰を押さえて、僕は立ち上がった。
「あの…」
 僕は女性に語りかけようとした。
 その女性は僕を一瞥すると、漆黒の闇の中に消えて行った。
 僕は、呆然としてそのまま立ち尽くしていた。



  /└────────┬┐
. <   To Be Continued... | |
  \┌────────┴┘

790:2004/01/18(日) 00:36
登場人物が大体出揃ったので、登場人物紹介です。
とんでもない人数ですが、あとは減るだけなので大丈夫でしょう。

791:2004/01/18(日) 00:37
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

 ――モナーとゆかいな仲間達――

 モナーの仲間や友人、家族など。
 否応無しに事件に巻き込まれていくゆかいな人達。

:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
モナー :この話の主人公。男や人外に超モテモテの17歳。
     食べる事と寝る事が趣味。性格は穏やかだが、時々荒れる。
     別人格が存在し、6歳より前の記憶がない。
     彼の『脳内ウホッ! いい女ランキング』には数々の女性がランキングされている。

     スタンド:『アウト・オブ・エデン』
     目に見えないものを『視る』ことができ、視えたものは破壊できる。
     ヴィジョンを持たないスタンド。
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
ギコ :モナーのクラスメイトで、サッカー部に所属する武道マニア。
     スポーツ万能で頭も良く、英語もペラペラ。
     女の子にモテモテだが、フェミニストな一面がたたって女に弱い。
     しぃと付き合う前はかなり遊んでいたらしいが…
     自衛官の父を持つ。

     スタンド:『レイラ』
     日本刀を所持した女性型スタンド。
     近距離パワー型で、特に能力は持たない。
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
モララー:モナーのクラスメイト。モナーに思いを寄せるホモ。
      未成年にも関わらずBARに通っている。
      一時期『矢の男』だったが、克服したらしい。

     スタンド名 『アナザー・ワールド・エキストラ』
     近距離パワー型。
     量子力学的現象を顕在化させる。
     その応用方は数多く、成長性は並外れて高い。
     『次元の亀裂』:次元に亀裂を作り出し、巻き込んだ物を破壊する。
     『対物エントロピー減少』:爆発等、拡散するタイプの攻撃を中和して消し去る。
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
しぃ   :モナーのクラスメイトで、普段は大人しく心優しい優等生。
      ギコとつきあっていて、完全に尻に敷いている。実は漫画好き。
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おにぎり:出番がない。久々の登場で昇天。
      その亡骸はしぃ助教授が回収していったようだ。
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

792:2004/01/18(日) 00:38
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レモナ :最終兵器。モナーに思いを寄せているが、積極的なアタックは実を結びそうにない。
      『ドレス』の技術で開発されたらしい。
      現在は『ドレス』は解体され、その技術は『教会』に流れた。
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
つー  :性別不明のいたずらっ子だが、『BAOH』に改造された。
      これも『ドレス』の技術によるものだが、本人はあまり気にしていない。
      モナーに意地悪するのは愛ゆえか?
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じぃ  :モナーのクラスメイトであり、クラスのアイドル。
     密かに、モナーに思いを寄せていたが…
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ガナー :モナーと一つ違いの萌えない妹で、年相応の普通の女の子。
      しぃタナとはクラスメイトであり親友。
      居候しているリナーを「お義姉さん」として慕っている。
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しぃタナ :しぃの妹で、しぃタナは暴走レモナによるあだ名。
      しぃに比べて活発。姉妹仲は悪くない。

793:2004/01/18(日) 00:38
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

 ――ASA――

 Anti-Stand Associationの略で、人に仇を為すスタンド使いを抹殺する組織。
 国際的に活躍し、各国政府の要請で出動する。
 組織としては私立財団に近いが、スタンド使いに対抗する組織の中で、最も強力かつ武闘派。
 『ASA三幹部』と呼ばれる三人の意向によって組織の意向が決定される。
 その構成員はほとんどがスタンド使いであり、多くの兵器を保有している。
 現在、本部をモナー達の住む町に移動させた。

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
しぃ助教授:ASA三幹部の一人。年齢に触れる事は大いなるタブー
       助教授と名乗ってはいるが、どこかの大学に属しているのかは不明。
       経歴詐称の可能性もあが、追求する者はいない。
       理知的で温和に見えるが、怒らせると危ない。怒りの導火線もかなり短い。

       スタンド:『セブンス・ヘブン』
       近距離パワー型と思わせておいて、実は遠距離型。
       パワーはとんどなく、遠距離型にもかかわらず視聴覚を持たない。
       「力」の指向性を操ることができる能力を持つ。
       この能力を本体の周囲の空間に使うと、物理的な攻撃が当たらなくなる。
       この鉄壁の防御を、『サウンド・オブ・サイレンス』と呼称する。
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
ありす:ASA三幹部の一人。ゴスロリに身を包んだ女の子。
     よく「サムイ…」と呟いていて、得体が知れない。
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
クックル:ASA三幹部の一人。筋肉に覆われたニワトリ。
      ちなみにASAは三幹部の会議制であるが、クックルとありすは運営に興味を
      示さないため、しぃ助教授の独断状態である。
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
丸耳  :しぃ助教授の補佐。おそらく20代後半。
      主人の暴走を止めるのが主な仕事。
      雑事を黙々とこなす大人な組織人。
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
ねここ :ありすの補佐。猫の顔を模した帽子をかぶった女の子。
      その言動はどこか変わっている。
      ありすとは、友人のように付き合っているらしい。

      スタンド:不明
      ASAでも稀有な、治療の能力を持つらしい。
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
+激しく忍者+:クックルの補佐。作品内には未登場。
          クックルのストレス解消的存在。

794:2004/01/18(日) 00:39
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

 ――『教会』――

 ローマ教会の内部組織で、吸血鬼殲滅を主な任務とする機関。
 唯一の吸血鬼殲滅機関と言っても過言ではないほど強大である。
 代行者と呼ばれる対吸血鬼のエキスパートを世界中に派遣し、吸血鬼に対抗している。

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
リナー :『教会』の代行者で、称号は『異端者』。
      見た目は17歳程度だが、正確な年齢は不明。
      現在、モナーの家に居候中で、隠し事が多い武器・兵器マニア。

      スタンド:『エンジェル・ダスト』
     体内にのみ展開できるスタンドで、液体の「流れ」をコントロールできる。
     手で触れれば、他人の自然治癒力を促進させる事もできる。
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
簞(ばつ):『教会』の代行者で、称号は『守護者』。
       現在は1さんの家に居候している。
       そのスタンド能力から、武器の法儀式処理を一手に任されている。

       スタンド:『シスター・スレッジ』
       人間よりも多量の波紋を練る事ができるスタンド。
       物質に波紋を固着させる事も可能。
       パワーはないに等しいので、戦闘時は波紋を流したワイヤーを使う。
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
『解読者』:『教会』の代行者で、本名はキバヤシ。
       代行者の中で、吸血鬼の殲滅数は一番多い。
       『教会』の仕事以外ではスタンドは使いたがらず、それには理由があるようだ。
       モナーをMMRに引き込み、『蒐集者』を調べている。

       スタンド:不明
       催眠術を基盤とした能力だが、詳細不明。
       ASAから封印指定を受けている。
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
『調停者』:『教会』の代行者。
       ハンサムの範疇に入るが、果てしなく濃い顔をしている。
       普段はツナギを着てベンチに座っている。
       特技は『エリーゼの憂鬱』。

795:2004/01/18(日) 00:40
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
『破壊者』:『教会』の代行者。
       ピエロのような格好をしている。
       常に「お前ら、表へ出ろ」と口走り、周囲を威嚇している。
       前任の『破壊者』にコンプレックスを持っているらしい。
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
『狩猟者』:『教会』の代行者で、「きれいなジャイアン」と自らを呼称している。
       爽やかな雰囲気と、素敵な瞳を持つ。
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『暗殺者』:『教会』の代行者。
       自称ラピュタ王。尊大な振る舞いだが、どことなく間が抜けている。
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
『支配者』:『教会』の代行者。
       上下とも真っ黒なスーツを愛用しており、サングラスは決して外さない。
       「諦めろ」が口癖。
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『蒐集者』:『教会』の元代行者。
       爽やかな青年の外見をしていて、夏でも黒のロングコートを愛用している。
       いろいろな場所に顔を出しては、不審な行動をとっている。
       『教会』から離反しているようだが、称号は使い続けている。

       スタンド名:『アヴェ・マリア』
       対象を取り込んで同化できる。
       同化には、生物、無生物を問わない。
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ぽろろ:『NOSFERATU-BAOH』の実験体候補。
     『教会』の地下深くに軟禁されている。
     自らのスタンドを喰らい、スタンドに喰らわれている。

     スタンド:『エンジェルズ・オブ・ジ・アポカリプス』
     能力不明。
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 ――警視庁警備局公安五課――

 通称、スタンド犯罪対策局。
 増加を続けるスタンド犯罪に対抗して設立された部署。
 スタンド使いが多く所属する。

:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
局長   :公安五課(スタンド犯罪対策局)の局長。
       スタンド関連では、この国で一番偉い人らしい。

       スタンド:『アルケルメス』
       時間を「カット&ペースト」する能力。
       時間を切り取ったり、切り取った時間を貼り付けたりできる。
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

796:2004/01/18(日) 00:41
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

 ――自衛隊――

 内閣総理大臣を最高指揮監督者とする国防のための軍事組織。
 防衛庁長官が自衛隊の隊務を統括する。

:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
フサギコ:統合幕僚会議議長。自衛官の最上位に就いている。
      粗暴で口が悪いにもかかわらず、多くの部下から慕われている。
      その危険性から、スタンド使いを嫌悪している。
      局長とは古くからの付き合いだが、仲は決して良くない。
      ギコの父親。
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
でぃ :海上自衛隊の一等海佐。
    高い操艦技術を持っているらしい。
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 ――その他――

 その他の人達。

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
1さん :モナーと同じ学校に通う17歳。
     簞ちゃんとの出会いから、大きな運命の流れに引き込まれていく。
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『アルカディア』:独立した意思を持ったスタンドで、本体だった吸血鬼はすでに死亡している。
          現在はモナーの住んでいる町に潜伏している。

          スタンド名:『アルカディア』
          他者の「望み」や「願い」を実現させることで糧を得る。
          基本的には個人の願いなどは扱わず、噂規模に発達した
          「無意識の願望」を具現化させる。
          スタンド単体の時は、噂を顕実化する能力のみだが、
          仮の本体を得た時は、完全な『空想具現化』が可能となる。
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
殺人鬼:モナーの別人格で、高い知能と戦闘能力を持つ。
     また、『アウト・オブ・エデン』の能力をモナー以上に引き出せる。
     たまに出てきてモナーを手助けするが、善意ではない事は明らかである。
     『教会』との繋がりがあるようだが…
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モナソン・モナップス:海外視察に来ていた上院議員。
             出て来るたびに、お供のボディーガードと共にヒドイ目に遭う。
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797新手のスタンド使い:2004/01/18(日) 01:04
おおー
激しく忍者も一応いるのか
調停者、エリーゼの憂鬱ってあれか?セク○ーコ○ンドーか?
支配者のAAがわかんねー
登場人物紹介わかりやすくていい

798ぽろろ作者:2004/01/18(日) 01:14
       , --- 、_                 
      /ミミミヾヾヽ、_           
   ∠ヾヾヾヾヾヾjj┴彡ニヽ
  / , -ー‐'"´´´    ヾ.三ヽ
  ,' /            ヾ三ヽ
  j |             / }ミ i
  | |              / /ミ  !
  } | r、          l ゙iミ __」
  |]ムヽ、_    __∠二、__,ィ|/ ィ }
  |    ̄`ミl==r'´     / |lぅ lj 私を忘れてもらっては困るな…
  「!ヽ、_____j ヽ、_  -'  レ'r'/  アンダーソン君
   `!     j  ヽ        j_ノ
   ',    ヽァ_ '┘     ,i
    ヽ  ___'...__   i   ハ__
     ヽ ゙二二 `  ,' // 八  
      ヽ        /'´   / ヽ       
      |ヽ、__, '´ /   /   \ 
スミス登場はマトリクースヲタの俺としては嬉しい限り。期待してます。

799ぽろろ作者:2004/01/18(日) 01:15
すみません…感想スレに書くはずが間違って本スレに誤爆しました。
本当に申し訳御座いません。

800SS書き:2004/01/18(日) 04:07
はじめまして。本編のアイデアが思いついたのですが
AAの技術がないのでSS(ショート・ショート)を書いてみました。
『アンチ・クライスト・スーパースター』を使うギコの話です。
かなり短くてボロもあるでしょうが見逃してください。

801SS書き:2004/01/18(日) 04:08
音の戦い −テイク・マイ・ブレス・アウェイ−

「あなたの声を聞かせてください。」
 ギコとしぃが2人で街中を歩いていると突然見知らぬ男に声をかけられた。どうやら何かのアンケートをとっているようだ。
「忙しいからまた今度だゴルァ」
 と、ギコはその男をあしらってその場をやり過ごした。
「なんのアンケートだったのかしら」
「何かは知らねーけど、アンケートに見せかけてものを売りつけるマルチ商法もあるから気をつけないとな。ま、暇なときなら話を聞くだけ聞いて最後に『逝ってよし』って言ってやるんだけどよ」
「・・・・・・それってかなりの暇人のやることよね」
 そんな会話をするギコとしぃの後姿を見送っていた男がぼそりとつぶやいた。
「いいや、確かに聞かせてもらったぜ。お前の『声』をよ」

 男は漫画喫茶に入って時間を潰していた。そして考え事をしていた。

 犯罪捜査において指紋と同じ様に犯人特定の決め手となるものに『声紋』がある。
 声紋は指紋同様ひとりひとり異なるものだ。
 自分のスタンド『テイク・マイ・ブレス・アウェイ』はその声を追跡する遠隔自動操縦のスタンド。
 自分が聞いた声の持ち主をどこまで追いかけていき、スライム状の体でターゲットの口と鼻をふさぎ窒息させる。
 一度声を聞けばターゲットが黙っていてもその『呼吸音』を頼りに攻撃する。
 声を武器とするギコのスタンドにとっては最高に相性が悪い。
しかも遠隔自動操縦のためダメージフィードバックはない。
ターゲットの声を聞くときがもっとも危険だがそれは乗り切った。
もはや自分に負けはありえない。

 「僕のしぃタンに手を出す糞ギコはヌッ頃す」
 男は叫んでいた。

802SS書き:2004/01/18(日) 04:08
・・・・・・遅い。
遅すぎる。あれからもう2時間はたっている。しかしテイク・マイ・ブレス・アウェイは一向に戻ってくる様子はない。スタンドに何が起きているかが分からないのは遠隔自動操縦のスタンドの弱点だ。
「二人は公園の方に向かっていたな」
ギコが自分のスタンドを使うために人の少ないことへと移動したとすれば、あそこが戦いの舞台になっているはずだ。
「・・・・・・行ってみるか」

 公園に着いた男が見たものはベンチに座っているしぃとそのスタンド。そしてそのスタンドに纏わりつく自分のスタンド。
「な?」
 男が事態を理解できないでいるとギコの声が聞こえてきた。
「その様子からするとお前が本体だな。さっきのアンケートの男か。お前のスタンドにはよぉー、正直焦ったぜ。叩いても叫んでもまったくダメージがないからな。でも声を追ってくるだけのスタンドだって分かれば対処法はあったぜ。」
 声はしぃの方から聞こえてくるがギコの姿はない。
「オレのスタンドと相性がいいと思っていたのかもしれないが、調べるならオレのスタンドだけじゃ足りなかったみたいだぜ。オレと一緒にいるのが誰かも知らないといけなかった」
 いや、しぃタンのことはもっと調べていましたけど。と、男は思っていた。
「しぃの『ザード・エクスト・ボーイ』は『盗聴器になる光弾』を発射できるスタンドだ。スタンド本体には当然その『盗聴した音』を聞く『スピーカー』がある。へそみたいに見えるのがそれだ。オレは盗聴器に向かって小声でしゃべり、ザード・エクスト・ボーイから出る音量をあげた。それでお前のスタンドはそのスピーカーから出る音に纏わりついているってわけだ。お前のスタンドはしぃのスタンドと最っ高に相性が悪かったな。」
 ギコの声が後ろからも聞こえてきた。
「確か声が聞きたいといっていたな。思いっきり聞かせてやるぜ。」

「逝ってよし!」

 ステレオで音を叩き込まれた男はその場に倒れた。
 ちなみに男が倒れながら思ったことは、『しぃタン(のスタンド)に2時間もくっついてたのに何も感じことができないなんて、遠隔自動操縦のスタンドなんて大っキライだー』ということだった。
「終わったみたいね。」
 耳栓をはずしながらしぃが言った。
「ギコ君の攻撃、スタンドには効かなくても本体には有功だったみたいね。」
「おう。それにしても今回は助かったぜ。なんか礼をしないとな。昼飯でも・・・・・・」
「お礼なんていいよ。どうしてもって言うなら欲しかったアクセサリーがあるんだけど、そんな高価なものいいからね。」
「やれやれ。(マルチ商法のほうがマシだったかな)」

END

803SS書き:2004/01/18(日) 04:10
スタンド名:テイク・マイ・ブレス・アウェイ
本体:変態モララー

パワー‐E スピード‐A 射程距離‐A
持続力‐A 精密動作性‐D 成長性‐D

本体が聞いた声の持ち主を追っていく遠隔自動操縦のスタンド。
スライム状のスタンドであり認識した声の持ち主ものに引っ付いて窒息させる。
一度声を聞いたらターゲットがしゃべらなくてもその呼吸音を頼りに追跡&攻撃できる。
スタンドにカメラや発信機を持たせてターゲットに攻撃せず見張り続けることも可能。
電話やテープレコーダーなどの『機械を通した声』を識別でき、攻撃しない。

804( (´∀` )  ):2004/01/18(日) 13:23
てきとーなあらすじ

巨耳モナーが寝てたら昔の夢を見てソレを話しながら思い出のトンネルにきたら
何か良くわからないけど目つきの鋭い人がいた。って感じ。
どうしても粗筋が知りたいって人は>>704-706を見t うわ。なんだおまえやめr

―巨耳モナーの奇妙な事件簿―幸せはやって来ない②

・・・聞き覚えのある声・・
                 『先輩』だ。

「うっ・・わぁあああああああぁぁあああああぁあぁぁッァァッ!!!」
今まで出さずに溜まった悲鳴が一気に外に出てきた。
少年期から青年期にかけて、『喜怒哀楽』。全てを体の中にためてきた。
それのリミッターを外された感じ。
「クク・・やっぱり怖いかよォ・・殺されそうになったんだもんなァー?
 でもよォ・・この怖さは俺だって味わったんだぜェ・・?」
がんたれモナー(先輩)は怒りか、それともその時の恐怖を思い出しているのかわからないが震えていた
「いきなりよォ・・ふっとばされてよォ・・タンスの角に頭ぶつけてよォ・・
  頭の中が真っ白になってよォ・・『嗚呼。俺此処で死ぬのかなぁ』って思ってよォォォオオォォ・・」
この震えは100%純な『怒り』だ。恐怖は感じない。今、彼の脳が彼に命令してる事は一つ
『自らのスタンドで、巨耳モナーをふっとばす』事のみ。
「それで俺はよォ・・俺はある『男』にすれ違いざまに矢を刺された・・そして、お前と同じ『能力』を手に入れたんだよォォォオオッォオ!!!」
突然轟音をたてながら地面のコンクリートが捲れ上がるり、巨耳モナーの右耳をかする
「今のはわざと外した・・次は外さないぞ・・こらァッ!!」
震えが止まらない
声が出ない
足が立たない
目が開けられない
脳が命令を下さない
(どうする・・・・そうだ!!)
矢張り目には目を。恐怖で考え付かなかったが良く考えればソレしかない。
ジェノサイアを呼ぶのだ。よし来い!ジェノサイア!!
・・・・応答が無い。
ジェノサイアは一人歩き型のスタンド。本体の意思で呼ぶことは出来なかった。
いやしかし、普段は俺を気遣ってノートパソコンの画面の中にいてくれたはず。
何故居ない?いや、どこに居る?
そんな事を考える内に数分前の『大いなる過ち』に気付いた。
・・・・そうだ。俺はお茶を濁してジェノサイア置いていったんだった。
ヤバい。アイツはもう臨戦態勢だ。どうしよう。逃げるか?
いや、しかしさっきの床を避けきれる自信はないし、吹っ飛ばすなんてもっての他だ。
まずい。もうくる。あと2m、1m30、1m、30・・・・
俺はもう願うしかないとノートパソコンをしっかりと握りながら構え、神に祈った
『ジェノサイア・・来てくれ!!』と。
その瞬間。轟音がトンネル内に響く。

 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

805( (´∀` )  ):2004/01/18(日) 13:24
「・・奇跡は起きないから奇跡・・。誰が言ったんだろうねぇ?」
砂煙の中から人の声がする
「なァッ・・!?」
『馬鹿なァッ』って言いたそうな馬鹿面でコッチをにらんできた。
・・生きてた。間一髪ジェノサイアがかけつけてくれた。
「ば・・馬鹿なァッ!?」
お。予感的中。
「ったく・・もうちょっと早くこれなかったのかねぇ?」
「あっ。何よその態度。せっかく来てあげたってのにねぇ。もしこなかったらアンタペシャンコだったのよ!?」
さっきまで切なくなってたのが嘘みたいに怒るジェノサイア
ガンたれモナーはその様子をポカンと見てる
「今回は電気街とかの戦闘とは違うぞ。お前が攻撃できるのは真正面。ノートパソコンだけだ。
 しかも『壊されたら終り』だぞ。わかってるな?」
「もちろん!」
「それじゃあ行くぞ!ガンたれモナーァッ!」
コッチもっさきまで震えてたのが嘘のようだ
「認めねぇ・・認めねぇぞ・・コラァァァアアアァァアァァァッ―――!!!!」
トンネルの両壁のコンクリがはがれ向かってくる。更に天井からもオマケつきだ。
おっと。コレはピンチだ。
この速度とジェノサイアの力を考えてみると、破壊できるのは一方のみ。
ジェノサイアは画面から両手を出すとラッシュができて、複数敵を相手に出来るのだが
その力は画面から片手を出してストレートパンチ一発だした時の2分の1。
しかし片手のストレートパンチは単数敵しか相手に出来ない上、隙が多い。
とか考えてる内にもう目の前。
ヤバい。と思った瞬間。俺の首ねっこが誰かにつかまれ、外に放りだされる
そして俺の首をひっぱった男は黒い球状の物を投げる。
ソレを見たガンたれモナーは顔を青くしてトンネルから飛び出る
すると次の瞬間洞窟が一瞬で潰れた。
「あ・・ああ・・ネクロマララー・・さ・・ま・・。」
酷くおびえている様子でがんたれモナーが言う。・・ん?ネクロマララー?どこかで聞いた事あるような・・
「やぁ。がんたれモナー。ごきげんよう。今日は一つ質問があるんだ。」
と。ネクロマララーがにこやかな顔で聞く。結構爽やかだ。
「え・・いえ・・えっと・・その・・あの・・・」
既に汗だく。顔は真っ青。ションベンまでチビっている。
「ま。私はどうでもいいんですけどね。」

806( (´∀` )  ):2004/01/18(日) 13:25
ガンたれモナーがホッ。と一息つく。そこまで怯える様な人じゃ無いと思うんだが・・
「ですが、私達の神はソレを許しません。」
次の瞬間で叫びをあげる間もなくガンたれモナーはミートソースになっていた。
何が起こった?整理できない。ただわかる事。ソレは
『助けてもらったがコイツは殺人犯だと言う事』。
ネクロマララーと呼ばれる人物は去ろうとする
「おい!待ちやがれ!!」
俺が呼ぶと、ネクロマララーは振り返り
「アナタ、警察さんですよね?」
と一言言い放った
「あ、ああ・・。」
?別に制服着てないのに何でわかったんだろ。
「ならば私はアナタと闘う事になるでしょう。」
いや、もう殺した時点で闘うのは決定してるし。
「私はある『組織』の最上級幹部にして最強参謀です。鑑識かどこかに言って『ネクロマララー』という人物を知 ら な い か
 と聞いてごらんなさい。きっと驚くべき事実を聞く事でしょう・・。」
その言い方で驚かれる。とかそういうオチだったらぬッ殺してやる。
「ま。どうでもいいんですけどね。」
またこのシメ方かこの野郎。
とか思ってるうちにネクロマララーはまた歩き出した
「あっ!おいっ!待てよ!コラ!」
・・・・・夕暮れに静寂が響き、すっごい切ない感じになる。
気付けばネクロマララーは消えていた。・・・何者なんだろう。
俺は暫く呆然と立ち尽くした後、電話を取り出した。
「はい。もしもし。茂名王署鑑識課ですが。」
「もしもし。俺だ。」
「あ。巨耳さん?今忙しいんですが、何の用ですか?」
いや。それお前遠まわしに『邪魔だから切れ』って言ってるのか
「あのな・・コホン。『ネクロマララー』という人物を知 ら な い か」
ネクロマララーの言ったとおり、鑑識の野郎は静まった。
コレで本当に言い方で驚かれるっていうオチだったらマジでヌッ殺してやるあの野郎・・

←To Be Continued

807( (´∀` )  ):2004/01/18(日) 13:27
登場人物

 / ̄ ) ( ̄\
(  ( ´∀`)  )巨耳モナー(24)

・幼い頃とてつもなく不幸な境遇に居たAA。強盗さえ居なければ自分は不幸にならなかったと信じ
 警察に憧れ、試験にトップで合格。警察官になることができた。
 現在は義父と義母の家から遠く離れた場所に住んでいる。
 もともと本庁に居たのだが、頭が良かった為、上司達に左遷させられる。


 <ヽ从/>
  <)从人/>
 </゚∀゚ヽ>ジェノサイア(?)

・巨耳モナーのスタンド。能力は『画面のある物を自由に移動する』事。
 スタンドでありながら人間に酷似した思考を持ち、いつも自由気まま
 巨耳モナーの唯一の『友達』にしてお姉さん的存在。


  ∧_∧
  (  ๔Д๖)がんたれモナー(故)(26)

・巨耳モナーを殺そうとしたAA。
 先輩の不良軍団の中でもリーダー的存在。
 ジェノサイアに吹っ飛ばされ病院送りとなった。
 親がアッチ系な人の為かとても乱暴。『ある組織』の一人らしい


    /⌒\
   (    )
 ∈--→Ж←-∋  
  ) :::|    |::: (  
 ( ::( ・∀・):: )ネクロマララー(69)

・『ある組織』に属す超上級幹部らしい。
 がんたれモナーを瞬殺するほどの力の持ち主
 普段は結構優しいタイプの人なのだが、戦闘時は一変。組織の最強参謀。
 占いは当たる確立90%。外れた事は今まで『火星が落っこちる』くらい。

808新手のスタンド使い:2004/01/18(日) 15:04
乙です

809新手のスタンド使い:2004/01/18(日) 20:12


喉痛いのにハバネロチップスイッキ食いした。
死ぬかと思った。

合言葉はwell kill them!(仮)第六話―空からの狂気その②


男と女はカウンター席にドカッと腰を下ろした。
男の服装はここでもやっぱり目立つ。
「いらっしゃい。ご注文は?」
「・・・俺はコーヒーを。」
「あ、私はアイスミルクティーで。」
注文を終えると女はMDの電源を入れた。

タン、タタン、タタタタン、タン、タン――――

リズムに合わせて女はテーブルを指で叩き始める。
たぶん彼女の癖なのだろう。

「へぇ〜、あの人か〜。」
「顔を隠しているのが渋いねぇ〜。」
「隣に居る女の子は誰なんだ?」
「多分あの人の知り合いじゃないか?」

アヒャ達は男に視線を送りながらヒソヒソ声で喋っている。
ハバネロジュースから生還したマララーも一緒だ。

ふいに男がアヒャ達の方を向いた。
自分の事を話していたのを気がついたようだ。
「・・・・そこの君達。何を話しているんだ?」
「あっ、いや・・・その・・・え〜っと。」
思いもよらない出来事に慌てるアヒャ。
すると男がアヒャに近づいてこう言った。
「お前・・・久しぶりだな。」
「・・・え?」
アヒャはポカンと口を開けている。
無理も無い。見ず知らずの男に久しぶりと言われたら誰だって驚くだろう。
隣に居たツー達も例外ではない。
「ふっ、分からないのは無理も無いか。君のスタンド能力を引き出した日も今日のように
 顔を隠していたのだからな。」
スタンド能力を引き出した日?
アヒャは自分の記憶をたどってみた。

【アヒャの脳内コンピューターを覗いてみよう!】

「近所の川に落ちた」「カラオケで騒いだ」「通信簿オール3」
「どうする、アイフル」「ジョジョ中古でイッキ買い」「お隣さんが破産宣告」

(いや、これは違う。どの日もあの男に会ってない。)

*あの日の未来がフラッシュバック*

             i r-ー-┬-‐、i
              | |,,_   _,{|
  )'ーーノ(       N| "゚'` {"゚`lリ      |ー‐''"l
 / や  |       ト.i   ,__''_  !       l や ヽ
 l   ら  i´      i/ l\ ー .イ|_     /  ら  /
 |  な  l  トー-ヽ⌒          \  |  な |
 |  い   |/     | l ||        ll   ヽl  い |
 | か   |       | l |        ll     l  か  |
 |   !!  |     / | | |        ´|| ,   |  !! |
ノー‐---、,|    / │l、l         |レ' ,   ノハ、_ノヽ
 /        / ノ⌒ヾ、  ヽ    ノハ,      |
,/      ,イーf'´ /´  \ | ,/´ |ヽl      |
     /-ト、| ┼―- 、_ヽメr' , -=l''"ハ    |
   ,/   | ヽ  \  _,ノーf' ´  ノノ  ヽ   
、_    _ ‐''l  `ー‐―''" ⌒'ー--‐'´`ヽ、_   _,ノ 

(うわあっ!!な、何なんだ今のは?)

「蟹しゃぶ事件」「お前ら表へでろ。」「兄貴が筋肉痛」
「父ちゃんVs銀行強盗」「買い物帰りに矢に射抜かれる」

(・・・・ん?)

「買い物帰りに矢に射抜かれる」

          キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!

                    ∧_∧
                   (  ∀ ) カシャカシャカシャーン

                  /´     `ヽ
                  | |     | |



「旦那〜!ひっさしぶり〜。元気してった〜?」
「思い出したようだな。どうだ、スタンドのほうは?」
「旦那の言うとおり活用させてもらってますよ〜。」
「お、おい。この人知り合いなのか?」
ツーが訊ねた。
「ああ、この人が俺のスタンド能力を引き出してくれた矢の旦那さ。まさかまた会えるとは。」
アヒャは矢の男に再び会えた事を心の底から喜んでいた。
「どうしたんだ?そんなに嬉しそうな顔して?」
「だって旦那にスタンド出してもらったお礼がまだ済んでなかったんっすよ〜。もう一度会えたら
 何か出来ないかと思っていたんですよ。」
「・・ふっ、お前は本当に面白い奴だな。」
アヒャは矢の男の隣に座った。

810新手のスタンド使い:2004/01/18(日) 20:13

「・・・おい、フィルター破れてんじゃないか?
 コーヒー豆がカップの中にいっぱい入ってるぞ?」
「ん、ああゴメンゴメン。ちょっとした果肉入りだと思って」
「うまいことを言うな。」
男は浮いているコーヒー豆をスプーンで掬うと砂糖とミルクを入れた。
「それにしても綺麗ですねー。旦那の持っている矢は。」
アヒャは男の持っていた矢を見せてもらっていた。
かなり古びた雰囲気があるが、サイズも外見も基本的にごく普通の矢。
『矢尻』部分には昆虫のような形の飾りが付いている。
「父さんと母さんが近所の骨董品屋で買ってきた物だ。・・・今は形見の品だけど。」
「あ!す、すんません!辛いこと思い出させたみたいで・・・。」
「いいんだ両親が居なくても祖父がいるから。」
「その隣に居るのは妹さん?」
男の隣の居眠りしている女の子を指差す。
「ああ、コイツは『同じ目的』で一緒になった俺の連れだ。」
「『同じ目的』?」
アヒャが訊ねた。
「俺たちは『顔面に十字の傷がある男』を捜しているんだ。」
「ソイツが何かしたんですか?」
すると男は女を見て言った。
「・・・コイツの母親と俺の兄弟を殺した・・・。」
男はコーヒーを一口飲むと話し始めた。
「俺がまだ中学一年の時だったかな・・・。その時俺には妹と兄が居たんだ。
 俺たち兄弟は3人ともスタンド使いだった。もちろんこの矢のおかげでな。
 ある日買い物に出て行った兄貴と妹がいつまで経っても帰ってこなかった。
 しばらくして家に病院から連絡が来た。その時妹は死亡、兄貴は危篤状態だった。
 急いで病院に駆けつけたら兄貴も妹も傷だらけになっていて、妹の死体には首筋に二つの穴が開いていた。
 兄貴は『顔面に十字の傷のある男』が犯人であること、そいつも俺たちと同じスタンド使いだと言うこと、
 それを言い残すと息を引き取った。」

男の話にアヒャ達はただ黙って聞く事しか出来なかった。

「隣にいるコイツも母親を奴に殺されている。」
再度男が女を見る。
「しかも厄介な事に奴は吸血鬼なんだ。」
「吸血鬼!?」
「知らないのか?『石仮面』という物をかぶって不老不死になった化け物だ。
 太陽の光に弱く、人の血を飲まないと生きていけない。
 倒す方法は頭を完全に潰すか日光に当てるかの二つだけだ。」
 
ゴクリと唾を飲み込むアヒャ。
「でも何でそいつが吸血鬼って分かったんですか?」
「さっき話した俺の妹の首筋の二つの穴。吸血鬼に血を吸われるとあんあふうな傷ができるんだ。」
「へぇ〜。」
「俺たちは今まで奴に対抗できるスタンド使いを探すためにこの矢を使ってスタンド使いを
 増やしていたんだ。これ以上奴の被害者が出るのは御免だからな。」
「そうか、俺もその一人に選ばれたって訳ですか。」

すると男が話を切り替えた。

「だが、今非常に面倒なな事がある。」
「何ですか?」
「厄介な奴をスタンド使いにしてしまったんだ。既にそいつは4人も襲っている。
 今はそいつを探しているんだ。」
「な、なんだってー!」
「しかももっと厄介な事に・・・。」
男はしばらく押し黙った。
「スタンド使いが『カラス』なんだ。」
「か、カラスー!?」
男は詳細を話し始めた。

811新手のスタンド使い:2004/01/18(日) 20:13

数日前。

男は一人の若者をスタンド使いにしようとしていた。
「あいつはこの矢が選んだ・・・。どんなスタンドが出るのやら・・・。」
男は矢を放った。と、同時に
「お、百円み〜っけ!」
ひょい
スカッ!
矢は若者の頭上5cmを越えた。
「な、なにぃ〜〜〜!?」
矢はそのまま飛んでいって・・・・。
ヒュウウウン・・・・。ズシャアァ!!
「ギャァッ!」
丁度塀にとまっていたカラスに刺さってしまった。
「・・・アチャー(ノ∀`)」
するとカラスは自分で矢を引き抜くと男に襲いかかった!
バシュウッ!
ドスウッ!
高速で何かが飛んできて男の足に刺さった。
「うおっ!こ、これがあいつの能力か!?」
カラスは男に一撃食らわすと空へと消えて行った・・・・。

「・・・・と言う訳だ。」
「はい質問。」
「なんだ、アヒャ君。」
「確かに厄介なのは分かったのですが、どうやって見つけるんですか?」
「その心配は無い。昨日見つけて捕まえられなかったものの、カラーボールをぶつけて赤く染めてやったから。」
 
なんて事を・・。

「もう一つ、奴の声に特徴がある。普通のカラスと奴の声は違うんだ。矢で射られたせいかもしれないが。」
「なるほど。」
「悪いが君も探すのを手伝ってくれないか?」
男が尋ねる。
「あたりまえですよ!」
「そうか。」

こうして俺たちのカラス大捜査が幕を開けた。

  /└────────┬┐
. <   To Be Continued... | |
  \┌────────┴┘

812( (´∀` )  ):2004/01/19(月) 15:15
ハァ・・ハァ・・ハァ・・
お・・俺は・・もうこんな所・・帰りませんZO!!
こ・・こんな所・・ぢ・・ぢごくDA!!
「何処に行くんだい?」
「ヒィッ!?あ・・・あ・・」
「大丈夫。恐れる事は無い」
「寧ろ此処から逃げることが恐れることになる。」
「う・・嘘DA!!騙されませんZO!!」
「そう・・残念・・それじゃあお逃げ・・地の果てまでお逃げ・・。」
「そ・・そうさせてもら・・あ・・あれ?」
「おや、君の心はまだ此処に居たいみたいだね。ほら。もう一度やりなおそう・・ねぇ・・?」

―巨耳モナーの奇妙な事件簿―赤毛の『ムック』

俺は何とか警察署に戻り鑑識に『ネクロマララー』の情報をもらい、自室でティータイムを過ごし、
『ネクロマララー』という男の情報ファイルを眺めていた。
何より安心したことはたった一つだった。・・『俺がアッチの人なんて思われなかったこと』。
矢張りこのネクロマララーという単語で驚いただけだったみたいだ。
しかし、ファイルをもらって俺も驚いた。何より薄すぎる。
こんなんじゃ何の手がかりにもならん。どうしよう。
「・・『アレ』をやるか」
そう言うと俺はいきなりソファーに寝っ転がり足をソファーと直角にピシッとあげ、手の力だけで体を浮かし、目線はなるべく足を見る

      |
  ○__|
   /

こんな感じ。俺はコレを『神待ち』と称している。
現にこのポーズで今まで宿題の超難問も解いたし迷宮入り事件も解き明かした。
「・・・そうだ!!!」
そら見ろ。言い案が浮かんできた。
「『彼』に協力を求めよう!」
『彼』とは『山本悪司』という男。何をしたのかしらないが
自衛隊とFBI400人異常に囲まれて無傷で全員吹っ飛ばし、警察から恐れられた男。
・・・・コレはスタンド能力に違いない、それも超強力な。
しかもその『彼』は大阪一帯を仕切っている。
きっと部下もかなり居るだろう。そんな人を味方につければ犯罪者一人見つけるのは造作ないだろう。
・・・・しかし彼の住所なんて知らない。
それに大阪まで飛ぶのなんて面倒くさすぎる。どうしたものか。
大体楽して調べたいから俺は鑑識からこのファイルをもらったんだ。
それなのに大阪まで行ったら意味が・・・・。
いや、しかし『神待ち』が与えてくれた結果だ。
この結果を信じずして俺は何を信じるのか。
よし、飛ぼう。大阪に。
(費用はもちろん署に出してもらうとしてェー)


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