したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

スタンドスレ小説スレッド

1新手のスタンド使い:2003/11/08(土) 01:58
●このスレッドは『 2CHのキャラにスタンドを発現させるスレ 』の為の小説スレッドです。●

このスレでは本スレの本編に絡む物、本スレ内の独立した外伝・番外編に絡む物、
本スレには絡まないオリジナルのストーリーを問わずに
自由に小説を投稿する事が出来ます。

◆このスレでのお約束。

 ○本編及び外伝・番外編に絡ませるのは可。
   但し、本編の流れを変えてしまわない様に気を付けるのが望ましい。
   番外編に絡ませる場合は出来る限り作者に許可を取る事。
   特別な場合を除き、勝手に続き及び関連を作るのはトラブルの元になりかねない。

 ○AAを挿絵代わりに使うのは可(コピペ・オリジナルは問わない)。
   但し、AAと小説の割合が『 5 : 5 (目安として)』を超えてしまう
   場合は『 練習帳スレ 』に投稿するのが望ましい。

 ○原則的に『 2CHキャラクターにスタンドを発動させる 』事。
   オリジナルキャラクターの作成は自由だが、それのみで話を作るのは
   望ましくない。

 ○登場させるスタンドは本編の物・オリジナルの物一切を問わない。
   例えばギコなら本編では『 アンチ・クライスト・スーパースター 』を使用するが、
   小説中のギコにこのスタンドを発動させるのも、ギコにオリジナルのスタンドを
   発動させるのも自由。

 ★AA描きがこのスレの小説をAA化する際には、『 小説の作者に許可を取る事 』。
   そして、『 許可を取った後もなるべく二者間で話し合いをする 』のが望ましい。
   その際の話し合いは『 雑談所スレ 』で行う事。

329新手のスタンド使い:2003/12/19(金) 02:41
その日の夜、俺はボロボロになった体を引きずりながら
ゴミ箱から夕食の残飯を漁っていた。
大した期待はしていなかったが、
なんとその日は全くといっていい程手のつけられていない弁当を
二箱も見つけることができた。
これで明日必死に残飯を漁らなくても良いと考えると、最高にハイってやつだった。
 せっかくの食事を邪魔されては敵わないので、
人気の無い路地裏で弁当を食べることにした。
飲み物は捨てられていた空き缶に公園の水道を汲んだものだ。
早速食べようと弁当の蓋を開けた時、近くに何かの気配を感じた。
「・・・・・・!!」
 俺は一瞬全身を強張らせたが、次の瞬間その緊張はほぐれた。
「にゃあ・・・・・」
 そこにいたのは一匹の猫だった。おそらく腹を空かせているのだろう、
足取りに力が無い。
なにより、弁当を食おうとしている俺に対する目が尋常ではない。
 俺は戸惑った。
確かに腹を空かせているのはかわいそうだとは思うし、
何とかしてやりたいとも思う。
だが、俺だって生きるのに必死だ。
明日も今日と同じように首尾よく食料を見つけられる保障などどこにも無い。
俺には他人を助けるような余裕などこれっぽっちも無いのだ。
気の毒だが、この猫にはあきらめて帰ってもら・・・
「にゃあ・・・・・」
 この猫め。すがりつくような猫なで声を出しやがって。
そんなものでこの俺をどうにかできるとでも思ったか。
何があろうと駄目なものは駄目・・・

「にゃあ、にゃあ、にゃあ」 
俺は猫と一緒に弁当を食べていた。何故、こんな事になってしまったのか。
こんな事をしても何にもなりはしないのに。猫に対する同情だろうか。
おかしな話だ。ゴミが野良猫に同情なんて。
(どうすんだ、大切な食い物を野良猫なんぞにやっちまって。
恩返しにこの猫が助けてくれるなんて、
おとぎ話でしか有り得ないような事でも考えか?
小さな命を助けて善人気取りかよ。)
 俺は軽い自己嫌悪と後悔にさいなまれた。が、さっさと忘れることにした。
後悔しても弁当が帰って来る訳でもない。

「にゃあ。」
 猫は弁当を食い終わると、丁寧に深々と御辞儀をし、
くるりと回って闇夜へと消えていった。
案の定、食うだけ食って猫はさっさとどっかへ行った。
まあしかたがない。野良猫に何か見返りを求めるほうがどうかしている。
でも、少しだけ、ほんの少しだけ俺は心が何かで満たされるのを感じていた。
(下らない。偽善をなして自己満足に浸っているだけだ。
そんなもんでお前の人生は何一つ変わりやしないぞ。)
 そうだ、その通りだ。何を俺は勘違いしていたのだろう。
俺に救いなんてもたらされやしないってことぐらい、
とっくの昔から判りきっていた事じゃないか。
こんな便所紙程度にも役に立たない満足感など、
弁当箱の空と一緒に捨ててしまうことにする。

330新手のスタンド使い:2003/12/19(金) 02:42
ふと、近くで物音がした。
さっきの猫かと思ってそちらを向いたが、そこにいたのは中年のおっさんだった。
が、何やら様子がおかしい。
おっさんは酔っ払っているのか体はフラフラだし、目の焦点も定まっていない。
すると、おっさんはいきなり膝を着いてうずくまり、何やら叫び始めた。
「出てけ!!俺から出て行ってくれえええええ!!!!」
 次の瞬間、俺は信じられない光景を目にした。
おっさんの体が、みるみるうちに崩れていくのだ。
「・・・この体も、私の器には相応しくなかったか・・・・・・」
 俺はさらに自分の目を疑った。
崩れていくおっさんの体から、変なものが現れたのだ。
そいつは一応人のような姿はしていたが、到底普通の存在とは思えなかった。
何だ、これは?
俺の目の前で、いったい何が起こっている?
俺は逃げることも忘れて、ただ呆然としていた。
「丁度良い・・・そこのお前、体を貰うぞ・・・・・・」
 そいつと、目が合った。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!」
 もし声を出すことが出来たなら、俺はこの島中に響く声で叫んでいただろう。
いつもリンチを受けている島のチンピラとは次元の違う、圧倒的なプレッシャー。
すぐさま振り返り、逃げようとする。
だが、あまりの恐怖により足をもつれさせその場で倒れた。
急いで立ち上がろうとする。出来ない。腰が抜けてしまった。
ヤバい。奴はどんどん近づいてくる。逃げないと・・・死ぬ!!
「何を怯えているんだ?出会ったばかりなのに、
そんなに邪険にすることも無いだろう?」
 ついに奴は目の前まで迫ってきた。俺に向かってゆっくりと腕を伸ばす。
(やめろ!
来るな!!
来ないでくれ!!!
やめろ!!!!
いやだあああああああ!!!!!)
 俺の意識は、そこで途切れた。

331新手のスタンド使い:2003/12/19(金) 02:43
俺は真っ黒な空間を漂っていた。
どこまでも続く、漆黒の世界。
決して光の差し込まない、暗闇の底。
ゴミの俺に相応しい、最下層の掃き溜め。
その世界の中心には、周りの闇よりもさらに昏い、
総てを飲み込むような巨大な何かが渦巻いていた。
そっとそのうねりの中に手を差し込んでみる。

殺す殺す焼き尽くす殺すコロス殺す消えろころす殺す俺を捨てた世界など殺す朽ち果て
るがいい許さない殺す一人残らず痛いのは嫌だ皆殺しに殺す倍返しだ殺す踏み躙る捨てら
れたくない死んじまえ殺す壊す消し炭にしてやる死にたくない消えて無くなれ殺す殺す

おぞましいほど歪にねじれた不の感情が、溢れんばかりになだれ込んでくる。
そうか。分かった。分かったぞ。俺はここが何処だか知っている。
ここは、そう、ここは、俺の心の中だ。

あれ?待てよ。何だ?何か居る。うねりの中に何か居るぞ。
何だ、あれは?何なんだ、あれは?
ああ、あいつは、あいつには見覚えがある。おっさんの中の人だ。
何でこんな所に?何の為に?何をしているんだ?
喰ってる。何かを喰っている。何を食っている?
まさか。あいつが喰っているのは、まさか。
いや、間違いない。あいつが喰っているのは、俺の、俺の・・・・・・
 
 
目が覚めた。
すでに日は昇っている。
周りを見渡す。どうやら、昨日と同じ場所みたいだ。
(生き・・・てる・・・・・・?)
 自分の体を見て調べてみる。
足は付いているから幽霊にはなっていないらしい。いつもと同じ、醜い体だ。
 昨日おっさんが崩れていった場所を見てみる。そこには、何も無かった。
(・・・・・・夢・・・?)
 いや、それにしては余りに鮮明に記憶が残っている。
昨日ここで起こったことは、間違いなく「現実」だ。
だけど、俺の体には見た所何も異常は無い。
あの変な奴は、結局俺に何もせず去ったのだろうか。でも、何故?
 俺は考えるのをやめた。考えたところで、俺に何かが分かるとも思えない。
気にするだけ、時間の無駄だ。
 俺は、今日の食い物を探すことにした。

332新手のスタンド使い:2003/12/19(金) 02:44
(ろくなものが見つからないな・・・)
 あれから一時間以上ゴミ箱のあさってみたが、食い物はなかなか見つからなかった。
 俺は昨日猫に弁当をあげた事を、今更ながら後悔していた。
 本当に何であんな事をしてしまったのか。こうなる事は目に見えていたじゃないか。
「はははは。見ろよ、必死こいて逃げようとしてるぜ。」
「おお、本当だ。こりゃあ傑作だな。」
「これだから虐待は止められないよな。」
 通りの向こうから、聞き覚えのある声が聞こえた。
 視線をそちらに移してみる。
声の主は、昨日俺がリンチを受けた三人組だった。
 一体、今度は何を虐めているのか。暇な奴らだ。
「にゃあああああ!!にゃああああああ!!!」
 その泣き声にも、聞き覚えがあった。
 昨日の、野良猫だった。
尻尾を掴まれて逃げられないところを、ライターの火であぶられていた。
 運の悪い奴だ。あんな奴らに目を付けられるなんて。
 弁当を食うだけ食って大した礼もせずに消えるから、罰が当たったんだ。
 俺には関係無い。俺まで巻き込まれないようにさっさと逃げるに限る。
「にゃああああああ!!!にゃああああああああ!!!!」
 俺には関係無い。関係・・・無いんだ。
 
 気が付いたときには、俺は奴らに向かって突っ込んでいた。
 猫の尻尾を掴んでいる奴に体当たりをぶちかます。
 いきなりの不意打ちで男は体勢を崩し、その拍子で猫の尻尾を持つ手を離した。
「何するんだ、手前ぇ!!」
「おい、こいつ昨日のでぃだぜ。」
「どうやらまだ殴られ足りないようだなぁ。」
 すぐさま奴らの攻撃対象は俺へと移された。
 昨日よりさらに激しい暴力。
 容赦ない仕打ちの雨霰。
打撃で意識が遠のきそうになる度に、更なる打撃で無理やり叩き起こされる。
(何やってんだ、俺は。)
 俺は自分の馬鹿さ加減にうんざりしていた。
 弁当を分けてやるのとは訳が違うって事ぐらい、分かってたじゃないか。
 だから、見て見ぬふりして、逃げようとした。
 それが俺にとって最善の手段だって事ぐらい赤ん坊でも分かることじゃないか。
 糞、糞、糞。
 何だって俺がこんな目に。何だって俺はあんな事を。
「ほらどうしたぁ!もうお寝んねかぁ!?」
「勝手にくたばってんじゃねぇぞ!」
 男達の暴力は、さらに苛烈になる一方だった。
 思い切り踏み付けられた右手には、もう殆ど感覚が無い。
 肋も何本か折れてるみたいだ。
 ふと、視界の片隅にあの猫の姿が入ってきた。
 怯えきった目で、こっちを見ている。
 お前、まだそんな所に居たのか。さっさと逃げろ
 お前がまた捕まりでもしたら、俺がこんな目にあってる意味が無くなる。
 そうなったら、俺は唯の阿呆じゃないか。
 おい、何をやっている。そっちじゃない。向かう方向が逆だ。
 こっちに近づいて来てどうする。
 違う。さっさと尻尾巻いて逃げろ。分かってるのか。
 おい、一体何を・・・
「いってええええええぇぇぇぇぇぇ!!!」
 あろうことか、猫は男達に跳びかかり、一人の顔面を爪で引っ掻いた。
 馬鹿か、あいつは。
 俺が作ったせっかくの逃亡のチャンスを無駄にしやがって。
 救いようの無い大馬鹿だ。
「この糞猫がああああああああ!!ぶっ殺してやるぁ!!!」
 男は怒髪天を突く勢いで逆上した。
 懐に手を入れてナイフを取り出す。手の先が鈍い輝きを放つ。
 ヤバいぞ。猫、さっさと逃げろ。本当に殺されるぞ。
 何やってる。早くしろ。死ぬぞ。
 駄目だ。このままじゃ、刺し殺され・・・・・・

333新手のスタンド使い:2003/12/19(金) 02:45
腹部に突き刺さる強烈な異物感。
 最初に感じたのは、熱いという感覚だった。
 熱さはすぐに鋭い痛みへと変わり、今度は体中が一気に寒くなる。
 刺された場所から、血が大量に失われていくのが分かった。
 猫は・・・どうやら大丈夫みたいだ。
「何だ、こいつ!?いきなり前に飛び出してきやがった!」
 救いようの無い大馬鹿は、どうやら俺の方だったみたいだ。
 他人を庇って命を落とし、天国へと召されましょう、てか。
 お目出てーな。
 そんな事を考えてる場合じゃない。
体からどんどん力が抜けていく。指一本動かせない。
「おいおいおい、どーするよ。やべーんじゃねーの。」
「大丈夫だろ。こんなゴミ、死んだ所で誰も気にしやしない。
 寧ろ、道端のゴミを掃除したって褒めてもらいたいぐらいだぜ。」
「ははは、違いねえや。
 それよりまだ生きてるみたいだし、早く殺っちまおうぜ。」
 男達はそう言うとじゃんけんを始めた。
 誰が俺に止めを刺すのか、決めているのだろう。
 今までのことが、走馬灯として浮かびあがる。
 だが、そこには何一つ楽しかった事、嬉しかった事など無い。

死ぬのか。
 俺はここで死ぬのか。
 こんな奴らに殺されるのか。
 生きるものとして何の尊厳も認められる事もなく、
 ゴミのように。
 俺が死んだら、この町の奴らはさぞかしせいせいすることだろう。
 奴らの笑い顔が目に浮かぶ。
嫌だ。
 俺は死にたくない。
 生きていたいんだ。
 普通に笑って暮らしたいんだ。
 何故、何で俺はこんな目に会わねばならない。
俺には生きる資格さえ無いというのか。
 俺はそれ程の罪を犯したとでもいうのか。
 でぃであることは、それだけで罪なのか。
 俺だって、好き好んででぃになった訳じゃない。
畜生、畜生。
 嫌だ、死にたくない。
 嫌だ。
 嫌だ。
      
      ドクン

 体の中で、何かが動いた。
 何だ?
 今のは何なんだ?

       ドクン

 俺の内に、何かが居る・・・?

334新手のスタンド使い:2003/12/19(金) 02:46
「よーし、俺の勝ち!」
「ちっ、しょうがねえなあ。」
「今度奢れよ。」
 男達がこちらを向いた。
どうやら、死刑執行人が決まったようだ。
「さーてと。それじゃ、殺りますか。」
 俺の体に向かってナイフが振り下ろされる。
 その光景が何だかひどくスローモーに見えた。
 
       ドクン
 
まただ。
 
      ドクンドクンドクンドクンドクンドクン
 
胎動が、速くなる。
俺の体がそのリズムと少しずつ重なっていく。
何て、心地良い。
 ナイフがみるみる迫って来る。
 俺は、ゆっくりと腕を伸ばした。

「うぎゃああああああああああああ!!!!!」
 気がつくと、ナイフを振り下ろしていた筈の男が吹っ飛んでいた。
 何だ?
 何が起こった?
「どうした!!大丈夫か!?」
「おっおい、見ろよあいつ!!マトモじゃねえよ!!!」
 男達はひどく慌てている様子だった。
 一体、何だというんだ。
「やべーぞ!!逃げろぉ!!!」
 吹き飛んで倒れた男を抱えて、三人は一目散に逃げて行った。
 俺は訳が分からなかった。
 瀕死の俺を前にして、何故あいつらは血相変えて逃げたのだろう。
 俺はただ、腕を少し動かしただけ・・・

335新手のスタンド使い:2003/12/19(金) 02:46
(!!!!!!!!!!)
 俺は思わず目を剥いた。
 俺の腕が、見たことも無い形に変わっているのだ。
 何だ、何だこの腕は。
 いや違う。俺はこの腕を見たことがある。
 これは、昨日会った、あの「化け物」の・・・
 
急に意識が朦朧とした。
 腹に穴が開いて血がそこから流れ出ているのだから、
当然といえば当然と言える。
 自分の腕が別の何かに変わるという信じられない出来事による
精神的ショックも、大きな原因の一つだろう。
目が霞み、視界がぼやける。
抗い難い睡魔が、俺を襲う。
瞼が落ちる。
駄目だ、このまま目をつぶっていたら死ぬぞ。
目を開けろ。
だが、必死の抵抗も空しく思考はそこで断絶し、
俺の意識は暗い闇の底へと沈んでいった・・・


TO BE CONTINUED

336新手のスタンド使い:2003/12/19(金) 21:24
乙!

337ギガバイト:2003/12/19(金) 22:04
>>292
アルカディアの能力って・・・

ペルソナから取りました?

338:2003/12/19(金) 22:38
>>337
ニャル+タタリ

339:2003/12/19(金) 22:38

「―― モナーの愉快な冒険 ――   ツーチャンはシンデレラに憧れる・その1」

 
 まさに、惨状という表現がふさわしい。
 焼け焦げて、屑鉄となり果てたヘリが民家に刺さっている。
 ヘリの尾部は、鋭利な刃物で切り取られたかのように消滅していた。
 さらに、周囲の家屋は悉く倒壊している。
 大きなクレーターが、かって道路であった場所に形成されていた。
 死者が出なかったのは奇跡に近い。
 よほど、避難誘導及び救護が的確だったのだろう。

「これは、自衛隊のヘリがエンジントラブルを起こし墜落した事故です」
 ポケットに手を突っ込んでヘリを見上げていた局長が、不意に口を開いた。
 そう報道機関には根回ししておくように、という事だろう。
 局員は携帯を取り出すと、部下にそう指示した。

「まったく…せっかくの日曜がぶち壊しですよ…」
 局長は舌打ちして呟いた。
 そして、局員の方を横目で見る。
「ASAの連中は?」
「事情説明を終えて、引き上げました」
 局員は、何やら疲れきった顔をした丸耳の姿を思い出した。
 上司に振り回される組織人の顔だ。そう、自分と同じ。
「では、そのASA職員の事情説明とやらを反芻してみなさい」
 局員は、丸耳の説明を思い返す。
「この町に、危険性の高いスタンド使いが出現。偵察時に民間人に被害者が出たため、止む終えず戦闘。
 車を強奪して逃げるスタンド使いを、そのまま抹殺…という事ですが」
 局長は頷いて言った。
「で、その話の矛盾点は?」
「まず、民間人の被害者とやらが確認できません。戦火に巻き込まれた住民は多いですが、直接スタンド使いに
 危害を加えられた人というのは、特定できませんでした。また、偵察任務という割にはヘリは重装備です」
 局員は、そこで言葉を切る。局長が後を継いだ。
「そもそも、RAH−66はASAにとっても貴重な装備。偵察などには使わないでしょう。
 また、危険なスタンド使いとやらが車を強奪して逃げた、というのも目撃証言と食い違います。
 車を奪うところを目撃されたのは、モナー族の男性、奇抜な服装の女性、怪我をしたギコ族一人としぃ族が一人。
 この4人は、一緒に行動していたようです」
 その通り。証言によれば、彼らが車を奪ってその場から逃走したようだ。
 局長は話を続ける。
「他には、ハンマーを持った女性も目撃されているが、彼女には心当たりがあります」
 局員自身も、ASAの三幹部の一人が、自分の身長以上のハンマーを振り回すという話は聞いたことがあった。
 だが、それほどの重要人物が直接戦闘に関わるものだろうか?
「そして、ハンマー女と4人のグループが会話を交わしていた、という証言もある。
 この5人はASA側、もしくは協力する者とみて間違いないでしょう」
 すると、危険なスタンド使いが車を奪って逃げた、というASAの説明に矛盾が出てくる。
「では、その危険なスタンド使いとは誰だったのか…」
 局長は言葉を切ると、局員の顔を見た。
「『奇妙な男』、という証言が採れています」
 局員は答えた。
 ―――『奇妙な男』。
 目撃者は、そう口を揃えていた。
 顔は暗くて見えなかったが、とにかく不気味な男だったと。

340:2003/12/19(金) 22:39

 そこへ突然、車が突っ込んできた。
 どう贔屓目に見てもスクラップ一歩手前のボロ車だ。
 その車は2人の手前で止まった。
 運転席から、1人の男が降りてくる。
「ああ、遅かったですね」
 局長は、男に呼びかけた。
「黙れよ、役人」
 男は不機嫌そうに答える。いや、実際に不機嫌なのだろう。
 局員は、この男に見覚えがあった。
 ―――フサギコ。
 この国で唯一、集団的自衛権を行使できる組織の幕僚幹部である。
「あなただって公務員でしょう…?」
 局長が口を開く。
「俺は公僕だが、役人じゃない」
 フサギコはそう答えると、先程の局長のように墜落したヘリを見上げた。
「で、今日は公務で…?」
 局長は訊ねる。
「そんな訳ないだろ」 フサギコは吐き捨てた。
「明日、この件で閣議に呼ばれる。現場くらい見ときたくてな…」
「で、どうです?」
 局長は、様子を伺うようにフサギコの顔を見た。
「シッポの部分が綺麗にブッ飛んでるな。あんな断面を作るのは、既存の兵器では不可能だ…」
 そして、フサギコは空を見上げた。まるで、飛んでいたはずのヘリを見るように。
「そもそも、墜落原因が問題だな。空中でシッポが切断されて、安定性に問題が出たんだろう。
 テイルローターの制御が出来なくなると、ヘリは旋回して墜落する。ちょうどあんな感じにな」
 フサギコの見解は、目撃証言と一致する。
 墜落時、ヘリは激しく旋回していたらしい。
「すると…ホバリングしてるヘリを、兵器を使わずにあんな風にした奴がいる、って事になる。
 そいつは間違いなくバケモンだ。後は、お前達の仕事だろ?」
「私達の仕事でもありませんよ」
 局長は、フサギコの言葉を受けて素早く答えた。 「もう、ASAによって片がつきましたから」
 フサギコは、局長を睨む。
「俺が閣議に呼ばれたのも、そのせいなんだよ…」
「と、言うと?」
 理解しているにも関わらず、局長は問いかけた。
「ASAの連中、この法治国家でドンパチやらかしやがって…この国をナメてるとしか思えねぇな!」
 フサギコの不機嫌の理由は、そこにあったようだ。
 まあ、彼の立場からすれば当然の反応だろう。
「…ったく、スタンド使いって奴等は…!」
 フサギコは憎々しげに呟く。
「たった一人のスタンド使いを討伐するためだけに、武装ヘリで飛び回りやがって…
 ASAも、同じ穴の狢だ! この国にスタンド使いなんざいらないんだよ!」
 感情を爆発させたフサギコを見て、局員は思い出した。
 この男は、ずっと前からスタンド使いを敵視してきたのだ。
 しかし、スタンド対策局の人間がこれだけ周囲にいる中で、こんな事を豪語するとは…
 フサギコの度胸も大したものだ。
 局員は、無骨なこの男に少しだけ好感を持った。
 それに、局員自身もスタンド使いでありながら、フサギコの主張に怒りは感じなかった。
 フサギコのようなスタンドを持たない人間にとって、スタンド使いである我々は、
 不気味な力を持った存在としかその目に映らないだろう。
 人は、得体の知れないモノに強い恐怖心を持つ。
 そう。フサギコは、スタンド使いが社会に及ぼす影響を恐れているのだ。
「ハハッ、またお得意のスタンド使い不要論ですか…」
 局長は笑って言った。
 その様子から察するに、何度も聞いているのだろう。
「好きでスタンド使いになった人間なんて、この世にはいませんよ。
 『弓と矢』なんて民間伝承のようなものだし、今存在するスタンド使いは、ほぼ全員が生まれつきだ。
 その生まれつきのスタンド使いでも、自分の能力に気付く人間は少ない。
 さらに、他のスタンド使いに出会う可能性はさらに少ない。
 スタンド使いですら、我々公安五課の存在を知っている者は少ないですからね…」
 『スタンド使い同士はひかれあう』という言葉を、局員は思い出していた。
 スタンドそのものが引き合うのか、無意識による同能力者の共感なのか、それとも『運命』のなせるワザなのか…
 確かに、そういう事もままある。
 だが、そもそもスタンド使いの絶対数は少ないのだから、スタンド使い同士の出会いは少ない。
 そういう自分も、警視庁捜査一課から引き抜かれるまで、同じような能力を持つものがいるとは思ってもみなかった。

341:2003/12/19(金) 22:40

 局長はフサギコに言った。
「そういえば、貴方の嫌いなASAが大挙して我が国に押し寄せてきたようですよ?」
「…何だと、いつからだ?」
 フサギコは局長を睨む。
「昨日、専用輸送機で30人が入国しました。この騒ぎを起こした連中ですね。
 討伐隊にしては多いと思ってたんですが… それでも、先遣隊に過ぎなかったようです。
 今日の早朝には、一般旅客機で220人が入国しました」
「ASAの奴等が250人だと…!?」
 フサギコは驚きの声を上げる。
「そう。『教会』の代行者に続いて、今度はASAまでこのちっぽけな町に集まってきました。
 あいつらは、何の意図があってこの町に集まってくるんでしょうね…」
 局長がため息をついた。
 局長は、すでに多くの情報を掴んでいるはず。
 白々しい素振りだ。
「で、そのASAの奴等はどこに潜伏してるんだ?」
 フサギコは訊ねる。
「潜伏も何もないですよ。駅前に、一夜にして巨大な高層ビルが出現しました。
 これも何らかの能力なんでしょうが、とにかくそこが奴等の根城です」
 フサギコは、その言葉で我慢の限界を超えたようだ。
「ASAの奴等… この国でミサイルをぶっ放すだけじゃ飽き足らず、根城まで構えやがったのか!!」
「何なら、見てきたらどうです?」
 局長は可笑しそうに言った。
「よし、見てこよう」
 フサギコはいきなり車に乗り込むと、そのまま走り去っていった。
 局員は、呆気に取られて局長の顔を見る。
「敵情視察のつもりでしょうかねぇ…」
 局長はそう呟いていた。
 いくら敵意を持っていても、まさかいきなり乗り込んだりはしないだろう。
 とにかく彼は、スタンド使いが大嫌いなのだ。
 局員は、フサギコの態度からつくづくそれを実感した。


          @          @          @


 俺は、呆然としつつ時計を見た。
 …7時。
 今は午前? 午後?
 いや、午後の7時にしては明るすぎる。
 間違いなく朝の7時だ。
 すると、俺は楽しい日曜日をほぼ寝て過ごしたのか…?
 ゆっくりと身体を起こす。
 まだ、体中が痛い。
 今日は月曜日。最悪の週明けだ。

 台所では、リナーが朝食を食べていた。
 ガナーは部活の朝練の為、すでに学校に行ったようだ。
 例の連続殺人で部活が遅くまで練習できないようになったので、どこの部活も朝練が活発らしい。
 俺は用意されていたパンを食べる。
 コーヒーも、冷めているものの他に異常はない。
 食べ終えて一息つくと、俺は新聞を広げた。
『自衛隊機、住宅街へ墜落』という文字が目に入る。
 昨日のアレか…

「でも、どうして自衛隊が出てくるモナ?」
 俺は、既に新聞を読んでいるであろうリナーに訊ねた。
「隠蔽工作だ。事実をそのまま伝えるわけにもいかんだろう」
「ふーん」
 俺は、新聞を流し読みした。
 不意に、この町の名が目に入る。

『あの連続殺人の町で、新たな犠牲者!?』

 ―――!!
 記事を読み進める。
 深夜の12時、路上で24歳の男性の遺体が発見されたようだ。
 もう一人の俺は、男は狙わないはず…
 死因は…失血死。
 首筋に牙の跡のような傷が見つかり、獣害も考慮に入れて捜査しているとあるが…

 …失血死。
 …首筋に牙の跡。
 間違いない。
「リナー! これは…」
 俺は新聞を無造作に畳むと、リナーを見た。
「ああ。吸血鬼だ」
 リナーは、あっさりと断言した。
 
 奴等、とうとう町の人間の血を…
 絶対に許せない。
 目を見開いて握り拳をつくった俺を見て、リナーは言った。
「だが、吸血鬼を一匹一匹狩っていったところでキリがない。元を断たねばな…」
 『アルカディア』…
 そう、この町に潜む諸悪の根源を倒さなければならない。
「しかも、この事件が『吸血鬼による殺人』としてセンセーショナルに報道される事は目に見えている。
 そうなれば、吸血鬼の噂が囁かれ…」
 人々の想像する吸血鬼像が、そのまま具現化してしまう訳か。
 一刻も早く、『アルカディア』を倒さないと…
「それで、モナは何をしたらいいモナ?」
 俺は逸る気持ちを抑えて、リナーに訊ねた。
「何もする必要はない。君に、この町の調査ができるのか?」
 その通り。俺は調査に関しては素人なのだ。
 もっとも、戦いに関しても玄人には遥かに遠いが。
 まあいい。ここまで関わってしまった俺を、リナーは除け者にしないだろう。
 それより、もう家を出る時間だ。

342:2003/12/19(金) 22:41

 玄関を出ると、目の前のブロック塀にもたれて腕を組んでいる男の姿が目に入った。
 眼鏡をかけていて、その眼は意志の強さを感じさせる。
 七三に分けられた髪は、右側で軽くカールしていた。
 また、着ているセーターは異様にダサい。
 その男は、じっと俺を注視していた。
「あの…何ですかモナ?」
「『教会』の者だよ…」
 男は言った。
 俺は衝撃を受ける。つまり、リナーの仲間か?
「そう緊張しなくていい。俺の名はキバ…いや、『解読者』だ。君も知っての通り、代行者の通り名だよ」
「そうですか。モナーですモナ…」
 俺は頭を下げながら、用心深く男を見た。
 『教会』の中でも、暗殺技術と強力なスタンド能力の両方を持っているもののみ、代行者としての
 通り名を持つことが許されるとリナーに聞いた。
 確かに、目の前のこの男も、かなり強そうだ。
 さっき名乗りかけていた「牙」という名前も、戦場でついた異名だろう。
 俺に接触して何を企んでいるのだろうか。
「モナー君か…」
 『解読者』は、口に手をあてて何やら考え込んで…

「――――わかったぞ!!」

 不意に、男はアップになって言った。

  ヽ、.三 ミニ、_ ___ _,. ‐'´//-─=====-、ヾ       /ヽ
        ,.‐'´ `''‐- 、._ヽ   /.i ∠,. -─;==:- 、ゝ‐;----// ヾ.、
       [ |、!  /' ̄r'bゝ}二. {`´ '´__ (_Y_),. |.r-'‐┬‐l l⌒ | }
        ゙l |`} ..:ヽ--゙‐´リ ̄ヽd、 ''''   ̄ ̄  |l   !ニ! !⌒ //
.         i.! l .:::::     ソ;;:..  ヽ、._     _,ノ'     ゞ)ノ./

「まず、「モナー」をローマ字にする。(monar)
 次に、今日が9月21日であることを考え末尾に「ノストラダムス」を加える。(monarノストラダムス)
 そして最後に意味不明な文字「monar」。
 アルファベットが混じっているのは不自然なので、削除し残りの文字を取り出す。
 するとできあがる言葉は……「ノストラダムス」。
 モナーとは、ノストラダムスを表す言葉だったんだよ!!」

 な、なんだってー!!
 さらに、『解読者』は言葉を続けた。

「時空を超えて、あなたは一体何度――――
 我々の前に立ちはだかってくるというのだ! ノストラダムス!!」

 学校に遅刻してしまう。
 俺は、急いで学校へ向かった。

343:2003/12/19(金) 22:42

 普段なら走るところだが、どうにも体が痛い。
 まあ、1時間目に間に合えばいいか。
 そう思いつつ学校に到着した。
 教室に入った時には、すでにHRは終わっていた。

「ふぅ」
 俺は席に着く。
 不思議なことに、ギコもモララーもしぃも見当たらない。
 俺の机に、奴が後ろから近付いてくる。
「よぉ、重役出勤とは大したモンだな!」
 俺は振り向いた。
「お前は…久し振りに登場した、おにぎりィ!!」
「『さん』をつけろよ、デコ助野郎ォ!!」
「で、ギコやモララーやしぃはどうしたモナ?」
 俺は、久し振りに登場したおにぎりに訊ねた。
「ああ? 風邪ひいてダウウンらしーぞ?」
 全員ダウン?
 みんな、そこまでダメージが大きかったのか?
 俺は携帯を取り出して、ギコに掛けてみた。
「もしもし…」
 ギコの声だ。
「モナーモナ。どうしたモナ?」
「やっぱ、無理しすぎたようだ。土日に暴れ回ったせいで、体が動かねぇ… ま、明日は行くけどな。
 それと、しぃもヘタれてるみたいだ。疲れてるみたいだったし、じぃの事も相当こたえてるんじゃないか…」
「そうモナ。お大事にモナ」
 じぃの名を聞いて、俺は慌てて電話を切った。
 次に、モララーに掛けてみる。
「モナー君! 僕のこと心配なんだね…!! でも…」
 俺は電話を切った。
 元気であることが分かれば、もういい。
 どうやら、学校に来れるほど体力があったのは俺だけだったようだ。
 そうしているうちに、1時間目の授業が始まった。


 たちまち、昼休み。
 食堂へ行く途中に、レモナに捕まった。
 追っ払うのも可哀想なので、一緒に学食へ行く事になった。
 パンを買って、適当に椅子に座る。
 レモナは俺の隣に座った。
「つーちゃん、土日が空けてもまだ休みなんだって…」
 今日も休み?
 いくらなんでも欠席日数が長すぎる。
 さすがのレモナもちょっと心配そうだ。
 まあ、あのつーちゃんが5日近くも音沙汰がないとなれば、当然か。
「今日学校が終わってからでも、様子を見に行ってみるモナ?」
 俺は提案した。
「そうねぇ… つーちゃんの住んでるマンションなら大体分かるし、行ってみよっか」
 つーちゃんは、意外にもマンション暮らしだったのか。
 と言うか、家族構成とかはどうなってるんだろう。
 とにかく、学校が終わったらレモナと二人でつーちゃんの家を訪ねる事になった。


  /└────────┬┐
. <   To Be Continued... | |
  \┌────────┴┘

344新手のスタンド使い:2003/12/19(金) 23:59
乙!

345新手のスタンド使い:2003/12/20(土) 18:44
乙です。まさかキバヤシが出てくるとは・・・・。
俺も自分の作品中に波heギャッ!・・・・・・イエ、ナンデモアリマセン。

346新手のスタンド使い:2003/12/20(土) 18:55
キバヤシ…

347:2003/12/21(日) 20:18
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

    /´ ̄(†)ヽ
   ,゙-ノノノ)))))     少女に与えられたのは、
   ノノ)ル,,゚ -゚ノi  ∩    大きな銃と小さな幸せ。
  /,ノノくj_''(†)jlつ[( )
 ん〜''く/_l|ハゝ((_)
      し'ノ     ̄
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

  ∧_∧   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 ( ;・∀・)< …少女?
 (    )  \______
 | | |
 (__)_)

      /´ ̄(†)ヽ
     ,゙-ノノノ))))) <!!
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

             /´ ̄(†)ヽ ヽ   lヽ/レ
            ,゙-ノノノ)))))`ヽヽ  V ガッ!! Z
            ノノ)ル#゚ -゚ノi  ∩   レvヘ/
           /,ノノくj_''(†)jlつ[( )☆
          ん〜''く/_l|ハゝ((_)∧_∧
               し'ノ    ☆(;・∀・)つ <アアン
                      /ヽ_) /
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

                     /´ ̄(†)ヽ
                    ,゙-ノノノ)))))  バラララ…     ビシュ!!
                    ノノ)ル#゚ -゚ノi ,、 ヽ从/      ∧_∧,,;; ;''
               ∩    /,ノノ(⊇二∩ヲ]i===:;, :;.    (;・∀・)つ・∵"< アアン
                [( )  ん〜''く/_l|ハゝ^  /Wヽ    /ヽ_)・/∴;";"
             ((_)      し'ノ            ビシュ!!`'''
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
                             ,;⌒⌒i.)
                            (   ;; ;;;)      _________
                            (     ,,:;,;;)     |          ..|
                              ヽ| |/;,,,ノ      |    『 教会 』    |
                  /´ ̄(†)ヽ        | |'        |_________|
                 ,゙-ノノノ)))))⌒ヽ   ,,| | ,,         ,    ||
                 ノノ)ル,,゚ -゚ノ    )  ノノ从ヽ、            ||
                /,ノノ(つ'(†)jノV ̄V  ...,,               ||
               ん〜''く/_l|ハゝ           ,,             ||
                    (_ノヽ_)                        ||、,
       「―― モナーの愉快な冒険 ――   ツーチャンはシンデレラに憧れる・その2」
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

348:2003/12/21(日) 20:19

 6時間目、世界史。
 今日はこの授業で終わりだ。
 そういえば、前回の世界史の授業は自習だった。
 その理由は、なんと世界史の先生が失踪してしまったかららしい。
 今日から、新しい先生が来るという。
 若くてかっこいい男だと、女子が噂していた。
 まあ、俺は寝るだけだから関係ないが。

 教室の戸が開き、そいつが入ってくる。
 その姿を見て、俺は寒気がした。

 ―――真っ黒。

 全身が真っ黒に視える。
 塗り潰されたような漆黒。
 気持ち悪いほどの黒。
 余りにも黒過ぎて、身体の輪郭しか判別できない。
 何なんだ、あいつは?
 あれでも人間か?
 そもそも、俺は「視る」つもりなどなかったはずなのに。
 無理やり、『アウト・オブ・エデン』を解除した。
 素の俺の目に映ったのは、教師と言うには若すぎる青年である。
 季節に合わないロングコートを着用していた。とても教師の服装ではない。

「―――です。よろしく」
 その青年は、黒板に自分の名前を書いた。
 どうせ、偽名だ。
「えーと、こんな中途半端な時期ですが、一生懸命頑張りますので…」
 バケモノが何か言っている。
 こいつは何者だ?
 確かに人間である。それは分かる。
 そして、おそらくスタンド使いだ。
 『アウト・オブ・エデン』は、発動していないスタンドをも視ることができる。
 だが、なんで奴自身が真っ黒に視えるんだ?

『さあ、何故でしょうね…』

 何だ、今のは…!?
 俺は周囲を見回す。
 一瞬、その教師と目が合った。
 彼は口の端に微笑を浮かべていた。
 今のは、奴の思念…?

『その通りです。貴方のスタンドは、思念すら視覚化できるんでしょう?』
「では時間もないので、教科書の――」

 また聞こえた。
 間違いない。奴は、俺の『エンド・オブ・エデン』で拾えるくらい強い思念を送っている。
 こいつ、俺の能力を知っている…!

『久し振りです。いや、貴方とは始めまして…かな?」
「では、120ページ。とりあえず、前に進んでいた中世から――」
 奴は、何食わぬ善人顔で授業を続けている。
『私の事は、『蒐集者』と呼んで下さい。心配しなくても、こんな場所で事を起こそうとは考えていませんよ…』
 また、代行者か。
 だがこいつは、人間離れの度合いが、リナーや朝に会った『解読者』とは桁が違う。
 『矢の男』の内部は空っぽで何も視えなかったが、こいつは黒すぎて何も視えない。
 あくまで視覚化したイメージに過ぎないが、それでも異常すぎる。
 そもそも、『教会』の人間が俺の学校に何の用だ?
『あなた達と同じですよ。『アルカディア』を追っているんです』
 嘘だ。
 単なる直感だが、こいつは虚偽を語っている。
 俺の思考は、奴に伝わったようだ。
『そう敵意を持たないで下さいよ。私のスタンドはとても弱いんです。
 たぶん、生身の人間との殴り合いですら負ける。もっとも、人間にスタンドは触れませんがね…』
 そんな事、信用できるか…!
 『教会』だって、何をやっているか分からないような組織だ。
 俺の失われた過去に関わっているのも、おそらく『教会』のはず。
『では、少しだけ真実を語りましょう。私は沢山の実験をしています。そのうち幾つかは君にも関連がある』
 何だって!?
『2体の実験体のうち、1体はファージの伝播が上手くいかず失敗しました。
 ですが、もう一体は完全に成功です。素体が優れていたというのが最も大きな要因でしょうが、
 それだと汎用性に欠ける、という事にもなる。何しろ量産が前提ですからね…』
 何が真実を語る、だ。
 理解できない言葉で語るなら、何も言わないのと同じだ。
『まあ、そういう訳です。実際のところ、貴方にはまだ用はありません。せいぜい、勉学に励んでおきなさい』
 …あ、ちょっと待て! おい!!

「という訳で、1096年には…」
 奴の思念は視えなくなってしまった。
 平然と授業を続けている『蒐集者』。
 俺は何回も心の中で呼びかけたが、返事はなかった。
 そのまま、授業の終わりのチャイムが鳴る。
 『蒐集者』は俺に一瞥すると、笑みを浮かべて教室から出て行った。

349:2003/12/21(日) 20:20

 とにかく、放課後である。
 『蒐集者』の事は、帰ってリナーにでも聞くとしよう。
 とりあえず、レモナと一緒につーちゃんの家に行くという約束がある。
 レモナの教室へ行こうと思ったが、その前にレモナの方から迎えに来た。
「じゃあモナーくん、れっつご〜」
「はいはいモナ…」
 俺とレモナは学校を出た。

 校門の前に、見た事のある奴が立っている。
 あれは、『解読者』…!
 あのダサいセーターは間違いない。
 『解読者』は、顔を上げて俺の方を見た。
「やあ、偶然だな。人類は滅亡する!」
「レモナ、急ぐモナ…」
 俺はレモナを急かす。
「まあ待て。俺は君の味方だよ」
 『解読者』は、後ろから俺の肩に手を乗せた。
 仕方がない。話だけは聞いてやろう。
 無視したら、この先も付きまとわれそうだ。
「あの、レモナ… 先に行っといてほしいモナ。モナもすぐ行くモナ」
 つーちゃんの住んでいるマンションの場所は、さっきレモナに聞いた。
「うん。じゃあ、また後でねー!」
 レモナは、その場から走り去った。

 さて…
「モナに何の用モナ?」
 『解読者』はメガネの位置を直す。
「君に、伝えたい事と聞きたい事と、そして頼みたい事があってね。
 まず質問からいこう。今日、君は『蒐集者』に会ったのではないか?」
 とりあえず、正直に答えておく事にした。
「会ったモナ。教師として赴任してきたモナよ」
 『解読者』は悔しげにうつむく。
「そうか… 我々人類は、何もかも遅かったようだ…」
 やはり言動がアッチの人だ。
 だが、何故『蒐集者』の事を俺に聞く?
 『蒐集者』はこいつの仲間じゃないのか?

350:2003/12/21(日) 20:21

「『教会』の代行者といっても、一枚岩じゃないんだよ!!」
 『解読者』は無駄に声を張り上げる。
「代行者は9人いるが、それぞれ思想や考えが異なるんだよ。ただでさえ、異能の集団なんだ。
 良く言えば個性的。悪く言えば、全員ぶっ飛んでいる。俺を除いてはな…」
 いや、こいつも充分ぶっ飛んでいる。
「さらに言うなら、『蒐集者』は『教会』を離反したも同然なんだよ。だから俺達代行者は、奴を快く思っていない」
 なるほど。『教会』内でも、いろいろあるという事だ…
「で、伝える事ってのは何モナ?」
「…奴には関わるな」
 『解読者』は一言で答えた。
 『蒐集者』の異常性は、一目見たときから承知している。
 こちらも、係わり合いになろうとは思わない。
「で、頼みたい事ってのは何モナ?」
 俺は訊ねた。代行者が、俺に何を頼む気なんだ?
「簡単なことだ。君の家にいる『異端者』に伝言を頼みたい。
 『守護者』が倒れた。彼女は律儀に要求に応えている。ほどほどにしておけ、とな」
 『異端者』とは、確かリナーの代行者としての名前だ。
 伝言くらいなら別に構わないが、内容が大いに気になる。
「『守護者』が倒れたって…どういう事モナ?」
 俺は『解読者』に訊ねた。
 彼はアゴに手を当てる。
「聞いて分かる通り、『守護者』も代行者の一人で、心優しい女性だ。
 その仕事は、吸血鬼殲滅が任務の我らとは違う。法儀式というものを知っているか?」
 知っている…と言うか、法儀式済みの武器を今も持ち歩いている。
「その法儀式は、『守護者』の手によるものなんだよ!!」
 『解読者』はアップになって叫んだ。
 どうやらこの『解読者』は、説明が好きなようだ。
「どんな波紋の達人でも、無機物に波紋を流す場合、常に手で触れていなければならない。
 だが、『守護者』は違う。彼女は、波紋を物質に固着させるスタンド能力を持っている」
 波紋を物質に固着…?
 俺は、思わず胸ポケットに入っているバヨネットのグリップを強く握った。
「そして、波紋を武器に固着させる作業を法儀式と称する。
 それは、『守護者』のスタンド『シスター・スレッジ』があってこそ可能なんだ。
 『シスター・スレッジ』は、訓練を積んだ波紋使いよりも様々な『波紋』が使える。
 そもそもスタンド自身『幽波紋』と呼ばれるくらいだからな、その波紋力も絶大だ…、とはいえ限界がある。
 千発以上の銃弾と六十本のバヨネットに法儀式を施して潜伏先に送れ、と電話で無茶を言ってきた女がいてな。
 『守護者』も律儀にその要求に応じたものだから、体力の限界で倒れてしまったんだよ」
 リナー…。
 事情は分かった。リナーに注意しておこう。
 どうせ、聞きやしないだろうが…
「分かったモナ。じゃあ、モナはこれで…」
 俺は『解読者』に背を向けて、その場から離れようとした。
「待て!!」
 『解読者』は俺の肩を掴む。
「俺と同盟を組まないか?」
 『解読者』は、意外な言葉を口にした。
 一体、どういうつもりだ?
「同盟…?」
「そうだ。俺と組んで、世界を滅ぼそうとする奴等に立ち向かおう」
 普通なら、だが断るところだが…
 『教会』側の情報が入ってくるというのは美味い話だ。
 だが、『解読者』が何かを企んでいる可能性というのも捨てられない。
 そもそも向こうにとって、俺と協力する事にメリットはないと思うが。
「モナは無力モナ。協力したって、そっちにいい事はないと思うモナ…」
 俺はそう言ってみる。
 『解読者』は、真っ直ぐに俺の瞳を見た。
「俺は、大きな権力に真っ向から対立するヤツを黙って見ていられないんだよ…
 そう、かっての俺を見ているようでな…」
 その言葉は嘘ではなさそうだ。
 涼やかな外見に似合わず、実は熱い男なのかもしれない。
 よし、俺の心は決まった!
 俺は『解読者』に右手を差し出す。
「じゃあ、協力するモナ。よろしくモナ」
「ああ、新生MMR結成だ!!」
 俺は『解読者』と熱い握手を交わした。
 何やら、不穏な単語を耳にした気がするが…

351:2003/12/21(日) 20:21

「じゃあ、俺の事はキバヤシと呼んでくれ。君はモナヤだ」
 モ、モナ屋…!?
「では行くぞ、モナヤ! MMR出動だ!!」
 どこへ行く気だ、キバヤシ!!
 状況についていけない俺に、キバヤシは言った。
「とりあえず、つーとやらの家に行くぞ!」
 …!?
 なんで、キバヤシがつーの事を知ってるんだ?
 彼の前でレモナと会話した時にも、つーの名前は出していない。
「なんで、つーちゃんの事を知ってるモナ…?」
「何!? もしかして、知り合いなのか?」
 キバヤシは意外そうに言った。
 どうやら、向こうにとっても意外な事実だったらしい。
「モナの友達で、ずっと学校を休んでるモナ…」
「ふむ…」
 キバヤシは口に手を当てる。
「これは、調査する必要があるな… 実は、昨日『蒐集者』のマンションからメモを何枚か入手したのだが…」
 それは窃盗だ。
 MMRとは犯罪組織なのか。
「そこに、つーとやらの名前や住所などのデータがあってな。とりあえず会ってみようと思ったんだが…
 君が知り合いなら話は早い。行くぞ、モナヤ!」
「おう、キバヤシ!」
 こうして俺達は、つーちゃんのマンションに向かった。


                         `ヽ.      . .; : ’                          ' ,:‘.
       N│ ヽ. `                 ヽ        _,,.-‐-..,,_       _,,..--v--..,_,:‘.      +
..' ,:‘.   N.ヽ.ヽ、            ,        }.. ' ,:‘. /     `''.v'ν Σ´        `、_,.-'""`´""ヽ  . ...:: ’‘
’‘ .;.   ヽヽ.\         ,.ィイハ       |’‘    i'   / ̄""''--i 7   | ,.イi,i,i,、 、,、 Σ          ヽ
      ヾニー __ _ -=_彡ソノ  _\ヽ、   |     !ヘ /‐- 、 .   |'     |ノ-、 ' ` `,_` | /i'i^iヘ、 ,、、   |    。
.  。     ゙̄r=<‐モミ、ニr;==ェ;ュ<_ゞ-=7´ヽ.    |'' !゙ i.oニ'ー'〈ュニ!     iiヽ~oj.`'<_o.7 !'.__ ' ' ``_,,....、 .|
 '+。.       l    ̄リーh ` ー‐‐' l‐''´冫)'./ '+。,  `|        ..ゝ!     ‖  .j     (} 'o〉 `''o'ヽ |',`i
          ゙iー- イ'__ ヽ、..___ノ   トr‐'  _,,..-<:::::\   ー- /      !  `ー フ  / |  7   ̄  |i'/.. ' ,:‘.
:: ...        l   `          ./│:: .... .. . |、 \:::::\ '' /        \ '' /〃.ヽ `''ー フ  , 'v>、.. ' ,:‘.
  ,  ,:‘.  . ヽ.   ー--‐'    ./  ト,  ,  !、\  \. , ̄        γ/| ̄ 〃   \二-‐' //`
            >、   ̄´  ./  / |ヽ            + ,,.. . /└────────┬┐ +       ’。
 ,:‘.。 .. . . ::: _,./| ヽ`ー--‐ _´.. ‐''´   ./  \、 ,:‘. 。   .. . <   To Be Continued... | |。  , .. .    +
                                        \┌────────┴┘

352丸耳作者:2003/12/22(月) 00:12
乙。
レベル高い上にペース早いですなー。
私もがんばりまつ。

353新手のスタンド使い:2003/12/22(月) 00:13
エンド・オブ・エデン

いや、なんでもない。乙。
毎回楽しみにしてますよ。

354新手のスタンド使い:2003/12/22(月) 00:52
MMRってあるじゃないですか
あれ初めて読んだとき、なんていうかその…下品なんですが…
…勃起…しちゃいましてね…






                       キバヤシ/ヽァ/ヽァ(´д`*)

355:2003/12/22(月) 01:58
>>353
○エンド・オブ・エデン

   /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::〈
   |:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/
   ヽ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::〈
    i::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/
   _ノ::::::::::::/´ ̄(†)ヽ:::::::::::::::::|ボウッ!!
 _)::::::::::::,゙-ノノノ)))))::::::::::::/                     ∧_∧  / ̄ ̄ ̄ ̄
 \::::::::::::ノ  ル,,゚ -゚ノi 、::::(_ < 受けてみよ!       (´∀` )<  ・・・・・・
 __)::::::::/   くj_''(†)jlつ _ゝ:::/   我が力をッ!!     ( 353 .)  \____
 ヽ::::::::ん〜''く/_l|ハゝ'´:::::::::(                 | | |
  `ヽ、::::::::::::::::し'ノ:::::::::::::::/                 (__.(__)

※都合により、全身タイツは着用しておりません。

                                      从
         ‥…─────     i:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/λ,.;.;;;;)
       ‥…━━━━━      _ノ:::::::::/´ ̄(†)ヽ:::::::::::::|)''':,''::,;")
        ‥…─────   _)::::::::::,゙-ノノノ))))):::::::/)∧_∧.;;)ゴォォォォ!!
       ‥…━━━━━    \:::::::::::ノ  ル,,゚ -ノi:::::::((,",:,';,;;Д`)(
         ‥…─────  __):::::::/ くj_''(†)つ:::::/.,:';:,( つ つ_).,:
       ‥…━━━━━    ヽ::::::ん''く/_l| l|'´::::::( .,::,''::,ゝ ) )';:,'"
          ‥…─────  `ヽ、:::::::しヽ_):::::::/ :,'':::,;":し し';:,'"

356:2003/12/22(月) 01:58

                   i:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/    人ノ゙';:⌒ヽ
                  _ノ:::::::::/´ ̄(†)ヽ:::::::::::::|  .,,从.ノ';:,''::,;":;.';:)
                _)::::::::::,゙-ノノノ))))):::::::;`'"..,,从.、;;:∧';:,''::,":;.';:彡
                \:::::::::::ノ  ル,,゚ -ノi:::::_,,..、;;:〜-:''Д`';:,''::,;":;.';:ミ
                __):::::::/ くj_''(†)つ、'.".;;`;゙゙;~"~;;;~"つ';:,''::,;":;.';:)
                ヽ::::::ん''く/_l| l|'´::::::~~〜~;;彡⌒〜;;~〜 彡''"
                 `ヽ、:::::::::し'ノ:::::::/ :,'':::,;":し し'';:,'"シュゥゥゥゥゥ!!



:::::::...... ....:::::::゜::::::::::..   (___ )(___ ) ::::。::::::::::::::::: ゜ (___ )(___ ):::::::
:. :。:..... . .::::::::::::::::: _ i/ = =ヽi :::::::::::::。:::::::::::_ i/ = =ヽi ..__.:.... .... ..
:::: ::..:☆彡::::   //[||    」  ||] ::::::゜:::::::::::://[||    」  ||]::: . . .
 :::::::: . . . ..: :::: / ヘ | |  ____,ヽ | | :::::::.... ..../ ヘ | |  ____,ヽ | |::.゜. .::::::
:::::.゜. .::::::  /ヽ ノ    ヽ__/  .......  /ヽ ノ    ヽ__/:........ ..::::
:.... .... ..   く  /     三三三∠⌒>: く  /     三三三∠⌒>.... ....
:::::::::::    ....::::::::::::。..::::.::>302 :::::.     __..::::::::::::::.__ >353  :::.............
::::::::.....  :::::::::::::::::::::      .... ...::: ::: :::: : |: | .... .:::::|; |
:::::::::::........   ..::/´ ̄(†)ヽ:::......      ::::::...:|; |....... : ::::|; |:::
        ,゙-ノノノ)))))         O二二X 二二二X二二)    ;`'"..,
        ノノ)ル,,゚ -゚ノi <・・・       |: |     .|: |    ';:,'"::,'":;.
       /,ノノくj_''(†)jlつ              |: |     .|: | ';:,''::,;":;.';:シュゥゥゥゥ…
      ん〜''く/_l|ハゝ           ,_,_|; |,_ ,_,,_,,_.|; |';:,'"::,'":;.
           し'ノ          /::::::::;;:::: :::::::::;;:::: ::ヽ ,
""""  """"""""""   """"""" """"""" """"""""""""ヾ

※ネタです。他意はありません。

357新手のスタンド使い:2003/12/22(月) 13:04
墓が増えてゆく…

358353:2003/12/22(月) 20:33
さいたま氏に埋められるなら本望よ。

よくわからない人は348を参照

359新手のスタンド使い:2003/12/22(月) 20:57
>>358
君の意思、確かに伝わったぞ。

360N2:2003/12/22(月) 23:37

          (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒
           ( 一ヶ月以上新作小説の制作からドロン!していたのに復帰早々
          O ( 「オレ達のスタンドヴィジョン募集中だよ〜!」なんて言えないよなあ、、、
        ο    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
    ∩_∩。
_ G|___|___
   ( ; ・∀・)
――(    )―┘、          コノフトドキモノ!!   N2ヒッシダナw
‐――┐ ) )――┐         ≡≡∧,,∧   ≡≡∧ ∧
    (__ノ__ノ    . |         ≡≡ミ,,>∀<ミ ≡≡(,,・∀・)
                     ≡≡ミ_u,,uノ  ≡≡ミ_u,,uノ
                   "~"    """  :::     "~""~"
                """    :::

361N2:2003/12/22(月) 23:39

 Rising・Sun

 最強のスタンドとは何か?
 今まで数多くのスタンド使いがこの難問に頭を悩ませたことであろう。
 ある男は、かつてこう言った。
 「適材適所」
 スタンドバトルにおいて、全ての局面において優位に立てるスタンド使いなど
 そうそう存在するものではない。
 全くのヴィジョンを持たぬスタンドであっても、勢いに乗りさえすれば
 近距離パワー型のスタンドを接近戦でも簡単に打ち崩すことが出来る。
 要は相性、そして状況次第なのだ。
 最強など、本来人のこじ付けにしか過ぎないのだ。

 されど、「力」を手にした者は、自ずとその呪縛へと捕らわれてしまう。
 これも、強大な「力」を手にする上での一つの宿命なのであろうか。

362N2:2003/12/22(月) 23:41

 「お前には色々と聞きたいことがある…かつてDIOが所有していた『矢』を一体どんな経緯で入手し、何の目的で使っているのか…。
 そして何より、お前は一体どこで『石仮面』を被った?スピードモナゴン財団の者として、お前には色々と喋ってもらわなくちゃならない」
 大柄の男――空条モナ太郎は冷酷に黒マントに身を包んだ男を睨み付けた。
 モナ太郎のスタンドによって多大なるダメージを受け、黒マントの男はその場に寝転がったまま、立ち上がろうとしない。
 「どうした?白を切るつもりか?それともここで私を殺そうとでも考えているのか?」
 「私を殺す」、この言葉に反応して、黒マントの男は立ち上がった。
 先程の傷はもう癒えかけている。
 「陽が沈むまで陰からは現れようとせず、更にはその治癒能力…これでお前が吸血鬼であることが
 完全に証明されたわけだ。さあ、お前は一体、いつどこで『石仮面』を被った!?
 答えないならもっと再生のしようが無い位に叩きのめすことになるぞ」
 そう言ってモナ太郎は彼のスタンド――スタープラモナを出した。
 その力が一体どんなものであるか…それはもうスタンド使い同士の間では非常に有名な話であるし、
 もちろんこの男も承知していた。いや、むしろ彼にとっては絶対に承知せざるを得ないのだが。

 スタープラモナは典型的な近距離パワー型スタンドである。
 圧倒的なパワーとスピード、それに絶対的な正確さを誇る精密動作で敵を圧倒する。
 だが、彼のスタンドの本当の恐ろしさはこんなものではない。
 スタープラモナは、この世の時を2秒ほど停止させられるのだ。
 これによって、如何なるスタンド使いもこの間は全くの無防備となり、為す術も無く彼の前に倒れるばかりである。
                                   ザ・ワールド
 そして、彼と全く同じ能力を持った吸血鬼・DIOのスタンド『世界』を十数年前に倒したことで、
 その道では彼が今世界最強のスタンド使いなのではないか?という声が自然と耳に入る、それほどのスタンドなのだ。

 圧倒的な力が目の前に具現化したことで、黒マントの男は圧倒された。
 そして…笑い始めた。
 「クックックック…ハハハハハ、ハァーッハッハッハッハ!!」
 目の前の男が壊れ始めたのを見て、モナ太郎は怪しむよりもむしろ不気味に思った。
 そして、厳しい口調で問いただした。
 「…何がおかしい?私の質問がそんなに面白かったか?」
 「ハハハ…いや、貴様の考えが随分私のそれから大きく逸脱しているのでね…」
 「…何だと?」
 挑発的にセリフに、冷静に男と向かい合っていたモナ太郎も流石に苛立ちを感じた。
 黒マントの男は、そんなことお構いなしに話を続ける。
 「私は別に貴様を殺そうなんて考えてはいない…むしろその逆だ。貴様にこんな所で対面して、正直殺されることへの恐れで
 頭の中は一杯だ。私の能力などでは決して貴様に敵いはしない」
 「…なら大して笑うことではない」
 「…ただし、それは今現在の話だ」
 「…何?」

363N2:2003/12/22(月) 23:42

 「私が目指すもの…それは『最強』。絶対に何人たりとも到達することの出来ない究極の能力。
                                                        ・ ・ ・ ・ ・
 その座に未来永劫君臨し続けることが私の目的なのだ。既にこの世に永久に留まり続ける肉体的資格は得た。
 あとはこの能力を『最強』にしさえすれば、その時こそ私はこの世の頂点に立つことが出来る」
 「…随分と馬鹿げた話をするものだな」
 モナ太郎にとって、男の話は余りに現実味に欠けるものであった。
 100歩譲って不老不死の力は認めるものの、未来永劫『最強』の座に君臨し続けられる能力…?
 そんなもの、ありはしないというのが彼の見解であった。
 「第一、お前には既にその『私に敵わない』スタンドがある。その時点で、既に最強への道は閉ざされているんじゃないのか?」
 「…分かっていないのは貴様の方だな、空条モナ太郎。貴様ら財団が一体どこまでスタンドの知識を得ているのか
 私には分からんがな、これだけは言っておく。『スタンドは進化する』。」
 「そういうケースは私も見たことがあるが?」
 実際、彼の知り合いに3回スタンドがそのヴィジョンの変化を伴う進化をした者がいる。
 「そんな単純なものではない。私の場合は『最強への進化』だ。最強になるための道はまだ私の前に開けてはいないが、
 もしそうなれば貴様さえも私にひれ伏すこととなるだろう。…それを考えていると、今貴様が私に自分を殺そうとしているのでは、
 という言葉が非常に滑稽に思えてな…『今』でこそ私は負けているが、いずれ私が最強となった時、絶望に染まる貴様の顔を見ながら
 その胸に拳を突き立てる…その姿を思い浮かべるだけでもおかしくてな、フフ…フフフ…」
 再び辺りに響いた男の笑い声に、モナ太郎は遂に苛立ちと呆れの感情を抑えられなくなった。
 「…どうやらただの気違いらしいな。『石仮面』と『矢』のことも聞きたかったが、もうこいつからは何を聞いても仕様が無い。
 悪いが、この世のチリになってもらうぞ」
 恍惚の世界に引き込まれていた男は、その言葉で我を取り戻した。
 「そうはいかない。私は最強となるためにも、ここで貴様に敗れるわけにはいかんのだ!」
 睨み合いの姿勢となった。
 両者一歩も退かず、また攻め入ろうともしない。
 先に動いたのは、黒マントの男だった。
 彼が一歩退こうとした瞬間、そのスタンドも姿を現した。
 「アナザー・ワール…!!」

 「スタープラモナ・ザ・2ちゃんねる」

364N2:2003/12/22(月) 23:42

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 (ドォォ――――ン)
 「やれやれ、まさか逃げ出すと同時に能力を使うとは…何とも逃げ腰な野郎だな…。
 だがそうであるからこそ、今この場で始末しておかなくてはな」
 「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ――――――ッ!!」
 「時は動き出す」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 「ドグわラバぁ――――ッ!!」
 再び男は殴り飛ばされた。
 「さてと、あとはお前の頭を砕き割って燃やし尽くし、日の出を待つだけだ」
 いよいよ止めを刺さんと、モナ太郎は男に歩み寄る。
 男の表情は完全に敗北の色で塗り潰されている。
 眼は完全に死に、足掻こうとする気配すらしない。
 だがモナ太郎が男の前に立ち止まったとき、彼は急に堰を切ったかのように話し始めた。
 「待った!待ってくれ!!今までしてきたことは全て謝る!だから命だけは勘弁してくれ!!」
 「…この期に及んで命乞いとは、ふとい奴だ。言っとくが、どんな命乞いをしようとも見逃すつもりはない。
 それはお前が悪人だからとか以前に、お前が人の道を踏み外した者だからだ」
 「頼む!この通りだ!」
 男は先程までの気高き態度が嘘と思えるほどに強く、頭を地に押し付けた。
 「…もう言っても分からないなら仕方ないな。死刑執行の時間だ」
 「こんなに頼んでもか?」
 「駄目だ」
 「ホントのホントに?」
 「しつこいな、駄目なものは駄目だ」
 「それなら貴様の負けだな、空条モナ太郎」
 「何ッ!?」
 余りにも挑発的な断末魔の命乞いは、モナ太郎に男が吸血鬼であることを忘れさせた。
 その隙に、男の傷はみるみるうちに癒え切った。
 男の背中からは翼が生え、モナ太郎が時を止めようとした時には既に彼の遥か上空まで逃れていた。
 「空条モナ太郎!貴様、今日のことは決して忘れはせんぞ!いずれ私が最強となった時、
 貴様には今日以上の屈辱を味合わせてやる!その日を楽しみに待っていろよ!!」
 そう言い残し、男は漆黒の闇夜へと消えていった。
 「…やれやれ、どこまでも馬鹿なやつだ…」

365N2:2003/12/22(月) 23:42

 「う、う〜ん…ってあれっ!?ここは…!」
 「…ようやく眼を覚ましたか」
 眼が覚めると、そこは海浜公園であった。
 海浜公園…そうか、相棒と戦って、最後はここに行き着いたんだ。
 「ギコ…そうだ!ギコは!?」
 「お前さんの言うギコかどうかは知らんが、そこにギコ猫が一匹寝ているぞ」
 それは紛れもなく相棒であった。
 「ギコ!しっかりしろ!!」
 揺さぶったり声を掛けたりしていると、その内にギコは目を覚ました。
 幸いにもどうやら悪霊も分解も相棒の身体には影響しなかったらしい。
 「ふあああ…よく寝た。ん、ってわぁっ!人が目を覚ました時に目の前に顔持ってくんな、ゴルァ!」
 何事も無かったかのような相棒の言葉に、これまでの緊張とか、それらが全て吹っ飛び、後には安心感だけが残った。
 全て、無事に終わったのだ。
 「…良かった」
 「は?」
 不意に、涙が頬を伝う。
 「…本当に…良かった……本当に…………!!」
 「おい、何急に泣き出してんだゴルァ!!訳分かんねえぞ!!」
 「取り込み中悪いが…」
 急に男が話に割り込んできた。
 「っててめえもてめえで何者だゴルァ!」
 「…ってか、あんた誰?」
 ギコのことばかり頭に浮かんで男のことなんぞすっかり忘れていた。
 「立ち直りが早いな…それはともかく、私はスピードモナゴン財団という所に所属している、空条モナ太郎という」
 「あ、オレは全国で売り回ってる逝きのいいギコ屋。一匹300円だから後で一匹どうです?」
 「俺はその相棒だ。こいつに付き添い続けて幾年月、今まで色んな辛いことがあったけど、二人三脚でこれまで数々の苦労を乗り越え…」
 しかし、そのモナ太郎という男は、オレの宣伝も相棒の身の上話も無視して話を進めた。
 「…私は別に、君にギコ猫を売ってもらうためにここに来たのではない。あの、『矢』を持つ男に用があったのだ」
 『時には地元の有力者に目を付けられ、不買運動を喰らいその地を立ち去り…』
 更にその言葉さえも無視するギコ。
 「『矢』を持つ男って…、例の黒いマントを被った」
 「そう、それだ。私は財団の命を受け、その男の『矢』を回収しに来たのだ」
 『時には相棒の古い知り合いに絡まれ…』
 …まだやってるのか。
 「その、そもそもあの『矢』ってのは一体何ですか?あれに刺されてから、その『スタンド』ってものが出せるようになったんですが」
 「…君のスタンドも、奴に刺されたことで発現したのか。ならば君も、もう無関係ではいられないだろうな」
 『しかしその時俺は勇敢にも叫んだ。「てめえ、こいつに手を出す気かゴルァ!」』
 ………。
 「仕方ない、教えよう。これから君達があの男に襲われるようなことがあって、何も知らないままではいけないからな…」
 『「この厨房め、逝ってよし!!」とな!ギコハハハハハ(ドグシャ)グハァ――――ッ!!」
 あっ、飛んだ。

366N2:2003/12/22(月) 23:44



 「そもそもスタンドというのは、使い手の精神が具現化したものだ。元々才能があったか…あるいは生まれ付き使える場合もあるが、
 そういう者が、何かしらの影響である日突然こういう能力に目覚めるんだ」
 「で、オレの場合は、この分解する能力が…」
 「そういうことだ。これからも君達が戦うようなことがあった時のことを考え教えておくが、スタンドと一口に言ってもその種類は様々だ。
 元々『超能力』と呼ばれるものに近いから、戦闘向きのものもあれば、争い事には全く無縁のものもある。
 だがどんなものでも、大抵は何かしらのヴィジョンを持っているものだ。人型、獣型…、あるいは機械なんて時もある。
 但し、全てのスタンドに言えるのだが、どんなスタンドでも『1人1能力』の原則には逆らえない」
 「じゃあ、俺はどう足掻いてもこのエネルギーを司る能力しか使えないってことか!?」
 急にギコが話に割り込んできた。
 さっき殴られて吐血しながら吹っ飛んだのに、何という立ち直りの早さか。
 「…基本的にはな。ただ、厳密には『1人1能力』と言うよりかは『1人1テーマ』の方が適切かも知れない」
 「1人…1テーマ?」
 「そうだ。例えば私の知り合いに、「ものをなおす」スタンド使いがいる。
 その「なおす」というのも、例えば壊れた物を「直」したり、傷付いた者を「治」したり、あるいは落ちている物を元の位置に戻したり、
 アスファルトをコールタールの段階まで戻すなんてことも出来る。つまり、スタンド自体が自分の思いによって
 この世の物質に影響を及ぼす存在なのだから、解釈次第で能力は幾らでも広がるということだ」
 「なるほどな〜。考え方1つで応用可能か…」
 「それで、他にはスタンドについては…?」
 「ああ、それにスタンドは能力以外にも分類されるものがある。それは、スタンドの操作上の分類だ。
 私や君達みたいなスタンドは、『近距離パワー型』と言って、スタンドは自分の近くにしか出せないが、パワーやスピードにとても優れている。
 だが、世の中には『遠隔操作型』というものもあり、パワーは劣るが本体の遠くまでスタンドが移動出来る。
 また『自動操縦型』というものもあり、スタンドが自分の意思を持ち、高い戦闘能力を持ちながらにして遥か遠くまで行動出来る。
 また、スタンドはヴィジョンを持つと言ったが、中には全くその姿を持たない能力だけのものもあるし、
 時には何かの物質に憑依して実体化しているものまでいたりする」
 「つまり、スタンドも十人十色、ってことか」
 「Exactly(その通りだ)」
 発音が上手い。
 日本人にしては背が高いし…どっちかの親が英米人なのか?

367N2:2003/12/22(月) 23:44

 「まあ、それでスタンドについては分かったんだが、それでその『矢』ってのは一体何なんだ?」
 「それなんだが、スタンドの発現方法にも色々あって、生まれ付きスタンドが使えた、という者も時にはいるが、
 他には自分に身近な人間がスタンド能力に目覚めたことで連鎖的に発現するケースもあるし、
 職業とか、信念とか、そんなものが時間をかけて能力となることもある。
 だが、これら自然な発現はむしろ稀な方だ。一番多いのは…『矢』に射られて発現するケースだ」
 「なるほどあの『矢』にはそんな能力が…。道理で刺された時に変な感じがしたと思ったぜ」
 そんな物がこの世に存在するだなんて、多分こんな事になる前だったら信じられなかっただろう。
 しかし、現にこうして今『矢』の恩恵を受けている事が、その話の真実性を証明する何よりもの証拠であった。
 「モナ太郎さん、それでどうしてそんな物騒な代物がこんな田舎町にあるんですか?」
 スタンドとは何か。それは分かった。
 『矢』とは何か。それも分かった。
 それでは次に知るべきなのは、『矢』の存在理由。そして、それによってこれから何が起こるのか、という事である。
 「…俺も是非聞かせて欲しい」
 さっきまでの態度が嘘のように、ギコが急に真剣になった。
 こいつにも、きっと思うところがあるのだろう。
 「詳細に付いてはまだ私も全く知らないというのが現状なのだが…、私の知る範囲では、あの男はここ数ヶ月前からこの町を拠点として活動を始め、
 日々あの『矢』でスタンド使いを増やしているというのだ。スタンド使いが増えるという事は、当然その力を悪用する者が出てくるということだ。
 だから我々もこうして奴から『矢』を回収しようとやって来たのだ。
 しかし謎なのは、一体奴が何の目的があってスタンド使いを増やしているのかということだが…」
 「それは部下を増やす為だぜ」
 急にギコが喋り出した。
 「あいつは言っていた。『私は「最強」となる為にスタンド使いを増やしているのだ』ってな。
 一体そこにどんな関係があるのかは知らねえが、奴は『矢』でスタンド使いを増やした後、自分の気に入った奴を
 洗脳して自分の言いなりにしているんだ。俺もそのせいで…!」
 喋っているギコの表情が険しくなっている。
 ここまで言うということは…、恐らく洗脳中の記憶が残っているという事だろう。
 自分の行った大量虐殺までも…。
 「なるほどな…私もさっき奴の口から、『最強』という言葉を聞いた。
 奴は『最強』となる為に、スタンド使いを増やしている、これで間違いないのだな?」
 「ああ、恐らく」
 「さてと、それでは今日は急に話を聞かせてもらって悪かったな。これから何かあった時に備えて、携帯の番号を渡しておく。
 そう言ってモナ太郎さんは、手帳に番号を書くとそれをちぎってオレに渡した。
 「では、何かあったらすぐに連絡をくれ。…そうだ、大事な事があった。奴は吸血鬼だ」
 「吸血鬼!?」
 スタンド使い、『矢』と来て今度は吸血鬼?
 もうここまで来ると、信じるとか疑うとかそんな気持ちさえ浮かばない。
 「私はかつてとある吸血鬼のスタンド使いと戦ったことがあってな、その時に色々知ったのだが、奴ら吸血鬼はどんな傷を受けても
 頭を砕く位のことをしなけりゃ決して死なないし、それにすぐにその傷も治ってしまう」
 「そんな…じゃあ打つ手無しじゃないですか!」
 「但し、そんな吸血鬼にも弱点があってな…、奴らは太陽の光とか紫外線とか、後はそれに準ずる『波紋』というエネルギーに弱い。
 それを喰らうと、たちまち身体は崩れ落ちていってしまうのだ。
 まあこの『波紋』についてはそれ相応の修行が必要だと聞いているから、当てには出来ないがな」
 「…でも向こうもみすみす陽の出ている内にやって来てはくれないでしょうね…」
 「だから、今の内は出来るだけ奴らとの関わりは持たない方がいい。吸血鬼はその身体能力だけでも人間を遥かに超越しているからな…」
 …何とも恐ろしい敵に目を付けられてしまったものだ。
 本当にこのまま無事に生きていられるのだろうか。
 「我々としては、このまますぐにこの町を去るべきだと忠告しておくが…そう言えば、君の連れはどこへ行った?」
 そう言えば、あいつの姿がさっきから見えない。
 ひょっとしたら…。

368N2:2003/12/22(月) 23:44

 日も暮れ、明かりの無い倉庫の中には生臭い血の臭いだけが漂っていた。
 ギコはそこで、自分の業を自分自身の目で確かめていた。
 「…やっぱりそこにいたのか」
 オレが声を掛けると、ギコはちらりとこちらを向いて、またオレに背を向けた。
 「…なあ相棒、やっぱりこれは、夢じゃなかったんだな」
 「…ああ」
 自分でもこの惨劇を肯定したくなどない。
 洗脳されていたとは言え、これが相棒の手によって引き起こされたことに違いはないのだ。
 「…ギコ、あのさ」
 「相棒」
 「…何?」
 「俺はあの男に捕らえられ、そして洗脳された結果、こんな償いようのない大罪を犯してしまった。
 いくら俺自身のせいではないと周りから言われようとも、俺の中での罪の十字架は決して消えることはないだろう」
 「………」
 「…だがな、俺も幸か不幸か奴と同じ力を手に入れたんだ。俺は今、奴と同じ土俵に立っているんだ。
 ここでもしこのままこの町から去れば、俺は一生この罪の償いようを失っちまう。
 お前が何と言おうとも、俺はこの町に残って奴との決着を付けるつもりだぜ」
 「オレだって、勿論ギコと同じ気持ちさ。
 こうやって事件に関わっちまった以上、けじめを付けなきゃ『逝きのいいギコ屋』の名が廃るってもんさ!
 …ということですよ、モナ太郎さん」
 モナ太郎さんもオレを追って倉庫の入り口に来ていた。
 その表情は、どことなく厳しい。
 「そりゃオレ達はスタンドに付いてはド素人ですし、吸血鬼となんかと戦えるほどの力だってありはしません。
 でも、オレ達は何かの縁でやって来た土地でただ商売をさせて貰うだけじゃなく、何かの形で恩返しをしなきゃいけない、
 それがオレ達の義務だって考えているんです。…随分と浅はかな考えだとは分かっていますが…これがオレ達の意思です」
 最後までオレ達の話を聞いて、なおモナ太郎さんの顔は厳しかった。
 だが、ふっとその顔から笑みがこぼれた。
 「…君達のことだから、きっとそういう答えが返ってくるだろうとは薄々感付いてはいたよ。
 分かった、君達にも我々に協力してもらおう。それでいいんだな?」
 「モチロンのロンモチだからな!」
 「ッたり前だゴルァ!」

369N2:2003/12/22(月) 23:46



 「ときに相棒」
 「何だギコ」
 「お前そう言えばスタンドの名前考えてないのか?」
 「…あ」
 そう言われてみればそうだ。
 相棒はもうさっきの戦いの時点で名前を付けていたじゃないか。
 「えーと、えーと、あああああどうしようどうしようどうしよう」
 「お前なぁ、名前ってのはそんなに根詰めて考えても浮かぶじゃねえぞ。
 俺なんかの場合にゃフィーリングだよ、フィーリング」
 「なまえなまえなまえなまえうわあああ」
 「…お前、頭堅いな」
 そんないきなり名前なんて言われても…というオレの目に、ある洋品店が飛び込んできた。
 閉店間近なのか、店のガラスには「在庫一掃セール」のポスターがわんさかと…。
 これだ!!
 「よし、決めた!『クリアランス・セール』!!」
 「…くりあらんす・せーる…?」
 何を言っているんだこいつは、と言わんばかりの呆れ顔だ。
 「そうだよ!この名前はオレにぴったりじゃないか!『在庫一掃セール』という名前はまさしくオレの職業に合ってるし、
 それに『Clearance』は消すという意味の単語『Clear』と縁が深いから、これは分解してキレイサッパリにするというオレの能力にもまさにぴったり…」
 「フーン…プッ…クックック…アーッハッハッハッハ!!!!」
 「ギコ!何がおかしい!!」
 「だってよ、お前のそのネーミングセンスがあんまりにも厨臭くてよ…あー腹が痛ぇ」
 「…全く」
 何もこんなに爆笑することだってないじゃないか。
 これでも結構いい線行ってると思ったのに。
 …でも、ギコの心の傷がこれで少しでも癒えてくれるなら、その方がずっといい。
 「…そうかな、私は結構いい名前だと思うぞ」
 オレのセンス理解してくれる人キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!
 さすが、格好いい人は目の付け所が違う。
 「ちょっとちょっと空条さん、あんたいくら何でもそりゃないでしょ。だってこいつが付けた名前ですよ」
 …何て言い方だ。今までこいつのことを心配して損した。
 「フフ、まるで兄弟ゲンカのようだな。…いや、むしろ君達は実の兄弟のようにさえ思えてくるよ。…君達は仲がいいな」
 オレ達の事が兄弟みたいだなんて…そんな風に言われたのは初めてだ。
 でもこれまでずっと一緒に過ごしてきたんだ、確かにそう言われればそうかも知れない。
 けれど今のモナ太郎さんの目…どこかオレ達のことを凄く羨んでいるような…遠い目をしていた。
 …ひょっとして、家族関係がうまくいっていなかったりしているのだろうか…?
 ま、他人の家庭の事情にあんまり首を突っ込むのも良くないことだし、これは気にしないでおいた方が良さそうか。

370N2:2003/12/22(月) 23:46

 「んじゃそろそろ帰るぞギコ…ギコ?」
 ギコの顔色が悪い。オレの言葉がまるで全く耳に入っていないかのようだ。
 「おい、ギコ!どうかしたのか?…まさか、また…」
 「…何てこった」
 「…は?」
 「大変だ相棒、今から奴のアジトに突っ込むぞ」
 「………は??」
 何言ってんだこいつは。
 「おいギコ、ついさっきモナ太郎さんが『奴らとはなるべく関わりは持つな』っていったばかりなのに…」
 「…何だかんだあってすっかり忘れてたが、このままじゃどうなるか分からん!」
 「いや、だからさっきからお前は何を言ってるんだっつーの!」
 「だから、俺の兄貴が奴らに捕まってるんだ!!」
 「・ ・ ・ ・ ・ ・」

      ∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧
     <                                         >
     <   ナ ゝ   ナ ゝ /    十_"    ー;=‐         |! |!    >
     <    cト    cト /^、_ノ  | 、.__ つ  (.__    ̄ ̄ ̄ ̄   ・ ・   >
     <                                         >
      ∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨


          /⌒ヽ、     /⌒ 、
       /___ヽ、__/__ ヽ、
      │__________│
      ,!ヘ.         u    |
.      |〃、!ミ:   -─ゝ、    __ .l
      !_ヒ;    L(.:)_ `ー'"〈:)_,` /
      /`゙i u       ´    ヽ  !
    _/:::::::!             ,,..ゝ!
_,,. -‐ヘ::::::::::::::ヽ、    r'´~`''‐、  /
 !    \::::::::::::::ヽ   `ー─ ' /
 i、     \:::::::::::::::..、  ~" /
 .! \     `‐、.    `ー:--'´

371N2:2003/12/22(月) 23:47

 「ちょっと待った、オレはお前に兄貴がいるだなんて知らないぞ!」
 「…あれ?言わなかったっけ?」
 そう言えば、昔ギコが言っていたような気がする。
 確か、両親が離婚して生き別れになった後、飛行機事故に巻き込まれたとか…。
 あれ、アルカモナズから青汁とドクターペッパーを100個ずつくすねて脱走したまま行方知れずになったのかな?
 いやそれとも、3億円事件の真犯人だって言ってたのか…?
 ん?小さい頃ミャンマーの王子に謁見して炎の紋章を探すよう命じられたんだっけ?
 ああそうだ!彼はビッグバンを超えてやって来た覚悟を決めた幸福な人間なんだ!!
 …ギコの兄貴よ、お前は一体何者なんだァ――――ッ!!
 ってんなこと言ってる場合じゃない!
 「そ、それじゃあお前の洗脳が解けたってことは、もう…」
 ギコの兄貴は始末されてしまったのか!?
 「いや、それはないな。むしろ奴らは兄貴を生かしておくことで、俺らが自分からやって来ることを狙っているんだろう」
 何てこった…。
 ようやく相棒探しに決着が付いたと思ったら、今度はギコの兄貴救出だとは…。
 「…やれやれ、この様子だとまだ一悶着ありそうだな…。仕方ない、私も同行しよう」
 「おお、それは助かるぞ!!それと決まれば、いざ特攻!2人とも遅れんなよ、ゴルァ!」
 まあ、そりゃこの様子だとあの男を追っ払う位の実力があるんだったらきっとモナ太郎さんはもっと強いんだろうけどさ…。

372N2:2003/12/22(月) 23:48

 「…あれ、ちょっと待てよ?」
 「おい、どうした相棒?」
 「あのさ、オレ達これから敵のアジトに突っ込むんだろ?」
 「ああ、その通りだが?」
 「じゃあさ、ひょっとしてこのままあの男と最終決戦の可能性も大有りってことか!?」
 「んー、そうなんじゃないか?」
 「…って、まだこのギコ屋編が始まってから5話しか経ってないぞ!!」
 「話の長さなんて関係あるか!!」
 「この1ヶ月位ずっと連載滞ってたのにか!?」
 「んなもん俺たちが知ったことか!さあ行くぞ、いざ奴との最終決戦へ!!」
 「待てよギコ!じゃあせめてもう少し奴の手下とかと戦ったりしてから突っ込もうじゃないか!!
 こんなタイミングで話が終わったら、まさしくうt…」
 「さー忙しくなってきたぞー!!奴をヌッ殺したらギコ屋編打ち切りだー!!」
      ∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧
     <                                         >
     <   ナ ゝ   ナ ゝ /    十_"    ー;=‐         |! |!    >
     <    cト    cト /^、_ノ  | 、.__ つ  (.__    ̄ ̄ ̄ ̄   ・ ・   >
     <                                         >
      ∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨

                                  _,,:::-::::::::::::::i'      ::::::ミ:、
          /⌒ヽ、     /⌒ 、  .         ,/ー-:::=:::;;:::::::i'      /::::::::::i
       /___ヽ、__/__ ヽ、 .        ,/::::::\ 、  ~^'"     /;;::::::::;;;i
      │__________│..       〈::::::::::::::::\ 、        ''"~  ,ヘ
      ,!ヘ. u        u    |         ,}:::::::::::::::::::〃         ,::=''":/
.      |〃、!ミ:  u -─ゝ 、   _ _ . l      .  i::::::::::::::::::〃   , /ヾ  ヽヽ:::::i'
      !_ヒ;    L(.:)_ `ー'"〈:)_,` /..           i::::::::::::::〃;;::-‐…ー‐‐----::::::,,,;;i
      /`゙i u       ´ u   ヽ u !..        i::::::::::;=-''",::::::--、 --+;;:::::::.:...._ ~''-、
    _/:::::::!   u          ,,..ゝ!.        _|:::::::( ,ヾ:;;;::..,,_ ,.〉 | 《   __,:::::::ヽ ヽ
_,,. -‐ヘ::::::::::::::ヽ、u    r'´~`''‐、 u /          / 、ヾ:::::;i. 、_;;三ヾ!、 i._/,:::::;;;;;ゞ''7:::::ソ ,/
 !    \::::::::::::::ヽ  u `ー─ ' /         〉 ,) ':/ ,:,<l: j'>' )  ソ;'ィ-r、={;;/^'Y´
 i、     \:::::::::::::::..、  ~"u /           ( ::;ゝ 《   `~´ ''"i, ,:;i.ヾ'ー'=' ,l/.ィ/
 .! \     `‐、.    `ー:--'...            ゙ー=;;i  l; u    /  '、   u ,イ::;;i'
                              !::;::;:l; :! ,; u   '、  〉   ;' !;;;ノ
                           _,,,:::=!;:::!:i.   l'   _ 」' ´_ u ヽ i'/
                         <''::::::://:|;::!''ヽ  i  (:-‐=w=‐-;,  |,//
                         ヾ::::::::i :i:::::;' .〈\i   'ー-- :'  ,!'::/:;_
                          l:::::::;;ヽヽ\ i; \       /:::/ \''-、_
                          /i:::::::::;:;;ヽヽ\,   \   ,,  ,/:::::/   \ ~'-、_
                         /::ノ:::::::::::::::;;;;:ヽヽ\   "'''┴‐'::::::::/     \  `'::、_

  /└────────┬┐
. <   To Be Continued... | |
  \┌────────┴┘

373新手のスタンド使い:2003/12/23(火) 04:29
貼ります。

374新手のスタンド使い:2003/12/23(火) 04:30
     救い無き世界
     第二話「出会い・その一」


 それは小さい頃の思い出。

 怖い夢を見て泣きじゃくる俺を母親は優しく抱き締め、
一緒の布団で眠ってくれた。

あったかくて、安心で、幸せだった。

その時の母親はとても大きな存在に見えた。
両親がどんな時でも俺を守ってくれると信じきっていた。
子供だった俺にとって、母親は神様も同然だった。
いつまでもこんな日が続くと思っていた。
いつまでもこんな日が続けばいいなと思っていた。

だけど、そんな日は長く続かなかった。
そんな日が二度と来ることはなかった。
そんな日がまた来るとは思えなかった。

もう戻れないあの頃。
もう手に入らない幸せ。

俺は声を出すことも出来ずに、ただ哭いていた。


(・・・・・・・・・・・・・)
 目を開けると、見たことのない少女(俺と同じ位か?)の顔が
俺の目に映った。
「!気がついたんですね。良かった・・・」
(・・・天使?て事はここは天国か・・・・・・?)
 だが、どうやらそうでは無いみたいだ。
 見慣れた子汚い裏路地に、俺は横たわっていた。
 お馴染みの掃き溜め。
ここがもし天国というなら、ずいぶんと公衆衛生が行き届いてない。
 神様の職務怠慢だ。
 
となれば、俺は生きているということになる。
 あのナイフは運良く急所を外れたのだろうか?
 俺は腹の傷口を確かめようとした。
「だめです!まだ傷が完全に塞がってないから、
 動かないでください!」
 傷口が塞がる?
 おかしな事を言う女だ。
 結構深くナイフは刺さったのだ。そんな一朝一夕に治ってたまるか。
 こいつ俺を化け物か何かと勘違いしてるんじゃないだろうな。

375新手のスタンド使い:2003/12/23(火) 04:31
しかし妙だ。
 腹部からは殆ど痛みを感じない。
 あれだけ深い傷を負ったのだから、それなりに痛いはずだ。
 よくアドレナリンが出ていたら痛みをあまり感じないと言われるが、
 今そんなにアドレナリンが出ているとも思えないし、
 仮に出ているとしても、これほどの効果があるかは怪しい。
 だったら何で・・・
(・・・・・・・!!!!!)
 よく見ると、俺の腹の傷の辺りに、
変な奴が手を当てているではないか。
 そいつは、多少姿は違うが、
この前の夜にあった「化け物」に似ていた。
 俺はすぐさま跳ね起きて、逃げ出そうとした。
 が、やめた。
 こいつがもし俺を殺そうとするつもりなら、
 さっき気絶してたときにやってるはずだし、
 何よりこいつからはあの「化け物」のような
 底知れぬ悪意を感じなかったからだ。
(暖かい・・・)
寧ろこの感覚は、まるで母親のごとき優しさのようで、
 それが傷口に触れられた手から、
直接体や心の中に流れ込んでくるみたいだった。
 さっきあんな夢を見たのは、このせいだろうか。
「・・・終わりました。もう大丈夫です。」
 少女がそう言うと、さっきまでいた変な奴が一瞬で掻き消えた。
 そして俺に安心したような表情を見せると、
 そのまま地面に倒れこんだ。
 慌てて顔を覗き込む。
 少女は気を失っているようで、
蒼白の顔にじっとりと脂汗が滲んでいた。
(何だってんだよ、これは。)
 俺の傷はすっかりと治っていた。
 代わりに、少女が倒れている。
 状況が上手く判断出来ない。
 体の痛みは消えていたが、今度は頭が痛くなっていた。

376新手のスタンド使い:2003/12/23(火) 04:32
 俺の横で猫が眠っている。
 いや、おそらく一般的に認識されている「猫」とは
 全く違うであろう。
 だが、今のこの姿は紛れもなく唯の猫である。
 なので、一先ずこいつは「猫」と呼ぶことにしておく。
「・・・にゃあ・・・」
 どうやら「猫」が目を覚ましたようだ。
 猫はしばらくボーっとした後、
自分の姿が「猫になっている」と気付いたらしく、
慌てて逃げようとした。
が、俺は「猫」の首の後ろを掴んでそれを阻止した。
猫はジタバタと必死に抵抗する。
気の毒ではあるが、逃げられては困る。
こいつには聞きたい事が山ほどあるのだ。
『君の正体はもう分かってる。
悪いけど、逃げる前にいくつか質問させてくれないか。』
俺は地面に指でそう文字を書いた。
「にゃあ・・・」
 猫は観念したのか、暴れるのを止めた。
 もう逃げる気は無さそうなので、
俺は猫から手を放してやることにした。
 
猫はしばし躊躇した後、くるりと後方宙返りをした。
次の瞬間猫の体がドロンと煙に包まれ、
 その中から「少女」が姿を表す。
 信じ難い光景である。
 先程少女が倒れて、「猫」へとその姿を変えていくのを見たとはいえ、
 常識では考えられない出来事だ。
 気の弱い人なら卒倒しているに違いない。
 俺は取り敢えず少女に空き缶に入れた公園の水を渡してやった。
 少女は水を受け取ると、一気に飲み干す。
 さっきは真っ青だった顔が少し生気を帯びた様子である。
 体調は、少しは良くなっているみたいだった。
「ごめんなさい・・・何度もご迷惑をおかけしてしまって・・・」
 少女は済まなそうに俺に頭を下げた。
 俺は少々バツが悪くなった。
 確かに俺はこいつを助けてやったが、
それは俺の勝手でやったことで、そのことで謝られる筋合いなどない。
『別にいいよ。それより体はもう大丈夫なのか?』
 俺は照れ隠しに急いで地面に文字を書いた。
「あ・・・はい。もう平気です。ご心配かけてすみません。」
 少女はそう言ったが、まだ少し無理をしているようだった。
『そうか。ならいいけど。
 それじゃ、ええと・・・・・・』
 俺はそこで言葉に詰まってしまった。
 どうやって俺の傷を治したのか、
 あの化け物は何なのか。
 なぜ猫に変身出来るのか。
聞きたいことが山のようにありすぎて、上手くまとまらないのだ。
 気まずい沈黙が、その場を支配した。

377新手のスタンド使い:2003/12/23(火) 04:33
「あ・・・あの、私は猫又のみぃと言います。
 危ない所を助けて頂いて、本当にありがとうございました。」
 少女は堪えられなくなったのか、自分から口を開いた。
 俺に深々と二回目のお辞儀をする。
 律儀な奴だ。
 こっちが申し訳ない気分になってしまうじゃないか。
『猫又?』
 でも向こうから会話のきっかけを作ってくれたのはありがたかった。
 会話を途切れさせない為に、俺はすぐに質問を返す。
「はい、そうです。
 猫又というのは、長く生きた猫が妖怪になったもので、
 人間に変身したり、いろいろ不思議な力を使えたりするんです。」
 成る程。確か昔見た絵本や昔話に、そういうのがあった気がする。
『何で正体が猫ってばれて、いきなり逃げようとするくらいなら、
 わざわざ俺の前で変身した姿を見せたりしたんだ?』
 俺は質問を返す。
「それはその・・・猫又にはむやみに正体をばらしてはいけないという掟があって、
 でも、あなたにはきちんと言葉でお礼を言いたくて・・・」
 しどろもどろになる様が、少し滑稽だった。
もちろん普通なら、自分がそういう生き物だなんていう奴は、
 電波を受信してるキチガイか、妄想癖のあるDQN位だろうから、
 黙って放置しとくところだ。
 が、目の前で実際に人間に変身するのを見せられたのでは、
 嫌でも信じてしまう。
 しかし長く生きた猫といったが、いったいどれくらいなのだろうか。
 もしかしたら、この少女は俺よりずっと年上ということも有り得る。
『さっきいた変な奴も、君の言う猫又の力ってやつなのか?』
 本当は『君って幾つ?』と質問したかったのだが、
 流石に初対面の女性にこんな質問をするのは憚られるし、
 ナンパをしてると勘違いされても困るので、止めておく事にした。
「いえ、確かにあれは私の持つ特殊能力ですが、
 猫又特有の力か、と言われたらそうではありません。
 あなたもあれを、『スタンド』を扱えるのがその証拠です。」
 俺があの力を使える?
 そんなはずは無い。
 今まで生きてきた中で、あんな化け物みたいなのを使ったことなど
 一度たりとも無いではないか・・・
 
待てよ、違うぞ。「一度だけ」あるかもしれない。
 あの時の俺の「腕」、まさか、「あれ」がそうだというのか?
 じゃあ、おっさんの中から出てきた奴も、もしかしてそうなのか?
 「俺の腕」が「奴の腕」に変わったのも、それと何か関係しているのか?
 あの時、奴は確か俺にこう言った。

「お前の体を貰うぞ。」
 
 まさか、それはまさか・・・

378新手のスタンド使い:2003/12/23(火) 04:34
「・・・『スタンド』というのは分かりやすく言えば、
 その人の魂の具現化であり、一種の才能みたいなものなんです。
 だから、人それぞれが違う個性を持っているように、
 その力も千差万別です。
あ、あと『スタンド』は基本的に
 『スタンド使い』にしか見えないんですよ。」
 みぃの言葉が、俺を現実に引き戻した。
「・・・どうしました?
 まさか、まだ体の具合が悪いんですか!?」
 みぃが俺の顔を覗き込んで来た。
 お互いのの顔が触れそうな位に近づいて、俺は思わず距離を取る。
『何でもない。それじゃ、俺の傷を治したのは、
君の『スタンド』とかいうやつの力なのか?』
俺はさっきのことは考えないことにした。
というより、考えたくなかった。
「はい。自分の生命エネルギーを他の者に与える。
 それが私のスタンド、『マザー』の能力です。」
 自分の生命エネルギーを他人に与える能力。
 そうか、それなら俺の傷を治した後、
いきなり倒れたというのも納得がいく。
あれだけの傷を完治させるのだ。
かなりの量の生命エネルギーが必要だったはずだ。
だがここで、一つの疑問が浮かび上がった。
『そんな力が使えるんなら、
 さっき捕まってた時『スタンド』を使って
 逃げれば良かったじゃないか。』
 これは重要な質問である。
 もし「スタンドを使うのを忘れてました」などという答えが返ってきたら、
こいつも馬鹿だが、そのせいで死に掛けた俺も大馬鹿になってしまう。
「・・・私のスタンドには、抵抗するだけのパワーは無いんです。
スタンドがあったって、私はどうしようもない位に無力なんです・・・」
 みぃは静かに首を横に振って、そう答えた。
表情が明らかに暗くなる。
 ヤバい。
 何か知らんが思い切り地雷を踏んでしまったようだ。
 俺は何かまずい事を聞いてしまったのだろうか。
『で、でも、その力のおかげで俺は死なずに済んだんだから、
 丸っきり無駄な力って訳でもないだろ。』
 必死にフォローするが、みぃの表情は曇ったままだった。
「・・・ごめんなさい。
 余計な気を使わせてしまって。
 何でもないんです。何でも・・・」
 明らかに何でもある。
 だが、俺はそれ以上深く追求することは出来なかった。

379新手のスタンド使い:2003/12/23(火) 04:34
『・・・最後に一ついいか?』
 俺は話題を変えることにした。
『何で、俺なんかをわざわざ助けたりしたんだ?』
 俺の質問に、みぃはやや驚いた様子だった。
「え・・・もしかして、私何か余計な事をしてしまいましたか・・・?」
 みぃは恐る恐る俺に訊ねる。
『いや、そんな事はない。
 けど、下手したら俺の代わりに自分が死ぬかもしれなかったんだぞ。
 俺なんか放っておいてさっさと行こうとか考えなかったのか?』
 これが、俺の一番の疑問だった。
 俺みたいなでぃ、助けたところで一文の得になるとも思えない。
 なのに、何故?
「それは・・・あなたが、私を助けてくれたから・・・」
 有り得ない。まさかたったそれだけで、俺を助けたとでもいうのか?
 こいつ底抜けの馬鹿か?
『馬鹿馬鹿しい。恩返しのつもりか?
 そんな事して、いったい何の役に立つって言うんだよ。』
 俺はつい、言葉を荒げてしまった。
俺の言葉に、みぃはとても哀しそうな顔になった。
今にも泣き出しそうなその顔にを見て、
激しい自己嫌悪に苛まれる。
何故こんな言葉を伝えてしまったんだ。
そんなつもりじゃなかったのに。
「じゃあ・・・じゃあ何で、あなたは私を助けてくれたんですか?」
 みぃの必死に投げかけた言葉が、俺に突き刺さった。
言い返せない。
そうだ、俺は何でこいつを助けたのだろう。
他人を助けたって何にも良い事は無いってことは、
身にしみて分かってた筈じゃないか。
なら、何で俺は、こいつを・・・

380新手のスタンド使い:2003/12/23(火) 04:35
「ストロベリってる所悪いが、そこのでぃ、ちょっといいか?」
 不意に声が掛けられた。
 俺は反射的にそちらに顔を向ける。
 そこには、歩く猥褻物陳列罪といった形容詞の似合う
風貌の男が立って(勃って?)いた。
「俺の名はマララー。
 お前が痛めつけてくれた奴の、兄貴分だ・・・」
 俺に向けられる研ぎ澄まされた殺意。
 奴が言うにはあのチンピラ三人組の兄貴分らしいが、
 あいつらとは明らかに格が違うことが、
 その体から漂う威圧感から感じる事が出来た。
「あいつ、全治三ヶ月なんだとさ・・・
 それで最低でも二週間はベッドの上に寝たきりらしい。」
 そんなの知った事か。
 あいつも俺を殺そうとしたんだ。
 自業自得ってやつだろう。
「かわいい弟分だった・・・
 いつもマララーの兄貴、兄貴っつてな。
 そんなあいつが今病床で苦しんでるって思ったら、
 それだけで悲しい。
とてもとても悲しい。
 俺の心には、悲しみという名の穴が開いちまった・・・」
 マララーとかいう奴の体が小刻みに震え始めた。
殺意が、大きくなる。
 みぃが思わずたじろぐ。
みぃはすでにそのプレッシャーに呑まれかけているようだった。
かくいう俺も、内心では圧倒されまくっている。
「この!心の穴は!!貴様の死で!!!埋めてやるぜ!!!!」
 奴の震えが、止まった。
 あまりの緊張感に、周りの景色が歪むような錯覚に陥る。
 もし今逃げようとしても、背中を見せた瞬間に
こいつは必殺の一撃を背後から叩き込んでくるだろう。
そう思わせるだけの凄みがこいつにはあった。
闘いは避けられそうになかった。
理性的に話を聞いてもらい、平和的解決を望める相手とは
毛の先ほども思えない。
「妙な力を使うと弟分達から聞いたが、それが自分だけだと思うなよ・・・」
奴の背後に、俺や、みぃのとは違う「化け物」の姿が現れる。
「気をつけて!!あの人も『スタンド使い』です!!!」
みぃが叫ぶ。
「喰らえ!!!『デュアルショック』!!!」
みぃの叫びとほぼ同時に、マララーが俺に向かって一直線に突っ込んで来た。
やるしか・・・ない・・・!!
 

 TO BE CONTINUED・・・

381新手のスタンド使い:2003/12/23(火) 13:35
>>380
乙。
誰もいないの?

382新手のスタンド使い:2003/12/23(火) 19:41
乙ー

383神々の遺産:2003/12/23(火) 19:48

「うっ・・・・」
「よかった。気づいたみたいだ。」
ギコは頭を左右に振る。
「ここは・・・?」
「ここ?俺の家だけど。」
ミニギコが去った後、俺達はとりあえずギコを家に運んだ。
元気はないが、こうやって起き上がってくれたのでホッとする。
ソフィアとロングコートの男は、ギコに応急処置をした後、「また後で。」と言って、どこかに行ってしまった。
一体なんだったんだ・・・?
そんなことより、今はギコのことが気になった。
「なぁ、あれは一体なんだったんだ?」
「・・・?何のことだ?」
ギコは、何のことか、心底分からないというような顔をした。覚えてないのか?
「・・・・覚えてないのか?」
ギコは黙って俯いてしまった。
「じゃあ、何か覚えていることは?」
「ソフィアと目が合うまでなら。」
そうえば、その時からギコの様子が変わった。
いつものギコなら絶対に見せないような表情。
怒りと殺意が混じった表情。
一体・・・・ソフィアは何をしたんだ?
ソフィアは、俺達の何を求めているんだ?

ジリリリリリリリリリリ!!

俺は二つの目覚し時計を止めた。
カーテンの隙間から光がこぼれる。
ゆっくりと上半身を起こした。
部屋を見回す。・・・・・いつもの部屋だ。
俺は、ベッドから降りて壁にかけてあるハンガーから、
俺の通っている高校の制服を取り、パジャマから着替える。
真っ白なこの制服はこの高校特有なもので、他の高校にはない。
どこにいても目立つ。非行防止のためなのかもしれない。
・・・・・何考えてんだ?俺。
いつもの朝、いつもの部屋、見慣れた制服。
変わっているものは何一つない。しいて言うならば、誰かに見られている、そんな気がする。
「・・・・・・」
まぁどうでもいいか、そんなことを考え、部屋を出ようとすると

ゾク

身体に悪寒が走る。部屋をもう一度見回した。
ベッド、机、本棚、MDコンポ。隠れられるような場所は何一つない。
シンプル・イズ・ベスト。
「・・・・・・」
まぁどうでもいいか。見られていてもそんなに困らないと思う。多分。
階段を下り、リビングに出る。
誰もいない。父は仕事で海外だし、母は死んでしまった。
俺は冷蔵庫から缶コーヒーを取り出し、それをそのまま飲む。
ジリリリリリリリリリリリリ!!
目覚し時計がまた鳴っている。ちゃんときってなかったか・・・。
ピピピピピピピピピピピピ!!
別の目覚ましが鳴っている。いつも二つセットしているのを忘れていた。
ジリリリリリリリリリリリリ!!
ピピピピピピピピピピピ!!
あぁうるさいなぁ。分かったって。今行くから。
ジリリリリリリ!!
ピピピピピピ!!
まだ鳴っている。まったく仲のいいやつらめ。ラブラブだよな。
「・・・・・!!」
時計の表示に目が行く。ヤヴァイ、遅刻する!!

384神々の遺産:2003/12/23(火) 19:49

家の門を背に、外に出るまでジャスト三分。その間、俺は歯を磨き、顔を洗ったのだ。
我ながら素早い。
住宅街に、人影はまったくない。この時間帯は誰も出てこないのである。
何気なく上を向いてみる。何か空がやけに綺麗に見える。
足早に歩いていると、いつもの交差点に着く。
何かいい匂いがする。上向きだった視線を下に向ける。
「おはよう、黒耳君。」
そこには幼馴染のつーが目の前にいた。
「つー?今日はやけに遅い出発だな。」
セーラー服をそのまま真っ白にして、襟と袖は黒。胸の所には薄いピンクのリボンがついている。
その上に薄い黄色のカーディガンを着ている。もうそんな時期なのか・・・・・
「えへへ。ちょっと寝坊しちゃって。」
間延びしたソプラノの声で返事をし、人懐っこそうな笑顔を浮かべる。
「急がないと遅刻するぞ。」
この交差点で俺たちはよく会う。しかし、待ち合わせをしているわけではない。
いわゆるランデヴーポイントなのだ。
しかし、いつもはこんな遅い時間では会わない。
まぁ本人も寝坊したと言っているのだから、多分そうなのだろう。
「・・・?、どうしたんだ?そんなにニヤニヤして?何かいいことでもあったのか?」
さっきからつーがニヤニヤしているのがやけに気になった。
「だってぇ・・・、この時間に会うなんて珍しいじゃない?・・・だからぁ、何かうれしくて。」
つーとは幼稚園も、小学校も、中学校も、高校、クラスまでも一緒で、小さい頃はいつも一緒に遊んでた。
そんなもの、偶然にしちゃあ凄すぎる。ほとんど運命?みたいなものかも――――
その瞬間、視界が混濁した。
「だっ、だいじょーぶ!?」
思考が止まる。いろいろなことが頭の中に流れてくるような気がする。
バチッと音が鳴った気がした。漆黒の靴が見える。
つーの靴だ。俺は・・・倒れているのか?
目の前がグルグル回っている。視界と意識がグチャグチャになる。
・・・耳君!
・・・・・ろ耳君!
誰の声なんだろう?まったく分からない。
「黒耳君!!」
俺はビクンっとして頭を上げる。石鹸のいい匂いがする。
つーが俺の肩を揺すっている。
「しっかりして!黒耳君!?」
何か癒される気がした。身体も、傷も、心も。
「あ、あぁ。だいじょーぶだ。」
俺は返事をする。
いつもの景色が広がっている。違うのはつーの顔が目の前にあることだけ。
「ホントに?ホントにだじょーぶ?病院行く?」
心配そうな顔をしてこっちを見てくる。少し涙目になっていた。そういう性格なのだ。彼女は。
「だいじょーぶだって。ちょっと目眩がしただけだ。」
「ホントにぃ?」
「うたがり深いな。このままマラソンでもいけそうな感じだ。」
とまぁ、言ってみたものの、俺にマラソンなんかできるわけない。そんな体力など皆無だ。
「ほらさっさと行くぞ。でないと本当に遅刻しちまう。」
つーを急かして俺は走った。
「あっ、待ってよぉ!」

385神々の遺産:2003/12/23(火) 19:49

情けないことに息がすぐに上がった。
俺がぜいぜい言っているのに、つーは全然余裕そうだ。
ちくしょう、ちゃんと運動はするべきだな。
俺とつーは学校に着くまでとりとめのない話をしていた。
そんなとき、ソフィアは俺とつーの前に現れた。
ソフィアがつーを睨む。
つーはビクっと震え、俺の後ろに隠れる。
「・・・・何のようだ?」
俺は威嚇するように低い声で言った。
ソフィアは、俺のことなど全然気にしていないようにつーをじっと見ている。
「へぇ・・・・、彼女がもう一人の・・・・・。」
つーはまたビクっとする。
俺は、無言のままつーの手を引っ張り、ソフィアを通り過ぎようとした。
すると、ソフィアが俺の腕を掴み、俺の手のひらの中に何かを渡してきた。
俺は自分の手のひらを広げ、渡されたものを見た。
それは、まるで血の色のような輝きをしている赤い水晶だった。
「それが『ゾハル』よ。」
『ゾハル』?昨日のミニギコとソフィアが話していた?
何でその『ゾハル』を俺に渡すんだ?
ソフィアは、俺に『ゾハル』を渡すと、すぐどこかに行こうとしていた。
「お、おい!」
ソフィアがこちらに振り向く。
俺は突っ返す『つもり』だった。
しかし、ソフィアが振り向いた時、俺はそれをすることが出来なくなった。
なぜなら、ソフィアが今にも泣きそうな顔をしているからだ。
俺は言葉が詰まってしまった。
そんな顔をされたらいらない、なんて言えないじゃないか。
そんな俺の口から出た言葉は
「・・・・・・ありがとう、大切にする。」
ソフィアはありがとう、と言って歩き出した。
ソフィアの後姿は、とても儚く、消えてしまいそうな気がした。
俺はもう一度『ゾハル』を見た。
俺の手の中で赤く光っている。血のように赤く、赤く、赤く。
まるで、俺のたどる道が血に染まっていく運命なのだと、そう告げるように、赤く。
俺は考えるのをやめた。早く学校に行こう。遅刻する。
俺はつーに声をかけ、学校への道を走った。



  /└────────┬┐
. <   To Be Continued... | |
  \┌────────┴┘

386新手のスタンド使い:2003/12/23(火) 20:29
つーっぽく無いと思う・・・。
どちらかというとしぃっぽい。

387新手のスタンド使い:2003/12/23(火) 21:47
合言葉はwell kill them!(仮)第五話―王牙高校の人々

ジリリリリリリ・・・・。
ああ、何時もの様に無機質な目覚ましの音が響いている。
ジリリリリリリ・・・・。
ぐわっしゃあああん!!!
・・・また壊しちまった、これで4回目だ。
ま、100円ショップで買ったものだからいいのだが・・・。

茶の間へ行くと、父ちゃんが朝食の用意をしていた。
「おはよう。兄貴はどうした?」
「朝練あるからって早めに学校行ったぞ。」
座布団に座り、ご飯を食べる。
日本の朝飯はご飯、味噌汁、納豆、焼き魚、牛乳、これ最強。
これが無くては俺の朝は始まらない。
歯を磨くと学校へ行くための支度を始める。
俺の学校には制服なんて物は無いので、全員私服。
着替えが終わるとバッグと『篭』を持って家を出る。
外はまだ肌寒く、吐く息も白くなっている。
俺は上着のフードを被り、歩みを速めた。

俺の学校、王牙高校は歩いて15〜20分ほどで着く。
校門には生活指導の先公が竹刀を持って立っていた。
着ているジャージがテツにそっくりだと思った。
「よっ!おはよーさん!」
正直この挨拶が頭に響いて迷惑している。
上履きに履き替えて自分の教室一年三組へと向かう。
HRがまだ始まってないので騒がしいものだ。
「おはよー。」
一番後ろの窓際の席に荷物を置くと、本を読み耽っているモララーに声をかける。
「やあ、おはよう。最近調子どう?」
「バッチリだぜ。いつもの事じゃん。」
「あ、そうそう、前貸してって言ってたストーンオーシャンの4巻持って来たよ。」
「サンキュー。いつもありがとな。」
俺はマンガを受け取り、カバンにしまいこんだ。

388神々の遺産を書いている人?:2003/12/23(火) 21:53
>>386
設定は>>263に書いてあります。

389新手のスタンド使い:2003/12/23(火) 22:14

おもむろに教室のドアがガラガラと音を立てて開いた。
「HR始めんぞー静かにしろー。」
学校一いい加減な講師ことうちの担任、八先生が入ってきた。
教室が少し静かになり、皆が自分の席に着く。
「今日は面倒なことに転校生がいる。」
うおーー!!
静かだった教室がまたざわつき始めた。
「ちなみに男だ。」
先生の言葉に野郎共が一喜一憂してる。
女子の大半は男子に白い目を向けている。
何ともノリのいいクラスだ。
「じゃあ入って来い。」
ガラガラ
一人の男子生徒が教室に入ってきた。
・・・・あれ?何か見覚えがあるな?・・・・
「それじゃあ自己紹介でも始めて。」
「ツーです。よろしく。」
名前までそっくりだな・・・。
その時転校生の顔に釘付けになった。
あのほっぺたの花の刺青・・・間違いない、奴だ!
「じゃあ一番後ろの窓際から2番目の席に座って。」
「分かりました。」
俺のお隣さんと言うわけである。
「さ、他には連絡事項無いから終わるぞー。」
先生が出て行き、ほんの少しの休憩時間が訪れる。
外では遅刻してきた奴らが生活指導の先公に竹刀でケツを叩かれている。
おもむろに転校生が話しかけてきた。
「お前はもしかしていいとも大好きで、毎年皆勤賞を貰っていたアヒャ君だね?」
にゃろう、ならばこっちも・・・。
「そういう君は銃刀法違反者のツー君だね?」
「うるせー!バレなきゃいいんだよ!そんな事言っているお前も銃刀法違反者だろ!」
教室に静寂が訪れた。
いきなり初対面であるはずの転校生と親しげに俺が話しているのだから無理も無い。
「「あっはははは――――!!!」」
俺とツーはたまらず大笑いした。
クラスの連中は俺たちのやり取りをただ唖然として見ている。
「ひさしぶりだな。」
「ふっ他に言うことは無いのか?」
一時間目の講師が来て、再び時が動き出す。
これから少しは面白くなるかもな・・・。
俺は外を見て一人ほくそえんだ。

390新手のスタンド使い:2003/12/23(火) 22:44

一時間目が終わり・・・・
「ねえアヒャ君。ツー君とは知り合いなの?」
前の席のベレー帽を被ったショートヘアーの女子が話しかけてきた。
たしかヅーと言ったっけな。
この学校には隣町からの生徒も通ってきていて、ヅーもその一人だ。
「ああ、幼稚園、小学校、中学校と一緒でな、中三の頃ツーが一度引っ越して
 別れて居たんだ。ま、マブダチを超えた『鬼ダチ』ってわけ。」
「うまい事言うな〜お前。」
「へえ、彼がアヒャ君の言ってた『鬼ダチ』か〜」
「マスター、俺にも喋らせてくれよ!」
俺はいきなり会話に乱入してきた人たちに目をやる。
たしか右から順に男子はモララー、山崎、シーン。
女子はのーちゃん、でぃ、ヅーのはずだ。
もっとも、俺の記憶が正しければ。
ブラッドも話に入ってきたが、誰も驚いていない。
なぜなら、ここに居る全員がスタンドについて知っているからだ。
初めてブラッドを紹介したとき、流石に皆驚いていたが、
実際に『矢』に射られたり、生まれつきや突然能力に目覚めた奴もいる。
ま、大半が一般の人間だが、スタンド能力はなじみの深い物になっている。
本人に直接聞いたが、ツーもスタンド使いらしい。
何の気兼ねも無く転校生と喋っている俺たちに皆の視線が集まっていた。
こ、こいつら気がついてないのか?それともただ鈍いだけなのか?
そんな事はほっておいて俺たちは会話を続けた。
「俺の名前はツー、よろしく!」
ヅーやシーン達の挨拶にアイツは好青年風に挨拶を返していた。
その時ふと今朝の占いが頭をよぎった。
「今日は隠していたことがバレてしまうかも。」
俺は面倒なことになりそうな予感にため息をついた。

後編へ

  /└────────┬┐
. <   To Be Continued... | |
  \┌────────┴┘

391新手のスタンド使い:2003/12/23(火) 22:51
乙彼〜
急展開の予感!

392新手のスタンド使い:2003/12/24(水) 01:57
 乙。
 でも作りながら貼るのは止めといたほうがいいよ。
他の書き手さんが貼っていいか微妙だし、割り込みされやすくなるし、
既に貼った部分の訂正もできないし。

 テキトーなテキストエディタ(メモ帳でも可)に一話分全部書き込んで、
保存した後で貼れば、書き込みミスってログが消えることもなく安心。
共有のマシン使ってても、デスクトップに一時的に保存して貼った後
消せばOK。

 「貼ろう」と思ったときには・・既に作品は出来てるんだぜ・・・
  俺たち「書き手」の世界ではな。

393:2003/12/24(水) 13:32
少し長いですが、「モナーの愉快な冒険」・番外編を張ります。
「モナーの愉快な冒険」の劇中は現在9月なので、少し先の話となります。

394:2003/12/24(水) 13:33

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

      「モナーの愉快な冒険」
       番外・ラブホテルへ行こう!
       
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


 ジングルベール! ジングルベール! すずがーなるー♪
 今日はたのしいー ク・リ・ス・マ・スー♪
 俺は、大きな靴下をベッドの脇に備え付けていた。
 目が覚めた時には、靴下に素敵なプレゼントが…
 希望に満ちる俺を地獄に突き落とすような、不穏な気配。
 突然、窓が割れた。
 誰かが窓から侵入したのだ。

 そこに立っていたのは、真っ赤な服を着用したリナー。
 いや、あれは… 服が返り血で真っ赤に染まっている!!
 彼女は、大きな白い袋を背負っていた。
 その袋から、リナーはバヨネットを取り出した。

「靴下は吊るしたか? サンタにお祈りは? 部屋のスミでガタガタ震えて命乞いをする心の準備はOK?」

 バヨネットを十字に構えて、リナーは一歩一歩こちらに近付いてくる。
 ヒェーーッ!!
 助けてーー!!

 そして、リナーは俺の耳元で囁いた。
「Merry Christmas & Hello cut off…」
 


「うわぁぁぁぁぁぁ!!」
 俺はベッドから飛び起きた。
 爽やかな朝の光が、部屋に差し込んでいる。
 リナーの姿は…どこにもない。
 そりゃそうだ。
 そもそも、今の時刻は12月24日の朝である。
 サンタには1日早い。
「ふう、夢か…」
 俺は胸を撫で下ろした。
 身体は汗でグッショリだ。
 俺はいそいそと服を着替えると、台所に向かった。

395:2003/12/24(水) 13:33

          @          @          @


 兄さんがスッとろい仕草でキッチンに下りてきた。
「あ、兄さん。おはよう」
 私は、とりあえず朝の挨拶をする。
 兄さんは頭をボリボリと掻きながら、欠伸をして言った。
「おはようモナ…」
 こうして見ると、つくづく冴えない兄だ。
 寝起きという点を差し引いても、全身からその弛緩っぷりが漂っている。
 恋人など一生できないのではないか、最近まで私はそう思っていた。
「朝メシは〜?」
 のっそりと椅子に座る兄。
 自分で作れ、スッタコ! 
「分かったモナ…」
 私の表情を見て、言いたい事が分かったようだ。
 兄さんは食パンをトースターに突っ込み、コーヒーを淹れる。

 キッチンに、女性が入ってきた。
 ちょっと前からこの家に居候しているリナーさんだ。
「…おはよう」
 リナーさんは私達に軽く挨拶した。
「おはようモナ!」
 突然元気になる兄さん。
「お義姉さん、おはようございます」
 私も挨拶を返した。
 リナーさんは、そのまま兄の正面に座った。
 その席には、あらかじめトーストが置いてある。
 兄さんは、2人分トーストを用意していたのだ。
 意外なところで気が回る。
 私は、朝食を食べているリナーさんの横顔を盗み見た。
 同じ女の私から見ても、惚れそうになるほど端正な容姿。
 うちの冴えない馬鹿兄が、どうやってこの美人と同棲にまでこぎつけたのかは謎のままだ。
 先を越された感があって、非常に悔しい。

「私、もうすぐ友達の家に行ってくるから…」
 私は兄に告げた。
 兄は意外そうな表情を浮かべる。
「友達って…男? 女?」
 なんと失礼な質問を抜かすのだろうか、このアホ兄は…!
 デリカシーが無さすぎる。リナーさんもさぞかし苦労しているのだろう。
「…女。クリスマスパーティーがあるから…」
 私は、歯軋りをしながら答えた。
 どうせ、私にはクリスマスを共に過ごす恋人などいない。
 そういう輩が三人集まって、さぶいクリスマスパーティーを行う予定なのだ。
「そうモナか…」
 甲斐性無しの兄は、やっぱりな、という表情を浮かべた。
 リナーさんがいなければ、間違いなくそのニヤケ面に蹴りを入れていただろう。
 そりゃ私だって、ギコさんみたいにハンサムで頭が良くてスポーツもできる素敵な人を見つけて、
 クリスマスにはどこかの高級ホテルで夜景を見ながら食事をして、不意にその人が、
 『これは君へのプレゼントだよ、シニョリーナ』って言いながらテーブルの隅にプレゼントとおぼしき小箱を置いて、
 私が『なぜそんなテーブルの隅に置くの?』って聞いたら、その人は、
 『君が手をのばすところを見たいからだよ。その美しい手をできるだけ長い間見ていたい… 
 あなたの『手』… とてもなめらかな関節と皮膚をしていますね… 白くってカワイイ指だ。
 『ほおずり』…してもいいですか? フウウウウ〜 レオナルド・ダビンチの『モナリザ』ってありますよね…』

 ヒィィッ!!
 何か、最後の方が凄く嫌な展開だったような…!
 とにかく、私にはクリスマスを一緒に過ごしてくれる男なんていない。
「まあ、いくら萌えない妹って言っても、男は星の数ほどいるモナよ…」
「ガツンとみかん!」
 私の拳が、兄の顔面にクリーンヒット。
 兄は台所の床にゆっくりと崩れ落ちる。
 リナーさんは、その様子を見て言った。
「見事な一撃だ」
 やった! ガナー、褒められちゃった☆
 …じゃなくて、つい突発的に殴ってしまった。
 まあいいか。


          @          @          @

396:2003/12/24(水) 13:33

「あいたたた…」
 俺は痛みをこらえながら立ち上がった。
 ガナーめ…
 兄さんが温和なのをいい事に、ドメスティック・バイオレンスを行うとは…
 あれ、そのガナーは…?
「君の妹なら、もう家を出たぞ」
 テーブルに座っていたリナーが言った。
「ああ、クリスマスパーティーとか言ってたモナね…」
 俺は、不意に今朝の悪夢を思い出した。
 思わず、リナーの顔から目を逸らしてしまう。
「ん? どうかしたのか?」
「いや、何もないモナ…」
 それより、今日は全国のカプールが煩悩と電波に舞い踊る日、クリスマスイブだ!
 世界最大の詐欺師の誕生日にふさわしく、欺瞞に満ちたバカップル共が盛り上がる。
 そんなマスコミに毒された日こそが、クリスマスの真実である。
 俺はこの17年間、ずっとそう思い続けてきた。
 ―――ただし『今年』までだ!

 俺は、ジッとリナーの方を見た。
「…何だ?」
 リナーも俺を見返す。
 とりあえず、ここは軽いジャブだ。
「リナー、今日はクリスマスイブモナね…」
 リナーはため息をつく。
「それがどうした? 私はクリスチャンじゃないから関係ない」
 ジャブ失敗か…
 って言うか、今とんでもない事を言わなかったか!?
 まあいい。とにかく、ここらでストレートを…!
「今日はいい天気モナね…」
「ああ、そうだな」
 どこがストレートなんだよ、俺。
 仕方がない。奥義を放つ時が来たようだ。
「…買い物に行くけど、モナは力がないから一人じゃ持ちきれないモナ! 荷物持ちについてきてほしいモナァ!」
「…仕方ないな」
 リナーは頷く。
 よっしゃ!! OKを貰ったァ!
 リナーには、家に居候しているという負い目がある。
 さらに、俺自身の劣等感を逆手にとってわがままばかりの上策だ。
 なんか男としてのプライドもへったくれもないが、まあいい。

 こうして、リナーと二人で町に出かけた。
 とりあえず、初デートである。
 いや、深夜に二人で町をウロついた事は何度もあるが、あれは例外だろう。
「で、何を買うんだ?」
 リナーは痛いところをついてきた。
 …どうする? どうフォローする?

 でっかいぬいぐるみとかを買って、
    俺:「君へのプレゼントさ…」
  リナー:「さすがモナー! そこにシビれる! あこがれるゥ!」
 そこで、熱いキスをズキュゥゥゥンとかまして、
    俺:初めての相手は、このモナーだ―――ッ!
 しかし、リナーはドロ水で口を洗って…
 いや、駄目じゃないか。
 
「えーと、リナーは、何か欲しい物ってないモナか…?」
 リナーは怪訝な顔をした。
「強いて言うなら、ステアーが…」
「銃器以外モナ…」
「うーん… 特に無いな」
 まあ、リナーは普通の女の子ではないのだ。
 とりあえず、アクセサリーショップにでも行ってみるか。


          @          @          @


 女は、今日初めてこの町に足を踏み入れた。
 この町は、かなり人口が多い。女の力を振るうのに、まさにうってつけだ。
 そう、女はスタンド使いであった。
 女は、町から町へと移動する。
 そして、毎年この12月24日の深夜に自らのスタンドを発動させる。
 そうやって、もう何年も経過してきた。
 そして今年、彼女はこの町に目をつけたのだ。

「まだ、夜まで時間があるわね…」
 女は時計を見て呟いた。
 そう、彼女のスタンドは深夜しか力を発揮しない。
「仕方ないわね。『あそこ』で、時間をつぶそうか…」
 女は、そのまま雑踏に紛れてしまう。
 その女の名は、モニカといった。


          @          @          @

397:2003/12/24(水) 13:34

 アクセサリーショップは、アベックでごったがえしていた。
 リナーはかなり興味なさげだ。
 ただでさえ俺はまともにデートなんてした事ないのに、相手は筋金入りの武装女だ。
 一般のデートコースなんかじゃ喜ばないのだろうか。
「何か欲しいのあるモナ?」
「…別に」
 うーむ。
 ここはベタにティファニーなどを…

「まぁ、今どきクリスマスにティファニーなんてベタな奴はいないだろうけどな」
「そうだね…」

 どこぞのカップルの会話が耳に入る。
 では、奮発してカルティエあたりを…

 その瞬間、45万の文字が目に入る。
 俺は、今までクリスマスなんぞ広告業界の陰謀だと思っていた。
 そして今日、リナーを連れて家を出る時、その考えを改めた。
 だが… それは敗者の僻みなんかではない事を確信する。
 間違いない、これは陰謀だ。
「リナー、店を出るモナ!」
 俺はリナーの手を引いて店から出た。

 …今から、どうしよう?
 よし、ここは安くつく映画だ。
 しかし、リナーは映画を見て喜ぶのか?
 とりあえず、本人に聞いてみるか。
「リナー、映画を見ようモナ…?」
「別に、君が見たいのなら構わないが… 買い物はいいのか?」
 そんなの、どうせ口実だし…
 映画館はすぐそこである。
 というか、混み過ぎだ。
 特に、恋愛映画など凄まじい。
「ホラーがまだ空いてるモナね…」
 これは確か、吸血鬼が町を襲う話… いや、これをリナーに見せるのはまずくないか?
「どうした? 入らないのか?」
「あ、……………モナッ!」
 仕方がない。俺はリナーを連れて映画館へ入っていった。


 悲鳴を上げながら逃げ惑うヒロイン。
 しかし、車のエンジンはかからない。
 かっての恋人であった男がゾンビとなって、ヒロインに襲い掛かる…!
「あの…面白いモナ?」
 リナーは意外にも、熱心に画面を見つめていた。
「別に面白くはないが、2年前のルーマニアでの戦いを思い出してな。
 あの時は、もっと絶望的な状況だった。町一つ分の住人が全員ゾンビに…」
「いや、生々しい話はいいモナ…」
 俺達二人は、そのまま無言で映画を見続ける。
 何というか、失敗だ。
 やはり、俺にはまともなデートなどできないのか…!
 1時間後、映画は終わった。結末なんて覚えていない。
「さて、行くモナ…」
 俺達は腰を上げた。
 もういい。適当に買い物して、家に帰ろう…

 映画館から一歩出た時、リナーの目つきが変わった。
 行き交う人の波の一点を凝視している。
「あいつは…!」
「どうしたモナ?」
 どうやら、何の変哲もない一人の女性を注視しているようだ。
「君の『アウト・オブ・エデン』で、あの女がスタンド使いかどうか視てくれないか?」
「分かったモナ…」
 視てはみたが、これだけ人数がいるとよく分からない。
 生命エネルギーが混じってしまって、今の俺では個体識別は不可能だ。
「うーん、ちょっと分からないモナね」
「そうか…」
 リナーは携帯電話を取り出すと、その女を撮影した。
 そして、慣れた手つきで携帯を操作する。
「ASAに照会を依頼した。とりあえず、あの女を尾行するぞ」
 話からすると、あの女はスタンド使いなのだろうか。
 とりあえずリナーの言葉に従って、俺達は女の後を尾ける事となった。

398:2003/12/24(水) 13:34

 女はどんどん狭い道へ入っていく。
 一体、どこへ行くつもりだ?
「…照会の結果が来た。やはり間違いない。あの女は有名なスタンド使いだ」
「有名って…どんなスタンドモナ?」
「それが、分からない。スタンド名は『サイレント・ナイト』。能力に関しては、『知るべきではない』と記載されている」
 何だそれは。スタンド名だけ分かっても、全く意味がないだろう。
「ASAの怠慢モナ?」
 リナーは首を左右に振った。
「いや、不明なら不明と記載されているはず。知ること自体が、こちらの不利になる類の能力なのだろうな…」
「それって、厄介な能力モナ…?」
 リナーは頷いた。
「当然だ。知る事によって発動するタイプのスタンドなら、まともに戦う事は不可能だ。ただ…」
 言葉を切るリナー。
「ただ?」
「ASAの定めた危険度が、何故か著しく低い。だが、放っておく訳にもいかないな」

 モニカは、俺達の尾行に気付いた様子はない。
「この距離でも気付かんとは、相当の素人だな…。このまま暗殺するか、それとも…」
「こんな聖なる日に、そんな物騒なことは止めるモナ!」
 俺は慌ててリナーを止めた。
「では、もう少し様子を見るか」
 モニカは尾行に気付かずに歩き続ける。
 繁華街からかなり外れて、ホテル街に足を踏み入れた。
 周囲にカップルが増えていく。
 この時期、どこのホテルも満員のはず。
 そう、彼らはあぶれ出した難民なのだ。

「…尾けられているな」
 リナーは不意に言った。
「えっ! 誰に!?」
 俺は周囲を見回す。
「キョロキョロするな。これだけ周囲に人がいるならば、特定は不可能だ。泳がせておく」
 …二重尾行!
 なら、俺達を尾けているのはモニカの仲間か。
 当のモニカは… なんと、一人でホテルに入っていった!

「な…なんだってェー!!」
 俺は叫ぶ。
「声を上げるな。追うぞ!」
 追うぞって、もしかして…
「あのホテルに…入るって事ですかァ――ッ!」
「当たり前だ。ここでずっと待っている訳にもいかないだろう?」
 リナーはサラリと答えた。
「モナとリナーの…二人で入るって事ですかァ――ッ!」
「その方が自然だ。男女のアベックを装える」
 リナーはサラリと答えた。
 装えるって…リナーの中では、俺達はアベックではないのですね。
 いや、そんな事よりッ!
「モナは高校生なのに…ホテルに入るって事ですかァ――ッ!」
「申告しなければバレはしない」
 リナーはサラリと答えた。
「大人の階段を…のぼるのですかァ――ッ!」
「君はまだ、シンデレラさ…と言うか、早く入るぞ」
 リナーはサラリと答えた。
「まあ! リナーったらいけないひとッ!」
 リナーはため息をついた。
「何より… ホテルの正面で入るの入らないのとモメている方が、恥ずかしいと思うがな…」
 見れば、道行く人達が俺を指差して笑っている。
「のわぁーッ!!」
 俺は、リナーの手を引いてホテルへ飛び込んだ。
 …その一瞬、不穏な視線を感じた。
 明らかに、俺達へ向けられたものだ。
 その視線に付随する感情は… 強い憎しみ。
 ほんの一瞬だ。もう感じない。
 だが、只者じゃなかった。
 一体、何者なんだ…?

399:2003/12/24(水) 13:35

 ロビーは、意外と狭かった。
 部屋の写真が載ったパネルが並んでいる。
「こ、これは…ッ!」
 点灯しているパネルと点灯していないパネルがあった。
 まず、どうするんだ、俺。
 心臓がバクバクいっている。
 ボタンを押せばいいのか? 
 リナーのほうをチラリと見た。
「彼女の近くの部屋に入ろう。モニカがどの部屋にいるか視てくれないか?」
「分かったモナ…!」
 俺は、『アウト・オブ・エデン』の視線をホテル中に展開した。
 さて、モニカはどこに…

ギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアン
アンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシ
ギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアン
アンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシ
ギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアン
アンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシ
ギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアン
アンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシ

「邪念が混じって集中できないモナ〜ッ!!」
「…」
 リナーは、軽蔑の視線をよこしている。
 そして口を開いた。
「過去を視る事はできないか? どのボタンを押したのか分かれば、彼女がいる部屋が分かるのだが…」
 …過去を視る?
 試したことがない。
 だが、やってみるか…
 俺はパネル付近を凝視した。
 頭が痛い。やはり、オーバースキルだ。
 一瞬、ボタンを押す指先のようなものが見えた。
「このボタンモナ!」
 俺は、そのボタンを指差す。
「406号室か… 両隣とも空いてないな。仕方ない。真下の306号室にするか」
 リナーは、306号室のボタンを押した。
 そして、フロントの方に歩いていく。
 このままでは、男の面目丸潰れだ!
 俺はリナーの前に躍り出た。鍵くらいは、この俺が受け取るッ!

「お泊まりですか? 休憩ですか?」
 …えッ?
 フロントのオバさんは問いかけた。
 「休憩」といったら、何時間かで終えて出るのだろう。
 何かせわしない感じがして、集中できない。余り気が乗らなかった。
 「お泊り」といったら、まあそのままだ。
 だが翌朝に、このオバさんに『きのうは おたのしみ でしたね』と言われるのも、何か嫌だ。
 俺は、リナーの方をチラッと見た。
「フリータイムは?」
 リナーはオバさんに尋ねた。
「午前十時から午後七時まで。4200円になります」
「安いな… この時期なのに特別料金は課金していないのか?」
「Exactry(そのとおりでございます)」
「グッド! 気に入ったッ!」
 リナーは、スカートの中から5千円札を取り出す。
 それを受け取ったオバさんは、お釣りとカードキーを差し出した。
 俺は割って入って、キーを受け取った。お釣りはリナーに渡す。
「これが鍵(キー)かッ!!」
 感銘に震える俺。
「さあ、行くぞ」
 リナーは、熱くなる俺とは裏腹に、平然とエレベーターに向かった。

400:2003/12/24(水) 13:36

 エレベーターを降りると、そこは3階だった。
 それにしても狭いエレベーターだ。2人も乗ったら身体が密着してしまうではないか…!
 俺はヨダレを拭いて、長い廊下を歩き出した。リナーが後からついてくる。

『ギシギシアンアン』
『すごいわケンイチッ!! もう4時間よッ!』
『メーン!!』
『そこ以外を切り刻む!』

「なんか… 壁が薄いモナね…」
 音が丸聞こえだ。
 俺は、桃色の雰囲気に圧倒されていた。
「まあ、こんなものだ」
 あっさりと言うリナー。
 俺は、意を決して聞いてみた。
「リナーは、こういうホテルとか良く使うモナか…?」
「ああ。よく利用している」
 何だってーッ!!
 俺は振り向いて、リナーの顔を凝視する。
「この国に滞在した時は、よく利用した。身元を明らかにする必要がないからな」
 リナーは照れたように言った。
「そうモナか!」
 俺は胸を撫で下ろすと、再び歩き出した。
 そして、その部屋の前で立ち止まる。
「306号室… 間違いないモナ…!」
 そう、今からリナーと二人でこの部屋に入るのだ。
 胸が躍り、動悸が激しくなる。
 自然と息も荒くなる。
 だが、俺は上手くやってみせる!
 俺はカードキーを握り締めた。
「おい! 何してる! キーを曲げるな!!」
 リナーの声も、今の俺には聞こえなかった。


          @          @          @


 その男は、ホテルを見上げた。
 ずっと、あの二人を尾行してきたのだ。
 そう、二人がこのホテルに入るまで。
 男の拳は、怒りに震えていた。
「あの泥棒猫… 僕のモナー君を… 絶対に許さないんだからなッ!!!」
 だが… 男は冷静ではなかったが、妥当な判断を下すことは出来た。
 女の方には、単純な戦闘ではおそらく適わない。
 男はそれを痛感していた。
 スペックはともかくとして、戦闘経験の差は埋め難い。
「…仕方ない」
 気は進まないが、一人で勝てないなら仲間を呼ぶまでだ。
 そう、目的を同じとするあの二人を…

401:2003/12/24(水) 13:36

 『モナーとリナーが二人でホテルに入った』
 男は、その事実と場所を告げただけだ。
 しかし、それだけで充分である。
 連絡して1分ほどして、二人とも駆けつけてきた。
 二人は怪物(モンスター)だ。
 実を言えば、男はこいつらの手だけは借りたくなかった。
「しかしッ! この事態は非常にマズいッ!! 今日だけ同盟を組まないかッ!? レモナ! つー!」
 男は、二人に右手を差し出した。
「そうねぇ。今日ばかりは協力しちゃおうかな? 私に隠れてそんな…ちょっと、許せないしねェ…!」
 レモナは、男の右手に自分の手を重ねる。
「ソンナノ、ドウデモイイガ… モナーヲ イタメツケルノハ タノシソウダナ… アヒャ!!」
 つーも、同様に手を重ねた。
 三人の手の平がピッタリと重なる。
「よしっ!! じゃあ行くぞ!! モナー君を泥棒猫から僕達のもとに奪還だッ!!」
 その男、モララーが言った。
「それにしても、つーちゃんったら〜 やっぱり、モナーくんの事好きだったのね〜」
 レモナがニヤニヤしながら言った。
「ナッ… チガウ! オレハタダ、モナーヲ イジメタイカラ…」
 モララーが、二人の間に割って入った。
「まあまあ。仲間割れは次の機会に。とりあえず、ニ人が入った306号室の隣にチェックインだ」
 モララーは、305号室のボタンを押した。
「お泊まりですか? 休憩ですか?」
 フロントの中年女性が問いかける。
「…ドウスルンダ?」
 つーは二人に訊ねる。
 モララーはあごに手を当てた。
「とりあえず、休憩でいいんじゃない? いざとなったら延長料金払えばいいし…」
 レモナは言った。
「そうだな。休憩で」
 モララーは1万円札を差し出す。
「あ、3名様ですので、ご利用料金は通常の1.5倍となりますが」
「なんだって!!」
 モララーは抗議した。 「なんでそうなるんだ!? 普通、こーいうのは部屋代だろ!?」
「規則ですので」
 中年女性は食い下がる。
「ほら、あんまりガメついこと言わない」
「ソウダゾ。 チョットグライ、イイジャナイカ」
 レモナとつーが、二人して口を挟んでくる。
「あの… 割り勘なんだけど、分かってる?」
 モララーは恐る恐る言った。
「ちょっと! 男の癖にホテル代ぐらい払いなさいよ!!」
「ソウダゾ! カイショウナシガ!」
「やかましィ――ッ!! 性差別発言してんじゃねェ――ッ! このネカマと性別不詳がッ!!」
 モララーはいきなりキレた。
「ネ、ネカマですって…!」
「ネカマをネカマと言って何が悪いッ!」
「ガタガタ イッテンジャネェゼ、ダボハゼガッ!」
「あの、料金を…」
 こうして3人は、1時間近くフロントでモメ続けた。

402:2003/12/24(水) 13:37

          @          @          @


 俺は、ラブホテルとは狭くて汚い場所という偏見を持っていた。
 だが、この部屋はとても綺麗だ。
 リナーはつかつかと部屋に入ると、椅子に腰を下ろした。
 そして、天井を凝視している。
 モニカのいる406号室だ。
 俺は、部屋の中に一歩踏み込んだ。
 後ろから、カチャリという音。
 鍵が閉まった…?
「大変だ、リナー!! 閉じ込められたモナ!!」
「…オートロックだ」
 リナーは冷たく言った。
「…」
 俺は頭を掻くと、ゆっくりとベッドに近寄った。
 風の噂では、このベッドは回るという話を聞いた。
 だから俺は油断しない。
 さあ来い! 回るなら回れ!!
「残念だが、回転ベッドは条例で禁止されている」
 リナーは衝撃の事実を告げた。
 それにしても、リナーは何で俺の考えが分かるんだ?
 もしや、心を読むスタンドを…!
「君の考えてる事ぐらい、大体見当がつく」
 俺は、肩を落とした。
 どうせ、俺は単純人間だ…
 ふと、ボタンやレバーが並んでいるのが目に入った。
「ポチッとな」
 俺は適当にボタンを押してみる。
 ミラーボールが回転するように、たくさんの赤い光が部屋を彩る。
「…」
 リナーに睨まれた。
 それにしても、趣味が悪すぎる。
 こんな照明、使う奴いるのか?
 あっ、ノートだ!!
 俺は、部屋に備え付けられているノートを手に取った。
「君は、大人しくできないのか…?」
 リナーは呆れて言った。
 だが、俺の好奇心は抑えられない。
 俺はノートを開いた。

『奥さんと別れてくれない』
『私を愛していないのではないか』
『子供なんて捨てればいい』
 そんな事が、ビッシリと書かれていた。
「ヒィィィィーッ!!」
 ヤバイ世界だ。
 このノートはヤバイ。
「リナー! ノートに呪いの言葉が綴られてるモナ!!」
「どうせ男が風呂に入ってる間にでも、2号の悲哀を書き綴ったんだろう。特に珍しいものじゃない」
 …ディープな世界だ。
 もちろん、ノートの中身は恨み言ばっかりじゃない。
 相合傘や、楽しげな報告も多い。
 俺も何か書いてみるか。
 最後のページには、浮気する彼氏への不満が書かれている。
 その彼氏の浮気歴が、全てブチまけられていた。
 その怒りに満ちた文章は、『こんな彼氏、どう思いますか?』という一文でくくられていた。
 世の中には、ヒドい男もいるものだ。
「書いといてやるよ」
 『地獄に行く』と…
「おっ、これは何モナ!?」
 今度は、机の上に置いてあった利用案内表を見つけた。
 俺のようなビギナーは、こういうのから先に目を通すべきだろう。
「へー、結構色々注文できるモナね…」
 カレーやカツ丼やピザ、パスタ、チョコレートパフェまである。
 流石に料金は高いが…
 他にも、ルームサービスは多い。
 有料だが、貸し衣装なども…
 って、コスプレ用品じゃねぇかッ!!
 何ということだ。世の中にはホテルから衣装を借りて、女に着せてハアハアする変態がいるというのか…!
「あ、メイド服とセーラー服と巫女衣装をお願いします」
 俺はフロントに内線電話をかけた。
 物凄く冷たい視線が俺の背中に注がれているが、気にしないでおこう。
 問題は、どうやって着せるかだ。
「あっ、プレステもあるモナね」
 ソフトは、ぷよぷよとバイオハザード3… まあ、古いのは仕方がないか。
 俺はテレビをつける。
「リナー、対戦しないモナ?」
「…私達が何しにここへ来たのか、分かってるのか?」
 またもや睨まれてしまった。
 仕方がないので、バイオハザード3でもやるか。
 久し振りなんで、感覚が掴めない。さっそくゾンビに齧られる俺。
 即効でゲームオーバーとなった。
「あー、腕が落ちてるモナね…」
 ふと見ると、リナーがじっとこちらを見ていた。
「やりたいモナ?」
 こくこくと頷くリナー。
 俺は、リナーにコントローラーを渡した。

403:2003/12/24(水) 13:38

「くっ… この…! ああっ!!」
 あっという間にゾンビに齧られてゲームオーバーになるリナー。
「最初の方は、あんまりゾンビを相手にせずに逃げた方がいいモナよ」
 俺はアドバイスする。
「この私が、ゾンビごときに後ろを見せろと言うのか!」
 もう一度、ゲームスタートするリナー。
 だが、同じ所でゲームオーバーになった。
「こんな屈辱、コティングレー村での戦闘以来だ…!」
 本気だ。
 リナーが本気になっている。
 リナーの方こそ、何しにここへ来たのか忘れてしまったようだ。
「あっ! カラオケセットモナ!!」
 俺はカラオケセットを発見した。
 だが、この壁の薄さじゃ隣に丸聞こえじゃないだろうか。
 それでも…歌いたいッ!
「リナー… カラオケしてもいいモナ?」
 リナーはゲームに没頭している。
 返事がないという事は、異論がないという事だろう。
 よし。
 俺は、ユニコーンの名曲、『大迷惑』をリモコンで入力する。
 そして、マイクを握り締めた。


          @          @          @


 女は、ラブホテルなるものを使用するのは今回が初めてだった。
 パネルで部屋を選ぶのも、鍵を受け取るのもみんな男の方がやってくれた。
「ごめんね。こういう所初めてだから、どうしていいのか分からなくて…」
「俺だって初めてだぞ、ゴルァ!」
 男はそう言った。
 実は、男の方は以前から遊んでいるという噂があった。
 事実そうなのだろう。彼は、典型的なモテる男なのだ。
 だが、女はそれでいいと思っている。
 例え過去に何があろうが、今現在自分を愛してくれるならば、それで構わない…
「ほら、呆けてないで部屋に行くぞ、ゴルァ!」
 男は力強く言った。
 狭いエレベーターへ乗り込み、3階で降りる。
 女は、先を進む男の後をついていった。
 やはり、この男の仕草からはホテルを使い慣れているという印象を受ける。
 それでも、女はこの男の言動を信じようと思う。
 彼がホテルへ来たのが初めてと言ったのなら、それが真実なのだろう。

404:2003/12/24(水) 13:38

 男は部屋のドアを開けて、女を先に導き入れた。
 そして、ドアを閉める男。
「一旦入るとチェックアウトまで外出はできないから、ドアは開けるなよ。
 ルームサービスは横の小窓から受け取ればいいから。あ、風呂に湯を張ってくるわ」
 男は、バスルームに姿を消した。
「思いっきり使い慣れてるんじゃない!!」
 怒鳴り声を上げる女。
「うおお!?」
 バスルームから男の動揺した声が響いた。
 慌てて駆け出してくる男。
「分かった、分かったから落ち着け!」
「…」
 女は、男を睨みつける。
「やっぱり、ギコ君が遊び人だってのは本当だったんだね…」
 男は、否定しても無駄だと悟った。
「…確かに、お前と付き合う前までは遊んでたと言っても間違いじゃない。
 でも、お前と付き合ってからは違うぞ! 俺は浮気なんて絶対にしない!!」
「…本当に?」
 女は、首を30度傾けて言った。
「本当だぞゴルァ! そもそもさっきホテルに来た事がないって言ったのだって、
 お前を心配させたくなかったからだ!」

『ま〜くらが♪ 変わっても〜♪ や〜っぱり♪ するこた同〜じ〜♪』

「ギコ君…」
 女は、男の瞳を真っ直ぐに見つめた。
 その目には、一点の曇りもない。
「これは誓って本当だぞ、しぃ。お前がいるなら、他の女に誘われたって突っぱねるからな」
 
『ボ〜インの♪ 誘惑に〜♪ 出来〜心♪ 三年二ヶ月の…いわゆるひーとりたびーイェイ イェイ イェイ イェイ♪』

「…ありがとう」
 女は、目に涙を浮かべた。
「あっ、おい… 泣くことないだろ、ゴルァ!」

『この悲しみをどうすりゃいいの♪ 誰が僕を救ってくれるの♪』

 男は、女を抱き寄せた。
「…あっ!」
 女は、涙で濡れた目で男を見上げる。
 男は微笑んで言った。
「もう、お前を泣かせたりなんてしないから…」

『僕が寛一♪ 君はお宮♪ まさにこの世の大・迷・惑!』

「テメェが迷惑なんだよッ!! ゴルァ――――ッ!!!」
 男は、壁に思いっきり蹴りを入れた。
 せっかく、いい雰囲気だったのに…
「全く…ホテルに来てまでカラオケなんてしやがって…!」
「えっ! カラオケあるの!?」
 女は嬉しそうな声を上げた。
「あ、ああ…」
 困惑して頷く男。
「ギコ君! デュエットしようよ!」
 はしゃぎ出す女。
 まあ、機嫌が直ったのだから文句はない。
 男はベッドに腰を下ろして、いつものように備え付けの灰皿を自分のカバンに入れた。
「ちょっとギコ君… 今、何したの?」
 男はきょとんとした表情を浮かべる。
「え? ホテルに来た時は、戦利品に灰皿ガメるようにしてんだけど…」
「そう…」
 女は殺気を放ちながら、男に近付いていく。
「ま、待て! とにかく落ち着け!」
 慌てふためく男。
「一つ、教えてあげる…」
 女は呟く。
「『落ち着け』なんて言われて落ち着く女、この世にいないわッ!!」
 女の鉄拳が、男の顔面に炸裂した。

405:2003/12/24(水) 13:38

          @          @          @


「うおっ!! 何モナ!?」
 隣の部屋から、何かすごい音がした。
 俺はマイクを机に置く。
「リナーも確かに聞いたモナね?」
「ああ。だが、私が監視しているのは、あくまで真上の406号室だ。隣の部屋は関係ない」
 監視してるって…、ずっとゲームしてたじゃないか…
「ゲームをしながら監視してるんだ…!」
 少しリナーはムキになっている。
「でも、凄い音だったモナよ…?」
 仕方ないので、俺は話を最初に戻した。
「そんなに気になるなら、『アウト・オブ・エデン』で視てみたらどうだ?」
「隣の部屋を視るって…。いくら何でも、この場所でその行為は人としてマズいモナ…!」
「なら、黙っててくれないか。せっかくいい所まで行ったんだ」
 リナーは再び画面と向き合った。
 …まずい。
 これは、余りにもラブ分が不足している。
 よし! ここは、ラブラブな歌を歌わなければ…!
 『愛』の歌と言えば、アレしかない。

 俺は、コードを入力した。 
 カラオケのモニターに、題名が映し出される。

『哀・戦士』

チャララランラララ♪
チャララランラララ♪
チャララランラララ♪
チャラララララララ…

「あいー♪ ふるえーる、あいー♪」


          @          @          @


「それは、別れ唄ー♪」
 隣から流れてくるメロディに沿って、俺は呟いた。
 よし、8連鎖。
 しぃの側の画面に、大量のお邪魔ぷよが降り注ぐ。
「きゃぁー!」
 悲鳴を上げるしぃ。

『ひろう骨も♪ 燃えつーきーて♪ ぬれる肌もー♪』

「土にーかえるー♪」
 つい、呟いてしまう俺。
「あの…ギコ君、隣のカラオケに合わせてハミングするのやめてほしいんだけど…」
「あっ、悪い…」
 俺は思わず口を押さえた。
 今度は5連鎖。
 それでも、トドメを刺すには充分だ。
「ひどーい!」
 しぃが声を上げた。
「悪いな… 勝負の世界は非常なんだ」
 勝負である以上、手を抜くわけにはいかない。
 しぃはコントローラーを床に置くと、俺の方を見て言った。
「で、おフロはどうするの?」
「俺は後でいい」
「それじゃ、先に入らせてもらうね…」
 しぃがバスルームへ消えていった。

 腹が鳴った。
 利用案内表を手に取る。
 多少高いが、腹が減ったので仕方がない。
 カツ丼でも頼むか…
 あと、しぃのためにチョコパフェも頼んでおくことにしよう。
 ふと、レンタルコスプレコーナーに目が行った。
 こんなところでコスプレを頼む奴がいるとは… 馬鹿じゃないか?
「あ、カツ丼とチョコパフェ。あと、ナース服とチャイナドレスとサンタ服お願いします」
 俺はフロントに内線電話をかけた。

 何となく、カラオケセットが目に付く。
 しぃが出てくるまで、一曲行くか。
 どうやら俺とした事が、隣で歌っている馬鹿に触発されたようだ。
 コードを入力し、マイクを手に取った。
 流れてくる、うねるようなイントロ。

「You built me up with your wishing hell… I didn't have to sell you…」


          @          @          @

406:2003/12/24(水) 13:39

「オイ!! カラオケガ アルゾ!!」
 好奇心旺盛なつーは、目ざとくカラオケセットを発見した。
「そんなのはいいから、これからの計画を練るんだからな!」

「じゃあ、私が歌おっと!」
 レモナはマイクを手にとって、コードを入力した。

「あんまりソワソワしないで♪ あなたはいつでもキョロキョロ♪
 よそ見をするのはやめてよ♪ 私が誰よりいちばん好きよ♪」

「って、何で歌ってるんだ!!」
 モララーが大声を上げる。

「星たちが輝く夜ふけ♪ 夢見るのあなたの全て♪」
 レモナは、モララーの叫びに構わず歌い続けた。

「アイシテモアナタハ シランプリデ♪ イマゴロハダレカニ ムチュウ♪」
 いつの間にか、マイクを手にしているつー。

「ああー♪ 男の人ってー♪ いくつも愛を持っているのねー♪
 ああー♪ あちこちにバラまいてー♪ 私を悩ませるわー♪」
 モララーはポーズをつけながら熱唱した。

「あんまりソワソワしないで♪ あなたはいつでもキョロキョロ♪
 よそ見をするのはやめてよ♪ 私が誰よりいちばん好きよ♪」
 そして、綺麗にハモる三人であった。


          @          @          @


『あんまりソワソワしないで♪』

「…あなたはいつでもキョロキョロ♪」
 俺はつい口走った。
「悪いが、隣のカラオケに合わせて歌うのは止めてくれないか?」
「ハッ! すまないモナ…」

『Our antichrist is almost here…』

 逆側から、渋い歌が聞こえてくる。
「…it is done!」
 また、つい言ってしまった。
「ホテルって、騒がしいところモナね…」
「まあ、この時期だからな」
 リナーは、画面から目を離そうとしない。
 カラオケにも飽きたので、俺は部屋中を物色し始めた。
 変なガウンが目に入る。
 こんな妙なもの、着る奴がいるんだろうか。
 キバヤシのセーターより趣味が悪い。

「…おっ!?」
 どうやら、注文したコスチュームが届いたようだ。
 俺はメイド服とセーラー服と巫女衣装を受け取って、リナーをチラリと見た。
「私は着ないぞ…」
 全てを拒絶するリナーの冷たい目。
 強要すれば命に関わる。
「いいモナよ! モナは、自分で着る為に頼んだモナ!」
 俺は泣きながら虚勢を張った。

「肩が凝ったな…」
 リナーはコントローラーを置いた。 
 チャーンスッ!!
「ゲームに慣れてないのにやり過ぎるからモナ。じゃあ、モナが肩を揉んであげるモナ…」
 俺は、素早くリナーに接近した。
「そうか、悪いな」
「じゃあ、そのままじゃ揉みにくいんで、これを着るモナ」
 俺はメイド服を差し出した。
「…」
 殺気のこもった目で睨まれる俺。
「じょうだん! じょうだんだってばさあリナーさんッ! ハハハハハ…」
「次にやったら、君が泣くまで殴るのをやめないからな…」
 リナーは、こちらを睨み続けている。
 仕方ない。
「じゃあ、普通にマッサージするモナ…」
 俺はヨダレを抑えて、リナーの背後に回った。

407:2003/12/24(水) 13:39

          @          @          @


 注文していたカツ丼とチョコパフェ、そして衣装が届いた。
 ちょうど、しぃも風呂から上がったところだ。
 しぃは、ホテル備え付けの変なガウンを着ていた。
「なあ、これ着てみないか」
 俺はサンタ服を差し出す。
 しぃの冷たい目線。
「いや、決して他意はなくて…! その、今日はクリスマスだから…!」
 俺は慌てて弁解する。
「そうだよね。クリスマスだから、サンタの格好なんだよね。一瞬、ギコ君が変なマニアかと思っちゃった」
「もちろんだ、俺がコスプレマニアな訳ないだろ、ゴルァ…!」
 俺は、ナース服とチャイナドレスを身体の後ろに隠した。
「そうだよね、アハハハハ…!」
「そうだぜ、ギコハハハ…!」
 部屋はほがらかな笑いに包まれ…

「――じゃあ、後ろに隠した物を出しなさいッ!!」
 しぃは立ち上がって叫んだ。
「待てッ! これは違うんだ…!」
「何が違うのッ!?」
 しぃは、俺を睨みつける。
 俺は観念して、チャイナドレスとナース服を前に出した。
「…じゃあ、これ着てみるね!」
 しぃは3着のコスチュームを手に取ると、バスルームに消えていった。
 何だ、結局着たかったんじゃないか…
 俺は、バスルームの方を眺めてニヤニヤしていた。


          @          @          @


「誰よッ! ハートの8止めてるのはッ…!」
 レモナは手札を握りつぶす勢いで叫んだ。
「そういう事を言い出す当の本人が、止めてる事が多いんだからな」
 モララーは呟く。
「あんたでしょ、つー!!」
 レモナはキッとつーの方を睨みつける。
「サァテ… ナンノコトヤラ…」
「大体、最初からおかしかったのよッ! 6を3枚も持ってるなんて…! 配る時イカサマしたでしょうッ!!」
 大声でまくしたてるレモナ。
「バレナキャア イカサマジャ ナインダゼ…」
 つーはレモナを凝視して言った。
「今に見てなさい…、私だって、いつまでも笑ってないんだから…!」
「どうでもいいけど、レモナの番だよ」
 モララーが促す。
「…パス」
 レモナは悔しげに呟いた。
「アヒャ! モウ アトガナイナ!!」
 その言葉を受けて、レモナはつーを睨んだ。
「このままじゃ、終わらせないから…!」
 モララーはため息をついた。
「あンた、背中が煤けてるぜ…」
 今度は、モララーを睨みつけるレモナ。
「もう、みんなして…」
 その時、レモナの耳に信じられない音声が入った。

『そう。そこ…』

 ――今の声は…!
「ちょっと! 今の声は!!」
 レモナは叫ぶ。
「マケソウダカラッテ、ウヤムヤニ スルキカ?」
「そうだぞ、男らしくないぞ?」
 モララーとつーは取り合わない。
「いいから、少しだけ黙って…!」
 何か不穏なものを感じたモララーとつーは、大人しく口をつぐんだ。

『ウィンウィンウィン…』
『そこだ… いいぞ…』
『ウィンウィンウィン…』
『そう… 意外に上手だな…』

「このヒワイな声は…、モナーくん!?」
 モララーは驚きの声を上げた。
 そして喘いでいる方の声は、リナーに間違いない!!
「どうするッ!!」
 モララーが大声を上げた。

「言うまでもないわ!」
 レモナは背中から張り出した砲塔を壁に向ける。
「ブチヤブッタ シュンカンニ、オレガ キシュウヲ カケルカラナ…!」
 戦闘態勢に入るつー。
「なら、僕が中距離からアシストするよ! 『アナザー・ワールド・エキストラ』!!」
 スタンドを発動させるモララー

「行くわよッ!!」
 壁に向けて粒子ビームを放つレモナ。
 その薄い壁は、一瞬で吹き飛ぶ。
 そこで目にした光景に、三人は固まった。
 モナーは、リナーの肩を揉んでいたのだ。

408:2003/12/24(水) 13:40

          @          @          @


 俺は、呆然としていた。
 突然壁がぶっ壊れたと思ったら、そこにレモナ、つー、モララーの三人が立っていた。
 状況がさっぱり分からない。
 何故か、向こうも呆けているようだった。

「ホテルまで来て… 何やってるの?」
 レモナは言った。
「え? 肩が凝ったっていうから、マッサージを…」
 俺は、かろうじて質問に答える。
「普通、ホテルに来てやる事は一つだろ…?」
「オレタチモ ヒトノコト イエナイケドナ! アヒャ!!」
 モララーは『アナザー・ワールド・エキストラ』を発動させている。なんで戦闘態勢なんだ…?
「いや、そうしたいのはヤマヤマなんだけど…」
 俺は答える。


「(モララー君、この気マズいシチェーションをどうするの!?)」
「(アトノ フォローハ ドウスルンダ…?)」
「(仕方ない、強行手段だ…!)」
 三人は何やらヒソヒソと話している。
 …と思ったら、リナーの方へ突っ込んできた。

「行くぞ!」
 走ってくる三人の身体が重なって、一人に見える。
 先頭にレモナ、その後ろにつー、一番後ろにモララーだ。
「…」
 リナーはジャンプしてレモナの攻撃をかわすと、つーの頭を踏みつけた。
「オレヲ フミダイニシタ…!?」
 そのまま、バヨネットでモララーに切りかかる。
「うわっ!」
 『アナザー・ワールド・エキストラ』でバヨネットでの突きを防ぐモララー。
 リナーはその勢いでモララーの顔を掴むと、壁に向かって投げつけた。
 壁を突き破り、隣の部屋まで突っ込んでいくモララー。
 とうとう、よそ様の部屋にまで迷惑をかけてしまった。


          @          @          @


 ナース服を着たしぃが、バスルームから出てきた。
「おお、なかなか似合ってるな…!」
「そうかな…?」
 嬉しそうにくるりと回るしぃ。

 その時、隣の部屋から轟音が聞こえた。
 そして、人の怒鳴り声。

『ホテルまで来て…!』
『肩が凝ったっていうから…!』
『普通、ホテルに…!』

「ギコ君、ホテルって怖い所だね…」
 しぃは呟く。
「ここ、普段は静かなホテルなんだがな…、とりあえず、風呂入ってくるわ」
 俺は、バスルームに向かった。
 服を脱いで、カゴに叩き込む。
 その瞬間…

 ボゴォッ!!

 という轟音がした。すぐ近くだ。
 同時に、「きゃあああぁぁーッ!!」というしぃの悲鳴。
 俺は咄嗟に飛び出そうと思ったが、しぃの前にフルチンで出て行くわけにもいかない。
 まあ、どうせさらす事になるとはいえ…
 ハンガーで吊るしてあった服をとっさに羽織ると、俺はバスルームを飛び出した。

 腰を抜かしてへたばっているしぃ。
 壁には大きな穴が空いていて、誰かが倒れている。
 何と、そいつはモララーだった。

409:2003/12/24(水) 13:40

          @          @          @


 即効でモララーをぶっ飛ばしたリナー。
 だが、レモナとつーを二人同時に相手にするのはキツ過ぎる。
 リナーは言った。
「お前達二人が私を倒したところで、その後どうする気だ…?」
 レモナとつーが顔を見合わせる。
「…同盟関係も、ここまでのようね」
「オウ! ノゾムトコロダ!」
 対峙するレモナとつー。
 その刹那、レモナの拳がつーの顔面にヒット。
 つーの爪もレモナの腹に突き刺さっている。
「グハッ…! ガハ…! ネカマァッ(レモナ)!!」
「がっはァ! もうガマンできないってか!! 性別不詳(つー)!!」
 なんと、レモナとつーは同士討ちを始めた。

 リナーは、スカートからバヨネットを取り出した。
「さて、殺るか。化物を打ち倒すのは、いつだって人間だ…!」
 戦っている2人に、リナーが突っ込んでいく。
 2対1の不利な状況が、三つ巴の戦いになったのはいいが… もう収束不能だ。
 俺は部屋から飛び出すと、非常ベルを押した。
 その後、隣の部屋へ飛び込む。
「ちわ〜ッス。お楽しみのとこすみませんが、邪魔者を回収しに来たッス〜!!」
 つかつかと部屋に踏み込むと、明らかに見覚えのあるサンタと看護婦を無視して、倒れているモララーに往復ビンタをかました。
「うん…、僕は…?」
「ホラ! 起きるモナ!!」
 ゆっくりと起き上がるモララー。
「『アナザー・ワールド・エキストラ』!!」
 モララーは起きるなりスタンドを出した。
「モナー君は渡さないからな…!!」
 モララーは、叫びながら三つ巴の戦いの真ん中に突っ込んでいった。
 とりあえず、俺もモララーがブチ開けた壁の穴を通って306号室に戻る。

 轟音がした。306号室の床の真ん中に、大穴が開いている。
 大穴の脇で、肩で息をするリナーの姿。
「馬鹿三人は、階下に叩き落した」
 リナーはバヨネットを服にしまいながら言った。
 その大穴からは、なおも爆音と怒号が聞こえている。
 たまに、グラグラとホテル全体が揺れた。
 まだ三人は戦っているのだ。
 鳴り響く非常ベルの音。
 他の部屋からも、次々に人が飛び出してくる。
 そして、非常階段に殺到するホテルの客達。
 ホテル中は大混乱だ。

410:2003/12/24(水) 13:40

「こうなったら、混乱に乗じて当初の目的を達成する。モニカのいる406号室に乗り込むぞ!!」
 本当に今さらといった感じだが、それがそもそもの目的なのだ。
 しかし、そう言ったリナーは306号室を名残惜しそうに見ていた。
「すまない。やり残した仕事がある。先に406号室に行ってくれないか? すぐに私も駆けつける」
「まさか、まだゲームをするつもりモナ…?」
「君は、私を何だと思っている? 遊興に流されて、目的を見失ったりはしない!」
 途中で思いっきり見失っていた気もするが、それに突っ込んでも始まらない。
「分かったモナ! 先に行くモナ!」
 俺はリナーにそう告げて、走り出した。
 エレベーターは止まっている。
 俺は、非常階段を駆け上がった。
 突然、携帯が鳴った。
 出ている余裕などない… が、一応誰からかは確かめておくか。
 ディスプレイに表示されている名前は… しぃ助教授!?
「もしもしモナ!」
 俺は電話に出た。
「あっ、モナー君。さっき、『異端者』がモニカのスタンドについてASA本部に照会しましたよね…?」
「そうモナ!」
 そして、今から接触するところだ。
「やっぱり。そうすると、彼女がこの町にいるという事ですか。いいクリスマスになりそうですね」
 しぃ教授は、嬉しそうに言った。
 …えっ?
 どういう事だ?
 俺はその場に立ち止まった。
「まあ、私は彼女の能力を知っちゃってるから、恩恵には預かれないんですけどね」
 恩恵を預かるってことは…
「モニカって、いいスタンド使いモナか?」
 俺は驚いて訊ねた。
「スタンドにいいも悪いもありませんよ。ただ、彼女の『サイレント・ナイト』は周囲の人に幸せを振りまく能力ですね」
 何だってー!!
 じゃあ、俺達がやった事は…?
「じゃあ、いいクリスマスを…」
 しぃ助教授からの電話は切れてしまった。
 何てことだ。モニカは無害なばかりか、幸をもたらすスタンド使いだったのか。
 とんだ勘違いだ。
 俺は急遽、306号室に戻る事にした。
 今でも、階下でレモナ、つー、モララーの三人が暴れているのだ。
 このホテルも長くはもたない。
 急がなければ。

 俺は306号室に駆け込んだ。
「来るなッ!! 来るんじゃないッ!!」
 バスルームから、リナーの叫び声が聞こえる。
 どうした!?
 ひょっとして、誰かの攻撃を受けているのか!?
「どうした、リナーッ!!」
 俺はバスルームに駆け込んだ。
 鏡の前で、メイド服を着ているリナーの姿が目に入る。
「…」
「…」
 見つめ合う俺達。
 静寂を破るように、複数のバヨネットが飛んできた。
 『アウト・オブ・エデン』で視たその数、24本。
 俺は、その内の22本に当たって意識を失った。


 目を覚ました時は、もうホテルの前だった。 
 リナーが運び出してくれたのだろう。
 周囲は、消防車と野次馬でごったがえしている。
「苦節30年… 私のホテルが…」
 泣き崩れているフロントのオバさんが目に入る。
 俺は、炎上して崩れていくホテルを見上げた。
 あの三馬鹿は、いまだに戦っているのだろう。

 何故か、俺の隣には看護婦を従えたサンタが立っていた。
「俺の服…あの中だったんだよ…」
 サンタは、悲しげな目でホテルを見上げながら言った。
「それは…災難モナね…」
 俺は呟く。
「着るか?」
 サンタは、チャイナドレスを差し出した。
 俺は頷いて、それを受け取る。
 そんな俺達に、リナーは冷たい視線を送っていた。

411:2003/12/24(水) 13:41

          @          @          @


 「こんな日に、ホテル火災に遭うなんて…」
 モニカはため息をついた。
 自分は、いつもそうだ。
 自分のスタンドが人々に幸福を与える代償のように、彼女自身は運が悪い。
 まあいい。
 他のホテルでふて寝するか…
 モニカは燃えさかるホテルを尻目に、その場を後にした。


          @          @          @


「メリー・クリスマース!!」
 俺達は乾杯した。
 どうでもいいが、なんでみんな俺の家に集まってくるんだ?
 リナーはいいとして、ギコにしぃ、レモナ、つー、モララーまでいる。
「まあ聖夜なんだし、細かい事はいいじゃないかゴルァ!」
 ギコは俺の肩をバンバンと叩く。
「まあいいけど、モナの家での性行為は控えてほしいモナ…」
「俺は動物かゴルァ!!」
 ギコに拳骨をもらう俺。
 だって、猫じゃないか…


 俺は、盛り上がる座から抜け出した。
 そして、ギコから受け取ったチャイナドレスをそっとタンスにしまった。
 タンスの中にメイド服が入っているのを目にしたが、何も見なかったことにする。
 さて… また居間に戻って馬鹿達の相手でもするか…
 廊下を歩いていると、居間から出てきたリナーにかち合った。
「今日は疲れた…寝る」
 リナーは言った。
 俺は頷く。
「ああ、今日は本当に…」
 残念だ。せっかくホテルに入ったのだから、もっと何かあってもいいだろうに。
「まったく…リナーは、ああいう場所に二人で入るって意味を分かってるモナか?」
 俺は愚痴を言った。
 軽率にホテルに入ってしまったばっかりに、三馬鹿にあらぬ誤解を受けてしまったのだ。
 そりゃ、リナーの感覚が普通の人とは違うのは分かっているが…
「それぐらい知ってるさ。了承済みだ」
 リナーは俺を一瞥すると、俺の横をすり抜けていった。
「ああいう場合、普通は男の方から行動するものだろう?」
 そう告げて、リナーは部屋に戻っていった。
 俺は… いつまでも馬鹿のように、その場に突っ立っていた。


          @          @          @


 …朝。
 俺は、居間で目を覚ました。
 あのまま馬鹿騒ぎしたあげく、眠ってしまったのだ。
 俺は身体を起こした。
 みんな、居間の至るところに転がって寝息を立てていた。
 ふと、妙なものが目に入る。
 人でも入るくらいの大きな袋が、俺の傍にあったのだ。
 …何だ、これ?
 俺は、眠い目をこすりながら袋を開けてみた。
 中には、ぐっすり寝ているリナーが入っていた。

 ウホッ! リナーの寝姿…じゃなくて、何だこれは――ッ!!
 敵スタンドの攻撃か!?
 俺は周囲を見回す。
 リナーを袋詰めにするなんて、何と猟奇的な事を…
 そこで、俺は気付いた。
 袋は一つではなかったのだ。
 俺のそばのが特に大きいから目立っただけで、寝ているみんなの傍らにも袋はあった。
 大きさは違えど、袋の質は同じ。
 俺は、ギコのそばの袋を開けて… みようとして思いとどまった。
 袋のやけに長い形で、中身が分かる。
 明らかに、刀剣のたぐいだ。
 しぃの近くの袋を開けると、指輪が入っていた。
 レモナの近くの袋には… 紙切れが一枚。その紙には、『重複』とだけ書かれている。
 つーの袋にも、モララーの袋にも、全く同じ紙切れが入っていた。
 これは… どういうことだ?
 不意に、携帯が鳴った。
 キバヤシからだ。
「もしもしモナ?」
「大変だ、モナヤ! 俺の枕元に、袋に入った「諸世紀」の原本が置かれていたんだよ!!」
「な、何だってー!!」
「俺の仮説が正しければ、サンタは実在するかもしれない…
 MMR緊急出動だ!! ノルウェーへ飛ぶぞ!!」
「行ってらっしゃいモナ」
 俺は電話を切った。
 そうか、これはプレゼントだったのか…
 俺は袋の中で気持ち良さそうに熟睡しているリナーをチラリと見た。
「Hair 2 U(君に幸あれ)…」
 俺はそう呟いた。
 聖夜は過ぎた。
 祭りの後は、寂しいものだ。
 今年も、間もなく終わる。
 だが、来年もこうして馬鹿騒ぎできれば、それで構わない…
 俺は、何となくそんな事を考えていた。


  /└─────────┬┐
. <  Merry Xmas & Hair 2 U | |
  \┌─────────┴┘

412新手のスタンド使い:2003/12/24(水) 14:19
(´-`).。oO(俺のところにもミニスカサンタこねえかなあ


とにかく乙ッ!

413新手のスタンド使い:2003/12/24(水) 14:35
乙ッ!!
モナーの欲しいものはそれか…。

414新手のスタンド使い:2003/12/24(水) 15:54
こんなに爆笑した小説は初めてです。乙!

415新手のスタンド使い:2003/12/24(水) 16:02
DQネタワロタ

416新手のスタンド使い:2003/12/24(水) 16:35
イイヨ(・∀・)イイヨ-

417新手のスタンド使い:2003/12/24(水) 17:47
合言葉はwell kill them!(仮)第五話―王牙高校の人々 後編


そして放課後・・・
なぜか俺はツー、ヅー、モララー、のーちゃん達と商店街を歩いている。
簡単に説明すると、一人で帰ろうとした所にツーが現れ『拉致』されたのであった。
そこへ他の奴らが合流して今の状態になったと言うわけだ。
そしておまけがもう一人、マララーの野郎だ。
奴は音も無く俺達の後方からやってきて、ちゃっかり合流しやがった。
まあこいつがいても何一つ問題は無い。ただの下ネタ大王なだけだから。
今俺達は暇をもてあまして茂名王町の隣町、海宮町の商店街にきている。
俺はここに来るのは初めてだが、ヅーやのーちゃんなんかがここに住んでいるので、ガイド役を任せている。
「ねえ、私達って目立ってない?」
ふいにヅーが話しかけてきた。
「ああ。」
「それもそうね。」
「だろうな。」
さっきから俺達6人にいろんな視線が飛んでくる。
今分かっている原因は二つ。
一つは俺の背負っている『篭』
もう一つがマララーの被っている「男根」とプリントされている帽子だ。
まあ、そんなことを気にしていたらきりが無い。俺達は無視を決め込んだ。
しばらく歩くとヅーが立ち止まった。
「ここ、ここ。」
そこには喫茶店「豆」という看板があった。
店内に入ると落ち着いた雰囲気の中にのなかに心地よいBGMとコーヒーの香りが漂っていた。
お客は何人かいて、カウンターに髭を生やしたマスターがいた。
「ただいまー。」
ただいま?俺の疑問が顔に出たらしくヅーが説明した。
「あ、ここ私の家なの。で、マスターがお父さん。」
「いらっしゃい。よく来たね。いやー男を連れてくるとはヅーもそんな年頃か。俺も若い頃は・・・。」
「ちょっとお父さん!」
暴走しようとしている父親をヅーが必死で止めている。
「あらどうしたの?」
騒ぎを聞きつけ、母親らしき女性が奥から出てきた。
「丁度いいところへ来た。ヅーが男を連れてきて・・・。」
「やめてー!」
ドムウッ!
「うっ!」
見事なソバットが腹部を直撃し、父親が崩れ落ちた。
「あらあら、ヅーもそんな年頃に・・・。」
「わー!」
顔を真っ赤にして今度は母親を止めに入る。
おいおい、ヅー。お前のとこの両親はこんなのなのか?
うちの親父にはかなわないがタチ悪い。
「・・・・おいアヒャ。」
いきなりツーが話しかけてきた。
「帰りたくなった。」
「俺もだ。」
「「はあ。」」
二人そろってため息をついた。
モララー達はいじけて席でメニューを選んでいた。いつのまにかでてきたブラッドも一緒だ

418新手のスタンド使い:2003/12/24(水) 17:50

騒動が収まり、ヅーの両親達も交えて俺達は雑談をしていた。
「そういえばツー君。アヒャ君は中学のときどんなだった?」
のーちゃんがツーに尋ねる。
「ああ、今も昔も変わらずってとこかな。」
「ソレで終わりかよ俺の紹介はよお〜。」
まったく。もっと話すことはあるだろうに。
その時ツーの目が妖しく光った。いやな予感がする・・・。
「こいつ中学のとき文化祭のミスコンに女装で飛び入りで参加して優勝したことがあるんだぜ!」
「ええええええーーーーー!!!!」
異口同音、全員が驚きの声を上げ、俺は人生の汚点とも言うべきあの事件を思い出し、あの日の自分を呪った。
「ほれ、これが証拠写真。」
「嘘?」
「ほう。」
「可愛い!」
「おお。」
「最高に萌えってやつだ!」
みんながそれぞれの反応を示す。
「何で、んなモン持ってんだーーーーー!!!!」
俺の怒号が店内に響く。
「え?ネタのため。」
ツーはあっけらかんと答えた。
「うう、俺のキャラがどんどんだめな方向に・・・あの日の俺の馬鹿ぁ。」
俺は床でいじいじといじけた。
「・・・でも可愛い。」
本心か(絶対本心だ。)ヅーが誉めてくれた。全然嬉しくない。
「いや〜あれは文化祭のノリと空気に理性がのっとられて〜。」
「でも自分から参加したんでしょ?」
「・・・はい。」
俺はへなへなとその場に崩れ落ちた。
あの占いはきっとこのことを暗示していたんだな・・・・。

ほい、証拠写真。

   /川川   
  ∠|| ゚∀)
   ∪─⊃  
 ⊂/_____|
   ∪∪

419新手のスタンド使い:2003/12/24(水) 17:51
夕方。俺は家の近くにある首吊りの大銀杏の木の下で物思いにふけっていた。
ここからの夕日がまた美しいのだ。
「やれやれ・・・。まさかあの事がばれるなんてね・・・。」
今日はまた随分と喋って笑ったな。
こんなに笑ったのも久しぶりだ。
「ふ。」
俺は自分の考えに自嘲した。
俺もこんなことを考えるようになるとはな・・・ま、それも悪くない。
そう思い俺は家へと急いだ。


  /└────────┬┐
. <   To Be Continued... | |
  \┌────────┴┘

420新手のスタンド使い:2003/12/24(水) 18:34
乙。
今日は新作ラッシュだー(´▽`)ノ

421新手のスタンド使い:2003/12/24(水) 19:09
リナーを見ると某錬金術漫画の顔に傷がある人を思い出す

422新手のスタンド使い:2003/12/24(水) 19:29
俺はアニメにもなったシスターと悪魔が悪魔と闘う某漫画を思い出す。
まあ服の十字と銃大量に持ってるってところくらいしか共通点無い気もするけど。

423新手のスタンド使い:2003/12/24(水) 19:34
>>422 自分もそう思うんだが何でだろう?

424新手のスタンド使い:2003/12/24(水) 19:43
>服の十字と銃大量に持ってるってところくらいしか共通点無い

よく考えたら人にイメージを連想させるにはこれで充分な気がするな。

425新手のスタンド使い:2003/12/24(水) 20:43
なるほど、そう言われるとそうだな
そこにきずくとは流石だな>>424

426新手のスタンド使い:2003/12/24(水) 22:07
誰かリナーを書いてください
想像できない訳じゃないけどいちよう…

427新手のスタンド使い:2003/12/24(水) 22:36
絵の事か?

428新手のスタンド使い:2003/12/24(水) 22:36
リナーハァハァ (´Д`*)


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板