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スタンドスレ小説スレッド

1新手のスタンド使い:2003/11/08(土) 01:58
●このスレッドは『 2CHのキャラにスタンドを発現させるスレ 』の為の小説スレッドです。●

このスレでは本スレの本編に絡む物、本スレ内の独立した外伝・番外編に絡む物、
本スレには絡まないオリジナルのストーリーを問わずに
自由に小説を投稿する事が出来ます。

◆このスレでのお約束。

 ○本編及び外伝・番外編に絡ませるのは可。
   但し、本編の流れを変えてしまわない様に気を付けるのが望ましい。
   番外編に絡ませる場合は出来る限り作者に許可を取る事。
   特別な場合を除き、勝手に続き及び関連を作るのはトラブルの元になりかねない。

 ○AAを挿絵代わりに使うのは可(コピペ・オリジナルは問わない)。
   但し、AAと小説の割合が『 5 : 5 (目安として)』を超えてしまう
   場合は『 練習帳スレ 』に投稿するのが望ましい。

 ○原則的に『 2CHキャラクターにスタンドを発動させる 』事。
   オリジナルキャラクターの作成は自由だが、それのみで話を作るのは
   望ましくない。

 ○登場させるスタンドは本編の物・オリジナルの物一切を問わない。
   例えばギコなら本編では『 アンチ・クライスト・スーパースター 』を使用するが、
   小説中のギコにこのスタンドを発動させるのも、ギコにオリジナルのスタンドを
   発動させるのも自由。

 ★AA描きがこのスレの小説をAA化する際には、『 小説の作者に許可を取る事 』。
   そして、『 許可を取った後もなるべく二者間で話し合いをする 』のが望ましい。
   その際の話し合いは『 雑談所スレ 』で行う事。

114N2:2003/11/16(日) 15:21

 その隙を、「オレ」は逃さない。

 「クラァ!!」
 背後から、強烈なパンチが命中。相棒の身体は、呆気なく吹き飛んでゆく。
 体制を取り直し、すぐさま振り返ると、そこに立っているのはオレであった。
 「馬鹿なッ、貴様はたった今『バーニング・レイン クラッシュアウト』で…」
 「危なかったよ…。放射能が来るのと同時に、自分を『原子』に分解しなかったらやられてた。流石に力使うな、コレは…」
 相棒の表情に絶望の色が浮かぶのが手に取るようによく分かる。
 当然だ。取って置きの技を破られたとあっては、自信も何もあったもんじゃない。

 …だが、それでもまだ目が勝負を捨てていない。
 お互い睨み合いの状態が続く。
 オレも、相棒も、どちらもが先手を打てない。
 先に動いた方の負けである。

 しかし、相棒の勝利に対するハングリー精神は、彼に最後の決定的チャンスを呼び込んだ。
 何も知らぬ子供が、この公園へとやって来たのだ。
 オレがその子に逃げろ、と叫ぶ前に、相棒は行動を終えていた。
 すかさず少年へと近寄り、その「スタンド」で掴み上げる。
 突発的に起こった超常現象に、少年は完全に困惑している様子だ。
 勝手に身体が浮かび上がり、同時に喉を圧迫されるような感じがしていることだろう。
 誰か助けを呼ぼうにも、声が出せないのだ。
 「クソッ、おい、止めろ!何も関係の無い民間人をこれ以上巻き込むのはよせ!」
 今更1人2人犠牲者が増えたところで全体的には大して問題ではないのかも知れない。
 だが、その1人2人が、オレにとっては大事なのだ。

 客商売を続けていると、沢山の人たちと出会う。
 中には本当に嫌味ったらしい奴だっているけど、でもやっぱり皆良い人ばかりだ。
 そういう人達を毎日見ていると、ああ、彼らはそれぞれが「自分」として生活しているのだなと思う。
 それぞれが皆この世に生を受け、それぞれが自分の意思の下に生活する。
 時には、利害関係だって生じる。
 オレは、儲けるために、なるべく高く商品を売りたい。
 客にしてみれば、なるべく安く良い品を買いたい。
 時には喧嘩沙汰にだってなるし、それがもっと大きな人間の集団同士のものだったなら、それは戦争となる。
 だけど、オレは思う。
 自分から見た世界を全てと捉えるのではなく、自分を客観視して他人から見た世界を考えれば、
 もっといつもの暮らしというやつが楽しくなる、と。
 オレも悪徳商売人じゃないから、なるべくお客さんには良い思いをして商品を買って欲しい。
 価格面でも、サービス面でも、出来る限りの最善をいつも尽くしているつもりだ。
 そうすると、不思議とまたお客さんが寄ってくる。
 そうしてまたギリギリの頑張りをすれば、それでまたお客さんが来てくれる。
 この一連の流れが、オレには楽しいし、またとてもいとおしい。
 そうしていると、段々とこのオレ以外の「自分」達がとてもかけがえの無い、大事な物に見えてくるのだ。
 だからオレは思う。
 自分の都合云々だけでそんな「自分」を抹殺する奴は、心の底から逝ってよしだ、と。

 もう今の相棒にとっては、この子供などたまたまやって来た虐殺№○○○程度にしか思えていないのだろう。
 だが、この子にとっては、その人生はそれで全てなのだ。
 倉庫の中では、数多くの「自分」が終わりを告げた。
 それをオレは、出来る範囲で守ることも出来なかった。
 ならば、彼らへの償いにもならないだろうが、せめてこれから絶たれようとしている命だけは絶対に守るしかない!!

115N2:2003/11/16(日) 15:21

 「民間人がどうした?漏れにとってはこの世の連中は全て、『漏れ』『その他クズども』、これしかないんだぜ!?
 だったら何の関係もねえ『その他クズども』は公平に利用したって何の問題もねぇだろッ!!」
 頭の中で、何かが切れた。決定的な何かが。
 「『バーニング・レイン』ッッ!!」
 再び深呼吸し、相棒のスタンドが子供にエネルギーを流し込む。
 時間は無い。
 「クラァァッッッ!!」
 スタンドと共に、相棒へと飛び掛る。
 だが、これは相棒の計算通りであった。
 「来ると思ったぞ…。喪前なら私に飛び掛ると思っていたッ!だがな、至近距離で果たして私の『バーニング・レイン』が
 エネルギーを流し込んで肉爆弾と化したこのガキンチョを防ぎきれるかッ!?」
 そう言って、相棒は子供を勢い良くオレへとぶん投げてくる。
 すでに子供の身体には裂け目が入りつつあり、その顔は苦悶の表情を浮かべている。
 「砕け飛び散る骨の雨に突き刺されてくたばりなぁ――――ッ!!」
 だが、相棒がこうすることもオレには予想出来た。
 子供の身体が内からはじけ飛ぶギリギリ寸前、彼はオレの射程内に入った。
 間一髪、ギリギリセーフである。
 「クラクラクラクラクラクラクラクラクラァ―――ッ!」
 スタンドのラッシュを子供に打ち込む。
 「馬鹿め、自分の身可愛さにガキを殺す道を選んだか!だがな、そいつが死んだところで、
 肉爆弾の炸裂は止められはしねえぜッ!」
 「…誰がそんなことすると言った?」
 「!! ・ ・ ・ 」
 子供の身体は、もう全身が張り裂けんばかりになっていた。
 だが、血は出ていない。
 子供の表情も、先程より穏やかだ。
 「砕け散れッ!」
 その声と共に、少年の身体は「分解」された。
 ミクロレベルで分解された身体に、エネルギーは留まれない。そのまま拡散してしまった。
 「こ…の策士が…!!」
 「いよいよ、いや、ようやくサシで勝負が出来るな、ギコ」
 相棒の感情は、完全に高まりきった。
 オレの怒りも、頂点に達する寸前である。
 と、ここで相棒が急に笑い出す。
 「…喪前、本当に漏れに敵うなんて思ってんのか!?(禿藁)確かに喪前のスタンドのパワーは凄い、それは認める。
 だがな、この漏れ様の『バーニング・レイン』のスピードには全然追いついてねえんだぜッ!」
 だが、その笑いには、最早余裕が無い。
 相棒がラッシュの構えを取る。同時に、深々と、最後の深呼吸をする。
 オレもパンチを打ち込みやすい姿勢になる。

 沈黙が続く。再びどちらも動けなくなる。
 その静寂を破ったのは、あの子供であった。
 オレのスタンドによる分解が限界に達したのだ。
 どさり、と少年が着地した音を聞き、相棒は再び少年を利用しようとした。
 隠し持っていたさっきの鉄槍の先端を少年に投げつける。
 当然、オレはそれをキャッチしようとする。
 その隙を、相棒は狙っていた。
 「ゴラララララララララァ――ッ!!」

116N2:2003/11/16(日) 15:22
 
 絶対負ける筈が無い。
 そう彼は確信した。
 圧倒的スピード差。
 直接戦闘における能力の有用性。
 そしてこの状況。
 何をとってもギコには負ける要素が無い。
 だが、1つだけ彼が考えていない点があった。
 それは――――
 「クラァッ」
 鉄槍を右手でキャッチしながら、ギコ屋のスタンドの左ストレートがギコの右頬にクリーンヒットする。
 「! ! ? ?」
 (そんな馬鹿なッ、こいつのスタンドは明らかにオレよりもスピードが遅…)
 もしや、と彼は思った。
 ひょっとすると、ギコ屋は極度の興奮状態におかれたことで、スタンドが本来以上の力を出しているのではないか。

 人体は、通常はその破壊を防ぐために限界まで力が出せないようになっている。
 だが、極限状態に追い込まれる事で、その抑制が消えて爆発的な力を出したという事例は世界に数多く存在する。
 ならば、スタンドでそれが絶対に出来ないという事は無い。

 相棒がひるんだ隙を、オレは逃さない。
 「クラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラァァァァ――――――ッッ!!!!」
 「ウがアッ、バアぁァァァ――――ッ」
 苦悶の雄叫びを上げながら相棒は吹っ飛んで行った。
 椎の木に勢い良くぶつかり、そこに倒れこむ相棒。木の幹には、大きなヒビが入った。
 「こ…このDQNめ…許さん…許さんぞ…貴様は絶対に許さんッ!!」
 独り言をつぶやきながら、再び相棒が立ち上がる。
 だが、もう勝負は決まっていた。
 駆け出そうとする相棒。
 しかし、思うように身体が動いてくれない。
 つまづき、全身が痙攣する。
 地に手を付けて立ち上がろうとすると、その甲に傷が入っている。
 血は出ていない。まさか。
 「き、貴様ッ、もしやこの漏れに分解エネルギーを…!!」
 オレは何も言わない。黙ってその様子を眺めるだけだ。
 「や…止めるんだ!そうだ、この漏れにここまで善戦した喪前の強さに敬意を表し、一緒に手を組もうじゃないか!
 我々2人が手を組めば、世界征服だって決して夢じゃ…」
 やはりオレは黙っている。相棒の最後の悪足掻きを、嘲笑するかの如く見下すだけだ。
 「…………この…このちっぽけな三流商人がああああああああ」
 最後の力を振り絞り、相棒が跳びかかる。
 だが、もう限界だ。
 「Crumble(粉々になりな)」
 相棒の身体は、砕け散った。

 ふと、そこから異様な煙みたいな物が飛び出す。
 煙はよく見ると、人の顔のようにも見える。
 恐らくは、こいつが取り憑いたことで相棒もおかしくなったのだろう。
 行き場を失った霊魂は、次の憑依対象をオレに選んだ。
 しかし、沈み掛けた西日の強い光がオレと相棒の間に挟まっていた事を、こいつは知らなかった。
 強烈な光を受け、いやあるいはスタンドの分解能力がこいつにも効いていたからなのかも知れない、
 霊魂は苦しみながら崩れ散っていった。
 と同時に、相棒の身体も分解状態から解放された。
 これで相棒も元に戻ってくれるだろう。
 気が抜けたと同時に力も抜けた。オレはそのまま倒れてしまった。

117N2:2003/11/16(日) 15:22

 「ご苦労だったな、逝きのいいギコ屋君」
 例の男が、日が沈んだのを見計らってギコ屋達の前に現れた。
 尤も、その声は2人の耳には入っていないが。
 「どちらも素晴らしいスタンドだ。これ程の能力とは私も予想していなかったよ。…だがな、残念な事に、君らは強過ぎる。
 今後成長して私の脅威と十分に成り得る存在だ。実に惜しいが、ここで死んで貰おう」
 男はまずギコ屋の方へと歩き出した。
 横たわるギコ屋の前へと辿り着き、スタンドを発現する。
 「『アナザー・ワールド』…」
 男はここで躊躇した。
 実際、ギコ屋のスタンドはここで殺すには実に惜しい。
 いっそのこと、両方に今度は強烈な洗脳を施してもいいと初めは思っていた。
 その為に、ギコを彼の前へと差し向けたのだ。
 しかし、取り憑かせた霊が悪かった。
 悪霊はギコの能力を極限まで引き出し、暴走させた。
 その引き出された能力の奥深さに、男は危機感を覚えた。
 ならば、いっそのことこの2人にはそもそも会わなかったも同じにしてしまった方が余程精神的には楽である。
 「さらばだ、ギコ屋!お前は『磔刑』だあああ――――ッ」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 (ドォ――――――ン)
 周囲の風景が暗転する。
 男は空中に停止し、他の全てのものも動きを止める。
 大柄の男が2人の間に入り込み彼もまたスタンドを発現させる。
 「オラオラオラオラオラオラオラオラオラァ―ッ!」
 「そして時は動き出す」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 ふと、男の視界から急にギコ屋が消えた。
 (そんな馬鹿な?奴には瞬間移動の能力など無い!それ以前にそもそも意識が…)
 だが、おかしなことはそれだけではない。
 天が下に、地が上に見える。 
 こんな姿勢で跳んだ覚えは無い。
 そして、少しずつ湧き上がる痛み。
 飛び散る血の雫。
 遠ざかっていくギコ屋。彼は動いてはいない。
 この事から導き出される答えは1つだけであった。
 「そんなッ、まさかッ!攻撃されて吹き飛んでいたのはッ!!私の方だったああああ――――ッッ!!!!」
 地面に落ち、そのまま転がり木にぶつかってようやく動きが止まる。
 向こうに見えるのは、大柄な男であった。顔には見覚えがある。
 「空条モナ太郎ぉ――ッ」
 モナ太郎は男の叫びには耳を傾けなかった。
 「やれやれ、財団の調査で『矢』があると聞きつけて来てみれば、まさか吸血鬼までいるとは、な…」

   /└────────┬┐
. <   To Be Continued... | |
  \┌────────┴┘

118:2003/11/17(月) 22:58
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      「モナーの愉快な冒険」
       影・その1
       
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これは夢だ。
遠い遠い世界。
遥か遥か昔。
目が冴えてくる。
夢にもかかわらず目が冴えるとは妙な話だが、目が冴えるには違いない。
そう、今は約100年前の異国。
おそらく大英帝国。
高級感の漂う部屋だ。
だが薄暗い照明のせいで、高級さは打ち消されている。
時計の音がやけに大きく聞こえた。
そんな部屋で、二人の人間が話している。

「『最強』とは、どういう意味か――――――」
不意に、男は訊ねた。
「どういう意味でもなく、最強なのが『最強』たる所以。そうではないですか?『破壊者』よ」
青年は微笑を浮かべながら答えた。
なぜだろう、俺はこの青年の顔に見覚えがある。
十字が刻印されたロングコートに覚えがある。
「それを、あえて答えてみようという趣向だよ…」
『破壊者』と呼称された男は、皮肉な笑みを浮かべて言った。
少しの間。
時計が時間を刻む音。
『破壊者』が口を開く。
「例えば―――――全てを破壊する、力」
「否」青年は答えた。 「偏に破壊のみの力など、『最強』には程遠い」

「例えば―――――人智を超えた、速さ」
「否」青年は答えた。 「それにも限界がある。物理的制約を受ける限り、『最強』とは言えない」

「例えば―――――鋼の如き、生命力」
「否」青年は答えた。 「しょせん片翼の盾、『最強』と呼ぶに足りない」

「例えば―――――誰をも及ばない、能力」
「…否」青年は答えた。 「「誰をも及ばない」と限定した時点でダブルスタンダード。その解は成立しない」
そして、大きく息をついた。「だが、真理には最も近い」

「『最強』の能力――レクイエムか…」
『破壊者』は呟く。
しかし、青年は首を横に振った。
「だが、矢に二度も審判を仰ぐとは…馬鹿げている。
 まして、あれは魂に作用する力。即ち『最強』か… とは、少し違う」

「なら… 何をもって『最強』とする?『蒐集者』よ」
『破壊者』は、最初と同じ問いを投げかけた。
間。
無慈悲な時計の音が、部屋に響き続ける。

「永遠――――」
青年は口を開いた。
「『最強』とは、『永遠』を内包している…」
青年はそう断言した。

「『永遠』か、…それも、まだ命題に過ぎん」
『破壊者』は言った。 「死を超越した『永遠』は本当に存在するのだろうか?」
「それは、司教として? それとも、代行者としての問いですか?『破壊者』… いや、我が友ブラムよ…」
青年は笑顔を見せた。
幼ささえ感じさせる笑み。
「もちろん、友人としての問いだ」
『破壊者』は、青年から危うささえ感じ取った。

しばしの沈黙。
『破壊者』は、青年に問いを投げた。
「『永遠』が存在するとしたら、君はあえてそれを手に入れようと思うかな?」
「かもしれませんね。魂を失わないですむのなら…」
青年は微笑んで言った。

―――――嘘だ。
―――――それは嘘だ。

彼は既に魅入られていたのだ。
彼は、其を手に入れ―――そして、失った。

119:2003/11/17(月) 22:59

目が覚めた。
小鳥がさえずっている。
ベッドから身体を起こし、時計を見た。
午前7時30分。普段起きる時間をとうに過ぎていた。
俺はゆっくりと体を起こす。
胸に激痛。
傷は塞がっているものの、痛みはある。
ヨロつきながら、ベッドから出た。
急がないと、学校に遅刻する。
ふと、鏡を見た。
胸に、大きな傷跡。
じぃに空けられた胸の穴。
傷自体は治っても、この傷跡は一生残るだろう。
「は、はははは…!!」
突然、笑いが漏れた。
俺は何をのうのうと生きているんだ?
殺人鬼が、学校に遅刻だって?
笑える冗談だ。
だから、笑い飛ばそう。
腹が空いた。
早く、朝食を食べないと。

階段を降りるだけで、胸に激痛が走った。
いかに重要器官に損傷はなかったとはいえ、あれだけの傷が一日で塞がるはずがない。
通常なら、入院ものだろう。
その俺がある程度動けるのは、リナーのおかげだ。
もっともリナーは「君自身の自然治癒力を活発にしただけで、私が傷を治した訳ではない」と言っていたが。
これがリナーのスタンド能力なのだろうか。
腹が鳴る。昨日は動き回った後、何も食べていない。
俺はキッチンまで急いだ。

キッチンにはリナーがいた。
「もう傷は良さそうだな」
無表情のままリナーは言った。
「なんとか動けるモナ。ありがとうモナ」
俺は礼を言った。
「そう言えば、ガナーは?」
「もう学校に言った。部活の練習と言っていた」
どうやら、妹の腹痛は治ったようだ。
俺は椅子に座ると、ちょっと冷めたトーストを口にした。

昨日、リナーに俺は殺人鬼であることを告げられた。
正確には、殺人を繰り返していたのは、俺の中にいるもう一人の俺だった事を指摘された。
それを告げられた時、リナーに殺されることを覚悟した。
だが、リナーはこう言ったのだ。
「君には恩がある。殺したりはしない」
俺は、驚きの表情を浮かべていたと思う。
その俺を、リナーは呆れた顔で見た。
「そこまで恩知らずじゃない。私を何だと思っているんだ?」

そして、リナーは俺をこう擁護した。
俺ともう一人は、身体を共有しているだけの他人な事。
だから、俺が罪の意識を感じるのは筋違いな事。
「君は、人を殺したいとは思わないだろう?」
もちろんだ。俺は大きく頷いた。
「なら、君は殺人者なんかじゃないさ。罪を犯したのは君の中の別人なんだから、
 君を責める理由はない。殺したのは、君の意思ではないのだから…」
リナーはそう言った。

120:2003/11/17(月) 22:59

そう簡単に割り切れるものではなかったが、かなり楽になったのも事実だ。
そして、リナーは今まで通り俺の家に滞在する事を告げた。
まだ町に吸血鬼は残存しているためと言っていたが、俺を監視する意図もあるんだろう。
まあ仕方ない。むしろ、その方が安心できる。
町の探索も今まで通り行うらしい。
探す対象が、殺人鬼から吸血鬼に代わっただけだ。
そう、しばらくはリナーと共にいられるのだ。
日常に戻れなくなった… なんて、なんのことはない。
昨晩だけ、日常から切り取られただけだ。
俺はこれからは日常に生きていく。

「何か楽しいことでもあったのか?」
リナーは言った。
俺はトーストを齧りながら、笑みを浮かべていたようだ。
それでいい。ネガティブに考えていても仕方がない。
俺の同居人を抑えながら、リナーと楽しく暮らす方がいいに決まっている。
だが、その為には、俺自身について深く知る必要がある。
「二重人格について、教えてほしいモナ」
俺は訊ねた。
「私は専門じゃないが…」
そう前置きして、リナーは語りだした。
「二重人格というのは俗称に過ぎない。正式な診断名は「解離性同一性障害」。症例は…まあ、知っての通りだ。
 原因に関しては多因子説が主流だな。特にKluft.R.P.の4因子説とBraun.B.G.の3Pモデルがよく知られている。
 4因子とは、解離能力、外傷体験、外的影響力と内的素質の相互作用、保護や慰めの欠如。3Pというのは、
 predisposing factors(脆弱性因子)、precipitating event(促進的事件)、perpetuating phenomena(永続性現象)だ」
「…面白いほどに意味不明モナ」
「つまり、子供の時の虐待経験などが、原因になるケースが多いということだ。心的外傷にさらされている子供が、
 『これは自分に起こっている出来事ではない』『だから痛くない』と自己暗示を続けることによって、
 本来の自分とは別の人格が生まれる」
そういう話は聞いたことがある。
「別人格の役割は様々だ。孤独な主人格を慰める友人であったり、主人格の代りに痛みや悲しみをひき受けたり、
 主人格には許されないような積極さや活動性を持っていたり、主人格が戻りたい幼児期であったり、
 主人格が持つには危険すぎる攻撃性や自殺衝動を持っていたりといった具合だ」
リナーは、言葉を選んで説明しているようだ。気を使ってくれているのだ。
だが、俺は虐待を受けた記憶など全くない。

それより、俺はもっと現実的な問題に気付いた。
「モナとモナの中の人が別人で、罪を感じる必要はないといっても…
 警察とかにその理屈は通じないモナ。捕まってしまうかもしれないモナ!」
「その心配は不要だ」 リナーは断言した。
「もう一人の君は、卓越した殺人者のようだ。警察から資料を取り寄せたのだが、
 指紋・毛髪・体液等の証拠は一切なし。目撃者もなし。凶器も、鋭利な刃物という以外手掛かりなし。
 夜という以外、犯行時刻もまちまち。犯罪生活曲線も不安定。どのアプローチからの接触でもお手上げらしい」
そうか。
俺は安堵のため息をついた。
素直に喜んでいいのか微妙だが、それでも捕まるよりはいい。
そんな話をしている間に、8時を回っていた。
このままでは遅刻してしまう。
「じゃ、行ってくるモナ!」
俺はそう言って家を出た。

121:2003/11/17(月) 23:00

教室に飛び込んで席についた。
案外、早く着いてしまった。
胸の痛みをこらえて走った甲斐がない。
先に来ていたギコが話しかけてきた。
「よう。モナー」
「おはようモナ」
「で、昨日の夜は、ちゃんとじぃとの約束を守ったんだろうな」
…胸に衝撃。
眩暈がする。
早くなる動悸。
胸が抉られるように痛い。
「そういえば、今日はまだ来てないな。朝は早いはずなのに…」
来るはずがない。俺が殺したんだから。
―――殺したから。
今までずっと忘れていた。
いや、意図的に思い出さないようにしていただけだ。
直接殺したのは奴だとはいえ、俺も殺意を抱いていたことに違いはない。
俺は、こんなところで被害者ヅラして何をしているんだ?

「おい、モナー!」
ギコは大声を上げる。「大丈夫か?ボーッとして…」
「…大丈夫モナ」
そう、大丈夫だ。
じぃは、既に人を殺していた。
人の血を糧にしていた。
もう戻れない身体だった。
ああするのが、俺の正しい道だったはず…
「で、結局昨日はどうなったんだ?」
「告白されちゃったモナ。でも…断ったモナよ」
俺は、何とか平静を装いつつ言った。
「そうか… それがお前の判断なら、何も言わんよ」
ギコは残念そうに言った。
「でも、この時間にじぃが来てないのは妙だな。お前、じぃを傷つけたんじゃないのかゴルァ!」
―――傷つけた。
これ以上ないほど傷つけた。

彼女の命を奪った。

「ああするより他に仕方なかったんだ!!」
思わず、立ち上がって怒鳴ってしまった。
「俺だってあんなことしたくなかった…! 好きでやったんじゃない!!」
ギコは目を点にして固まっている。
教室中の注目が俺に集まる。
「俺は狂ってなんかない!!狂ってるのは奴だけだ!!」
俺は教室を飛び出した。
訳の分からないままに走る。
時間の感覚がない。
足がもつれる。
胸が痛い。
俺は立ち止まって、大きく深呼吸した。
今頃、授業が始まっているだろう。
今さら教室に戻るのも気が引ける。
結局、俺は家に帰ることにした。


リナーは、居間で本を読んでいた。
「ん?今日は早いな」
「ちょっと、気分が悪くてモナ…」
リナーは心配そうな表情を浮かべた。
「…そうか。もともと、その胸の傷は一日で治るようなものではないからな」
「でも、リナーが治してくれたんじゃないモナか?」
リナーは首を振った。
「昨日も言ったが、治したのは君自身の治癒力だ。私はそれを促進させただけ。
 5日で治る怪我を1日に縮めただけだ。その分、君の身体には負担がかかっている。
 今日はゆっくり休んだ方がいいだろうな」
「…そうするモナ」
俺は部屋に戻って、ベッドに入った。

122:2003/11/17(月) 23:00

当然ながら、眠れない。
時間が時間だ。今は10時。
授業中なら寝れるのに、ベッドに入ると寝れないとは、なんて天邪鬼な体だ。
目を瞑ると、じぃの顔が浮かんでくる。
俺に思いを寄せてくれた女。
俺が殺した女。
…俺は、一生彼女に囚われたままなのだろうか。
ふと、疑問が湧いた。
なぜ、じぃは吸血鬼になったのか。
リナーは、二つの方法があると言っていた。
石仮面を使う方法と、吸血鬼の血を取り込む方法。
じぃに吸血鬼の血を取り込む機会があったとは思えないし、石仮面など問題外だ。
リナーに聞いてみるか。
俺はベッドから体を起こした。

「じぃ…昨日の女吸血鬼は、どうやって吸血鬼になったんだと思うモナ?」
居間で読書しているリナーに訊ねた。
「元々吸血鬼で、人間社会に紛れていたのではないか?」
リナーは本を閉じて脇に置いた。
「それはないモナ。確かに、吸血鬼になったのは最近モナ。
 本人もそう言っていたし、普通に日光の当たるところに…」

…俺は何かを見逃している。

「…いや、昨日の朝、学校でじぃに会った時はじぃは既に吸血鬼だったモナ。
 だけど…そのとき、教室には日が差していたモナ」
つまり、日光でも平気だった?
「それはありえないな」
リナーは断言した。
「吸血鬼は決して日光を克服できない。人間がいくら訓練しても、水中では呼吸ができないのと同じだ」
「でも、確かに…」
あれが間違いではありえない。
じぃが吸血鬼だと看破した時、確かに教室に日光が差し込んでいた。
リナーは首を振る。
「究極生物でもない限り、太陽の光を克服した吸血鬼などありえないな。
 私の見た限り、あの吸血鬼の身体能力は通常の吸血鬼と比べても劣る」
…究極生物?
どこかで聞き覚えがあるような…
何かが、脳内に押し寄せてくる。
…究極。最強。赤石。永遠の内包。観測者の不在。矛盾。時計の音。因子。原初の海。最強の不死者。
遺伝子。サン=ジェルマン。接合点。暗い部屋。太陽の克服。黒点。ロストメモリー。破られた約束。
何だ?
これは何なんだ?

「どうした?」
硬直した俺を見かねて、リナーが声をかけたようだ。
「…究極生物って、何モナ?」
「何でもない」
リナーは興味無さげに言った。
「ただのおとぎ話だ。公式な記録には、そんなモノの記載は無い。
 そんなのが存在するのなら、一度お目にかかりたいくらいだ」
そして、リナーはため息をつく。
「だが、君が嘘を言っているようには見えないな。日光が平気な吸血鬼か… 変種か、進化か、あるいは…」
そこで言葉を切った。
「あるいは?」
俺は聞き質す。
「天然の吸血鬼ではないのかもな」
「どういうことモナ?」
「いや、冗談だ」
冗談と言った割には、リナーは怖い顔をしている。
これ以上は聞くな、と言っているも同然だ。
仕方がないので話題を変えた。
「リナーは昼食はどうするモナ?」
「適当に食べるが、君は?」
「イマイチ食欲がないから、いらないモナ。まだ気分が悪いから、しばらく寝るモナ」
リナーは心配そうな目線を投げかける。
「大丈夫モナ。おやすみモナ」
俺は部屋に戻った。

123:2003/11/17(月) 23:01

結局、じぃが吸血鬼になった原因も、日光が平気な理由も不明って事か…
俺はベッドに入って、天井を眺めながら考えていた。
リナーは、またもや何かを隠しているようだった。
今の俺なら心の中を「視る」こともできるだろうが、倫理的に抵抗がある。
とりあえず、俺の心は決まった。
人に仇なす吸血鬼を殺す。
一匹でも多くの吸血鬼を殺す。
あの時じぃを殺そうとした理由は、正義感だ。
これ以上の犠牲者を出さないため。
そして、じぃを救うため。
ならば、その正義感を持ち続ける。
詭弁には違いない。
だが、あの時の動機を嘘にしないためにも、俺は自分を貫く。
方向性が間違っているのは分かっている。
傲慢な自己満足である事も分かっている。
だが、こうでもしないと…じぃに顔向けできない。
かなり気が楽になった。
同時に、俺は不器用だな…と自嘲した。


…眠ってしまったようだ。
まあいい。元々眠るつもりだった。
時計を見ると、午後7時。ちょうど夕食の時間だ。
いかに悲劇の主人公ぶろうと、空腹には勝てはしない。
キッチンに行ってみると、リナーとガナーの姿があった。
俺が寝ている間に、ガナーも学校から帰ってきたようだ。
驚いたことに、二人は談笑している。
と言っても、ガナーが一方的に話しかけ、リナーは相槌をうっているだけだが。
これまでのギクシャクした雰囲気は全くない。
やはり、昨日の看病のおかげでガナーが心を開いたのだろうか。
俺の分の夕食も用意されていた。
ガナーが作ったやつなので、安心かつ安全だ。

リナーが一番先に食べ終えて、部屋に戻っていった。
「リナーさん、綺麗だよね…」
ガナーは呟く。萌えない妹なりに、思うことがあるようだ。
「最初、綺麗なだけで嫌な女かなと思ってたけど。兄さん、見かけに騙されたのかなって…」
なかなか失礼なことをぬかしてくれる。
「でも、本当はすごく優しい人だね。無口だから分かり難いけど」
そう言われると、自分の事でもないのに照れてしまう。
俺は耳まで赤くしながら、ごはんを口の中に流し込んだ。
「ホントに、あんないい人をどうやってつかまえたんだか…」
「つかまえたって何モナ!モナはただ…」
道で気絶していたリナーを、連れて帰っただけだ。
拉致同然。つかまえるよりもタチが悪い。
そう、リナーは倒れていたのだ。
吸血鬼を赤子同然に扱うリナーが、なぜ気を失うほど追い込まれていたのだろう。
俺はあらためて疑問に思った。特に外傷もなかったはず。
さらに、町に迫る脅威。この町に潜んでいるという吸血鬼やスタンド使い。空想具現化。疑問はいくらでもある。
…それより、なぜ俺は「スタンド」という言葉を何の抵抗もなく受け入れている?
夢の中でもう一人の俺と話した時は、能力の説明だけで、スタンドについての説明はなかった。
なぜ、俺はスタンドを知っている?
そうか、あれだ。
俺の読んでいた漫画。
『矢の男』が、スタンド使いを増やす話だった。
…いや、どこか違和感がある。

「お兄ちゃん!?」
ガナーの声。
「どうしたの?急に固まって…」
どうも、俺は思考に没頭してしまう癖がある。
とはいえ、夕食はキレイに食べ終わっていた。
思考しながらも、口は動いていたようだ。なんて便利な体。
さて、体調はいいとは言えない。
夜の見回りまで、ゆっくり休むか。


…10時。
リナーと夜の町へ出かける時間だ。
今までと何も変化はない。
「殺人鬼探し」が「夜の見回り」に代わっただけだ。
何せ「殺人鬼」とは俺のことだったのだから、笑い話だ。
俺は居間に出た。
リナーが待っている。
「今日は、君は休むべきだと思うが」
リナーは俺の顔を見るなり言った。
「いや、行くモナ」
1人でも多くの吸血鬼を殺す。
リナーと共にいても出番はないだろうが、戦闘経験を積むことが重要だと思う。
何より、俺一人になったら、またあの殺人鬼が出てくるかもしれない。
「リナー」
俺はリナーに呼びかけた。
「もしモナの精神が殺人鬼に支配されたら、迷わずモナを殺してほしいモナ」
望まぬ罪を重ねるより、リナーに断罪された方がいい。
「…そうならない事を期待している」
リナーは関心が無さそうに言った。
俺達は、家を出た。

124:2003/11/17(月) 23:02

吸血鬼はすぐに見つかった。
スタンド使い同士は惹かれ合うという話があるが、吸血鬼も例外ではないのだろうか。
吸血鬼は、リナーの姿を見るなり逃げ出した。
「一昨日の吸血鬼よりは上質のようだな…」
リナーは追いながら呟いていた。
一昨日の吸血鬼は、リナーに正面から戦いを仕掛けて返り討ちにあったのだ。
リナーは『教会』に所属する、吸血鬼専門の殺し屋である。
「この服は、暗殺装束だ」 リナーは言っていた。
「この服に刻まれた十字を目にする事は、奴等にとっては断頭台に頭を乗せる事に等しい」
その通りだろう。
吸血鬼は十字架に弱いという伝承がある。
だが、吸血鬼達が十字架そのものを恐れている訳ではない。
奴等は、十字が刻印された集団を恐れているのだ。

リナーはたちまち吸血鬼に追いついた。
俺は、リナーの遥か後ろを走っている。
どうせ、俺は戦力にならない。
ならば、リナーの動きを「視て」戦いのセンスを磨く。
俺一人でも吸血鬼を葬れるようになるために。

リナーはその場からバヨネットを投げつけた。
逃げる吸血鬼の足を貫通し、地面に突き刺さる。
「GYYYYAAAA!!」
吸血鬼の動きが止まる…
と思ったら、地面に縫い付けられた左足を自分で切断した。
そして、逃げられないと判断したのか、そのままリナーに飛び掛った。
「塵ごときが。開き直ったつもりか?」
リナーは吸血鬼の顔を左手で鷲掴みにした。
右手にはショットガン。
それを吸血鬼の腹に押し当て、何度も引き鉄を引いた。
飛び散る血飛沫は、瞬く間に蒸発していく。
あの弾丸も法儀式済みなのだろう。
これ以上ないほどのゼロ距離に下半身は千切れ飛び、腹部は四散する。
リナーが、吸血鬼の顔を掴んでいる左手を離した。
吸血鬼の上半身は、イヤな音を立てて地面に落ちた。
「さて、話してもらおうか…」
問い質すリナー。
吸血鬼は不快な声を上げた。
「なんて不運なんだ、俺は… 『アルカディア』のいる町に着いたと思ったら、代行者に会っちまうなんて…」
「黙れ。貴様に許される言動は、『アルカディア』の居場所だけだ」
「へへへ… アンタほどの奴がそれを聞くのか? 見たとこ、5位よりも上位だろ? 奴の居場所なんて、
 能力の性質を考えれば明らかじゃないか?「空想具現化」の力が存分に振るえる場所さ…!」
「何だと?」
まずい。
リナーに隙が生まれた。
俺が行動を起こす前に、吸血鬼は右手を地面に叩きつけた。
巻き上がる砂煙。
その一瞬の隙に、吸血鬼は姿を消した。
「まだ、それだけの余力があったとはな… だが、塵への猶予期間は短い」
吸血鬼は上半身だけだった。
その地面を這っていった後が、くっきりと残っていた。

125:2003/11/17(月) 23:02

俺達は後を追った。
今日は追いかけてばかりだ。
おそらく、上半身だけなので動きは遅いだろう。
すぐに追いつけるはず。
路地裏のような場所に、その跡は続いていた。
あそこは行き止まりのはず。それで、袋のネズミ…

―――何だ?

路地裏に、さっきの吸血鬼以外の何かがいる。
ひどく嫌な感じ。
身の毛がよだつ、という感覚だろうか。
初めて吸血鬼を見たときとも違う、同種でありながら相容れない感じ。

リナーも立ち止まった。
その何者かの存在を感じたようだ。
「…何かいる。吸血鬼ではない…」
リナーは服の中からサブマシンガンを取り出した。
全く関係ないが、あれだけの量の武器をどうやって隠しているのだろうか。
「気を抜くな。普通じゃないぞ…」
そんな事、言われなくても分かる。
場の雰囲気が視える。
路地裏に、黒い霧のようなものが立ち込めているようだ。
視覚化された、何者かの気配。
こんなものは視た事がない
余りにも異常過ぎる。
俺達は、警戒しながら路地裏へと踏み込んだ。


先ほどの吸血鬼がゴミのように地面に転がっている。
既に絶命しているのは明らかだ。
その胸には、「矢」が刺さっていた。
明らかに古いものと分かる、骨董品といっても差し支えない「矢」。
そして、死骸の傍らに立つ男。
顔は影になっていてよく見えない。
どちらにしろ、その異様な雰囲気のせいで顔を直視できないが。
男は「弓」を携えていた。
こいつは人なのか?
この男に比べれば、吸血鬼の方がまだ人間らしい。

その男は、俺達の存在を意に介していないようだ。
「こいつも… 選ばれた者ではなかった…」
男は吸血鬼から矢を引き抜いた。
そして…男はこちらを見た。
視線を受けただけ。
それだけで、死を意識した。
やはり、あれは違う。
俺達と根本的に違う。
絶対に関わってはいけない生物。

男は矢をこちらへ向けた。
「お前達は…どうだ…?」


  /└────────┬┐
. <   To Be Continued... | |
  \┌────────┴┘

126N2:2003/11/17(月) 23:33
Newシリーズ突入ですね。
乙です。これからが凄まじく気になります。

127ダンボール </b><font color=#FF0000>(M.nd32Bk)</font><b>:2003/11/18(火) 00:20
遅れながら乙です。
二つの原作がうまく入り混じっており、
それでいて微妙に違うオリジナルっぽさがあり、
とっても面白いです。

128誇り高き愚者ボロギコ:2003/11/18(火) 17:33
茂名王町繁華街
その中心に流れる茂名川に架かる橋の下
そこに一匹のギコ族の男がいた
彼の名はボロギコ
どうして彼はここに住んでいるのか?
それは覚えていない、気づくとここで生活をしていた。
小さな頃から生きるための盗みはやってきたし、時には店主にばれてぶちのめされた。
町の不良チームに集団で襲われたこともあった。
そんな争いの中片方の耳はとれてしまっていた。
しかし、それでもボロギコはこの町が好きだった。
明日の食い扶持に困る生活だったが厳しい生活は彼にしたたかさを授けた。
そして・・・そんなある日

カァー
「っ・・・カラスに睨まれて泣かれたぜ・・・・縁起悪りーな」
橋の下に建てられた掘っ立て小屋、これがボロギコの家である。
「ま、そんなことちーとも気にしないがな、さ・・・生きるために・・・つりでもするかな」
そう言うとボロギコは川の前に立つ。
「つっ・・・・と」
ボロギコが竿を振るとポチャンと音が鳴り浮きが浮かび上がる。
「・・・今日は釣れねーぞ、ゴルァ」
ついつい出てしまったギコ族特有の口癖
それを気にすることもなくボロギコはつりを続ける
「・・・!来たっ!!・・・・・って長靴かい・・・・古典的な・・・・」
今日はえらくついていない、ボロギコがそう思ったとき
「えっ・・・・!?うぉおおおおおおお!!!」
一台の車が橋のガードレールを突き破りボロギコの方につっこんできたのだ!!
「セパレート・ウェイズ!!身を守れ!!」
ボロギコはとっさに彼自身のスタンドを発現させた
「ゴルァアアアアアアアアアア!!」
セパレート・ウェイズと呼ばれた人型スタンドが繰り出す数発の拳が車の向きを変えさせる
「はぁはぁはぁ・・・・」
「やっぱり・・・スタンド使いだったね・・・」
ボロギコの右方向から声がする
ボロギコとっさに土手の方を向いた
そこには一人の男が立っている
モナー族のようではあったが普通のモナーとは違い耳がつの状になっていた
「僕の名はつのモナー、ひろゆき様の命により、この町のスタンド使いを狩りに来た一人だ」
「何言ってやがるんだ?スタンド・・・この力のことかゴルァ」
「ふん・・・スタンド使いとわかった以上は本気で始末するのみよ!!」
そう言うと男は自分のスタンドを発現させた
「フォーチュン・イズ・バッド!」
フォーチュン・イズ・バッド
そう呼ばれたスタンドは手にしたコインを上空へと放り投げた。
「説明してやろう!我がスタンド、フォーチュン・イズ・バッドは!運を操作するスタンドだ!このコイントスの結果が表だったときッ!
貴様に不運が起こるッ!そしてっ!!」
スタンドがコインを受け取る
「結果は表だ・・・」
「・・・・ぐぁ」
ボロギコは突然うめき声を上げうずくまる
ボロギコの腕には先ほどの車の窓ガラスの破片が深々と突き刺さっていた
「ふふふ・・・ボロギコって言ったっけ?ついてないなぁ・・・普通なら無いよ・・・今頃ガラスが突き刺さるなんて」
「・・・これが貴様の」
「だが・・・貴様の不運は俺を幸運にするッ!貴様の死という形でなッ!!」
「てめぇ・・・」
ボロギコは立ち上がる
そして、ボロギコの脳裏にはこの不思議な力を身につけたときのことが浮かんでいた。

129誇り高き愚者ボロギコ:2003/11/18(火) 17:34
数年前のある日
ボロギコはいつものように生活をしていた。
その日も今日のように下手なつりをしながらかろうじて生活していたのだ。
そして、ようやく数匹の魚を釣り上げたボロギコは、掘っ立て小屋に戻ろうとした。
その時だ
ボロギコは自分の胸に生暖かい感触を感じた。
矢だ。
自分の胸に矢が刺さっている。
見ただけで致命傷とわかる位置、心臓。
ボロギコはその場に倒れると、すぐに自分の死を意識した。
その時、自分の正面に何らかの気配を感じた。
かろうじて首を動かし前方を見る
弓を持った男が立っていた。
ボロギコを見下すようにして、だ。
それを見たボロギコは全身の毛が逆立つほどの怒りを覚えた。
「この男はッ!自分の命を何とも感じていないッ!!」
彼はつらい生活は送ってはいたが自分の命に誇りを持っていた。
それは彼の誇りに対するかつて無いほどの侮辱だったのだ。
そのかつて無いほどの怒りを原動力に!ボロギコはなんとッ!
立ち上がりッ!
心臓を貫通している矢を自ら引き抜き!
ボロギコが立ち上がったことに驚く男の顔面をッ!!
力一杯ッ!!ぶん殴ったのだ!!
そして男が地面に倒れるのとほぼ同時に、ボロギコは意識を失った。

そこから先は覚えていない。
目が覚めたときには男はいなかった。
不思議なことに傷はふさがっていた。
数日後、ボロギコは自分に備わった不思議な力・・・スタンド「セパレート・ウェイズ」の存在に気付くことになる
こうしてボロギコは、スタンド使いとなったのだ!!


立ち上がったボロギコは、あのときと同じ怒りを胸に感じながらゆっくりとした口調でしゃべり出した。
「俺は・・・今現在社会的地位に置ける最下層にいる・・・生まれた時から親はおらず、今日まで生きるために片耳を失った」
「だが、こんな生活をしていても・・・いや!こんな生活だからこそ!
俺は自分の命に対しては誇りを持っているッ!貴様は今ッ!!俺の命を侮辱したッ!!!」
「この失った片耳にかけて!貴様は俺が徹底的にぶちのめしてやるぞゴルァ!!!」
ボロギコはそう叫ぶとありったけの殺気を乗せた眼で○○を睨み付けた
「うっ・・・吼えたところで何になる!貴様は今ついてないんだ!!お前は俺に近づくことさえできないんだよ!!」
○○はボロギコの殺気に一瞬おびえたが自分を無理矢理奮い立たせ再びコイントスをする
「表だ!!」
「やかましぃ!!俺は占いなんぞ信じねぇぞゴルァ!!」
ボロギコが走り出そうとした瞬間!
ボロギコの前方に火の手が上がった
「なにぃ!」
「ふはははは!!車から漏れだしたガソリンに電気系統のスパークで着火し土手の草に燃え広がったようだな!!」
○○はボロギコの不運に大声を張り上げる
「ところで・・先ほど見せた貴様のスタンドは・・・近距離パワー型だったなぁ」
「・・・・・」
「もう一度コイントスすれば貴様は確実に死ぬ!今までの経験からそれがわかる!!
だが貴様はコインが落ちるまでにここに来ることはできない!勝った!!フォーチュンイズ・・・」
フォーチュン・イズ・バッドがコインを上空に放り投げる
瞬間ッ!!
「セパレート・ウェイズ!!」
セパレートウエイズが前方に左腕をかざした。
すると!その腕が切り離され!エネルギー化し!発射される!!
「ブグァ」
そのエネルギーの弾丸は確実に○○の顔面に命中した
「ば、馬鹿な・・・貴様のスタンドは・・・近距離パワー型のはず・・・」
「俺のスタンド・・・セパレート・ウェイズは体の一部をエネルギーの弾丸として発射する、まさに身を粉にして戦うスタンドだ」
「貴様のような運に頼る温室育ちにッ!!負けるはずがねぇんだよ!ゴルァ!!!」
右腕!左足!右足!連続して発射される!!
「ゴルァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
ボロギコの方向とともに!とどめと言わんばかりに胴体が発射された!!
「ウゲェフ!!」
全弾直撃を喰らったつのモナーは土手に縫いつけられた

「勝つには勝ったが・・・飯は食い損ねるし、腕には怪我、おまけに火の海・・・マジでついてねぇぞゴルァ・・・・」


ボロギコ→家が燃えていることに気づき本日何回目かの「ついてねぇ」を言うことになる

つのモナー→全治6ヶ月、再起不能

130誇り高き愚者ボロギコ:2003/11/18(火) 17:34
スタンド名:セパレート・ウェイズ
本体:ボロギコ
破壊力:B スピード:A 射程距離:5m(エネルギー弾は約20m)
持続力:D 精密動作性:B 成長性:C
能力
スタンドヴィジョンの一部を切り離し破壊のエネルギーとして発射するスタンド。
発射したヴィジョンは20秒ほどで元に戻る。また、その破壊力は使用する部分の大きさに比例する。
そしてエネルギータンとして発射するために、分離→エネルギー弾化→発射のプロセスを取るため次のようなことが可能
1,分離してエネルギー化しない状態での射程5m以内における個別での操作(EX.分離した腕と腕のないスタンドで挟み撃ちなど)
2.エネルギー弾化した状態での射程20m以内における「設置」と好きなタイミングでの「発射」
また、この形態ならばダメージのフィードバックはないが「発射」以外の操作は不能。
すべてのスタンドヴィジョンをエネルギー弾化してしまうと戻ってくるまでスタンドの見えない一般人と同じになる。



スタンド名:フォーチュン・イズ・バッド
本体名:つのモナー
破壊力:D スピード:B 射程距離:B
持続力:D 精密動作性:A 成長性:D
能力
スタンドが「コイントス」をして表だったときのみ、指定した相手に不運を訪れさせる能力。
一回のコイントスで一度の不運を訪れさせる。コイントスの時対象にできるのは一人のみ。
スタンドの高い精密動作性と本体の訓練により、ほぼ確実に表を出すことが可能である。

131誇り高き愚者ボロギコ:2003/11/18(火) 17:38
初めてですが、書いてみました。
どうでしょうか?
「セパレート・ウェイズ」は依然僕がスタンドアイディアに書いたものを
改造して使っています

132新手のスタンド使い:2003/11/18(火) 20:26
初めの方は雰囲気が出ていていいと思うんだけど、
車が突っ込んできてからの展開があまりにも早すぎて、話についていけなかった。
演出的な部分をもっと端々に散りばめて、文章に深みを持たせる必要があると思われる。
本編の場合AAがついているだけまだマシに見えるのだけれど、
文章だけだとそれが強調されて感じられた。
今回の話を2〜3話分くらいの量にすると、ちょうど良いんじゃないだろうか。

133:2003/11/18(火) 22:17

「―― モナーの愉快な冒険 ――   影・その2」


          @          @          @


フサギコは大きな欠伸をした。
そして、そのドアの前に足を踏み出す。
馬鹿みたいに格式染みた自動ドアが、静かに開いた。
高級な自動ドアというのは、全く音がしない。
行きつけのコンビニの自動ドアはバリバリ言うのに。
全く… 官公庁の建物はいつもこうだ。
フサギコはため息をついた。
体制批判をするつもりはないが、もっとマシな国税の使い方があると思う。
いや、それこそ、骨の髄まで体制側の自分が言えた義理ではないんだが…
そんな事を思いながら、やけにいい響きの足音がする床をつかつかと進んだ。

ここに来た時、毎回顔を合わせるしぃ族の受付嬢の姿があった。
フサギコはブースにもたれながら話しかける。
「よお。最近どうだ?」
「大変なことがありましたよー!」
受付嬢は嬉しそうな声を上げた。
「昨日、オバちゃんが税金が高いってクレームつけてきて、1時間くらい熱弁を振るってたんですよ!」
フサギコは思わず笑ってしまった。
しかし、受付嬢はムッとした表情を浮かべる。
「笑い事じゃないですよー!! そのオバちゃん、「どうせ私達の税金で食べてるクセに…」って言ったんですよ!
 住民税も納めてないくせに、何言ってるのかって感じですよね! 消費税は国税だから、私の給料には関係ないし…」
受付嬢の愚痴は、意外かつ当然の成り行きで遮られた。
後ろに、彼女の上司が立っていたのだ。
「勤務中ですよ」
上司はぶっきらぼうに注意した。
受付嬢は口をつぐむ。
さらに上司は、こっちにも敵意のこもった視線を向けた。
「あなたも、そんな所で長話に興じられては困ります。私達も暇ではありませんからね」
つまり、とっとと用を済ませて帰れ、という意味だ。
確かにごもっとも。ここでは、自分は招かざる客だ。
嫌味の一つでも言い返してもいいのだが、あんまりここでのんびりする訳にもいかない。
さっきの皮肉ではないが、自分も、今から会う男も、決して暇ではないのだ。
とっとと用事を済ますか。
フサギコはその場を離れて、エレベーターに乗り込んだ。
「R」のボタンを押す。
エレベーターの揺れはほとんどない。
何から何まで、いいモノを使っている。
そして、すぐに屋上へ出た。
地上35階のビルの屋上。
とにかくだだっ広い。
遮蔽物も何もない。
自分があの男と話すときは、いつもこの場所だ。
「庁内では、誰が聞き耳を立てているか分からないですからね…」
それが、あの男の言い分だった。
まあ、ご大層な賓客室に通されるよりは遥かにマシだが。
ああいう場所は息が詰まる。
つまり、ブルジョアには縁がないということだ。

134:2003/11/18(火) 22:17

男は先に来ていた。
エリート然とした風貌。
切れ者を思わせる眼鏡。
冷たい目。
人間味を感じない、と噂されているらしい。
スタイリストでもついているかのような、スーツの着こなし。
そのネクタイは風になびいている。
構成要素の全てが癪に障る。
そう、自分はこの男が嫌いなのだ。

フサギコの姿を見て、男は言った。
「大失敗ですよ。3人送ったのに、『蒐集者』の前であっという間に殉職だ…」
やれやれ、といった感じで肩を竦める。
部下の命を何とも思っていない。
とことん気に障る。
「一人は爆死、一人は床と完全に融合して窒息死。一人は心臓を貫かれ即死。
 全く、遺族に何と説明したらいいのか…」
面倒事が増えた、とでも言いたようだ。
部下の死を悼む気は全くないらしい。
「でも…私としては、『蒐集者』をほっておく訳にもいかないんですよ」
男は言った。

この男は、警視庁警備局公安五課―――通称、『スタンド犯罪対策局』の局長を務めている。
そして、こいつ自身もスタンド使いらしい。
つまり、純粋な人間ではないという事だ。
生命エネルギーのヴィジョンを自在に操る。
手を触れずに物を破壊できる。
そして、様々な異能。
そういう者を、自分は人間と認めない。
スタンド使いどもも、化物の仲間だ。
フサギコはそう考えている。

「で、折り入って貴方に話があるんですが…」
局長は話を切り出した。
「まさか、俺に動けと言うんじゃないだろうな? それなら断るぞ」
フサギコは先手を打つ。
「そうですか…」
残念そうな表情を浮かべつつ、口元には笑み。不気味な男だ。

内心、フサギコは頭を抱えたい気分だ。
この男は、自分の属する組織を暗殺集団か何かと勘違いしてはいないか?
局長は話を続ける。
「この一件で、外務省から苦情が来ましてね… 国際問題になるとか、ヴァチカンに合わす顔がないとか…」
そして、わざとらしく手を叩いた。
「そうだ。外務省の連中を皆殺しにしてくれませんか?」
「馬鹿言うな。俺の立場でそれをやったらクーデターだ」
局長は意に介さずに話し続けた。
「おまけに、公安の奴等まで文句をつけてくる… 全く、クレームを処理できるスタンドが欲しいですね」
自分も公安に属している事を棚に上げての発言だ。
こいつらは、自分達を公安課の一つであると認めていない。
スタンド使いを相手にしているのだから、自分達は特別だとでも思っているのだろう。
馬鹿な選民意識だ。

局長は一人で喋り続けている。
「ところで、ヴァチカンでは我が国へのツアーパックが流行っているようですね。
 『異端者』、『蒐集者』に続いて、『破壊者』と『調停者』が入国したようですよ…」
流石に今のは聞き流せなかった。
教会が派遣した代行者が4人。
卓越した暗殺技術。吸血鬼殲滅に特化した強力なスタンド。
それらを併せ持つものだけが代行者を名乗る事を許され、スタンド能力を象徴した異名を与えられる。
つまり、そいつらも化物だ。
何のことはない、化物が化物に敵対しているだけの話。
そんな連中が、この国に集まっているのだ。
「なんだとオイ!!連中、この国で何をやらかすつもりだ?」
フサギコを驚かせたからなのか、局長は満足そうだ。
「さあ?ミサでないのは確かでしょうね」
そう言って笑った。
フサギコは呆れかえる。
しかし、笑いが止んだあとの局長の顔は真剣だった。
「…代行者が4人。これだけで、軍事的パワーバランスが変化する。他国の軍隊が駐留しているも同然なんだ。
 我が国の喉元にナイフが突きつけられたんだよ…」
これが、この男の本当の顔だ。
「で、公安五課としてはどうするんだ?」
フサギコは訊ねた。
「貴方達が皆殺しにしたらどうです?」
帰ってきた返事は、やはりふざけたものだった。
「いい加減にしろ。そう簡単に俺達が動けるか」
フサギコは言う。
局長は不服そうに言った。
「いいじゃないですか。侵略を受けてるも同然なんだから。マスコミも大目に見てくれるでしょう?
 貴方も、赤絨毯の上で「集団的自衛権を行使する!」なんて言いたくないですか? 憧れでしょう…」
付き合っていられない。
適当に返事をして、フサギコはその場を後にした。
やはり、あの男は嫌いだ。


          @          @          @

135:2003/11/18(火) 22:18

俺達の眼前には、矢を手にしてたたずむ男。
――――矢の男。
不意にその名が浮かんだ。
馬鹿な。それは創作上の人物だ。
だが… あの姿は、それと一致しすぎている。

俺は、男の内面を視た。
空白。
何も無い。
感情も思考も存在しない。
存在の意味も目的も持っていない。
なんだ、この不安定な存在は。
これが、生きていると言えるのだろうか。
それでいて、圧倒的な存在感。
圧迫感。威圧感。
矛盾だ。全くもって矛盾だ。

リナーは両手のサブマシンガンを『矢の男』に向けると、躊躇する事なく発砲した。
パララララ…という軽い銃声。
だが『矢の男』の姿は既にない。
ブロック塀が、意味もなく蜂の巣になっただけだ。

『矢の男』は、リナーの後ろに立っていた。
俺は確かに視た。
今の移動は、消えてから現れるまで1コンマのタイムラグもない。
スピードじゃない。何かの能力だ。
「貴様、スタンド使いだな…」
『矢の男』の声。
まずい!!
俺は飛び込もうとしたが、その間すら無かった。
うっすらと浮かび上がる『矢の男』のスタンド。
その拳が、リナーの背中に命中する。

…間違いなく即死レベル。脊髄を破壊するに充分な威力。
リナーの体は大きく吹っ飛んで、ブロック塀に激突した。
「リナー!!」
俺はリナーに駆け寄った。
しかし…
「大丈夫、カスリ傷だ」
リナーは素早く立ち上がった。
そんな馬鹿な。
今の攻撃は、武道の達人だろうとも受け流せるレベルじゃない。

「何をボーッとしてるッ!!」
リナーの声で我に帰った。
『矢の男』は、いつの間にか俺の真横にいた。
スタンドが、大きく真横に腕を振るうのが視える。
命中すれば、頭蓋骨ブチ割れ&飛び散る脳漿。
俺は、姿勢を低くしてその攻撃をかわした。
正確には、腰を抜かした。
その後に来る『矢の男』の追撃。
スタンドの拳が、腰を抜かしている俺に振り下ろされた。

その瞬間、リナーが日本刀で斬りかかる。
俺の顔面をスクラップにするはずだった拳は、その攻撃を防ぐのに使われた。
「…!」
『矢の男』のスタンドが、日本刀を押し返す。
リナーは一歩退き、日本刀を構えた。
左手を刀の柄に軽く添える。
それを腹の前で構え、相手の方に軽く傾かせる。
ギコに聞いた事があった。
――正眼。
あらゆる剣術において、基本にして最強の型。
一分の隙すら視えなかった。
鉄壁の防御でありながら、最強の攻撃態勢。
俺ならば、ああなった相手は絶対に倒せない。

まさに一閃。
リナーの体が、『矢の男』の眼前まで一瞬で移動した。
今のは、『矢の男』とは明らかに性質が異なる。
紛う事無き、スピードによる移動。
磨き抜かれた肉体が可能にする「速さ」。
その勢いを殺す事無く、リナーは刀を振り下ろす。
だが、『矢の男』にはそれすらも通じない。
拳で軽く受け流された。
さらにリナーは日本刀を振るう。

136:2003/11/18(火) 22:18

二の手、三の手を意識した動き。
それでいて、相手を殺傷することのみに洗練された攻撃を繰り出すリナー。
機械のような正確さ。
そして、最小限の動きでそれを捌く『矢の男』。
どっちも速過ぎる。
視えてはいるものの、俺の介入できるレベルではない。
だが、素人目に見てもリナーは不利だ。
日本刀ではスタンドは斬れない。狙うは本体のみ。
一方、スタンドの攻撃は日本刀では防げない。リナーにはかわすしか手段がないようだ。

リナーは、剣を大きく振りかぶって、左斜めに斬り下ろした。
まずい!
今のは、大きく隙ができる動きだ。
『矢の男』が、それを見逃すはずがなかった。
その攻撃を受け止めず、ガラ空きになった右側に瞬間移動する。
リナーは、完全に体勢を崩していた。
男のスタンドの拳が、リナーの胸を貫く…はずだった。
「甘いな…」
リナーは呟く。
日本刀に添えられていたのは左手だけ。
右手は背中側に回っていた。
そこから出てきたのは、なんとアサルトライフル。
『矢の男』は、用意された隙に引き込まれたのだ。
奴は完全に攻撃態勢に入っていて、反応しきれない。

引き鉄が引かれる。
フルオートで発射される弾丸のシャワー。
「…!」
『矢の男』の姿が消えた。
またもや瞬間移動。
しかし、攻撃の隙と心理の隙の両面をついたフェイントだ。
何発かは確実に当たったはず。

『矢の男』は5mほど後ろに現れた。
左腕から血を流している。
どうやら2発ほど命中したようだ。
たった、あれだけのダメージか。
あの距離からフルオートで撃たれて、あれっぽっちのダメージ。
やはり化物だ。
絶対に関わってはいけない、という勘は正しかった。
奴は、俺達に対抗できる相手ではない…

「相当訓練されたスタンド能力だ… 自身の動きと完全に調和し、美しくすらある…」
なんと、『矢の男』は笑った。
表情には出ないが、感情の変化を俺は視た。
「そして…」
『矢の男』はいまだに腰を抜かしている俺に顔を向ける。
「未来予知型のスタンドか… 私の動きを目で追えるとはな… 
 それに体が付いていくようになれば、かなりの力を発揮する…」
なんと『矢の男』は俺達に背を向けた。
「そのスタンド、大切に扱え…」
そう言い残して、『矢の男』は消えてしまった。

その場に立ち込めていた、異様な雰囲気も消滅してしまう。
逃げた…のか?
いや、奴を追い詰めたとは考えられない。
状況を考えれば、見逃されたとしか思えない。
しかし、一体なぜ?
俺は腰を抜かしたまま、呆然としていた。


  /└────────┬┐
. <   To Be Continued... | |
  \┌────────┴┘

137丸耳達のビート:2003/11/18(火) 22:28
   たったったったったっ…………………
 うっすらと朝霧の立ちこめる田んぼの側を、二人の男が走っていた。
二人とも『モナー族』特有の優しそうな目をしている。
 片方はひょろりと細い体つきをした『初老の男性』で、もう片方は標準的な体型の『少年』だ。
走るペースに合わせて、頭の上の丸い耳がぴこぴこと揺れている。
 かなり息の上がっていた少年が、前を走る初老の男性に向かって音を上げた。
「おじぃちゃん、ちょと、休憩、しよ…!」
「何じゃ、情けないのぉ…儂の若い頃は二〇㌔くらい余裕じゃったぞ?」
 息一つ乱していない初老の男性が、呆れたように呟いた。
「そんな、事、いっても、もう、だめ、ぽー…」
「しょうがないのぉ…あそこのコンビニで休憩するか」
「おー…」
 コンビニに辿り着くなりベンチでぶっ倒れた少年を尻目に、財布を取り出してドアをくぐる。
       モナ ハジメ
 彼の名は茂名 初。本名よりも『ご隠居』と呼ばれることが多く、年齢より十歳は若くみられると近所のマダム達に評判だ。
古流武術を代々伝える茂名家の頭首だが、息子を若くして亡くし、今は外でヘバっている孫の『マルミミ』に稽古を付けている。
 付けているのだが…
「…この程度で音を上げるようじゃ免許皆伝は遠いのぉ…」
 ベンチに寝そべって必死で呼吸をしている孫にひとり嘆息し、ペットボトルに入ったスポーツドリンクをレジへと持っていく。
料金を払い、二本のボトルを孫の元へと持っていった。
「マルミミー。飲み物じゃよー」
「ありがと、おじいちゃん」
 ベンチから身を起こし、息継ぎ無しで半分ほどを飲み干す仕草に、自然と目が細まった。
まだまだ未熟だが、そんなこととは別に孫とは可愛い物だ。
「そろそろ学校の時間じゃの。もう帰るぞ」
「はーい」
「飲み終わったら出発じゃ」
「へーい…」
 空のペットボトルをゴミ箱へ放り込み、二,三回ほど深呼吸をすると、上がっていた息も収まった。
店員のあいさつに手を振って答え、家へと向かって走り出す。
 のどかな田園風景から、段々と家の密度が増えてきた。
周りの景色も、両脇にシャッターの閉じた店の並ぶ商店街へと移り変わる。
 しんと静まりかえった路地の前を通ると、急に茂名が足を止めた。
「…おじいちゃん?」
 訝しげに問い掛けるが、掌で制される。
「…マルミミ。"探って"もらえるかの?」
「探るって…何があるの?」
          ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「いいから早く。間に合わないかも知れん」
 表情は先程までと同じ柔和な物だが、その下にある物が違う。
ピンと張りつめた、『ナイフ』のような緊張感。
 それを感じ取ったのか、マルミミの表情が固くなる。
「…判った」
息を吸い、吐き、呼吸を整えて静かに両手を挙げ―――――

138丸耳達のビート:2003/11/18(火) 22:29
「シィイイァアァアア――――――ッ!! !?…許し…てぇ…!っ!!」
「っるせーな。やめるワケねーじゃん?こんな『楽しいコト』」
 モララー族の男性が二人、しぃ族の女性に暴行を加えていた。
いや、暴行というような生やさしいモノではない。
 四肢には何本ものナイフが突き立てられ、服をはぎ取られた体には刃物で卑猥な言葉が刻まれている。
夜明けも近いとは言え、狭い路地裏には彼等以外誰も踏みいることはない。
涙と涎を垂れ流しながら懇願するしぃ族の女性の『頭部』を掴み、地面に叩き付ける。
「ヒャッハー!ワルいね〜!」
 頬がアスファルトで削れ、元々は美しかったであろう顔が血で汚れ、隣の相棒から笑いが漏れた。
「大体、お前等、『しぃ族』、ってのは、虐待、する事、にしか、価値、ねぇ、だろがッ!」
 言葉の句切りと共に、がつがつと地面に額を叩き付ける。
女性は意識がなくなっているのか、されるがままで抵抗もしない。
「な、そろそろ朝になっちまうぜ?」
「あ〜?マジ?もうそんな時間かよ?」
「じゃ、ま…『死刑』にすっか〜!」
 ず、と四肢に突き刺していたナイフの一本を抜き取り、頭の上に振り上げる。
絶望に塗りつぶされた女性の心臓を突き刺すべく振り下ろそうとしたその瞬間―――――

  バシィッ!!

 『何か』が男達の真ん中で破裂した。
「わっ!? !!」
「何だこれ!目に染み…っ!?」
 言葉を全て続けることができず、片方の男が強烈なフックを喰らってその場にうずくまった。
「…間に合った…と言っていいものでは無いな…」
 ひょろりと細い『初老の男性』、茂名。
「大丈夫。まだ、生きてる」
 丸い耳の優しそうな『少年』、マルミミ。
「『モララー族の男』が二人、『しぃ族の女』が一人…コイツらで間違いは無いね」
「そうか」
 短く言うと、茂名が先程から振っていた『炭酸飲料』の缶を無造作に投げる。
掌を離れた缶は緩やかな放物線を描き、男達の目の高さで破裂した。

139丸耳達のビート:2003/11/18(火) 22:31
「わっ!? !!」
「何だこれ!目に染み…っ!?」
 言葉を全て続けることができず、片方の男が強烈なフックを喰らってその場にうずくまった。
「…間に合った…と言っていいものでは無いな…」
 ひょろりと細い『初老の男性』、茂名。
「大丈夫。まだ、生きてる」
 丸い耳の優しそうな『少年』、マルミミ。
「『モララー族の男』が二人、『しぃ族の女』が一人…コイツらで間違いは無いね」
「そうか」
 短く言うと、茂名が先程から振っていた『炭酸飲料』の缶を無造作に投げる。
掌を離れた缶は緩やかな放物線を描き、男達の目の高さで破裂した。
「うわっ…!」
 視界を奪われた一瞬で、後ろから首を掴まれる。細い腕をした老人のどこにこんな力があるのか、簡単に吊り上げられてしまった。
「なっ…なぁっ…!?」
 咄嗟に辺りを見回すと、先程フックを喰らった男も襟首を掴まれて立たされている。
動きはおろか、何をされたのか、老人と少年どっちどう動いたのかすらも判らない。
 『心臓』が不快に高鳴る。
それを見透かしたかのように、相棒の背中を掴んでいるマルミミが落ち着いた口調で話しかけてきた。
「怖いかい…?息も荒いし『心拍数』が上がってる」
「『何をされたのか判らない』『自分がコイツらに勝てるか判らない』―――『判らない』ことは『恐怖』を呼び込む」
「ひぃぃえっいぇぇあっ―――――」
空中で足をバタバタと振りながら、意味を成さない呻きが漏れた。
「あっあ〜!そんなに怖がらんでも殺しはせんよ。今後一切『虐殺』をやめて、『マターリ』と暮らせ。そうすれば危害を加えないでやろう」
「はっ…はははははははいっ!!誓ってもう『虐殺』なんかはいたしません!『ナイフ』も捨てますっ!だからぁっ!」
 声の裏に隠された威圧感に、がくがくと震えながら首を縦に振る。
「このしぃは預かるぞ。早急に手当てをせにゃならん」
そう言うと、掴んでいた手を離して血だらけのしぃをひょいと担ぎ上げた。
 マルミミも捨てられた『ナイフ』を拾い上げて、使えないように刃をへし折る。
何の『警戒』もせずに後ろを向けて、二人は大通りへと歩き出した。
                                ・ ・ ・ ・ ・
 その背中をみて、男達の恐怖に歪んでいた表情が獰猛な笑みへと変わった。
靴の裏に隠しておいた小振りのナイフを取り出し、逆手に構える。
相棒と目配せし、タイミングを計る。
(―――――劣等種の丸耳が。とんだ甘ちゃんだ!下らない情け。下らない慈悲そんなモンたった一本の『ナイフ』にも値しないことを教えてやるこの劣等種の奇形の糞耳共ォッ!!!)
   一…二…三ッ!
「てめぇぁ―――――――――ッ!!!!」
 心地よい重みを感じ、たった二歩で少年と老人の背中にそれぞれナイフを振り下ろし、振り抜いて―――――
                          ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
完全に死角から放たれたはずの一撃は、まるで最初から見抜かれていたかのように二人に受け止められた。
            ・ ・ ・ ・ ・ ・
「―――――僕に嘘は通じない。僕がお前の便所コオロギの糞にも劣る『心』を見抜けないとでも思ったのかい?」
                     ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・  ・ ・ ・ ・
「あっあ〜…案ずるな。最初も今も殺す気は無い。殺す気は、な」
 老人の掌が相棒の『頭部』を包み、自らの『胸』に連続した軽い衝撃を感じ―――――



 男達の意識は闇に塗りつぶされた。

140丸耳達のビート:2003/11/18(火) 22:33
「一応『救急車』は呼んでおくよ」
「『正義』も、『罪悪』も、『信念』も、『理由』すらなく…何故じゃろうな…」
そう呟くと、女性に振動を与えないよう、静かに家に向けて走り始めた。
「マルミミ。『戦争』の話をしてやった事があったじゃろ?」
女性をおぶったまま、僅かな哀愁を込めて言う。
「うん。小さい頃だけどね」
「儂は結局死に損なった訳じゃが…あんな輩を見ると『戦友』達が不憫でならんよ。儂らはあんな輩の為に命をかけたわけでは無いのに…のぉ」
「・・・・・・・」
 マルミミは何も言わない。老人の言葉に、ただ耳を傾けるだけ。
                 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
茂名は最近こう思う。何か得体の知れない空気のようなモノがこの世に充満していて、
 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
名もないそいつらが人間を狂気に導いているのではないか―――と。
                                          ・ ・
その言葉はやけに抽象的でありながら実感を伴って茂名の心に思い澱みを形作っていた。
「何故じゃろうな―――」

何も知らないまま、彼等は走る。
慈悲無き運命の狭間で、行き着く先も判らぬまま。
一寸先も見えない闇で、彼等は何を視るのだろうか。
答えは誰も、判らない――――――――




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141新手のスタンド使い:2003/11/18(火) 22:40
アアンコピーペミスッ。 つД`)
脳内補正お願いします。

142新手のスタンド使い:2003/11/18(火) 23:22
乙です!

143N2:2003/11/19(水) 00:08
見てみたら作品ラッシュだー!!
皆さん、乙です!
今のオレの小説のパワーは「恋人」並になってきとる…。

144ダンボール </b><font color=#FF0000>(M.nd32Bk)</font><b>:2003/11/19(水) 17:06
>>143
「恋人」並=最も恐ろしい

145新手のスタンド使い:2003/11/19(水) 22:42

合言葉はwell kill them!その②―Runner 前編

はあ・・・・、はあ・・・・・、
俺の名前はアヒャ。この前「矢の男」にスタンド使いの素質と言う物を
引き出され、めでたくスタンド使いになった。
今、俺はある男を追っている。いや、追う羽目になった。
その男と言っても年齢は俺より下ぐらいの糞餓鬼なのだが・・・。

事の始まりは40分ぐらい前に遡る。
「ふう、やっと詰め替え作業が終わったよ。」
その時間俺は部屋に篭ってある事に専念していた。まあお世辞には綺麗とは言い難い部屋ですが。
壁は所々剥れていて、ポスターとナイフが刺さったダーツの的が掛けてあり、
床にはお気に入りの漫画や小説、MDプレイヤーとプレステ2がでんと置いてある。
こんな部屋でも窓からの景色はよく。高台の上の墓地が夕日に照らされている時が俺のお気に入りだ。

「おーい。アヒャは居るかー?」
部屋に入ってきたのは俺の兄貴、ネオ麦茶。野球部に所属している。
「居ますけど何かー?」
「今お前暇か?ちょっと行って貰いたいとこが在るんだけど。」
はあ、またかよ。野暮用でどっかいくんだったら人に頼まず自分で行けよ!
「どんな用事?」
「まず郵便局でこの手紙を出してきてくれ。後もう一つがこの本を買って来る事。」
兄貴は俺の目の前でチラシを見せた。
「『どすこい超常現象』何この本!?」
「いやいや、『どんとこい超常現象』だから。皆が今売れてるから買いだって言っててさ。
 それにしてもお前何してたんだ?」
兄貴は机の上にあった大量の血液パックと御煎餅が入っていた空き缶。そして
田舎でよく見る背負い籠を見て言った。
「ああ、俺のスタンドは何か『血液』を媒体にしないと出れないらしくてさ、
 近所の総合病院からパック詰めのをかっぱらって来たんだ。で、この空き缶に
 入れて血を保存しておこうとしたら、丁度いい入れ物が無かった。で、この田舎の爺ちゃんがくれた
 籠の登場ってわけ。」
「なーんかややこしいな。とりあえず後で駄賃やるから行って来い。俺の財布を
 あずとくから。」
「はいはい、ブラジャー(古いなこのギャグ。)」

146新手のスタンド使い:2003/11/19(水) 22:49
>誇り高き愚者ボロギコ
敵が自分の能力ばらし杉だと思います

147新手のスタンド使い:2003/11/19(水) 23:01

「で、手紙出しの任務は完了。後、何の本買う予定だっけ?
 たしか『どすこい超常現象』・・・・。」
「マスター。ソレ違イマスヨ!俺ガ聞イタノハタシカ『ドボルザーク超常現象』
 ダッタハズッスヨ。」
アヒャは動きやすさの実験も兼ねて、空き缶入りの背負い籠を背負っていた。
その空き缶の口からアヒャのスタンド、ブラッドが顔をのぞかせている。
二人とも・・・。何度も言ってるけど、『どんとこい超常現象』だから・・・。
いい加減覚えてくれよ。ブラッド、なんでドボルザークなんだよ・・。
二人は雑談しながら本屋へと向かった。
「あったあった。この本か・・・。」
アヒャがそう言って会計のため懐から財布を取り出したときだった。

ヒュン!

「あれ?財布が消えた・・・。」
「マ、マスター。アレアレ・・・。」
ブラッドが指差した方向を見ると。一人の餓鬼が走っていた。
手にはアヒャの財布を持っている。 スリだ。
「・・・・あんの餓鬼!店から出てきた瞬間にスリやがったな!追いかけるぞ!」
「了解!」
二人は全速力で走り始めた。手にあの本を持ったまま・・・。
「お、お客さん!お勘定ー!」
店の主人の声など届く筈もない。
「丁度いい。俺の相棒の能力、試してみますか!」


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148新手のスタンド使い:2003/11/19(水) 23:02
親にパソ規制されてるので後編はいつ貼れんのか分かりません。
つД`)アアン・・。

149_| ̄|○。o〇(102:2003/11/20(木) 02:17
「・・・まだ3時か」仕事にもまだ早い・・・だがこれ以上寝ているのもったいないような気がした。
まだ寝ようとする体と起こしてひとまず外に出た。
大したものは何も無い、普通の町並み。普通の中で一人だけ異常な俺。
人が避けて通っていく普通にももう慣れた。むしろ今では避けられなかった時のことすら思い出せない。
俺はただひたすら行きつけのBarへ向かった。
「ぃらっしゃ・・・なんだ、あんたかょぅ。」 ・・・客をあんた呼ばわりとはいい度胸だ。
「ぃぃかげんツケはらってくれょぅ。」 「まぁ・・・そんな細かいこと言うな、俺とマスターの仲じゃないか。」
「あんたがうちの店に来て一週間もたってなぃょぅ!」 「マスター、ダイキリお願い。」
「・・・ょぅ」
俺だって払えるなら払ってる。しかし金が無い。食うに困るのにツケなど払っている余裕などまったくをもって無い。
他のギコ種はもっと働き場所があるというのに・・・
俺に出来る仕事と言ったら今やっている深夜の肉体労働ぐらいのもんだろう。
この片耳を失った俺には・・・
この俺が対人の仕事が出来ることは皆無に近い、ただ耳が無いだけで。
Z武のように同情を集めるにも耳だけでは足りないだろう。
「・・・中途半端になっちまったもんだ・・・」
無言で出されたダイキリを流し込んだ。空きっ腹にアルコールが浸み込む。残ったのはグラスと空腹感だけだった。
「ありがとよマスター、またな。」「代金払ってけょぅ!」
「出世払いで、」「・・・・・・・・ょぅ。」
マスターの睨みを背中に受け、俺は家へ向かった。
行きと変わらない道のりだった。ただ背中に衝撃が走ったことを除けば。
「なッ・・・!」何が起こったのかさっぱりだった。背中に激痛が走る。
通り魔に襲われて死ぬとはなんとも情けない・・・死ぬとはこんなものか・・・
「おめでとう、片耳のギコ君。これで君もスタンド使いだ。」
・・・言い返す言葉はいくつも出てきたが俺に返せる言葉はなかった・・・

150_| ̄|○。o〇(102:2003/11/20(木) 02:20

「・・・コさん・・・ギコさん」

やかましい声で目が覚めた。・・・最悪の気分だ。
なんで俺の部屋に人がいるんだよ・・・耳障りだからさわぐんじゃねぇよ・・・
重い瞼を開けたその先にはいつもとは違う冷たいコンクリートの天井があった。

「ギコさん、しっかりしてくださいよ。」
どうやらこいつがやかましい声の正体らしい。
「聞こえてますか?ギコさん」「あぁ・・・聞こえてるよ。」
辺りを見回すとどうやら病院らしい・・・うるさい声の持ち主は看護師の格好をしていた。
あぁ・・・そういや俺は通り魔にやられたんだっけ・・・助かるとはまた中途半端な・・・
「まったくもう・・・自分に合ったお酒の量ぐらい理解しておいてください!」
「・・・はぁ?」なんで酒を飲むと通り魔にやられるんだ?
「あなたは急性アルコール中毒で道端でぶっ倒れてる所を助けられたんです!!」
「な・・・ちょっと待て、背中の傷は?何かに刺されて倒れてたんだぞ。俺は」
「誰の背中に傷かあるんですか!?まったく酒飲みはいっつもそうやって言い訳ばっかり・・・」
なんつー強烈な女だ。それはともかく・・・傷が無い?ありえないだろ、そんな事。
恐る恐る衝撃のあった場所にに触れてみた。・・・いつもの背中だ。
「ど・・・どういう事だ?」
「と・に・か・く、これからは飲酒も適度にしてくださいね!分かりましたか!?」
「ぁ・・・・・あぁ。」


最初から出てくまで終始騒がしい女だ。
しかし・・・なぜ傷が無い?まさか本当に酔って感じた幻想だったのか?
「どうやら何もお分かりでないようだ・・・ククク」
声?まだ誰かいるのか?
「もう戻れない・・・いままでの日常とおさらばするがいいサァ」
いた・・・今まで見たこと無い・・・奇妙な・・・猿?人?青毛の獣人のような外見・・・
「なんなんだ!?お前は!!」
「俺は俺サァ・・・それ以外の何者でもない。」
「病院で騒ぐな!!!」
やかましい看護師が鬼の形相で入ってきた。
「おぃ!お前、これはなんだよ!?」「な・・・お前って、私にはしぃってちゃんとした名前が・・・それにッ」
「あんたが指差してるとこには何も無いわよ!!!」
・・・嘘だろ?そんな・・・
「あれには見えないよォ・・・選ばれた者じゃないから。ククク」
・・・まだ幻想の中にいるのか・・・今日は厄日だな・・・

151_| ̄|○。o〇(102:2003/11/20(木) 02:42
以上・・・覚醒編でした・・・_| ̄|○もぅダメポですね・・・
上の間取りし忘れたし_| ̄|○文が厨なのが一番痛・・・

んで登場人物説明・・・

片耳ギコ・・・幼児期に事故で両親と片耳を失ったギコ種。
      2年前まで孤児院にいたが不況で潰れる。
      基本的にクール。そして激情。人並みはずれた適応能力があり
      どんな所でもすぐに馴染む。

看護師しぃ・・・片耳ギコ宅の近所の病院にいる看護士。
       某先生スレや教授スレのしぃのように
       性格は男勝り、凶暴、姉御肌。

青猿・・・某小説からのパクリ。性格は陰湿、非情、狡猾。

_| ̄|○コイツさんとかあんま先生とかもだしたいなぁ・・・

152:2003/11/20(木) 20:26

「―― モナーの愉快な冒険 ――   影・その3」


『矢の男』は去っていった。
立ち込めていた不気味な気配も嘘のように消えてしまった。
「なんで逃げたモナ? ヤツの方が有利だったはずなのに…」
リナーは日本刀やサブマシンガンを拾って、服の中に収めている。
「私達のスタンドや戦闘能力を試していたようだったな」
「試してた…!? その割には、殺す気マンマンだったモナよ?」
「こちらが死んでもいいくらいの気持ちだったんだろう」
確かにそうだ。
向こうは、明らかに手を抜いていた。
奴のスタンド能力、単なる瞬間移動だとは思えない。
もっと奥深い何かだ。
おそらく、あれは能力の応用に過ぎない…
奴の余裕さから、そんな事を感じた。
ふと見ると、リナーは肩膝をついていた。息も荒い。
「リナー! やっぱり、さっきの傷が…」
俺はリナーに駆け寄った。
「いや、大丈夫だ」
「でも、あんな威力の攻撃を受けて…」
「これは、さっきの打撃とは関係ない」
リナーは立ち上がった。
もう、苦しみの表情は消えている。
「それより、奴は君の事を未来予知型のスタンドと言っていたが?」
そうだ、リナーには俺のスタンドについて何も言っていなかった。
俺は、夢の中でもう一人の俺から受けた説明を繰り返した。
「楽園の外を視る力…『アウト・オブ・エデン』か…」
リナーは怪訝そうな顔をした。
「解せないな。能力が強すぎてヴィジョンが維持できないという事だが…
 そこまで強力とは思えない。実質、感覚補助に近い能力なのにな…」
「モナも、アイツの言動を100%信じている訳じゃないモナ…」
アイツは、俺の中に17年も潜み続けてきたのだ。
俺を騙すくらい朝飯前だろう。
「そして、確かにヴァチカンの名を出したんだな…?」
リナーは言った。
物覚えの悪い俺だが、アイツの言葉は覚えている。

『このスタンドは…ヴィジョンを持たないタイプだ。
 スタンドパワーは全て能力に傾けられているのだな。故に、ヴィジョンを維持できない。
 このスタンドを、ヴァチカンの連中はこう呼んだ…
 楽園の外を視る力…『アウト・オブ・エデン』 』

確かにこう言った。
「…」
何やら、リナーは下を向いて押し黙っている。
「何を考え込んでいるモナ?」
リナーは視線を上げた。
「君と私の出会いが本当に偶然なのか、と思ってな…」
「モナを疑ってるモナ?」
たちまち不安になる。
リナーに拒絶されたら、俺は…
「いや、君を疑っている訳ではない。君が黒幕なら、さっきのような話は何の得にもならんしな」
俺は胸を撫で下ろした。
そして、撫で下ろしついでに聞いた。
「リナーのスタンドって、どんな能力モナ?」
能力を容易くバラすのは三流。
聞いたところで、教えてくれるはずがないが。

「スタンド名は『エンジェル・ダスト』。私の体内を循環している液体状のスタンドだ」
…なんと、あっさりと答えてくれた。
リナーは戦闘者として三流だったのか?
俺のスタンド能力を教えたから、自分も律儀にバラしているのか?
驚く俺を尻目に、リナーの説明は続く。
「能力は、液体の『流れ』を操ること。だが、その力も射程も極めて低い。
 影響を及ぼせるのは、私の体内か、直接手で触れた箇所くらいだな。
 君の怪我の治癒を促進させたのも、この能力を応用したものだ」
なるほど。
別に、治療のための目的ではないのか。
「戦闘時には、脳内物質の分泌を自分でコントロールできる。アドレナリンやエンドルフィンなどだな。
 これによって、常人以上の身体能力を発揮できる」
だから、『矢の男』と戦ったときの動きは普通の人間の動きを凌駕していたのか。
「弱点は… 対スタンド使い戦では、本体を狙う以外に攻撃方法がない事だな」
そう、まさにさっきの戦いだ。
…リナーが容易く能力を説明した理由が分かった。
能力を知られても、いっさい影響がないからだ。
さらに、リナーはスタンド能力に頼ってはいない。
それどころか、どこか能力を嫌悪しているような…
別に、卑怯でもなければ周囲の害にもならない能力である。
俺の気のせいだろうか。

153:2003/11/20(木) 20:27

まだ質問はある。
「さっきのヤツは何モナ?」
『矢の男』に余りにも酷似している。
だが、『矢の男』はあくまで創作上の人物のはず。
リナーは少し考えて口を開いた。
「ASAの調査では、この町にはスタンド使いは存在しないはず。君がスタンド能力に目覚めたのも最近だしな。
 しかも、あの強力さ… ASAの脅威分布を適用するなら、間違いなくランクS。
 ただちに懐柔あるいは抹殺が必要なレベルだ。『空想具現化』の産物とみて間違いないな」
空想…具現化…?
創作上の人物、『矢の男』。
何だろう、この奇妙な符合は。
「その『空想具現化』ってのは、漫画のキャラでも問題ないモナ?」
「条件さえクリアされれば、創作上の人物が具現化されてもおかしくないが… 何か心当たりでもあるのか?」
俺は、『矢の男』に関する説明をした。
「なるほど。あれも、殺人者としての一つのカタチか。あれも当たりだな」
リナーは納得したようだ。
もう、俺だけ何も知らないのはたくさんだ。
「リナー!!モナにもこの町に潜む脅威ってやつを説明してほしいモナ!
 モナもスタンド使いだし、戻れないところまで踏み込んでしまったモナ!」
「戦闘中に腰を抜かしていた人間がよく言う…」
もっともだ。
返す言葉もない。
「リナーを守る」と言っておいて、肝心な時に腰を抜かし、守る対象に助けられるとは…
しかし、リナーは言った。
「しかし、今さら君をただの部外者と捉えるのは無理があるな…」
そして、リナーは語り出した。
「私は『教会』の指示で、あるスタンドを追っている。そのスタンドの名は『アルカディア』。
 『空想具現化』という強力な能力を持つ」
「? リナーは確か、吸血鬼を退治するのが仕事のはずモナ?」
そもそも、『教会』というのは吸血鬼を殲滅する機関のはず。
スタンド使いを相手にするのはお門違いではないだろうか?
「『アルカディア』の本体は、約150年前に死んでいる。その本体は吸血鬼で、『教会』が始末した」
本体が死んでも、スタンドが残るなんて…そんな事がありえるのだろうか。
「スタンドというのは生命エネルギーのヴィジョンだ。その生命エネルギーは本体から供給されている。
 よって本体が息絶えた時、生命エネルギーの供給がストップし、スタンドも消滅する。…通常のスタンドならばな」
つまり、『アルカディア』とやらは通常のスタンドではなかったという事か。
「本体を替えるタイプのスタンドと、死んでから発動するタイプのスタンドが、その例外に位置する。
 前者の場合は、物質を拠り代にして、所有者を仮の本体にするというのが多い。
 また、特定条件で元の本体を殺して移動する、というスタンドも存在する。
 このタイプのスタンドは、大抵意思を持っている」
そして、仮の本体の生命エネルギーで活動するという訳か。
まるで、憑依霊だ。
「そして、死んでから発動するタイプ。これは極めて例が少ない。発動すると暴走状態になるようだが…
 これは、『アルカディア』には当てはまらない」
「ということは、『アルカディア』は本体を替えるタイプのスタンドモナね?」
「その通りだ」
リナーは頷いた。

154:2003/11/20(木) 20:28

「『アルカディア』の特殊なところは、本体を持たない状態でもある程度は行動できるという事だ。
 キャパシティの高い本体候補を探したり、制限を受けながらも能力を使用する事が可能だ」
でも、スタンドは生命エネルギーのヴィジョンとリナー自身が言ったはず。
生命エネルギーの供給がない状態でウロウロするのは、理屈に合わない。
「生命エネルギーといっても、その質は様々だ。先ほど述べた、死んだ後に発動するタイプのスタンドは、
 怨念のエネルギーで動いているらしい。これも、生命エネルギーの一つと言える」
俺は、話についていくだけで精一杯である。
「『アルカディア』は、希望・願望のエネルギーで動いている。
 そして、その生命エネルギーを活動源にする代替に、人々の希望や願望を実現する。
 『アルカディア』は、そういう特殊な行動システムを構築した。完全な自律行動型だ。
 それを可能にするのが、『空想具現化』。 …奴の能力だ」
人々の望みを叶えてくれるなら、善良なスタンドではないのか。
「じゃあ、モナが大金持ちになりたいという願望を抱いてたら…」
「無効だ。『アルカディア』も、そんな個人個人の願望を叶えるようなヒマなことはしない。
 それなら、短冊にでも書いておいたほうがまだマシだ」
自分の人間性の低さが露呈したようで、何となくしょんぼりした。
「奴は、多くの人間が同時に抱いた願望を実現させる。その方が生命エネルギーを集めるのに効率がいいからな。
 奴の手段は主に、噂の実現だ」
噂?
希望・願望とは別物のように思えるが…
「噂というのは、希望・願望と紙一重なんだ。特に、無意識での願望がクセモノだ。
 現に、今回の連続殺人事件。恐れられる一方で、センセーショナルに騒ぎ立てる連中も多い。
 犠牲者が出る度に、マスコミが興味本位で書き立てる。それを受け取る側も、心のどこかで事件の継続を願っている。
 これは、悪いことではないんだ。無自覚なんだからな。
 人間である以上、他人の不幸を楽しんだり、どこかで日常からの脱却を願っているのは仕方がない。
 その闇を、『アルカディア』は利用してくる…」
そうして、噂が実現する訳か…

155:2003/11/20(木) 20:29

「話を戻そう。仮の本体を持っていない状態では、そんな風に希望・願望を実現させて生命エネルギーを得ている。
 しかし、仮の本体を得た場合、その性質が変わる。
 馴染むには時間がかかるものの、そいつから生命エネルギーを吸い上げることが可能になるからな。
 その状態では、『空想具現化』は強力になり、自身の思考をそのまま具現化する事が可能になる。
 人格も『アルカディア』に乗っ取られ、仮の本体は奴の操り人形と化す。
 今はその状態には達していないはず。そうなる前に一刻も早く見つけ出し、消滅させないとな…」
そんな厄介で危険な奴が、この町に潜伏しているとは…
「そして、その能力のおこぼれを預かるためか、また混乱に乗じて暴れるためか、この町に多くの吸血鬼が集まってきている。
 『アルカディア』の元の本体は吸血鬼だったし、奴等の世界では有名なスタンドだ。
 そいつら有象無象の殲滅も、私の任務のうちだ」
なるほど。だからリナーはこの町に来たのか。
「そんな折り、連続殺人事件が起きた。人々は納得のいく殺人鬼像を予想し、口々に噂する。それらが具現化していき…」
「…殺人鬼の影が発生する、ってことモナね」
「『アルカディア』はこの町を混乱させたいのだから、殺人鬼の噂はまさにうってつけだ。
 もう一人の君は、私が来てから殺人をやめているようだが… こうなってしまうと、元の事件はもう関係ない。
 殺人鬼の影が殺人を繰り返し、それが噂になり、さらに殺人鬼の影が増殖して… 悪循環だ」
とんでもない脅威だ。
『アルカディア』の存在が、この町を壊滅に追い込む可能性もある。
しかも、もう一人の俺が起こした事件が発端だ。
俺の思いを察してか、リナーが言った。
「もっとも、あの事件がなくても結果は同じだ。ただのきっかけに過ぎない」
そうだ。割り切って考えよう。

「ところで、噂になったら、何でも実現するモナか?」
「基本的に制限はないが…あまりに無茶な噂や、奴に不利な噂は実現しないだろうな」
…そうか。
『アルカディア』は死にましたデマ作戦は早くもボツのようだ。
「で、リナーは『アルカディア』の居場所を探しているモナね…?」
「ああ。さっきの吸血鬼のセリフを覚えているか?」

『奴の居場所なんて、能力の性質を考えれば明らかじゃないか?
 「空想具現化」の力が存分に振るえる場所さ…!』

そう言っていた。
リナーは、俺の目を見据えて言った。
「そう。つまり、この町で一番噂が囁かれる場所だ」
噂といえば…近所のオバチャン?
俺の頭に、「井戸端会議」という言葉が思い浮かんだ。
そして、付随して浮かぶヴィジョン。

ここに隠れてると、いろんな人の
愚痴が聞けて楽しいYO。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

.        ∧_∧
.       ( ・∀・ )
        と,     つ
   ┌──┴‐‐‐┴‐─┐
   └┬─┬─┬─┬┘
     ├┬┴┬┴┬┤
     ├┴┬┴┬┴┤ww
   ⌒⌒ ̄ ̄ ̄⌒⌒ ̄  ⌒

「…井戸の中?」
「馬鹿か、君は」
リナーは心の底から蔑んだ目を寄越した。
「大体、この町のどこに井戸があるんだ? 何時代に生きてるんだ、君は?」
全くその通りだ。
「この町で一番噂が囁かれる場所。君がいつも通っている場所だ」
「…学校!?」
俺は驚きの声を上げた。
リナーは頷く。
何てことだ… そんな身近な場所に…
「まあ、まだ確定した訳ではないが」

156:2003/11/20(木) 20:30

さらに、今や脅威は『アルカディア』だけではない。
「で、あの『矢の男』も殺人鬼の影ということモナか…」
「そう。無差別にスタンド使いを増やそうとする、最悪の影だ」
あれも、殺人鬼の正体として噂になったのだろうか?
いや… 3日ほど前に学校で、連続殺人事件の話が出た時…

『まさか、矢のようなもので刺されていたとかはないモナ?』

…そんな馬鹿な。
冗談で言っただけだ。噂になったなどというレベルじゃない。

「一人の願望や希望なら、実現はしないってさっき言ったモナね」
「ああ」
リナーは頷く。
「それが『アルカディア』にとっても都合がいい願望なら違ってくるが。
 しかし、そういう都合のいい話が潜伏しているはずの奴の耳に入ったら、だが…」
そうか、なら関係ないはずだ。

リナーは、話を続けた。
「『矢の男』は、作中で目的が明かされていない。スタンド能力も不明。その状態で奴は具現化してしまった。
 奴は、目的を失い、ただ矢でスタンド使いを増やす空っぽの人格に過ぎない。
 いや、目的を失ったというのは違うな。目的はないんだ。具現化した時点で、目的が不明だったんだから。
 すなわち、具現化する要素からこそぎ落ちた。君の能力で『矢の男』を見た時の空虚感はこれが原因だ。
 奴はあくまで、作中のあの時点での『矢の男』の疑似人格なんだ」
目的を持たず、スタンド使いを増やす、という行動だけが具現化した存在…
それが、奴だ。
「だから奴は、スタンド使いは相手にしないんだ。奴にとっては増やすべき存在だからな。
 邪魔をされない限り、スタンド使いを殺すのは奴の行動論理に反する」
「モナ達、思いっきり邪魔をしてた気が…」
「君は腰を抜かして戦闘不能だったし、私は撤退を考えていた。だから奴も見逃したんだろう」
リナーは少し不機嫌そうだ。
やはりムカついているのだろう。
戦闘者としてのプライドってやつだ。
「とにかく、奴はただ矢で人を射抜くだけの存在と化している。犠牲者も増える一方だろう。
 この町に生きていてもいい存在じゃないな…」

このままだと、奴の矢での犠牲者は雪だるま式に増えていく。
その中に、ギコやしぃ、モララーやガナーがいないとは限らない。
断然ガッツが燃えてきた。
「よし、奴をやっつけるモナ!!」
「いや、無理だ」
リナーの冷たい返事。
俺はズッコケそうになった。
「あのスタンドは強力すぎる。何より、私は対スタンド戦は専門外なんでな」
「じゃあ、どうするモナ!?」
「おそらく、『矢の男』は… この国のスタンド対策局・公安五課では対応できない。
 ASAに連絡して、討伐隊の出動を要請する」

ASA?
さっきも聞いた気がする。
「ASAって何モナ?」
「Anti-Stand Association。人に仇を為すスタンド使いを抹殺する組織だ。
なるほど。
スタンドを悪事に使う連中がいる限り、抑止力が必要という事か。
リナーは話を続ける。
「吸血鬼の殲滅組織は、世界にただ一つ。『教会』だけだ。
 だが、スタンド使いに対する組織は世界中に散在する。各国にも対応部署が存在するし、私的な結社・財団も多い。
 古くは『自由石工』や『Rosen Creutzes』、最近では『スピードモナゴン財団』などだな。
 その中で、最も強力かつ武闘派の組織がASAだ」
当然だが、そんなものの存在は知らなかった。
その存在は、一般人には極秘中の極秘だったことは想像に難くない。
「スタンド使いは、吸血鬼と違って徒党を組むことが多い。
 例えば…スタンド使いで構成されたマフィアやテロリストだな。当然、警察の手には負えない。
 そして各国のスタンド使い対策部署でさえも手に負えない事件が起きた時、ASAの支援が要請される。
 完全に武力行使専門だ。皆殺し機関という点では、『教会』といい勝負だ」
そして、そのASAに『矢の男』の討伐を要請するのか。

「今、連絡したとして…明日の昼に到着、夜に討伐実行といったところか」
明日の夜!?
「遅すぎはしないモナか?」
「『空想具現化』の能力は、夜の間しか効果を発揮しない。今日はもうすぐ夜も明けるし、問題はない」
なるほど。そう言えば、本体はかって吸血鬼だったと聞いた。
ふと時計を見る。
午前五時。
明日は土曜日なので半日授業だが、学校があることに違いはない。
が、そんな事は大した問題じゃない。
討伐部隊を要請したといっても、事情だけ告げて「頑張ってね」では終わらないだろう。
俺もそれでは納得できない。
なにせ、奴に見逃してもらうという屈辱を味わっている。

…忙しい一日になりそうだ。


  /└────────┬┐
. <   To Be Continued... | |
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157ダンボール </b><font color=#FF0000>(M.nd32Bk)</font><b>:2003/11/20(木) 22:02
乙ッ!!

158N2:2003/11/21(金) 00:50
小説スレ、かなり盛り上がってきましたね。
乙です。

>>144
じゃあ、『サバイバー』に変更します。(プッチとDIOの会話の「どっちが強い」レベルで)

159:2003/11/21(金) 21:12
                    (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒
                    ( そろそろ人物紹介いるかな?
                 O  ( なんて言えないよなぁ…
               ο    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
   /´ ̄(†)ヽ      。                       ∧_∧
_ ,゙-ノノノ))))) _∧_∧__                    (・∀・; )
  ノノ)ル,,゚ -゚ノi ( ;´∀`)                      /   /⌒ヽ
―/,ノくj_''(†)j l> (    )―┘、                  /⌒/⌒/ / |
‐―― く/_ハ_|ハゝ┐ ) )――┐                  (つ/_/ /\ |
      (_ノ_ノ  .(__ノ__ノ     |                (____/  ヽ
                                 _/ / /  \  丿
                   "~"    """  :::  (__( __ )  "~""  "~"
                """    :::          """

160新手のスタンド使い:2003/11/21(金) 21:24
>>N2
あのさ、こんなこと言える立場じゃないだろうけどそうやって自分を卑下する
コメントはしないほうがいいんじゃない?
本気で言っているなら「じゃあ投稿すんなよ」と思うし
謙遜だったとしても「『いやそんなことありませんよ』とでも言ってほしいの?」って
感じる人もいるだろうに。

161新手のスタンド使い:2003/11/21(金) 22:47
>>145より

合言葉はwell kill them!その③―Runner 後編


はあ・・・・、はあ・・・・・、
と、まあこんな事が起こったせいで俺は財布を盗った餓鬼を追いかけている。
しかし何かが引っかかる。どう見てもおかしい。
相手は俺より年下のチン毛も生えてなさそうなジュノンボーイ。
俺は奴より遥かに年期の入った高校生、それは事実だ。
ところがこの距離の差はどういうことだ?
本当だったらとっくに俺が餓鬼を捕まえているはずなのだ。
だが奴と俺の距離は縮むどころかだんだん広がっていく。
トリビアでもやっていたが、某金メダルランナーが一般人のスリに逃げられた(しかも餓鬼)
と言う事件は知っている。そう考えれば納得する。だが俺はどうしても納得できなかった。

「畜生!なんだってんだいったい!何でアイツは足が速いんだよ!」
「マスター、落チ着イタ方ガイイゼ。何ニデモ言エル事ダガ落チ着キヲ無クシタラ
 何ヲヤッテモウマクイカナイッスヨ」
そうだ、ここで奴を逃がしたら兄貴に何言われるか分かったもんじゃない。
ここは冷静に物事を見ることが大事だ。
ブラッドの言うように少し落ち着いて奴の行動を見てみた。
するとある事に気がついた。
「アイツ、よく見たら走っていない・・。『滑っている』んだ!」
奴はコンクリートの道路の上を、まるでスケートのようにして滑っていた。
「まさかアイツもスタンド使いじゃないか!?」
「ソノヨウッスネ。ケド地面ニハ何モ起コッテナイ。地面ヲ凍ラシテルンジャ無イナ・・。」
「あ!あの角をまがった。」
そこで奴に追いついた。天の助けと言うべきか、行き止まりになっていた。
「もう逃げ場はねーぞ。堪忍しな!」
だが、餓鬼はニヤッと笑うとこう言った
「バーカ!ここへ来たのはワザとだよ!」
そして餓鬼は壁に向かって走り出した。
次の光景に、俺は目を疑った

162N2:2003/11/21(金) 22:57
>>160
すいません…。
あれは、どちらかといえば洒落のつもりで言ったものですけど、
人に不快感を与えるような形になってしまいました。
皆さんにお詫び申し上げます。

163N2:2003/11/21(金) 23:02
>>161
割り込みしてしまい、すいません。
続きをどうぞ。

164新手のスタンド使い:2003/11/21(金) 23:11

「おいおい・・・。これって有りかよ。」
なんと餓鬼は壁を垂直に登り始めた。まるでお猿の次郎だ。
「これが俺の能力!摩擦をコントロールして滑って移動したり壁を登ったりできるんだ!
 お前にはできないだろ!やーい!」
餓鬼はどんどん壁を登って一番上までいくと消えた。
「きーーーーーー!憎たらしい糞餓鬼がぁ!とっ捕まえてぶっ潰す!」
「デモ見失ッチャッタデショ。」
「うっ!・・・鋭いなお前・・・。」
「トニカクドッカ辺リヲ見渡セル所ヘイコウ。ソウスレバミツカルカモ。」

俺たちは近くのマンションの屋上へ上がった。
ここからだと町が見渡せる。
「何処行きやがった糞餓鬼が・・・。」
「ア、イタ。」
ブラッドが指差す方を見ると、さっきの餓鬼が屋根の上を逃げていた。
やっぱり猿そっくりだ。
「どうする?何か策でもあんのか?」
「アルヨ。耳貸シテ。」

「ここまでくればあいつらも追ってこないだろう。さて、いくら入ってんのかな〜。」
餓鬼がアヒャから盗った財布を開けようとした時だった。
「まーてールパ〜ン!!!!」
後ろから聞き覚えのある声がした。
餓鬼が振り返ると・・・・。
ハンググライダーのような形になったブラッドにつかまったアヒャが屋上から飛んできた。
「げー!あいつあんな事もできるのか!?」
餓鬼はあんぐりと口を開けている。
「まさかお前がこんな事ができるとはな。アイツまでの距離が縮まったぜ!
 で、どうやって止まるの?」
「ナスガママ、運命二身ヲ任セル事。」
「へ?ブレーキとかって付いてないの?」
「コレダケハ言エル。無理。」
・・・・・・・・・
「悪いな・・・・。避けてくれえええええええええええ!!!!!」
「う、うわあああああああああああ!!!!!」
ドガシャアアアアン!ガラガラガラ!
メキメキ!ボキイ!!!!


シュウウウウウウウウ・・・・・。

165新手のスタンド使い:2003/11/21(金) 23:29

「あら、頼まれていた本いつの間にか持っていたよ。ま、いいか。」
「ソレヨリコイツドウスル?」
「ちっくしょう!もうちょっとだったのに!ウワアアアアン!」
「ま、コイツも怪我したし許してやるか。だけどお前何でこんな事したんだ?」
「家が貧乏だから少しでも父ちゃんと母ちゃんに楽させてやりたかったんだよー!」
「そうか、でもこんな事してお前の父ちゃんと母ちゃんは喜ぶか?折角もらったスタンドなんだから、
 もっといいことに使えよ。」
「分かったよ!ウワアアアアン!」
「さ、財布の中身が盗られてないかチェックしよっと。」
アヒャは自分の財布を振ってみた。

ちゃり〜ん
・・・・・・・・
「5円・・・・。お前抜いたか?」
「抜くわけねーだろ!」
「じゃあお前の所持金は?」

ちゃり〜ん
・・・・・・・
「7円・・・・俺のと合わせても12円か・・・・。」
ひゅううううう・・・・。
二人の間に北風が吹き荒れていた。

アヒャ――餓鬼と二人で駄菓子屋へ。後で分かったことだが、財布にはもともと
     5円しか入ってなかったらしい。

  /└────────┬┐
. <   To Be Continued... | |
  \┌────────┴┘



スタンド名・・・不明
本体・・・ウワアアン

摩擦力を操る。摩擦を0にすれば滑る事ができ、
最大にすれば壁も登れる。

このスタンド案の人、居ましたらこの名前とスターテスを・・・。

166新手のスタンド使い:2003/11/22(土) 14:55
>>165の最後に追加。

二人は何故12円だけで駄菓子屋へ行けたのか?答えは簡単。
協力してかっぱら・・・・ゴホッ!ゴホン!
仲が良くなり万引き仲間に。

所持金5円の件はただ単にネオ麦茶の手違い。

167誇り高き愚者ボロギコ:2003/11/23(日) 18:13
〜凶悪なスーパーボール1〜
その日は嵐だった。
前回の戦闘が終わった後、ボロギコは家を失った。
土手に広がった炎が彼の家をも巻き込んだのだ。
多少の雨風なら頭上の橋が防いでくれるが、風が伴う横殴りの雨となれば当然ぬれてしまう。
そこいらの人間よりははるかに抵抗力のあるボロギコでも、風邪を引くかもしれない。
薬や布団どころか家まで失ってしまったボロギコにとってそれは致命的なことだ。
ボロギコは雨を一時的にしのぐために、家が無かったころよく使っていた場所へ向かった。



新茂名王駅
地下鉄駅として建設されたこの駅は近隣の大都市、茂羅羅町への交通の便もよく多くの人が利用する。
一方、数年来の不況によって巻き起こったリストラの嵐により家を失ったものたちが集まっている場所でもあった。
S市はたびたび対策を練って入るのだが一向にその数は減らない。
ついには駅の一角はホームレス・ストリートと化してしまっているのだ。
雨風を逃れるためにボロギコが訪れたのはここだった。
「おお、ボロギコじゃねぇか」
ボロギコの姿を見るとすぐに一人の老人がボロギコに声をかけた
「や、じーさん。ちょっとした事故でね、家が燃えちまったんだ。しばらくここで雨風しのがせてくれねぇか?」
「おお、かまわねぇよ。何ならもうここに住んじまいなよ」
「へっ、勘弁してくれよ。市の浮浪者施設に入れられたらたまらんしね・・・」
「そうかい、おめぇさんがいると楽しいんだがなぁ」
老人は少々残念そうに、しかし孫のような年齢のボロギコと話せたからか何処か嬉しそうに喋った
「さて・・・土産に魚もってきたぜ、食うか?」
「ん・・・おお、ありがたい。ちょうど腹がへっとったとこだ」
「そうか、七輪はあるかい?」
「七輪はあるが炭が無いな・・・わしとお前さんだ、生でも問題なかろう」
「違いねぇ」
そういうと二人は生の魚を丸々食べ始める
談笑しながら魚を食べていると
バシィ
突如そんな音がした
他のホームレスたちの会話でうるさいここではよく聞こえなかったが、確かにそんな音がした
「ん・・・じーさん、今変な音しなかったか?」
「んー?きこえんかったぞ?」
「そうか・・・」
老人の発言を聞いて空耳かと思ったそのとき
バシィバシィ
今度は続けて、2度
それも先ほどより大きい音でだ
「・・・ジーさん今のは聞こえたろ?」
「あーん・・・なんもきこえんぞ」
ボロギコはとたんに不信感を抱いた
この老人は年こそとっているが難聴を起こしているわけでもない、地獄耳だとまで言われている人なのだ
ボロギコの脳裏にひとつの考えが浮かんだ
自分の不思議な能力・・・スタンド能力は普通の人間には見えないようだ・・・
では・・・今まで気にも留めなかったが・・・音はどうなのだろう?
スタンドの音というのは聞こえるものなのか?
もし聞こえないとしたら?
「まさか・・・こないだの奴の仲間か・・・?」
ボロギコがそう思った瞬間
「ギャァアアアアア!!」
突如通路を曲がった向こうから断末魔が響いた
「じーさん!俺少し見てくるわ!」
ボロギコはそういうと走り出した

168誇り高き愚者ボロギコ:2003/11/23(日) 18:15
〜凶悪なスーパーボール2〜
バシィバシィバシィ
音の間隔は徐々に早くなっている
ボロギコは角を曲がる
そこには
「うっぐ・・・・・」
体の一部に穴をあけられているものが数人倒れている
そしてその奥には
「ボール・・・?」
ひとつのボールが狭い通路の中であちこちバウンドしていたのだ
普通ボールが壁等にぶつかって跳ね返ると力が減って速度も落ちるはずだ
しかし、このボールは逆に壁にぶつかるたびに加速しているのだ
「・・・あのボールが敵のスタンドか?・・・おいあんた!あれが見えるか?」
ボロギコは倒れている男にを起こして問い掛けた
「あれ・・・?そんなことより・・・ここは異常だ、急に足がえぐられちまった・・・」
見えていない
ボロギコはあれがスタンドだと確信した
「・・・畜生、無差別に攻撃するスタンドか・・・なんて迷惑な野郎だ」
ボロギコは男を寝かすとボールのほうを向いて立ち上がった
きっとこのボールの本体はこの間の奴の仲間であろう。
次の敵がくることも十分予想できたはずだ。
なのに自分は顔見知りの多くいるここにきてしまった。
ボロギコは思った
「始末は自分でつけるッ!これ以上気傷つけさせはしない!!」
「近づくのはやばそうだが・・・あの程度の速度ならッ!俺のセパレート・ウェイズのエネルギー弾で安全に打ち落とせるッ!!」
ボロギコはスタンドを発現させるとボールが弾んでいる方向に指を向けた
セパレート・ウェイズの指が切り離され、エネルギー弾を形成する
「前回襲われてから少々訓練した・・・精度はは上がってるぜ!シュート・ヒムッ(狙撃)!!!」
セパレート・ウェイズのエネルギー弾はボールに向かって突っ込んでいく
ボロギコは生来サバイバルな生活を送っている、その中で生まれた天性の狙いは完璧だった
しかし
エネルギー弾がボールに直撃した瞬間
バシィ
壁にぶつかったときと同じ音がして、そのボールはエネルギー弾と同じ方向にすっ飛んでいったのだ
そして、反対側の通路の壁にぶつかり、バウンドして
「なにぃ!どこも傷ついていない!!俺のエネルギー弾にもバウンドしやがった!?」
先ほどの攻撃など暖簾に腕押し、柳に風といった感じで
元気いっぱいッボロギコのほうに飛んできたのだ
「ま・・・まずい!!」
ボロギコは間一髪それを避ける
「攻撃目標はそいつだ・・・バウンド・ドッグ」
ボロギコが来た角の奥から声がした
その声と同時に再びボロギコをめがけてバウンドしてきたのだ
「うおっ!!」
再びボロギコはそれを避ける
しかし、また壁に反射しボロギコに向かってくる
「はじけ!セパレート・ウェイズ」
ボロギコはスタンドにガードさせる
「十分な速さになったようだね・・・僕の名はトララー」
先ほどの声の男が角から姿をあらわす

169誇り高き愚者ボロギコ:2003/11/23(日) 18:16
〜凶悪なスーパーボール3〜
明らかにこのスタンドの本体だが、ボールを避けているボロギコは一瞬男のほうを見ただけだった
「うん・・・賢明だね、中には出てきた僕に気を取られて即死なんて馬鹿もいるから」
ボロギコの行動に少し嬉しそうにトララーは言う
「うん・・・僕のスタンド・・・バウンド・ドッグっていうんだけど・・・避けるの、だんだんつらくなってきただろ?」
「・・・・」
「徐々に加速してるのさ、最初はそれこそ幼児が投げたボールより遅いんだけどね」
「くっ・・・」
「でね・・・バウンド・ドッグは、有機物はえぐりとって無機物にに跳ね返るんだ・・・わかるかい?」
「スタンドで攻撃したとしてもバウンドしてダメージを受け流してしまう、かといってスタンドじゃなければスタンドは攻撃できない」
「・・・・・」
「そして!スタンドで防御するってことは跳ね返る上に拳のの動きの分だけ余計に加速させているんだよ・・・」
「・・・ぐあ」
ボールがボロギコのわき腹を掠める
「あはは、ちょっと食らったね・・・・いつまで避けられるのかな?」
「・・・有機物をえぐりとる」
ボロギコがつぶやいた
「ん?」
「ならてめぇがえぐりとられやがれ!ゴルァ!!」
バシィ
セパレート・ウェイズの拳がバウンド・ドッグのボールをトララーめがけて飛ぶようバウンドさせた
「てめぇのスタンドをくらいやがれ!例え解除したとしてもその瞬間ぶん殴ってやるぞゴルァ!!」
ボールがトララーに直撃する
バシィ
トララーに直撃したボールは跳ね返り速さを増してボロギコに突っ込む
「うぐぅあ!!」
ボールはボロギコの右足を掠めた
「ふふ・・・無駄さ、まだ説明してなかったけど僕のスタンドには二つのモードがある」
「ひとつはさっき無差別攻撃してたときみたいな無差別自動モード、・・・そして今の標的のみに向かっていく標的追尾モードだ」
「そしてこの近距離追尾がえぐりとるのは標的のみ・・・僕にぶつけようとしたって無駄、跳ね返るだけさ」
「そう、そして次に君のとる行動は『バウンド・ドッグをスタンドでつかもうとする』だ」
喋り終えるとトララーはボロギコを指差した
「なら・・・捕らえるまでだ・・・・はっ!?」
「そしてそれも無駄に終わる・・・」
バシィ
ボロギコの行動は完璧に予想されていた、ボールはセパレート・ウェイズが手を閉じるより先に跳ね返ったのだ
「さて・・・足を怪我した君はもうスタンドで防御し続けるしかすべは無い・・・このままならいつかは死ぬだろう」
「・・・・」
「しかし僕は早く帰りたい、大好きな野球中継が始まってしまうからなぁ。そこでだ・・・私もこの拳銃で攻撃するとしよう」
「!?」
そういうとトララーは銃口をボロギコに向けた
「君の近距離パワー型スタンドならこの銃弾ぐらい防げるだろう・・・しかし、防御もままならない私のスタンドと同時ではどうかな?」
「う・・・てめぇ」
「野球中継まであと30分・・・十分間に合うかな」
そういうとトララーは連続で引き金を引いた

駅には銃声が木霊する・・・

170誇り高き愚者ボロギコ:2003/11/23(日) 18:17
〜凶悪なスーパーボール4〜
「ふふ・・・終わったな・・・」
トララーは倒れているボロギコを見下しながらつぶやいた
「さて・・・スタンドを戻して帰るとするか」
トララーはあたりを見回した
「ん・・・!?私のスタンドが・・・ない!?ばかな!まだ標的追尾モードは解除していない!この場からなくなるなんてありえない!」
「ふふふふふ」
倒れているボロギコから笑い声がする
「きさま・・・生きている!?」
「はまったな・・・・」
そういいながらボロギコはゆっくり起き上がる
「どうやって・・・いや、バウンド・ドッグはどこに!?」
「てめぇのスタンドは・・・あそこだ」
ボロギコが指差した先、それは空気供給のダクトッ!
ボロギコはまず、バウンド・ドッグの軌道を読んでその方向にセパレート・ウェイズを発射!空気供給ダクトに穴をあけるッ!!
そしてできた穴にバウンド・ドッグが入り込むと同時に別の部品で蓋をするッ!
これで!無機物に反射する、すなわち有機物以外破壊できないスタンド、バウンド・ドックを閉じ込めることに成功したのだッ!!
「とはいえ・・・銃弾が脳天にあたればアウトだからな・・・やばい賭けではあったぜ・・・」
「ぐぅううううう!!」
スタンドを使用不能に追い込まれたトララーはうめき声をあげる
「そうッ!そして次にてめーのとる行動は『じーさんに銃を突きつけて人質にする』だ!!」
ボロギコがトララーを指差す
「う・・・うごくなぁー!!このじじい撃ち殺すぞ!!・・・はっ!?」
「そしてそれも無駄に終わる・・・」
「うぐあ・・・」
ボロギコがそういうと同時にトララーの腕が打ちぬかれ、銃は床に落ちる
「こっちにくる前に、じーさんのことを考えてセパレート・ウェイズの一部をエネルギー化してじーさんの肩に張り付けておいた」
「ボロギコ・・・」
老人がボロギコを見て言う
「じーさん、もう安心していいぜ・・・さて・・・トララーだっけ?」
「ひ・・・ひぃいいいいい!!」
ボロギコのどすの利いた声にトララーはおびえ逃げようとする
「逃げるんじゃねぇ!!」
セパレートウェイズが残った左腕を飛ばして壁に押さえつける
「やめろ・・・やめてくれ・・・・」
「無差別攻撃・・・人質・・・さらには戦闘中さんざんこけにしやがって・・・許してもらえると思ってんのかゴルァ!!」
両腕の無いセパレート・ウェイズはとび上がり
「ゴルァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
トララーに連続してけりを食らわせ
「セパレート・ウェイズ!!」
トララーを押さえつけていた左腕がエネルギー化して発射されるッ!!
「オゴァアアアアアアアア!!」
零距離でエネルギー弾を食らったトララーは壁の奥深くにめり込んだ
「二度と弾めないよう・・・そこで貼り付けになってやがれ」


ボロギコ→病院で銃弾摘出、治療費払えず借金を背負う
老人→変わらず
トララー→再起不能

171誇り高き愚者ボロギコ:2003/11/23(日) 18:17
スタンド名 バウンド・ドッグ
本体    トララー
破壊力 E(有機物に対してのみA) スピード E〜∞(バウンドの数に対応) 射程距離 A
持続力 A            精密動作性 D             成長性 E
能力
野球ボールぐらいの大きさと形をしたスタンド。
有機物にぶつかるとそれをえぐりとり、無機物にぶつかるとバウンドし速度が上がる。
なおこのスタンドには二つのモードがある。
1、無差別自動モード:有機物ならば人だろうが生ごみだろうがえぐりとる。バウンドの仕方は、物理法則にのっとる。
2、標的追尾モード:本体が標的を視認すれば設定可能。このときえぐりとるのは標的のみで、他の有機物にあたっても
  バウンドする。バウンドの仕方は物理法則を無視して標的に向かっていく。

172誇り高き愚者ボロギコ:2003/11/23(日) 18:19
前回、指摘してもらった点を注意して書いてみたつもりです。
直しきれていないところ、新しい注意点などありましたら教えてください

173新手のスタンド使い:2003/11/23(日) 21:23
乙!ところで小説で小ネタはありでしたっけ?

174N2:2003/11/23(日) 21:59
>>173
大丈夫だと思います。

175N2:2003/11/23(日) 22:01

 忍び寄る狂気の巻 (クレイジー・キャットとフィーリング・メーカー その①)

 あの町外れの倉庫から歩いて約30分の所にある、新茂名王駅。
 もちろん、到底大都市にあるものとは比較出来ないが、それでも地方駅にしては随分大きくて贅沢な造りの駅だ。
 そのすぐ近くにあるハンバーガーショップ、「マクドメルド」に2人はやって来た。



 「いらっしゃいませー!」店員が笑顔であいさつをする。
 「ああ、悪いけどいつものお願いできる?」青年は、慣れたように彼女に話し掛ける。
 恐らく、彼はこの店に顔が利く位通い詰めているのだろう。
 …不健康極まりない。
 「分かりましたー。…ところで、後ろの方は…?」見慣れぬ男の存在に、彼女は首を傾げた。
 「ああ、この人?まあ、俺のちょっとした知り合いってところ」
 「そうなんだ…。あ、失礼しました。それでは、後ろの方は何になさいますか?」
 「…彼と同じで構わん」
 こんな所で食事するのは初めてのことだ。
 未知のメニューに多少の恐れを感じつつも、モ蔵は青年の感性を信じることにした。

 「…さてと、それではまずお互いに自己紹介でもしましょうか?」窓際の席に着いてすぐに、青年はこう切り出した。
 「…別に何だろうと構わんが…」
 「俺は初代モナー。この町で生まれ育った、生粋の茂名王人だ。
 今はバイトしながらアパートで暮らしてる。いわゆる『フリーター』ってやつだな」
 …最初に青年に話し掛けられた時から、モ蔵はある疑問を感じていた。
 この青年、初代モナー族にしては、言葉遣いが悪い。
 もっと初代モナー族というのは落ち着きがあって、人格も成熟しているものではないのか?
 それなのに彼は…どう考えてもそこら辺でプラプラしている若者達と同じに見えてしまう。
 「で、おっさんはなんて名前なんだい?」
 「私の名はモナ本モ蔵。…その道では名の知れた、暗殺者だ」
 「…っヒュー、御冗談がきついなあ」
 「決して冗談などではない」
 強い口調と眼つきに、青年はそれが単なる冗談ではないと察した。
 「…俺、ひょっとしてもの凄ーくヤバいことしちまったのか?」
 「…かもな」
 どことなく青年の眼が自分を怖れているのが分かる。
 そうモ蔵は考えたが、彼がその気まずい状況を打破しようとする前に青年の方が口を開いた。
 「けど、じゃあ何で『暗殺者』さんが町外れで寝っ転がっていたんだい?」
 「…私は、本当にあそこでただ眠っていただけなのか…?」
 思わず、質問に質問で答えてしまった。
 相手が相手なら感情を逆撫でしているところだ。
 「いや…何でそんなことを聞くんだ?」
 「いいから教えてくれ」
 「…別に、ただ倉庫の壁に寄っ掛かって寝てただけだよ。自分でもそんな事が分からないのか?」
 「…いや、それなら別に、それでいい…」
 青年は、どうやらモ蔵が昨晩どの様な状況にあったのか、本当に知らないらしい。
 それならばそちらの方が都合が良い。無意味にあの男の存在を知ってしまう位なら、全く知らないよりも余程ましというものだ。
 「…ははーん、ひょっとしておっさん、記憶喪失か!」
 「何ッ!?私は決してそのような…!」突然の予想だにしなかった言葉に、思わず大声を上げてしまう。
 周囲の冷ややかな視線が突き刺さる。
 「ハッハハ、冗談冗談。もしそうだったら、そんなに口調がはっきりとはしてないだろ」
 「……」随分とお調子者である。時と場合によっては、切り捨てていたかも知れない。
 「で、話は戻るが何であんな所で寝てたんだ?」
 「…私はこの町に、ある男を暗殺しにやって来た。しかし何分急ぎだったもので、宿の手配など全くしていなかったのだ。
 そこで已むを得ず、あのようなへんぴな場所で野宿した、ということだ」
 あの男のことに触れぬよう、私は嘘を付いた。
 あるいは惨めな敗北の事実を曝け出したくなかったからかも知れない。
 「………へぇ〜。随分呑気な暗殺者さんだな」テーブルを叩く仕草をしながら、青年は返事をした。
 かえって見下されてしまったようだが、これも青年の為だ。
 「お待たせしましたー。ビッグマック2つとマックシェイク2つ、お持ちしましたー」
 2人の話に割り込むように、店員が我々の朝食を運んで来た。
 「んじゃおっさん、雑談は一時中断して、朝食を頂くとしますか」

176N2:2003/11/23(日) 22:02

 「ところでおっさん、これから一体どうするんだい?」
 想像していたよりも遥かに大きなサイズであるハンバーガーを頬張りながら、青年が不意に質問してきた。
 「…その男を始末する」
 「あー、そうじゃなくて、これから泊まる宿とかってどうすんの、って意味。さっき宿の手配はしてないって言ってたからさ」
 「全く考えていない」不意を衝かれた質問の内容だったが、即答した。本当に考えていないのだ。
 「んじゃあさ…、これから俺の家に泊まるってのはどうだい?」
 「何!?」更に想像もしなかった返事に、今度は驚きの声を上げてしまった。
 再び周囲の冷ややかな視線が突き刺さる。
 「別に、悪くない話だろ。決して部屋は広くないけど、2人で暮らすには十分だと思うぞ」
 確かに悪くない話だ。これから何ヶ月もこの町に滞在するとなると、宿代も馬鹿にならない。
 それなりのホテルを借りるとすれば、相当な金額になる。この青年の誘いは、乗るのに十分な内容である。
 しかし、そうもいかない。
 「いや、お主の誘いは有り難いのだが…、しかし悪いが断らせて貰う」
 「え、そりゃ何で…?」
 「私は、こう言うと自慢に聞こえるかも知れないが、この業界ではかなり名が知れている。
 恐らくはもう裏の世界の者達には私がこの町に来たことが知れてしまっているだろう。
 となると、無関係なお主の家に宿借りするということはお主の身にも危険が及びかねない。だから、折角だがその誘いは断らせて貰う」
 事実、これは本当のことであった。
 暗殺の依頼が届き、その者の下へと向かう途中、全く無関係の賞金稼ぎから命を狙われたことは何度かあった。
 しかも今回はそれだけではない。私が生きていることを知れば、奴は必ずや私に刺客を差し向けるであろう(そしてこれもすぐに現実のものとなるのだが)。
 ここで青年を巻き込んではいけない。
 「大丈夫だって、俺だってこれでも色んなスポーツとか武術とか習ってきたんだぞ」そんなモ蔵の思いをよそに、青年は自信満々の表情でこう答えた。
 「馬鹿言うな、暗殺者は並の武術が通用する者のことを指しているのではないのだぞ」
 たかだか趣味の運動で暗殺者が撃退出来るなら、皆が暗殺者である。
 「平気平気、それにおっさんだってどっかの公園で寝てる方がよっぽど危険だろ?」
 「まあ、確かにな…」実際、野宿している時に遠くから狙撃されて危うく死にかけた経験がある。
 「よし、それじゃあ決まりだ!これを食い終わったら早速案内するよ」
 ここまで言われるともう断りきれない。もうこうなったら彼が巻き添えを喰らっても自分を家に招きいれた彼の自己責任として片付けるしかない。
 レジで清算を済ませ、モ蔵は青年の案内するがままについて行った。

177N2:2003/11/23(日) 22:02

 「ここが、俺の家だ」
 青年が住むのは、築20年以上と思しきアパートであった。
 外壁にはツタが這い登り、その古めかしさがより一層強く見える。
 丁度灯篭なんとかとか、いちご云々とか、何々川とかいう曲の流行った頃には多くの若者が生活していたのだろうか。
 建物に入ると、そこはかなり年代を感じさせる空間であった。
 古びて薄っすらとひびの入ったコンクリート作りの廊下。
 廊下に剥きだしになった共用の男子便所。
 この携帯電話の流行る時勢にはほとんど需要の無いピンクの公衆電話。
 天井からは電球がぶら下がり、窓からは隣を流れるドブ川が見える。
 …まさしく、オンボロアパートと呼ぶに相応しい。
 「で、ここが俺の部屋だ」
 狭い廊下を歩いた突き当たりにあるドアを潜ると、そこは畳張りの狭苦しい部屋であった。
 男一人が住んでいるにしては割と片付いている。
 「さてと、じゃあ早速家事の役割分担でもするか。おっさんは何かやりたいもんでもある?」
 「…特にそんな物はないが…」
 「じゃあ適当に割り振るけど、別にいいかい?」
 「構わん」
 そうして青年が部屋にあるチラシの裏に書いたのが、以下の家事分担であった。


 初代モナー:朝食・夕食・食器洗い・共用便所掃除
 おっさん:昼食・部屋掃除

 ※自分の身の回りの始末は自分でするように!


 「……?」
 「何か不服な点でも?」
 「…いや、全くそんなことはないぞ。別にこれで構わないが」
 「んじゃ、決定ね」
 確かに、全く問題は無い。
 しかし、問題が無さ過ぎる。
 モ蔵は最初、青年が自分に食器洗いとか便所掃除とか嫌な仕事を押し付けてくるものだと思っていた。
 実際に採用するしないは別として、彼の性格ならそういうジョーク(本気かも知れないが)は十分有り得た。
 しかし、実際には仕事はほとんど青年任せである。
 仕事の量だけの問題ではない。青年の仕事は、面倒臭い朝夕の食事に食器洗い、そして一番やりたくないはずの便所掃除だ。
 大してモ蔵は簡単に済ませられる昼食、それに取って付けたような部屋掃除。
 不真面目そうな青年にしては、意外な提案である。

 しかし、彼にとってはある疑問の方が余程重大であった。
 (しかし青年が昨晩の出来事を全く知らないということは…では私の傷を治療したのは一体どこの誰なんだ?
 そうしたところで、一体その者には何の利益があるというんだ?
 そもそも、彼が全く知らないということもそもそもおかしな話であるし…。
 …駄目だ、全く解せん。まあ、どこぞの格好付けのお人好しが私を治療した後にそのまま去って行ったという可能性もあるが…。
 明日にでも、そのお人よしを目撃した者がいないか探してみるとするか)

178N2:2003/11/23(日) 22:03

                ∧ ∧
                (゚Д゚,,)⌒ ̄`ヽ、
.                 (  ー\  _」_,∠⌒`ヽ
                 \   、 ( ノ 、ー'⌒`  \
                  \ (_ノ   ) _,-―_\
                    /'`    く \
                   / \     >   ̄>
                 /     \_/〉─く__ノ
                /       (_/

NAME モナ本モ蔵

駄スレ・糞スレを立てた>>1を一刀両断するべく2ch内を渡り歩く、名実共に『最強の剣士』。
擬古流の剣術を継承し、「酷いスレを立てる」という
愚かしい>>1の壱の太刀に対して繰り出す弐の太刀「暗・剣・殺」を得意とする。

これまで幾多の暗殺を成功させたことから彼の元には無数の依頼が届き、
その名は裏の世界では広く知れ渡っている。
かつて『矢の男』と親交があり、彼の本性に薄々感付きながらも
何も出来ずに見逃してしまい被害者を増やしてしまったという自責の念から
彼に先回りする形で茂名王町に乗り込む。

179:2003/11/23(日) 23:29

「―― モナーの愉快な冒険 ――   影・その4」


          @          @          @


局長は居眠りをしていた。
イスにもたれ、顔の上に開いた新聞をかけてイビキを立てている。
漫画などでよくあるシチェーションだが、リアルでは初めて見る。
仕方なく、局員は声をかけた。
「局長!起きて下さい!局長!」
新聞がパサリと落ちた。
「う〜ん…」
局長は大きく伸びをすると、眠気を振り払うように首を振った。
「ああ、おはよう…」
言いながら、眼鏡のズレを直す局長。
どうも、インテリジェンス風の外見と行動が一致していない。
黙って座っていたらエリート以外の何者でもないのだが、言動のせいで丸潰しだ。
「おはようございます」
カタチばかりの挨拶を済ますと、局員は本題を切り出した。
「警視庁捜査一課から、資料が届いています」
そう言って、ファイルを差し出す。
局長は興味無さげに受け取ると、無造作にページをパラパラとめくった。
「ああ…例の、連続殺人鬼ですか…」
局長はつまらなそうに呟いた。
「はい、犠牲者は19人にのぼり、手がかりはまったくありません。マスコミの警察叩きも加熱する一方です」
「ははは…」
局長は笑い声をあげた。
「愉快じゃないですか。一課の面目丸潰れですね」
「いえ、笑い事じゃありません」
局員の言葉を聞き流しながら、局長はファイルを机の上に投げ置いた。
「で、これがウチに回ってくるってことは…」
「犯人は、スタンド使いである可能性が高いということです」
局員はそう断言した。
「まったく…ただでさえ、人員不足だというのに…」
ここ、公安五課は少数精鋭である。
よって、少数の欠員でも業務に響く。

180:2003/11/23(日) 23:30

「で、そのファイルにも記載されていますが…」
局長は明らかにやる気がない。放っておけば、ファイルをこれ以上読みもしないだろう。
局員は仕方なく説明を始めた。
「気になる点が2つあるんですよ」
局長は椅子180度回転させて、背後の窓から景色を眺めだした。
まともに聞く気もないようだ。
「まず1つ目。犠牲者のうち、最初の15人と後の4人は、実行犯が異なる可能性が高いんです」
局員は机の上のファイルをめくった。
現場および殺害状況のページで手を止める。
「見た目はそう変わらないんですがね… 一言で言うと、後の4人の殺害は、手際が悪いんですよ」
局長は相槌すら打たない。
「後の4人は、とにかく荒っぽいんです。
 まず、外傷が多い。後ろから首を刺したり、心臓を刺したりしてから、腹を切ってます。
 つまり、殺してから腹を開くんですよ。刺されてからも被害者が動き回るから、身体も血まみれ。
 で、腹部の切開も雑だし、腸を引きずり出す際に途中でちぎれたりもしてるんです。
 そこらのチンピラでもできますよ。これくらいなら」
次に局員は、最初の犠牲者のページを開けた。
「で、最初の15人を見ると… 腹部以外に外傷はなし。
 腹部の傷に生活反応あり。つまり、この時点で被害者には息があったんです。
 腸を引きずり出す行為一つをとっても、腸間膜からきちんと小腸を切り離したりと、芸が細かい。
 さらに、主要な血管にも傷をつけていないので、極端に出血が少ないんですよ。監察医も驚いてました」
「腹部以外に傷がないってことは…」
局長が言った。話は聞いていたようだ。
局員が言葉の後を継ぐ。
「正面から、一瞬で切られたという事です。逃げる間もなく」
恐るべき手際の良さだ。
被害者に気付かれること無く接近し、逃げるという動作を起こす前に腹部を切断。そのまま解剖に入っている。
普通の人間に出来ることではない。
やはり、犯人はスタンド使いだとしか考えられない。
しかも、高い医学知識を持っている。
局長が口を開いた。
「じゃあ、後の4人を殺したのはコピーキャットでしょうね」
「そう考えられます。もっとも、捜査の目を欺くためにやり方を変えた、という可能性もありますが…」
局長は冷ややかな目線を浴びせた。
「そんな事を言っているから、君は出世できないんですよ」
「と言うと?」
局長は椅子を回転させて、局員の方に向き直った。
「手段と目的の逆転。これで分からなければ、辞表を書く事を勧めますよ」
この人間を上司にしている限り、この類の皮肉から開放されることはない。
「では、やはり別の人間の犯行なのですか?」
そんな事も分からないのか。局長の目がそう言っている。
「そうですよ。後の4人を殺したのは、どこぞの素人でしょう。それこそ、警察にでも任せておけばいい」
局長はそう断言した。
普段の態度はアレだが、洞察力や判断力は卓越している。
だからこそ、この国で唯一のスタンド対策機関局長の座に上り詰めたのだ。
その言は信用できる。
つまり、最初の15人を殺した奴だけが「殺人鬼」の名に値する存在であるという事だ。
局員は話を続けた。
「で、気になる点があと一つ。15人目の犠牲者が出た次の日に、『異端者』がその町に到着したんです。
 つまり、『異端者』が来てから、犯人は殺人をやめた、という事になります。
 おまけに、あの『蒐集者』が潜伏しているマンションは町からすぐ近くです」
相変わらず相槌がない。
適当に聞き流しているのか… 局員はそう思ったが、それは違った。
局長は左手を額に当て、何やら考え込んでいたのだ。
「なぜそれを最初に言わない?」
それだけを言うと、ファイルを手にとって丁寧に見始めた。

「代行者が絡んでいる以上、犯人は吸血鬼なのでしょうか…?」
先程までとは打って変わって熱心にファイルを見る局長に訊ねた。
吸血鬼が相手なら、部署が違う。
この国に吸血鬼の対抗機関はない。結局、『教会』の手を借りることになってしまう。
局長はファイルから顔を上げると、冷たく言った。
「やはり、君には辞表を書く事をお勧めしますよ」
どうやら、局員の推論は大ハズレだったようだ。
局長は再び、ファイルを机の上に投げ出した。
しかし、さっきまでの行為とは明らかに意味が異なる。
ファイルに載っている情報は、全て局長の脳に刻み込まれたのだ。
「…忙しくなるな」
局長は椅子を蹴り倒す勢いで立ち上がった。
「『教会』、殺人鬼… いつまでも大手を振っていられると思うな…」


          @          @          @

181:2003/11/23(日) 23:30

起床して、いつものように朝食を食べ、家を出た。
今日は土曜日なので、午前中しか授業はない。
それは、俺にとって好都合だ。
午後1時ごろに、ASAの討伐隊が到着するらしい。
リナーを交えて作戦会議をやるとの事だ。
もちろん、俺も参加させてもらうつもりだ。
俺だってスタンド使いである。部外者とは言わせない。

学校に到着した。
朝のHRが終わる。
じぃは当然欠席。先生からの説明はない。
じぃの死体は、完全に消滅した。
家出扱いにでもなっているのだろう。
俺は、何も思うことはない。
いや、何も思ってはいけない。
俺は強くならなければならない。
そう言えば、モララーも珍しく欠席だった。
彼が学校を休むのは珍しい。


1時間目終了。
よく寝た。
最近、夜の見回りのせいで睡眠時間が致命的に足りない。
その分をこうやって解消している。
「よぉ、今日は大丈夫か?」
ギコが声をかけてきた。
そういえば、昨日は叫びながら教室を飛び出したのだ。
たぶん早退扱いになっているだろう。

「チッ♪ チッ♪ チッ♪ チッ♪」

背後から、妙な声が聞こえる。
ギコも、その存在に気付いているはずだ。
俺は強引に無視した。
「昨日は熱があって、訳の分からないことを口走ってしまったモナ。迷惑をかけたモナ」
「顔色悪かったもんな。それにしても、風邪が流行ってんのか…? じぃも2日連続で休みだし」
深呼吸して、平静を保つ。
よし、大丈夫だ。
目的を持つと人は強くなる。
たとえ、それが自己満足だったとしても。
「今日はモララー君も来てないよね」
しぃちゃんも話に加わった。

「チッ♪ チッ♪ チッ♪ チッ♪」

無視だ、無視。
「モララーも風邪か?」
ギコが首を傾げる。
何とかとハサミは風邪をひかないとよく言われるが、モララーは例外だったようだ。
微妙に心配だ。微妙にだが。

「チッ♪ チッ♪ チッ♪ チッ♪」

「…それはそうと、お前、ちゃんと寝てるのか?目にクマができてるぞ」
ギコは頑なに話を続けようとする。
「最近、寝不足モナ…」
どうでもいい返答。
例の声はだんだん大きくなってくる。
仕方がない。もう無視するのも限界だ。
俺は後ろを振り向いて言った。
「死んだはずのッ!」
そこには、おにぎりが立っていた。
「チッ♪ チッ♪」
おにぎりは、不敵な笑みを浮かべながら人差し指を立て、左右に軽く振った。
「おにぎり!!」 そして俺は、奴の名を呼んだ。

「YES I AM!」

おにぎりは、立てていた人差し指を真下に向けた。
そして、「チッ♪ チッ♪」と言いながら親指だけ立てた右手を振る。

「気は済んだか?」
ギコは言った。
だんじり祭りに行っていたおにぎりが帰ってきたのだ。
「いやー! 相変わらずシケたツラしとんのォー、お前ら!」
おにぎりは俺達の顔を見回して言った。
こいつは、おにぎり族には珍しくアグレッシブな性格をしている。
正確に言うと、単にハジケているだけである。
他のおにぎりとは馴染まず、ワッショイする仲間もいないらしいが、本人は全然気にしていない。
「ありゃ〜? モラ公はどこ行った?」
おにぎりはキョロキョロする。
「黙れ、米野郎」
ギコは冷たくあしらった。
「で、だんじり祭りはどうだった?」
しぃちゃんが訊ねた。
「グレート!神輿が…」
おにぎりが語りだそうとした時、2時間目開始のチャイムが鳴った。

182:2003/11/23(日) 23:33

4時間目が終わった。
今日の授業はこれで終わりだ。
ギコとしぃが近寄ってきた。
「おい、今日はどこに食べに行く?」
土曜日の放課後は、俺・モララー・ギコ・しぃ・おにぎりの五人で繁華街へ繰り出して昼飯を食べるのが習慣だった。
だが、今日は早く帰らなければならない。
「今日は用事があるから、遠慮しとくモナ…」
「デートか?」
ギコはすかさず言った。
ふっ、甘いな… 俺は心の中でほくそえんだ。
深夜のデートなら毎日だ。
「いや、違うモナよ」
俺はそれだけを言って、つっこまれる前に教室を出た。

校門を出るところで、レモナにつかまってしまった。
「モナーくぅん、いっしょにゴハン食べようよー」
「パス。今日は用事があるモナ」
即効で断る俺。
「な〜んだ…」
意外にも、レモナはあっさりと引き下がった。
「あれ…? 今日はしつこく誘わないモナね?」
「重要な用事があるんでしょ? モナーくん、すごく真剣な目だよ」
こいつ、何も考えていないような顔をして、なかなか侮れない。
「決意を胸に秘めた男、って感じ。すごくカッコいいよ」
少し照れ臭い。
せっかくなので、無下に追っ払うようなことはしないでおこう。

「モナーくん、用事かぁ… せっかく、邪魔なつーちゃんもいないのになぁ…」
意外な事を耳にした。
「つーちゃん、今日も休みモナ?」
「うん。病気が治らないんだって」
いくら何でも妙だ。
殺しても死なないつーちゃんが、病気ごときでダウンなんて…
何か、イヤな予感がした。

183:2003/11/23(日) 23:33

その後、帰りながらレモナと他愛もない話を続けた。
普段の破天荒な行動に隠されがちだが、レモナは思いやりがあって心優しい子だ。
(過剰に)積極的だし、もしこいつが女だったら… とっくに俺達は付き合っていただろう。
「ホント、レモナって男に見えないモナね…」
「え?私、男じゃないよ?」
「またまた… 前に、自分で言ってたモナよ」
つーちゃんはネカマ呼ばわりしているし。
レモナは、何かに気がついたように言った。
「あ、前に私が『女じゃない』って言ったのを勘違いしたのかな…?」
勘違いだって?
「私、女じゃないけど、男でもないよ?」
「…両性具有とかモナ?」
それだと、医学的には男に分類されるはずだが。
しかし、レモナは無言で首を振った。
少し思いつめたような顔だ。
嘘を言っているようには見えない。
男でも女でも、その真ん中でもない人間なんてありえるのか?
…いや、俺は人間ではない存在を何人か見たはずだ。
「まさか、吸血鬼なんて言わないモナね?」
「吸血鬼…?」
レモナは首を傾げる。
「モナーくん、ホラーマニアなの?」
「いや、違うモナよ…」
そうだ。レモナは吸血鬼の存在を知らない、ただの人間なんだ。
最近の出来事に呑まれて、感覚が麻痺していた。
「ねぇ、モナーくん… 吸血鬼って、人間の血を吸って仲間を増やすんだよね…」
不意にレモナが訊ねた。
それは違う。吸血鬼に血を吸われても、ゾンビになるだけだ。
だが、否定するのも変だ。
つくづく、俺は踏み込んでしまった事を実感した。
「そうらしいモナね」
とりあえず肯定しておく。
「じゃあ、吸血鬼って、造られた存在になるのかな?」
造られた存在?
確かに、人間の立場で見るならそうだろう。
吸血鬼によって、造られる存在。
もっとも、血を吸われると吸血鬼になるというのは俗説に過ぎないが。

「私も、『造られた存在』なんだ…」

レモナはそう呟いた。
以前の俺なら、「誰に?」などと聞き返していただろう。
最近、やっとデリカシーについて分かってきたところだ。
レモナはいつもの笑顔を崩さない。
ふと思った。レモナは、本当にいつも笑っているのだろうか?
「そんなの…別にどうでもいいモナよ」
レモナは驚いたようにこちらを見た。
「別に、レモナが造られた存在だろうが造った存在だろうがどうでもいいモナ。
 モナにとって重要なのは、レモナは、すごく優しくて、思いやりのある子だってことモナ。
 モナは、普段のレモナが大好きモナよ」
「モナーく〜ん!」
レモナは、俺に抱きつこうとした。
しかし、その動きはすでに視えている。
俺は上体を反らしてかわした。
レモナの体が電柱に激突する。
「ひど〜い!!」
電柱に頭突きをかましたレモナが両手をバタバタさせながら立ち上がった。
「レモナの動きは読みやすいモナ。モナに不意討ちしたいなら、予想を超えたパターンで来るがいいモナ」
気がつけば、繁華街を過ぎていた。
レモナの家は、次の角を右だ。
「じゃあ、さよならモナ」
「モナーくんが『造られた存在でも気にしない』って言ってくれたこと、忘れないよ。じゃあね」
すぐにレモナの姿は見えなくなった。
何やら、その場のノリで適当に言ったセリフに感銘を受けたようだ。
喜んでいたみたいだし、まあいいか。

184:2003/11/23(日) 23:34

家に到着した。
玄関には、今にも出ようとするリナーがいた。
「あ、もう出るところモナ?」
「ああ。時間ちょうどだな。では行くぞ」
もう少しで、置いていかれるところだった。
「ところで、ASAの人はどこに来るモナか?」
てっきり、俺の家に集まってくるものと思っていた。
「この近くに、グラウンドがあるだろう」
リナーは答える。
グラウンド?
そんなだだっ広いところで作戦会議?
…凄く、妙な話だ。
「さあ、行くぞ」
俺はリナーに急かされて、家を出た。


グラウンドに、リナーと二人で立っている。他に人はいない。
それにしても…一体、なんなんだ。
こんなところで作戦会議なんて、どう考えてもおかしい。
ここは、話し合いには全く適さない場所だろう。
野球でもするつもりなのだろうか?
リナーに何か言おうとした時、頭上から機械音が聞こえた。
バラララララ…という奇妙な音。
そう、ヘリコプターだ。
しかも、1機や2機じゃない。
30機を越える大編隊が、空の彼方から押し寄せてくる。
「まさか、あれは…」
「ASAだ。時間ちょうどだな」
リナーは当たり前のように言った。
俺は…ただ呆気に取られていた。


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. <   To Be Continued... | |
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185新手のスタンド使い:2003/11/24(月) 21:23
いろいろ考えた結果、本編に関りそうなつーを勝手に使ったのはよくないと思い、
アヒャ編の第一話を改造。

合言葉はwell kill them!その①―アヒャと矢の男


「はひ〜疲れた〜。今日も俺様部活の練習ご苦労さんと!」
一人の青年が夕日に照らされた土手を歩いている。
彼の名はネオ麦茶。部活の後らしくダラダラと大汗を流していた。
「早く帰って風呂でも入るか。」

彼の家は茂名王町(仮)の中にある私怨寺商店街の肉屋で結構お客の評判もいい。
「ただ〜いま〜。」
「アーヒャヒャヒャヒャ!オメー何処で道草くってたんだよ!」
扉を開けると早速父親の声が飛んできた。エプロンがよく似合っている。
ネオ麦の家の家族構成は自分、父、弟の三人で、母親はとっくに亡くなっている。
「しかたね〜だろ!部活の練習があったんだから!」
「ふーん。てめえも大変なんだな。そんな事より手伝え!今日は鍋だぞ!」
「了解。」
台所には父親の趣味で集めた刃物が所狭しと並べられている。もし地震なんかが起きた時に
こんな所に居ては、間違いなく怪我はするだろう。
「ところでアヒャの野郎は何処行きやがったんだぁ?俺より先に学校から
 帰ってきてるはずだぞ。」
「奴なら葱と豆腐が無かったから買いに行かしたぞ。それにしても遅いな、
 もう行ってから30分以上たってるぞ。」
「俺みたいに道草食っていたりしてな!」
二人は大きな声を出して笑った。はっきり言って五月蝿い。
そのせいで隣に住んでいる老人が心臓発作を起こし、危うく『天国の階段』を
昇りかけたのは内緒だ。


「あ〜〜〜ムカつく!何であんなとろいババア雇うかねぇあのスーパー!
 俺がナイフちらつかせなけりゃぁいったい何時間かかってたのか想像できねえよ!
 ちっくしょ〜!」
ぶつぶつと愚痴をこぼしながら一人の少年が歩いている。
彼の名はアヒャ、ネオ麦とは一つ違いの弟だ。
「あーあ。退屈な日常だなー。なーんかこう人生まるっと変わるサプライズな事件とかって
 起きないもんなのかねー。」
その時だった。彼の言う事件が起こったのは。
人の言葉と言う物は恐ろしい、誰かが呟いた事が本当に起きてしまう事があるのだから。
「うわあああああああああ!!!!!!」
突然の悲鳴。どんなに強気な人でもいきなり悲鳴が聞こえたら驚いてしまうものだ。
「おわっ!何だ何だ今の悲鳴は!?家とは反対の方向からだぞ!」

この後の彼の行動は大体の人が想像がつくでしょう。
好奇心が強い彼の行動を・・・。

「事件の香り・・・・・。行きますか!」

やっぱり・・・・。

186新手のスタンド使い:2003/11/24(月) 21:32

「くそ!こいつも駄目だったか・・・。」
ひっそりとした闇の中、二つの影が見える。
一つは何処にでも居そうなサラリーマン風の男で、もう息をしていない。
そしてもう一つが矢の男の物だった。
「まあいい。次の人材を探せばいいことか・・・。」
そう言って立ち去ろうとした時だった。
「・・・誰かが来るな。」

「おっかしいなー、悲鳴が聞こえたのは確かここいら辺だった筈だぞ。
 もしかして俺の聞き間違いだったのか?」
やって来たのはアヒャだった。よく悲鳴一つで場所が割り当てられたもんだと
つくづく感心してしまう。
「・・・丁度いい。アイツならがあるかもしれん。物は試しだ。」
矢の男は懐から弓と矢を取り出すと、アヒャに向けて狙いを定めた。
「さあ、お前の『素質』、確かめさせてもらうぞ!」
パシュン!


ヒュウウウン・・・・。ズシャアァ!!
「があっ!な、何が起きたんだって・・・・これって・・・『矢』!?」

「ほう、死ななかった所を見ると私の予想どうり、君にはスタンド使いとしての
 『素質』が有ったのだな。しかしスタンドのヴィジョンが見当たらないとはどう言う事だ?
 確かに君からスタンドのエネルギーが出ているのだが・・。」
「な!てめえはもしかして矢の男!?どうしてこんな所に!」
「む?何故この私が君の言う矢の男だと判ったのかい?」
矢の男は少し以外だという顔をして尋ねた。
「俺の兄ちゃんがお前に出会ってそのスタンドとやらが発現してんだよ!幸な事に兄ちゃんのスタンドはは
 他の者に取り憑いていて、俺でも見えたから信じることができたけどよ!」
「なるほど。兄弟そろってスタンド使いになったと言う訳か。
アヒャは自分に刺さった矢を抜くと男にむかって放り投げた。
「お前の目的は俺にもわかんねぇ。だけどスタンドを出してくれた事については
 礼を言う。ありがとうよ。」
「ふっ、礼を言われたのはこれが初めてだな。では、有効に使ってくれ。」
そういい残すと男は風のように消えていった。

「兄ちゃんの言っていたとおりだな・・・。『矢の男』。何か知らないが
 アイツを見てると、とらえどころが無くてどうもしっくりこなくなるんだよな・・・。」

187新手のスタンド使い:2003/11/24(月) 21:38
「うわー滅多刺しにされてんなー。ご愁傷さまー。」
アヒャは矢の男が殺したサラリーマンを見つけた。
警察にでも通報するのか?いや、彼の場合は違う。金目のものを抜くためだ。
「とりあえず諭吉でも抜いておきますか。・・・にしても俺のスタンドって一体なんだ?」
そういって死体に近いた時だった。

・・・・じわり・・じわり・・・・・。
・・・・じわり・・じわり・・・・・。

「なんだ?なんか音がするぞ・・・・・!。」
よく見ると死体の周りの血液が、まるで引き寄せられるかのようにだんだんと自分の方へ向かってきている音だった。
みるみるうちにアヒャの目の前で血液が集まり、人の形を作り出していった。
「何だよこれ!なんで血が俺の方へ流れてんだよ!?・・・・まさか・・・。
 これがあいつの言ってた・・スタンド!?」
「ソウダ!俺ハオ前ノスタンド!オ前ノ分身ッテ訳サ!」
「しゃ、しゃべれんのかおまえ!?」
「アア、オ前トハ別々ノ意思ヲ持ッテイルカラナ。」
「なーるほど、ところでお前には名前ってついてんのか?」
「イイヤ。俺ニハ名前ナンテ無イ。コテハン名乗レヌ名無シサンッテ訳ダ!」
「じゃあ俺が名付親になってやんよ。そうだな・・・・。血・・。ブラッド・・。
 そんじゃブラッド・レッド・スカイってのどうよ?」
「イイナソレ!気ニ入ッタゾ!」



「案外この買出しも結構意味あったじゃん!行っといて正解だったな。」
アヒャは上機嫌で家へと向かった。

しかしアヒャは気づいていない。
自分がスタンド使いになった事でこれから巻き起こる
闘いの日々のことを・・・。

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188新手のスタンド使い:2003/11/24(月) 21:39
以上です。無駄に容量つかってすいません。

189キャットフード:2003/11/27(木) 21:35
キャットフード、ギコタクに出会う

 ある日の昼下がりのある喫茶店の中。
 右耳に何か怪我でもしたのか、ガーゼを張った男が、コーヒーを飲んでいた。
 テーブルの上にはプラスチック製の皿がある。彼はこの皿以外で食事をするのを嫌い、レストランでもこれを使用していた。
「くそ…何でこう悪いことが続くんだ…気分が悪いな…」
 彼はコーヒーカップをテーブルに置き、空っぽの皿を見ながら呟いた。
「まあ、これが無事ならいいけどな。これで食う飯は最高だ」
 この男の名はキャットフード。最近この茂名王町にやってきた。
 ここをおとずれた人が皆思うように、彼も思った。
「いい町だ」と。
 しかし、第一印象はその後急激に悪化することとなる。

 人通りの少ない路地を闊歩していたキャットフードは、頭に紙袋を被った人物に、背後からいきなり切りつけられた。
 幸い直前に気づき飛びのいたため、耳を切られただけですんだ。
(な、何だ!?こいついきなり…)
 その表情は紙袋で窺い知ることができなかったが、雰囲気を一言で言えば『ヤヴァイ』だった。『殺気』とでも言えばいいのか、今からお前を殺す、とヒシヒシと伝わってきた。
 その次にキャットフードは、その男が手ぶらであることに気づいた。
(何で俺の耳を切ったんだ!?って、そんな場合じゃあない!)
 男は二発目を繰り出そうとしている。見えないが、『切られた』という事実がある。こいつは手ぶらでも自分を殺害できる、と認識するのと同時に、キャットフードは背を向けて走りだした。
(ヤヴァイ!何なんだあいつは!?)
 後ろをちらりと見ると、男は追いかけてこない。しかしキャットフードは、恐怖が消えるまで走り続けた。
 耳からは大量ではないが、血が出続けている。
 走り続けて10分。電車のレール下のトンネルに入り、足を止めた。

190キャットフード:2003/11/27(木) 21:36
 毒毒しい色のスプレーで絵や字が描かれた壁にもたれ、キャットフードは一息ついた。
 心臓はさっきの緊張と急激な運動で、爆発しそうだった。顔中に汗がかいていて、耳から垂れた血液と交じり合っている。
(それにしても、あんな危ない香具師がいるとは…まったく躊躇せず俺を殺す気だったぞ、あいつは)
 普段全く意識せずできている『息を吸う』という行為が、とても困難に感じられた。やがて、呼吸の乱れは回復していった。
 トンネルから出て歩きだそうとしたとき、向こうから誰かが入ってきた。太陽のある方向から来るので、逆光で顔がはっきり見えない。
 手に何か持っている…あれは…どうやら『弓』と『矢』のようだ。
 弓道部に所属する学生か何かだろうか。何て思っていると、その人物はいきなり弓を引いた。しかも、自分に向けて。
(な!何だ!?)
 さっきの感覚がよみがえった。こいつは自分を撃とうとしている!そう思う前に体が動いていた。
 電車が、真上を通った。音はトンネル内に反響し、町の音が遮断される。
 弓を引いている人物と反対側に走りだした瞬間、足がもつれた。さっき走った時の疲労が、まだ残っていた。
 キャットフードは転倒した。地面に体がつく前に弓が飛んできて、切られた方の耳の傷をさらに広げた。
 手に持っていた皿が、地面に当たって転がる。
 地面の冷たさと、顔に触れる血の暖かさを同時に感じていた。
(…まいったな、一日に二回も通り魔に襲われるなんて…しかも同じ傷口を…そんな香具師他にいるかな)
 電車の通過音が鳴り響いている中、矢を撃った奴の足音が地面を通して、まだ無傷な方の耳に入ってくる。
(俺はここで殺されるのか…まったく、どうせなら腹いっぱいの状態で死にたかったな)
 しかしその人物はキャットフードの横を素通りし、さっきの矢を拾った。
「…生きているな。君には『スタンド』の才能があったようだ。有効に使ってくれ」
 声から男だと分かったが、言っている内容は理解できなかった。『スタンド』?何だそれは…
 電車の音はやんだ。

191キャットフード:2003/11/27(木) 21:36
 キャットフードが前を見ると、既に男の姿はなかった。
(…何なんだ、今の男は。『スタンド』って、電気スタンドか?)
 起き上がり、皿を探す。あった。
 拾おうと思ったとき、皿は宙に浮いた。
「何!?」
 浮いたのではなかった。自分の隣に、半透明の青い影が立っていて、そいつが皿を拾っていたのだった。
(い、いつ接近したんだ!?)
 こいつは何なんだ?とりあえず、話してみよう。
「おい、何者だお前は?俺は今日ちょっと用心深いから、キャッチセールスは受け付けないぞ!」
 俺は何言ってるんだ、と思いながら、耳の痛みがないことに気づいた。
 触ってみるが、どうやら血は止まったようだ。
(おかしいな…結構深いと思ったが…)
 目の前の影は、自分を見続けている。
「何だよ…用がないならさっさと消えろ」
 言った瞬間、そいつは接近して来た。歩いているんじゃあない、浮かんでいる。幽霊のようだ。
 だが、何故か危険は感じなかった。
 そいつは、キャットフードの中に入った。もともといた場所に戻った、という感じだった。
(…こいつは、俺の体から出てきたものだ…しかもよく分からないが、俺の言うことを聞くみたいだ…)
 もう一度出るように、頭で思った。すると次の瞬間にはもう前に立っていた。
(やっぱりだ。こいつがさっきの奴の言ってた『スタンド』なのか…?…まあいい、後で考えよう。そして『こいつ』じゃあ呼びづらいな。…そうだな、昼飯まだだったから『ノー・ランチ』。それに決定だ)

 こうして彼は、手に入れたばかりの『スタンド』について、少しだけ分かった。
 まず、自分の思った通りに動くこと。そして、周りの人間は『ノー・ランチ』を見ることや触ることができないと知った。
 歩きながら『ノー・ランチ』を出し並んで通行していると、前から走ってきた子供が、いきなり体を突き抜けた。
(見えてないのか、今のガキ…しかも、触れずに通り抜けた。どうやら、俺から意識して触らないと、普通の奴は触れないようだな)
 その発見からキャットフードは、あることを考えた。
(あの紙袋を被った通り魔、もしかしてスタンドで俺を切ったのか?だから俺は見れなかったんだ)
 とにかく、ああいう危険なやつにまたあったら、やっぱり逃げるのが一番だと思った。

192キャットフード:2003/11/27(木) 21:37
 その後キャットーフードは、喫茶店で軽めの昼食を取った。耳はコンビニで買ったガーゼで手当てした。もう血は止まっているが、ばい菌が入ったらまずいと彼は思った。
(危ない町なのか…ここは。もうしばらく、ここの店にいるか)
 周りを何気なく見渡したキャットフードは、自分の後ろにいる人物に気づいた。
(…暇だし、こいつを驚かしてやるか)
 パソコンに熱中するその人物に、キャットフードは声をかけた。
「おい、今から手品を見せてやるよ」
 その人物はビクッと一瞬反応し、後ろを振り返った。
「…何だ、違う人か。手品?ああ、見せてくれ」
前半はよく分からなかったが、許可されたようだ。キャットフードは頭の中で、「そこのコーヒーカップをもちあげろ」と指示した。
『ノー・ランチ』は、その人物の隣のコーヒーカップを持ち上げた。
 いきなり浮き上がってさぞかし驚いたろう、と思ったが、その人物が注目しているのはコーヒーカップではなく、青色の影のほうだった。
(…まさか、こいつ!?)
「あんたも『スタンド使い』か…」
と、その人物、ギコタクは、キャットフードに言った。

193キャットフード:2003/11/27(木) 21:42
ギコタクは出たばかりですが、小説にしてみました。
台詞があんまりジョジョっぽくない…

194:2003/11/27(木) 22:31

「―― モナーの愉快な冒険 ――   影・その5」



 驚く俺を尻目に、輸送ヘリは次々と着陸していった。
 その数、約30機。
 いくらなんでも多すぎる。
 俺は、4人ぐらいが高級外車に乗って現れると思っていたのだ。
「討伐隊って…あんなに多いモナ?」
 リナーも怪訝な顔をしている。
「…いや、いくらなんでも多すぎる。何か、彼らなりの思惑があるだろうな…」


 呆ける俺の眼前に、一際立派な装飾の施されたヘリが着陸した。
 ローターの回転で周囲の砂が舞い散る。
「…驚いたな」 リナーが呟いた。
「要人用ヘリだ。あれに乗れるのは、ASAの三幹部のみ…」
「三幹部? それって偉いモナか?」
「ASAの最高決定権を持つ3人だ。この3人によって組織が動いているといっても過言ではない」
 じゃあ、あれに乗ってるのはASAトップ3人のうちの1人、ということか。
「3人とも強力なスタンド使いだ。対スタンド使い殲滅機関の長だからな」
 何か、緊張してきた。
 リナーの話を総合すれば… スタンド使いのテログループなどに対応するため、各国政府が協力を要請するほどの機関。
 その最高権力者のうちの一人と今から顔を合わすわけだ。
 俺のような最近スタンドに目覚めたばかりのルーキーがおいそれと会ってもいいのだろうか?
 無礼な口の聞き方をすれば、その場で殺されるかもしれない。
 思わず俺は身震いした。

 先に着陸したヘリから、次々に人が降りてきている。
 全員、全身黒のスーツにサングラス着用。あれがASAの制服なのだろうか。
 この上もなく怪しい。怪しすぎる。
 彼らはそれぞれのヘリの前から動こうとしない。
 周囲に、異様な気配が立ち込めた。
 こいつら、全員スタンド使い。それも、かなりできる。
 
 例の装飾ヘリから、似つかわしくないタラップが降りてきた。
 さすが要人用ヘリだ。
 そのタラップを、ゆっくりと降りてくる一人の人物。
 丸耳モナーに区分される種族だ。
 思ったより若い。まだ20代だろうか。
 後ろには、秘書らしきしぃ族を従えている。
 只者ではないことは、気配で分かった。
「あれが… 三幹部の一人…」
 俺は思わず呟いた。
 そんな俺に、リナーは言った。
「いや、その後ろだ」
「え? 後ろには秘書しか…」
 まさか、あれが?

195:2003/11/27(木) 22:31

 丸耳はタラップを降りると、サッと横に避けた。
 その後をゆっくりと降りるしぃ族の女性に、うやうやしく頭を下げる。
 どうやら、秘書は丸耳の方のようだ。
 そのしぃは、当然ながら俺のクラスメイトのしぃよりは年上に見える。
 頭には学帽のようなものを被っていた。
 俺達の寸前までつかつかと歩いてきて、スッ… と右手を差し出す。
「どうも。三幹部の一人、しぃ助教授といいます。以後よろしく」
 手の方向は、明らかに俺の方を向いていた。
「あ、ああ… モナーですモナ」
 俺はその手を握り返した。
 何というか、予想していたより全然温厚そうだ。
 しぃ助教授は手を離すと、リナーに向けて微笑んだ。
「そして、久し振りですね。『異端者』…」
 しぃ助教授は、リナーに左手を差し出した。
 その手を軽く握り返すリナー。
「その通り名は不要だ。以後、リナーと呼んでもらいたい」
 しぃ助教授は握手したまま、可笑しそうにリナーの顔を見た。
「あら、代行者としての名が不要だなんて… 何か心変わりでも、『異端者』?」
 リナーもその手を離さない。
「あなたもASAなら、そんなことに興味を抱かずとも、任務だけこなしていればいいのでは?」
 二人の握手する手に力がこもる。
 しぃ助教授は、涼やかな微笑を浮かべて言った。
「私達の任務は、野蛮な『教会』みたいに、目に入る獲物を片っ端から殺せばいいってもんじゃないですからね…
 あくまで人間が相手のデリケートな仕事ですから…」
 リナーも笑顔で応じている。
「それは結構。こちらは、任務といえば殺すか殺されるかだからな。
 寡聞にして、平和的解決が見込める退屈な任務というのを聞いたことがない。暇な仕事が羨ましくもあるな…」
 両者の握力は、とんでもない圧力(G)に達している。
 あれが俺なら、一瞬で骨が砕けてしまうほどの破壊力。
 ああ、一触即発だ。
「ちょ、ちょっとリナー…!」
 俺は、リナーの肩を軽く抑えた。
 動揺に、先程の丸耳がしぃ助教授を抑えている。
 二人は、ようやく握手をやめた。
「…そうですね。では、その『矢の男』とやらの話を聞きましょうか」
 しぃ助教授は思い出したように言った。
 おそらく、左手は相当に痛かったはず。
 何事もなかったかのようにプラプラさせているのがクールだ。
「ああ。そうだな…」
 そして、『矢の男』の説明を始めるリナー。
 こちらも、左手の痛みに耐えている。
 両者ともクールだ。

196:2003/11/27(木) 22:32

「なるほど… 瞬間移動は能力そのものじゃなく、応用に過ぎない…ですか」
 しぃ助教授は、あごに手を当てて呟く。
「まあ、確証はないが。そうだな、モナー?」
 突然、話が俺に振られた。
「え、…そうモナよ。あれは、恐ろしい能力の片鱗に過ぎないと思うモナ」
 俺は当惑しつつ答える。
「それは、あなたの能力による推測? それとも勘?」
「…両方モナ」
 俺はそう答えた。
 俺には、『矢の男』のスタンド能力の全貌が視えない。
 視えたのは、もっと大きな何か。
 それは、瞬間移動などというチャチなものでは断じてない。
「ふぅむ…」
 しぃ助教授はため息をついた。
「まあ仕方ないですね。むしろ、幸運な事と考えますか。
 一部とはいえ、戦う前から敵の能力が分かるだけでも有利ですから…」
 リナーは提案する。
「それで、私達は遊軍として…」
「いや、その必要はありませんよ」
 しぃ助教授は、リナーの言葉を遮った。
「部外者にしゃしゃり出られては、私達の任務の遂行の邪魔になります」
これは明らかに挑発だ。
「…何だと?」
 リナー、半ギレ。
 抑えるか、様子を見るか、避難するか…
「私は『すっこんでろ』、って言ったんですが… 分かりませんでしたか?」
 しぃ助教授はアルカイック=スマイルを浮かべて言った。
「…いいだろう。代行者を前にしてのその言動、『教会』への冒涜と受け取った」
 リナーは両手に4本ずつのバヨネットを取り出した。
「これだから、ヴァチカンの連中は… 痛い目を見ないと分からないようですね」
 しぃ助教授は、どこからかドでかいハンマーを取り出した。
 かなりの大きさだ。
 俺の身長よりもでかいハンマーを、しぃ助教授は軽々と構えた。
 …これはマズい。
「リナー!!落ち着くモナ!!」
 俺は慌ててリナーを止めた。
 同様に、しぃ助教授を必死で止めている丸耳。
 俺は彼に親近感を覚えた。

 何とか、事態は収まった。
 俺はリナーを、丸耳はしぃ助教授をなだめきった。
 いつか丸耳と酒でも酌み交わしたい気分だ。
「確かに、私に多少感情的な言動があったのは認めますが… それでも、あなた達を同行させる訳にはいきません」
 しぃ助教授がまたも断言した。
「任務の遂行の邪魔というやつか?」
 リナーが訊ねる。相変わらず、両者とも敵意はムキ出しだ。
「あくまでも、『矢の男』討伐はASAの任務だという事です。貴方達は通報者に過ぎない。
 もしもこれが吸血鬼殲滅の任務だったとして、私達ASAがしゃしゃり出てきたら、代行者の貴方はどう思います?」
「確かにそれは認められないが…」
 しぃ助教授は満足げに頷いた。
「自分がされて嫌な事を、人に押し付ける道理はありませんね?」
 俺はリナーの横顔を盗み見た。
「…」
 リナーは憮然とした表情を浮かべている。
「私達に敗北はありません。ASAの集団戦術は、近距離型・遠距離型・自動操縦型の全てに対処できるんです。
 いかに強力とはいえ相手は一人。問題ありませんよ」
 これでリナーは納得しただろうか。
 いい加減、しぃ助教授の言葉の方が正論のように思えてきた。
 向こうは専門だ。任せておいてもいいのではないか?

「あなた達には勝てないな…」
 吐き捨てるようにリナーは言った。
「何事でもテンプレートに当てはめようとする愚か者に、勝利の女神は微笑んだりはしない」
 しぃ助教授はため息をついた。
「…分かりました。同行を認めます」
 リナーの粘り勝ちのようだ。
「ただし、条件があります。討伐隊が致命的打撃を受けない限り、貴方達は戦闘には参加しないこと。
 貴方の論調だと私達が負けるみたいですから、文句はないでしょう?」
「…ああ」
 リナーは頷く。
「それじゃあ、今日の午後9時にこのグラウンドへ来て下さい」
 しぃ助教授はそう言って、もう用は無いとばかりにヘリに乗り込んでいった。
 丸耳はこちらへ向かって軽く頭を下げる。
「…君も苦労するな。暴走女のおもりは疲れるだろう?」
 リナーは彼に語りかけた。
 …本当にその通りだ。
「私の立場では、その質問への回答はお答えできません」
 丸耳は回答同然の返答をして、ヘリに戻っていった。
 思えば、ずっとこの場にいたにもかかわらず、彼の声を聞いたのはこの時が初めてだ。
 三幹部の側近を務めているほどなのだから、彼も相当のスタンド使いなのだろう。

197:2003/11/27(木) 22:32

 結局、俺達は同行できる事となった。ASAの戦い振りをこの目で見ることができる。
 今の俺は、雑魚同然だ。少しでも強くならなければ。
 ヘリは次々に離陸していく。
 30台近くのヘリは、全て飛び去ってしまった。
「他の人は、何しに来たモナ?」
「護衛か… いや、それにしては多いな」
 結局、リナーにも分からないようだ。
「おそらく、何か企んでいるんだろうが…」
 しぃ助教授の話し振りからして、『矢の男』討伐は10人ほどのチームで行うようだ。
 それでも、スタンド使い10人がかりというのはとんでもない事なんだろうが…
 それに、彼らはどこへ飛び去ってしまったのだろうか。
 全員でホテルにでも泊まるつもりか?
 あんな格好をした連中が押し寄せてきたら、営業妨害もいいところだ。
「さて、一旦家に戻るか」
 リナーはそう言った。
 確かに、9時までここで待っている道理はない。
 俺とリナーは帰宅の途についた。

 俺は、歩きながら先程の会談を思い出していた。
 リナーとしぃ助教授は個人的に仲が悪いのだろうか。
 それとも、『教会』とASAが相容れないのだろうか。
 さすがに、リナー本人に聞くことは憚られる。
 その点を除けば、しぃ助教授は温厚そうな人だった。
 そして、かなりの実力者だろう。
「リナーとしぃ助教授はどっちが強いモナ?」
 俺は不意にそんな質問をした。
「スタンドでの戦いなら、私には万に一つの勝ち目もないな」
 リナーにしては弱気な発言。ただし、限定条件付きだ。
「何でもアリの戦いなら?」
「総合的なスペックは互角だな。まあ、勝つのは私だが」
 リナーは断言する。
 そう言えば、リナーも『教会』有数の殺し屋だ。
 たまに、その事実を忘れてしまう。
 …ふと気になった。
 三幹部という以上、残り二人もいるはずである。
「他の二人って、どんな人モナ?」
「私は、しぃ助教授以外とは面識がない。会ったことも、見たこともない。
 三人とも、スタンドだけではなく肉体の強度や敏捷性も並外れているという話だが」
 確かに。しぃ助教授は、あのバカでかいハンマーを片手で持っていた。
 あれはスタンド能力なんかじゃなく、純粋な腕力だ。
 それで言うなら、リナーの腕力はどうなるのだろう。
 スタンド能力によってアドレナリンなどの脳内物質をコントロールしているという話だが…
 常に火事場の馬鹿力を発揮しているような状態なのだろうか。

198:2003/11/27(木) 22:33

 家に到着した。
 リナーはすぐに部屋に引っ込む。
 今晩に備えての、銃器の整備があるらしい。
 夜には大仕事が控えているので、俺も今のところはゆっくり休むことにした。
 部屋に戻って、ベッドに寝転がる。
 幸い、明日は日曜だ。次の日の学校を気にする必要はない。
 それにしても、ASA… 好ましからざるスタンド使いの抹殺組織…
 あの場にいた全員に、闇の領域に踏み込んだ者特有の凄味を感じた。
 ふと思う。
 もう一人の俺は、『殺人鬼』である。
 俺自身、好ましからざるスタンド使いに大いに当てはまってしまうのではないか?
 いや、もう一人の俺の殺人行為は、スタンドを悪用したものではない。
 あれは純粋な技術だ。絶命から解体における殺人志向。なおのこと悪い気もするが。
 俺はバラバラになったじぃの死体を思い出して、少し吐き気を催した。
 それにしても――――なぜ、俺の中にあんな残虐な人格が芽生えたんだ?
 俺の潜在意識が、殺人を望んでいたとでも言うのだろうか?
 いや、俺は生粋のヘタレだ。死体など見たくもない。
 その抑圧に対する発露… とも言えなくはないが、それでも腑に落ちない。
 人格乖離の原因は、幼児期の虐待が多いという事だが…
 俺には虐待を受けたような記憶はない。
 それどころか、両親の顔すらよく思い出せない。

 ――――なぜ思い出せない?
 それは異常じゃないか?
 だいたい、俺の両親はなぜ家にいないんだ?
 死んだ? いや、そんな記憶はない。
 仕事? そんなことも聞いた事がない。
 物心ついた時から、俺はずっと妹との二人暮らしだった。
 しかも、なぜ今まで疑問にも思わなかったんだ? どう考えても不自然だ。

 思い出す。
 過去の出来事を必死に思い出す。
 小学校に入学してからのことは覚えている。
 その前――――どうしても、思い出せない。
 時間が遡るにしたがって、記憶が薄くなっていくという訳ではない。
 小学校以前の記憶。つまり、6歳以前で記憶がスッパリ切れている。
 そう、俺の人生は6歳の時点から突然始まっているのだ。
 そして、その頃から親はいなかった。疑問にも思わなかった。
 ――――いや、変だ。
 俺は6歳で、ガナーは5歳。そんな子供が二人で暮らしていけるはずがない。
 さらに思い出す。
 そうだ。隣のおばさんだ。
 隣のおばさんがよく来てくれて、食事の用意や家事をしてくれた。
 今は、そんな人は存在しない。
 俺が中学校に上がった時から、おばさんは来なくなったのだ。
「モナー君ももう中学生だから、家の事ぐらいガナーちゃんと2人でできるわね?」
 おばさんは最後にそう言った。
 そして、それからすぐに引っ越してしまったと記憶している。
 なぜ忘れていたのだろう。
 じゃあ、生活資金は?
 金の事はガナーの管轄だが… 確か、銀行に毎月振り込まれているはずだ。
 もちろん、現在も。
 一体、金を振り込んでいるのは誰だ?
 そして、この家はいつから存在した?
 11年前… 俺が6歳だった以前に、この家は存在したのか?
 俺はベッドから起き上がると、押入れの奥深くに仕舞い込まれていたアルバムを引っ張り出した。
 ほとんど見たことがないので、ページが張り付いてしまっている。
 俺はアルバムを開けた。

 その内容は、大きく俺の予想を裏切った。
 あったのだ。6歳以前の写真も、当たり前のように存在した。
 赤ん坊の時の写真。揺りかごの中で無邪気に笑っている写真。よちよち歩いている写真。ガナーの赤ん坊の時の写真。
 妹と二人で手を繋いでいる写真。公園で遊んでいる写真。動物園らしき場所での写真。三輪車に乗っている写真。
 写真には、当然ながら撮影された時の年号が刻印されている。
 写真の下には、俺やガナーの年齢も書かれていた。

「ははは…」
 俺は力なく笑った。
 これ以上、誰かの欺瞞に付き合ってはいられない。
 俺の人生を嘘で彩られる事は、この俺自身が認めない。
 俺は写真を「視た」。
 撮影された時期を可視化する。

赤ん坊の時の写真 ――――――11年前に撮影。
2歳の時の写真 ―――――――11年前に撮影。
俺が4歳。妹が3歳 ―――――11年前に撮影。
小学校入学の時の写真 ――――11年前に撮影。

 予想通りだ。
 俺が6歳以前の写真は、全て11年前に撮影されている。
 このアルバムは、誰が用意した?
 足元がグラついた。眩暈で倒れそうになる。
 俺は――――誰なんだ?

199:2003/11/27(木) 22:33

 すぐに平静を取り戻す。
 最近、感情の転換が容易になった。
 これも人体の防衛機構だろうか?
 とにかく、確かな事は一つ。
 俺の日常は、誰かに与えられたものだった。
 日常に戻れるとか戻れないとか、最近ずっと一喜一憂していたが――――何のことはない。
 俺が生きてきた日常は、最初から欺瞞だった。

 今までの俺なら、打ちひしがれて絶望していただろう。
 だが、今は違う。短期間に数多くの絶望を経験した。
 少し、胸の傷が痛む。
 俺が殺したじぃに報いるためにも、俺は歩き続けなければならない。
 倒れる時も、前を向いて倒れよう。

 正直、今の俺は怒りに似た感情を抱いていた。
 11年も騙されていたのだ。
 俺やガナーは、その誰かに飼われていたも同然。
 これは、許しがたい行為だ。
 とにかく、俺は俺自身の事を知らなければならない。
 もう一人の俺、『殺人鬼』の台頭と、俺の消された過去には何らかの関わりがある。
 これは間違いない。一本の糸で繋がっているはず。
 問題は、この糸が他の何に繋がっているかだ。
 『アルカディア』がこの町に来たのは最近だという。
 俺の中の『殺人鬼』も、ごく最近まで息を潜めてきた。
 この時期の一致は、果たして偶然だろうか?
 そして、リナーの存在。
 リナーが俺の家に来たのも偶然?
 いや、あれは俺の意思で連れてきたはず。
 それさえも、仕組まれたものだとしたら…
 リナーを疑いたくはない。
 そもそも、リナーは嘘が下手だ。
 誰かに欺かれているのは、リナーも同様ではないか…、と思うのは俺の欲目だろうか。
 そうだとしたら、リナーの属する組織である『教会』が怪しい。
 調べる必要があるか。だが、どうやって…?

 とりあえず、ガナーに話を聞くか?
 いや、妹も俺と同じ境遇である可能性が高い。
 それなら、下手な事を言ってガナーを混乱させるのはマズい。
 とりあえず、俺はガナーの部屋に向かった。

 扉をノックする。
「何?」
 ガナーが出てきた。
 俺は素早くガナーの手を取ると、隠し持っていた爪切りで親指の爪を切った。
 それを、用意していたビニール袋に詰める。
「あ… え…?」
 戸惑うガナー。まあ当然だ。
「ウヘヘヘヘ… モナは、妹の爪をコレクションして愉しむヘンタイ兄貴だったのだよ…」
 ポカーンと口を開けて固まるガナー。
「ではさらばッ!!」
 俺は笑いながらガナーの部屋を後にした。

 リナーの部屋に向かう途中、自分の爪を切って先程のビニール袋に入れた。
 そして、リナーの部屋の扉をノックする。
 返事があったので、扉を開けた。
 リナーは分解した銃を、何やらガチャガチャしていた。
「何だ?」
 リナーはこちらに顔を向ける。
 俺は、リナーの眼前に二人分の爪が入っているビニール袋を差し出した。
「DNA鑑定ってあるモナね? そういうのをやってくれる施設にコネはないモナか?」
「ああ、大学病院にコネクションがあるが…」
 さすがのリナーも面食らったようだ。
「じゃあ、この二つの爪を鑑定して、二人の関係を調べてほしいモナ」
「…ああ、分かった」
リナーは怪訝そうな顔をしながら、ビニール袋を受け取った。
「あと、その大学病院は『教会』の管轄モナ?」
「いや、私の個人的な知り合いだが…」
「OKモナ!」
 俺は挨拶もそこそこに、リナーの部屋を出て行った。
 
 部屋に戻る。
 とりあえず、検査の結果待ちだ。
 それはそれ。
 これ以上考えて込んでも仕方がない。
 今の俺は、『矢の男』との決戦を間近に控えている。(もっとも、俺自身が戦う訳ではないが)
 そちらに集中しなければ…
 そう。
 奴は普通じゃないのだから。
 俺は再び決意を固くした。

200:2003/11/27(木) 22:34

 風が強い。少し肌寒いほどだ。
 もう、夏も終わりか。
「リナー、そのカッコ、寒くないモナか?」
 俺は訊ねた。
「…特に」
 リナーはいつもにも増して素っ気無く答えた。
 服やスカートも、普段よりこんもりしている。
 今日はかなりの重武装なのだろう。
 腕時計を見る。8時58分。
 約束の時間までもう少し。
 俺はバヨネットの柄を強く握った。
 『矢の男』の能力も、詳細は不明だ。
 リナーは、奴の能力が物語内で決定しないままに具現化したと言っていた。

 遠くからヘリの音がする。
「来たようだな…」
 リナーは言った。
 今度は1機のみだ。
 だが、昼間のような輸送ヘリとは全く違う。
 明らかに戦闘を目的とした流線型のスタイル。
 横に突き出した羽根のようなものには、ミサイルが取り付けられている。
 ローターが空を切る音も、昼のヘリより格段に小さい。
「RAH−66…」
 リナーは呆然とした表情で呟いた。
 そのヘリは、驚くべき速さで俺達の眼前に着陸した。
 今度はタラップは降りない。
 羽根の下の狭い空間が開き、しぃ助教授が窮屈そうに出てきた。
「時間ちょうどですね。さて、行きましょうか」
 固まっていたリナーが、不意に口を開いた。
「なぜ、ASAがこれを所有している? 今のところ、試作機2機とプロトタイプ6機しか存在していないはずだが…」
「ああ、羨ましいですか?」
 しぃ助教授は微笑んで言った。
 リナーはその笑顔を睨みつける。羨ましいのだろう。
「そのプロトタイプ機を払い下げてもらったんですよ。
 単座式にして、後ろにも人乗れるように改造しました。おかげで、ウェポンベイが出たままになってますが」
 リナーはショーウィンドーのトランペッドを眺める子供のように、そのヘリをじっと見ていた。
 素敵な紳士も、これをプレゼントするのはちょっと無理だろう。
「そんなにすごいヘリコプターモナか?」
 俺は何気なく訊ねた。
 リナーは物凄い剣幕でこちらを見る。
「すごいヘリコプター? 君は、あのRAH−66を目の前にしてその程度の感想しか抱けないのか?
 RAH−66とは、ステルス性と対ヘリ同士の空戦能力を主眼に開発された偵察ヘリだ。
 ここで注意したいのは、便宜上偵察ヘリとなっているにも関わらず、攻撃ヘリと同等の武器搭載能力を有している
 点だ。それでいて、そのステルス能力は妥協を許さない。機体構造及び外環は二次局面で構成され、
 武装及び降着装置を全て内部引き込み式にしている他、レーダー断面積を極限まで抑えている。
 また、アパッチに匹敵する出力を有しており、良好かつ俊敏な運動性能を達成している!」
「は、はあ…」
 俺は、とりあえず頷く。
 流石のしぃ助教授も硬直しているようだ。
 リナーは軽く息を吸って… 再開した。
「また、ステルス性を損なうもののスタブ・ウイングを装着すれば強襲打撃任務もこなせる能力を持っている。
 それに、開発当初より緊急展開能力を考慮して設計された為、良好な整備性と機体の小型化に成功した。
 それにより大型輸送機による前線展開力が極めて高く、戦闘段階において迅速な運用を可能としている。
 さらに、最新のアビオニクスも導入していて、任務上欠かせない夜間低空飛行能力は当然として…
 統合型のディスプレイとHIDSS(ヘルメット統合表示視認システム)で夜間における高い戦闘能力を発揮する」
 しぃ助教授は、チラリと俺を見た。
 何とかしなさい、そう訴えている。
「その操縦装置は、ヘリとしては初の3重系統のフライ・バイ・ワイヤー方式で…」
「あの、ちょっといいモナか…?」
「何だ?」
 リナーは俺を睨んだ。
「このヘリが大変に素晴らしいことは存分に分かり過ぎたモナ。
 でも、今は『矢の男』を倒しにいかないといけないモナ。早く行かないと、無駄な犠牲者が出るモナ…」
「そうだな… 多少取り乱したようだ」
 リナーはヘリに乗り込もうと、つかつかと歩み寄った。
 俺としぃ助教授も後に続く。
「まあ、それほどお褒め預かり光栄ですが…」
 しぃ助教授の声を、リナーは遮った。
「ほめてなどいないッ!! 大体、なぜ胴体部分にスペースを開けた? ステルスにこだわった設計が台無しだ!
 おかげでウェポンベイが出しっぱなしになるなど…無様極まりないッ!! 兵器運用を無視した改造など、
 存在自体が罪悪だ!!」
「す、すみませんでした…」
 しぃ助教授は素直に謝った。
 ここで反論したら、朝まで多分このままだ。そう判断したのだろう。
 それは大いに慧眼だ。
 こうして、俺達3人はヘリに乗り込んだ。

201:2003/11/27(木) 22:35

 当然ながら、乗り心地は悪い。
 もともと、人が乗るスペースではないのだから。
 当然、外を見る窓もない。何と言うか、最悪だ。
 ただ、振動は驚くほど小さい。
 その時、俺は重大な事実に気付いた。
「そういやみんな… さっきから『矢の男』を倒すとか、『矢の男』と戦う事ばかり言ってるモナ…
 モ… モナ! とんでもない事に気がついたモナ!
 モナが気付いたからいいようなものの… みんな、大変な事を忘れてやしないモナか!!
 『矢の男』を倒すって、いる場所が分からないモナ!!」
 リナーもしぃ助教授も、その衝撃の事実に唖然としている。
「ここまで来てこんな大切な事を忘れてどうする気モナッ!!」
 俺は呆れた。
 しかし…2人は、さらに呆れているようだ。
「あのですね…」
 しぃ助教授は口を開いた。
「矢の男の位置くらい、衛星で把握してますよ。今日の昼、何の為に特徴を聞いたんだと思ってますか?」
「衛星?」
 俺は聞き返す。人工衛星のことか? 『ひまわり』くらいしか俺は知らない。
「どうせ、君は『ひまわり』程度しか耳にした事がないだろうが…」
 失礼な前置きで、リナーは説明しだした。
「軍事目的で使われる人工衛星は… 思いつくところで、軍事気象衛星、軍事航法衛星、軍事通信衛星、
 軍事偵察衛星、早期警戒衛星、通信傍受衛星などだな。この場合は、軍事偵察衛星に相当する。
 通常は、2〜3mの識別が可能だ。もっとも、ASAがどの程度の衛星を保有しているかは知らんが…」
 リナーは、しぃ助教授の顔を横目で見た。
「詳しくは言えませんが… KH−11レベルですね」
 しぃ助教授は口を挟んだ。
「インプルーブド・クリスタルか…」
 リナーは感嘆したように呟く。
「私達ASAは、常に最新のテクノロジーで武装しているんですよ。
 どこかの古めかしい…おっと、格式を重んじる組織とは違いますから」
「…!」
 リナーは何かを言い返そうとして、結局止めた。
 指摘は的を射ていたのだろう。

「お楽しみのところ失礼しますが、もう1分もすれば『矢の男』のいるポイントに到着します」
 しぃ助教授の持っている無線から、パイロットの声がした。
 彼もスタンド使いなのだろうか。

 …近い。
 前に感じた、ドス黒い気配が視えてくる。
「ヤツは、いるモナ…」
 俺はそれだけを告げた。ヘリ内に緊張が走る。
 その時突然、俺の視界に「ある情景」が視えた。

『お前は… 選ばれたものか…』
 奴が狙いをつけているのは、男と女。
 女をかばうように、男が前に立ちはだかる。
『お前は逃げろ!』
 しかし、女は腰を抜かして立てはしない。

遠隔視能力。
視えるはずのものなのに、声まで聞こえる。音声の視覚化。

これは… 今まさに繰り広げられている情景だ。 
「急ぐモナ! ヤツが、一般人を襲ってるモナ!!」
 リナーとしぃ助教授は、俺のほうを向いた。
 しぃ助教授が無線で何かを喋っている。パイロットを急かしているのだろうか。
 しかし、そんなものは目に入らなくなった。

 一歩一歩、近づいていく『矢の男』
 女が逃げられない以上、男は動けない。
 そして、『矢の男』は矢を放った。
 それは、男に直撃する。
『いやああぁぁぁッ!!」
 女の絶叫。

「クソッ!!」
 視界が、ヘリ内に戻った。
 …何も出来なかった。
 一人の男が、俺の視える範囲内で命を落とした。
 女の方は…

202:2003/11/27(木) 22:37

「前方!!『矢の男』が見えます!!民間人女性は無事の様子!!」
 パイロットは叫んだ。
 俺、しぃ助教授、リナーは一斉に身を乗り出す。
 奴はそこにいた。

 ―――『矢の男』

 こちらを睨んでいる。
 邪魔が入って、気分を害したのだろう。
 奴は理解した。
 こちらに、奴を消滅させる意図がある事を。
 そして、俺は理解した。
 ―――今度は、本気で来る!

「先遣部隊は!?」
 しぃ助教授が叫ぶ。
「追い越してしまったようです。あと4分は、バックアップなしで…」
 大したチームワークだ。
 いや、俺が急かしてしまったのが原因か。

「まったく… 前言撤回します!! 私があの女性を救出しますから、貴方達は『矢の男』を引き付けておいて!!」
 しぃ助教授はそう言うと、返事も聞かずにヘリから飛び降りていった。
 高さは、約100m。まあ、しぃ助教授なら大丈夫だろう。
「リナー! 俺達も…」
「ああ。だが、その前に…」
 リナーは無線を拾い上げる。
「全弾、撃ち込め」
 その無線を通して、パイロットに告げた。
「はぁ?」
 当然の返答。
「奴に全弾撃ち込めと言っている!!
 ヘルファイア24発! ロケット弾24発! スティンガー24発! 全部だ!!」
 リナーは叫んだ。
「は、はい!!」
 無線機からの返事。
 俺はとリナーは再び外に乗り出した。
 『矢の男』は、そこに動かず立っていた。
 ただ、俺とリナーを見据えている。
 空を切るような発射音。
 俺たちの乗っているヘリから、70発を超える発射物が撃ち尽くされる。
 振動と轟音。
 それらの兵器は、目の前を構造物を全て消滅させた。
 瓦礫すら残らない。代わりに残ったのは、周囲を覆いつくす白煙。
 真下は住宅地だ。
 相当の被害が出たのではないだろうか?
「やったか…?」
 リナーが身を乗り出す。
 …その瞬間に、俺は視た。
 殺意。
 死の波動。
「リナー!! 引っ込め―――ッ!!」
 俺は、全力でリナーの身体を引っ張った。
 そのリナーのまさに眼前を、何かが高速で通っていった。
 いや、通っていったとは異なる。ヒビのような亀裂が空間を駆け抜けていった、というのが正解だろうか。
 大きくヘリが揺れた。
 俺とリナーは機体にしがみつく。
「尾部に損害!」
 パイロットが叫んだ。
「くっ…!」
 リナーの額が切れて、血が流れ出ている。
 間違いなく、さっきの攻撃。
 リナーの額を掠めて、ヘリの尾部に直撃したのだ。
「MBTの攻撃にすら耐えられる装甲だぞ…? あいつ、何をした…?」
 リナーが憎々しげに呟く。
 俺は体勢を整えると、身を乗り出して攻撃を食らった部分を見た。
 「視る」必要はなかった。
 あれは、損害とは言わない。
 ヘリの尾部は、綺麗に消滅していた。

203:2003/11/27(木) 22:37

 傾いたヘリの機体が、微妙に回転しだした。
 尾部を失ったからだ。
「このヘリは、もう持ちません!! 脱出してください!!」
 パイロットが叫ぶ。
「脱出っても… パラシュートもなしでどうやって…」
 言葉を言い終える前に、リナーが俺を抱きかかえた。
「なっ… あ…!!」
 まさか…
「喋るな!!舌を噛むぞ!!」
 なんと、リナーは俺を抱えたまま外に飛び出した!

「うわあああああ!!」
 長い落下。
 生きた心地がしない。
 女の子に抱きかかえられながら、紐なしバンジーをやる破目になるとは思ってもみなかった。
 月曜日になったら、学校で自慢しよう。
 その時までに、この命があったら…

 リナーは空中で体勢を変え、見事に着地した。
 だが、さすがに衝撃は大きい。
「流石に足がイカれたな…」
 リナーが呟く。
「修復まで、あと15分というところか…」
 まずい。こんな状態で、俺達は奴と戦えるのか?
 周囲には確実に『矢の男』がいるはず。

 その時… 凄まじい爆音がした。
 吹き寄せる爆風。
 さっきミサイルをブッ放した時の比ではない。
 そう、俺たちの乗っていたヘリが墜落したのだ。
 冗談のように民家に突っ込んだヘリは、激しく炎を噴き出していた。
 その炎は、恐ろしい勢いで周囲を覆い尽くしていく。
「まずいな… 被害が大きすぎる…」
 リナーは呟いた。

「貴方達、怪我は… あるようですね」
 不意に背後から声が聞こえた。
 しぃ助教授だ。
 彼女は、矢が刺さった男の死体と、泣きじゃくる女を抱えていた。
「私達も、この場から離れた方がよさそうですね…」
 そんな言葉は、俺の耳に届かなかった。
 なぜ、今まで気付かなかったのだろう。
 俺は、その二人と毎日顔を合わせていた。
 ―――矢が突き刺さっているのはギコ、泣きじゃくっているのはしぃだった。


  /└────────┬┐
. <   To Be Continued... | |
  \┌────────┴┘

204新手のスタンド使い:2003/11/28(金) 00:51
なんだこれわ。すごく面白い。

205新手のスタンド使い:2003/11/28(金) 23:26
合言葉はwell kill them!その④―オヤジ狩りに行こう。


ジリリリリリリ・・・・。
ああ、何時もの様に無機質な目覚ましの音が響いている。
ジリリリリリリ・・・・。
ぐわっしゃあああん!!!
・・・また壊しちまった、これで3回目だ。

アヒャはまだ朦朧としている意識の中、布団の上でボリボリと頭を掻いた。
「ふあぁ〜まだ眠いな。遅刻してもいいからも一回寝ようかな・・。」

何時もと変わらない朝。つまらない朝。
この後何時ものように顔を洗い、飯を食い、歯を磨き、着替えて学校へ行く。
その繰り返し。平凡な日常が始まったと言う訳だ。
ま、アヒャはスタンド使いなので日常から逸脱している点が在るが・・。

「はぁ〜、何か俺自分の部屋に一人で居ると独身のワカゾーみてーだな・・。」
彼はたまにこんな下らない事を考えたりしている。
「たまには誰かと一緒に寝たいよなー。可愛い女の子が隣に居てさ・・・・。
 そんでくんずほぐれつ・・・・。ムフフ・・・。」
ヤバイ。ハッキリと言ってヤバ過ぎる。彼がヤバイのは子供の頃からなので
なんら心配はないが・・。まあ、宅間のような犯罪者にならぬことを祈ろう。

「さ、ちゃっちゃと起きますか。・・ん?」
彼は布団から出ようとして奇妙な違和感を感じた。
布団が湿っている。
「やばっ。俺この年で寝小便か!?」
慌てて布団を捲って見ると、布団が血だらけになっていた。
しかも、彼の目を疑うような光景もおまけで・・。

布団に隠れて気がつかなかったが、彼の寝ていたすぐ傍に一人の少女が寝ていた。
しかも真っ裸で・・・・。

「ぎゃあjrtkldふぉp度phlkrすぇぉg!!!!!!」
余りの事に驚き、アヒャは部屋の隅に飛び退く。
無理もない。こんな光景誰がすんなり受け止めるというのだ。
彼はただ呆然とする他なかった・・。

206新手のスタンド使い:2003/11/28(金) 23:49

「落ち着け・・・。落ち着くんだ俺!こんな時こそ素数を数えながら気を沈めるんだ!
 ええっと・・・。2・・・3・・5・・7・・・12・・・違う11・・。」
アヒャが素数を数え始めた時、少女が起き上がってこう言った。
「あーはっはっは!!!ナイスリアクションだぜマスター!まさかこんなにも驚くとは
 思っても見ませんでしたよ!」

・・・・・・マスター!?

「ま、マスターって・・・・お前・・まさか!!」
「いま気がついたんですか!?にぶいっすね〜。」
少女の体が段々と溶けて、別の姿になる。それは・・・
「てめえの仕業か!ブラッド!!」
「ピンポ〜ン!御名答〜。」

数分後・・・。

「まさかお前に変身能力があるとはな・・。てゆうかお前何時出てきたんだ?」
「昨日一緒に三国無双3やったじゃないですか〜。憶えてないんですか〜?」
「そうか、そん時お前をしまうのを忘れて寝ちまったのか・・。でも本当にビビッたんだからな!
 これでもし心臓止まったって事になったらお前も俺も死んじまうんだからな!」
「メンゴメンゴ〜。流石だな俺様!」
まったく・・・奴に反省の色と言うのが在るのか?(多分無い)
「処で、お前今のところ何に化けれるんだ?」
「今のところは人間や犬や猫なんかの動物が限界ですね〜。ま、血液がタップリ有れば
 大型動物も可能なんですが・・。機械類は無理っすね〜。」
「ふ〜ん・・・。」

アヒャは。腕を組んで考え事を始めた・・・。
「そうだ!お前の能力で金稼ぐイイ方法を思いついた!」
「なんすか?見世物だったらマジ勘弁してくださいよ!」
「そんな柔なもんじゃねえ。今の時代だからこその金儲けさ・・・。」


用事があるのでちょっと止めます。すいません。

207新手のスタンド使い:2003/11/29(土) 22:17
>>206より

一日は過ぎ・・・・。

ここは茂名王町繁華街。
夜の街にはたくさんの人が出歩いている。
学校帰りの学生、強面のお兄さん、金目当てで自分の体を売る女子高生、
そしてそれに食いつく中年親父、目が逝っちゃってる人・・・。
人生の縮図がここにはある。

駅前の待ち合わせスポットになっている『絶望する人の像』の前。
そこに一人の少女がちょこんと座っていた。
年はまだ中学生位だろうか。
ピンク色をメインにした服装。
茶色く染めた短い髪。
ミニスカートからすらりと伸びた白くて細い足。
誰かと待ち合わせでもしているのだろうか?
こんな可愛い少女一人きりでは、エロ親父の格好の餌食にされてしまう。

数分後・・・。
心配していた事態が起こってしまった。
彼女に一人の親父が擦り寄ってきたのだ。もち体目当てで。
「ね、ねえお嬢ちゃん。いっ今一人っきりなの?」
「そ、家帰ってもつまんないだけだし〜。ここいら辺でぶらついてるの。」
「だ、だったらオジサンと一緒にカラオケでもどう?」
「じゃあね〜。4万払ってくれたらいいよ〜」
この一連の流れ・・・何処をどう見たって援助交際の流れだ。
こんな乱れた性生活を送る近頃の女子高生はそう少なくはない。
「ええ!ほ、本当!?」
「5万だったらホテルもOKだよ〜。」
「そ・・そうなの!?なら今すぐ行こうじゃないか!」
「賛成〜。」
少女はのこのことエロ親父に付いていった。
口元に不敵な笑みを浮かべて・・・・。

数時間後、二人はホテルへと入っていった。
その後を尾行するかのごとく、男が一人物影から様子を窺っていた・・。

208新手のスタンド使い:2003/11/29(土) 22:42

男は懐から何かを取り出した。
小型のトランシーバーだ。
即座にスイッチを入れると男は自分の耳に押し当てた。
「さ、ハッピーで爽やかな気分を象徴した断末魔の悲鳴を聞かせて
 貰いましょうかねぇ!」

トランシーバーから音が漏れている。
どうやらホテルの中の会話らしい。

「ザーッ・・ザザッ・・・・・・・『はあ・・・。はあ・・・。・・・・
 さあ・・・・オジサンの臭いのを・・。』・・ガシイッ・・『ええっ!?
 な・・何するんだい可愛い子ちゃ・・。』・・ボグシャアアアア!!!!
 『ウギャアアアア!!!!!』・・・ドカッ!・・バキィ!・・・・・・
 『い・・痛いじゃない!何でこんなことを!?』ドムウ!『ふぐう!』
 ・・・・・・・・・・・・・・・・ゴソゴソ・・・・・プッ。」

「順調じゃあねーか。あいつもやりおるなあ。」
今の出来事を聞いて男はほくそえんだ。

「おお〜い。ガッポリ稼いできましたよ〜。」
先程の少女が男の所にやって来た。
「でかした!・・で、幾ら?」
「18万も持っていましたよあの親父。流石ですねマスター!こんな
 金儲けの方法考え付くなんて・・。」

そう。この少女の正体は変身能力で女の子に化けたブラッドで、
物陰に潜んでいた男はアヒャ。
外にいるアヒャとはトランシーバーで連絡を取り合えるようにしていたのだ。
「ま、このご時世こういうビジネスも有りってことよ!」
「流石だよな俺ら。」
二人は高らかな笑い声を上げた。

駅前の待ち合わせスポット
次なる獲物を求め、ブラッドが罠を張っていた。
「さ、次なる獲物は・・・ん?」
気がついたとき、ブラッドの目の前に一人の男が立っていた・・。

  /└────────┬┐
. <   To Be Continued... | |
  \┌────────┴┘

209:2003/11/29(土) 22:46

「―― モナーの愉快な冒険 ――   影・その6」


「モ、モナー君…?」
 しぃは、俺の顔を見て泣きじゃくりながら言った。
 ギコはぐったりしている。
 顔は真っ青。かなりの出血。
 正直、息があるとは思えない。
「ギ、ギコ…」
 俺は呟いた。
 いや、しぃ助教授がわざわざ運んできたという事は、まだ息があるんじゃないか?
 その考えを裏付けるように、ギコは「う…」と唸った。
 俺は胸を撫で下ろした。
 いや、マターリしてる場合じゃない。
 周囲は炎に包まれている。
 凄まじい熱気。このままここにいると、炎にまかれてしまう。
 さらに、リナーは両足を負傷。100m近くの高さから飛び降りたのだ。
 ギコも半死半生。当然ながら、しぃも戦力にならない。
 泣きじゃくるしぃを尻目に、こちらの戦力分析をしている自分にふと嫌気がさした。
 …いや。精神的に強くなるとは、こういう事か。

 しぃ助教授はギコを地面に寝かせると、ハンマーを取り出した。
「来ますよ…」
 炎の中から、ゆっくりと『矢の男』が現れた。
 炎に乗じて奇襲する気はないようだ。
 『矢の男』は口を開く。
「『アナザー・ワールド・エキストラ』…!」
 御託も何もなく、ただスタンドの名のみを呟いた。
 男の体から浮かび上がる、攻撃的なヴィジョン。
 本体よりも一回り大きい、人型のスタンドだ。
 全身には力が漲っている。
 これが、『アナザー・ワールド・エキストラ』…
 殺る気は充分のようだ。
 しぃ助教授も、男の姿を凝視している。
 不意に、『矢の男』の姿が消えた。
 ―――瞬間移動。
 奴は、リナーの横に現れる。
 動けない相手から先に狙ってきやがった…!
「!!」
 リナーは銃を抜くと、何度も引き鉄を引いた。
 当然のように、『アナザー・ワールド・エキストラ』は弾丸を弾き飛ばす。
「まずは、お前だ…」
 『アナザー・ワールド・エキストラ』が右腕を構え…
 その瞬間、しぃ助教授が『矢の男』の背後に翻った。
 旋回させ、加速をつけたハンマーでの一撃。
 直撃を受け、『矢の男』は20mほど吹っ飛ぶ。
 轟音を立てて、崩れ落ちた瓦礫の中に突っ込んだ。
 そのまま、奴は瓦礫に埋もれてしまう。
「やったか!?」
 俺は、リナーとしぃ助教授のそばに駆け寄る。
 しぃ助教授は、口惜しげに首を振った。
「いえ、奴のスタンドにガードされました。あのタイミングで、死角からの攻撃を防ぐなんて…」
 そして、俺の方に向き直った。
「今すぐ、他の3人を連れてここから離れなさい!」
「え…、だけど…!」
 俺は困惑する。尻尾を巻いて逃げろという事か?
「ここは私が食い止めます。早く!!」
「逃げるなんて、できないモナ!」
 そう、俺は強くならなければならない。
 敵に後ろなど見せられるものか。
「あなたの今すべき事は何ですか? 大した戦力にもなれずに、私の傍をウロウロする事ですか?
 それとも、瀕死の人間を病院に運ぶことですか?」
 …そうだ。俺は馬鹿だ。
 ギコを、俺のエゴの犠牲にするところだった。
 『矢の男』は瓦礫を吹き飛ばして出てくる。
 そして、こちらにゆっくりと近づいてきた。
 もう、一刻の猶予もない。
 俺はリナーに肩を貸した。そのままギコを背負う。
 しぃはへたばったままだ。
「しぃちゃん!」
 呆然とした表情で、こちらを見るしぃ。
「早く、ギコを病院まで運ぶモナ!」
 その言葉を聞いて、しぃは夢から覚めたように立ち上がった。
 『矢の男』が、ゆっくりとこちらに歩み寄る。
 しぃ助教授は、そちらを凝視しながらハンマーを構えた。
「じゃあ、後は任せるモナ!」
 しぃ助教授は、『矢の男』への視線を維持したままで頷いた。
 俺はしぃを連れて走り出した。

210:2003/11/29(土) 22:46

 凄まじい炎。
 吹き寄せる熱気。
 ヘリの墜落から始まった火災は、なおも延焼を続けている。
 かなりの犠牲者が出たのではないだろうか。
 悲鳴や怒鳴り声があちこちで聞こえる。周囲は、凶気と喧騒で包まれていた。
 人々はパニックを起こし、とにかく火から逃げ惑っている。
 俺達は、そんな人達の流れに乗って、戦いの場からかなり距離を置いた。
「とりあえず、車を見つけるべきだな…」
 俺の肩を借りているリナーは言った。
 どうでもいいが、かなり重い。
 一体、どれだけの量の武器を所持しているのだろうか。
「でも、誰が運転を…?」
 高校生である俺やしぃは論外だ。今のリナーの足でも、辛いものがあるだろう。
 車自体は、すぐに見つかった。
 おあつらえ向きに、黒のリムジンが停めてある。
「よし、あれに乗るぞ…」
 リナーは言った。でも、運転はどうするのだろう?
 よろよろと車に近づくリナー。まだ足は完治していないようだが…
 そして、リムジンの後部座席のドアを開けた。
「おい、きさま… なにしてるんだよ?」
 ガタイのいい男が、後ろからリナーの肩を掴む。
「誰の車だと思ってんだ? モナソン・モナップス上院議員のもんだぞ!」
 大声を上げて凄む男。
 リナーは無言で肩に乗せられていた男の腕を掴むと、時計回りにねじった。
 バキバキと音を立てて砕ける男の骨。
「おおお、おがあ……ぢゃ………ん」
 呻きながら、男はその場に崩れ落ちた。
 リナーは明らかに機嫌が悪い。
 理由は明白。
 天敵のしぃ助教授に、さっきのピンチを救ってもらったからだ。
 リナーはそのまま後部座席に乗り込む。
「何をしてる!? 早く乗れ!」
 リナーはそう言った。俺達は車に駆け寄る。
 後部座席、そしてリナーの隣には初老の紳士が座っていた。
「これこれ……若いお方というものは、血気がさかんすぎていかんことだのう、フッフッフッ…」
 温和な顔で笑う紳士。
 リナーは左腕を紳士の顔の前に掲げると、おもむろに前歯を引っこ抜いた。
「ブツブツ言ってないで前座席へ行け。運転してもらおう…」
「おげぇぇぁぁぁ〜〜っ! イイデェーッ!」
 悲鳴を上げる紳士。
「き…きさま何者だァーッ! わしに…」
 リナーは紳士の鼻先を掴んで、運転席へ放り投げた。
「悪いが、貴様の長口上を聞いている暇はない」
 
 俺はギコを後部座席に乗せた。しぃがその隣に座る。
 これ以上は後部座席に乗れないので、俺は助手席まで回った。
「上院議員にできないことはないからだッ! ワハハハハハハハーッ」
 可哀想に、上院議員はすっかり壊れてしまったようだ。
「とりあえず、近くの病院へ向かえ。場所は分かるな?」
 リナーはそう命令した。
「はっ…はい――ッ」
 上院議員はヒステリックな叫び声を上げ、その嬌声と共に車は急発進した。

211:2003/11/29(土) 22:47

          @          @          @


 ゆっくりと歩み寄ってくる『矢の男』。
 70発以上ものミサイルをいなし、至近距離からのハンマーでの一撃をも防ぎきった。
 この男、間違いなく強い。
 私は汗をぬぐって、ハンマーを構えた。
 一瞬の油断も許されない。
 ここまで緊張感のある戦いは久し振りだ。

 『矢の男』は、ゆっくりと左手をこちらへ差し出した。
 連動して、奴のスタンド『アナザー・ワールド・エキストラ』の左腕が上がる。
 …直感だが、あの動きは危険だ。
 私は素早く真横に飛びのいた。
 同時に、巻き起こる衝撃。
 奴の腕先から、私のいた場所。そしてその直線上にあったもの全てが吹き飛んだ。
 その衝撃は地面を削り取り、一直線のラインを形作る。
 そう、100mもの上空にいたヘリを撃墜した力だ。
 大地に残った爪跡は、遥か彼方まで続いている。奴の能力の射程距離は測りきれない。
 この力は、確かに脅威である。
 だが…私は見抜いた。
 あの衝撃波を放つには、手を差し出すという予備動作が必要なようだ。
 単純にして、致命的な弱点。
 さらに第二撃。
 ―――予備動作を見逃さない限り、あんな攻撃など当たりはしない。
 私は高く跳んで、民家の屋根に着地した。
 …だが、『矢の男』は、屋根の上に瞬間移動で先回りしていた。
「『アナザー・ワールド・エキストラ』の攻撃を2度も回避したことは賞賛に値する…が、これで終わりだ…」
 奴は手を差し出そうとする…が、遅すぎる。私の間合いを見誤っているようだ。
 私は一瞬で間合いを詰めると、空中で一回転してハンマーを振り下ろした。
「…!!」
 スタンドの両腕を頭上で交差させて、攻撃を防ごうとする『矢の男』。
 そんなもので、この一撃の威力は殺せない。

212:2003/11/29(土) 22:47

 直撃を食らい、奴は屋根を突き抜けて階下に落ちた。
 その衝撃は屋根のみに及ばず、民家そのものを破壊する。
 私はそこから飛び退いて、地面に着地した。
 倒壊する民家。住民は避難済みであることを祈るばかり。
 今度は殺ったか…?
 私は、数秒前まで民家であった瓦礫に一歩近づいた。
 その刹那、放たれる衝撃波。
 それは、私の頭上をかすめていった。
 あと一歩近づいていたら、完全に腰から上が消し飛んでいただろう。
 向こうもこちらが見えていないのか、正確に狙った一撃ではなかったのが幸いした。
 この戦いでは、不用意な動きは死に直結する。
 瓦礫を吹き飛ばして、『矢の男』が姿を現した。
「なかなかやってくれるな、女…」
 『矢の男』は、その位置から衝撃波を連発した。
 手の向きと視線で攻撃方向は読めるものの、これでは近づけない。
 周囲への被害も大きすぎる。
 無造作に放たれる一撃一撃が大地を抉り、民家を粉砕した。
 不意に、『矢の男』の姿が消える。
 ――真後ろか!
 『矢の男』は、現れると同時に衝撃波を放った。
 咄嗟に飛び退く。
 なんとか直撃は免れたが、学帽が半分消し飛んでしまった。
 瞬間移動と衝撃波を併用しての波状攻撃。
 なんという厄介な能力だ。
 小細工を弄しないのは本体の志向だろうが、狡猾に来られたら誰も太刀打ちできないのではないか?
 間違いなく、あの能力は封印指定レベルだ。

 早く勝負を決めなければ、持久戦ではこちらが不利である。
 さらに姿を消す『矢の男』
 ――今度は、頭上!
 落下しながら、『アナザー・ワールド・エキストラ』の拳を振るう。
 この距離ではかわしきれない。
 ――仕方ない。
 これは、最後の切り札にしたかったが…

「『サウンド・オブ・サイレンス』!!」

 全力で打ち下ろされた『アナザー・ワールド・エキストラ』の拳は、私に届く20cm手前で止まった。
 まるで、見えない壁にぶち当たったように。
 散らしきれなかった『力』が、周囲の空間に放射状に弾け飛んだ。
 『矢の男』は飛び退いて間合いを開ける。
「…力が逸らされた、だと…?」
「本当は、逸らすんじゃなくはね返したかったんですけどね」
 『力』が強すぎて、一瞬では指向性を持たせられなかった。
 発散させるだけで精一杯だ。
 少しの間を置いて、『矢の男』は口を開いた。
「…なるほど。『力』の方向を変え、衝撃の伝播を操作するのが貴様の能力か…」
「ご名答。拳での攻撃は、私には届きませんよ?」
「…面倒だな」
 言葉とは裏腹に、『矢の男』は笑みを浮かべたように見えた。
 スタンド使いの強者を求めるのは、この男の本能だろうか。
「貴様を葬るのは難儀そうだ…」
 そう言って、『矢の男』は姿を消した。
 ―――今度はどこから来る!?
 私は身構えた。
 周囲に感覚を広げる。
 例の衝撃波は、物理的特性にとらわれずに物質を消滅させるようだ。
 その『力』は、『サウンド・オブ・サイレンス』では逸らせない。
 だが、かわすことは充分に可能。
 拳で来ようが、間合いをおいて衝撃波を放とうが、次に現れた時が『矢の男』の最期…!

 『矢の男』が姿を消してから、10秒が経過した。
 奴は現れない。
 油断を誘っているのか?
 いや、奴は姿を消す直前に何と言っていた?

『貴様を葬るのは難儀そうだ…』

 …しまった。
 奴は、私との戦いを先延ばしにしたのだ。
 目先の邪魔者を放置してまで奴が優先することといえばただ一つ。
 ―――矢の回収。
 矢は、あのギコに刺さったままだ。
 なんという失態、みすみす奴を逃がしてしまった…!


          @          @          @

213:2003/11/29(土) 22:48

 あれから、かなりの距離を走った。
 夜も遅いので、車道が空いていたのが幸いした。
 もし渋滞に巻き込まれようものなら…
 今のリナーなら、何を命じていたか目に浮かぶようだ。

「大体、足も回復したようだ」
 リナーは言った。
「ギコは?」
 助手席に座っている俺は、振り向いて訊ねた。
「応急処置は施した。出血は止まったようだが…」
 リナーは前に言っていた。
 リナーの治療は、あくまで本人の治癒力を促進させるのみだ。
 簡単に傷が塞がったりはしないし、致命傷なら効果はない。
 とは言え、先程まで死人のようだったギコの顔色は幾分良くなった。
 息は荒いが、さっきまではその呼吸自体が止まっていたのだ。
「なんで… なんで、こんな事に…」
 しぃが涙声で呟いた。
 何と説明したらいいのだろうか。
「えっと…ギコを矢で射た奴は、悪い奴モナ。それで、モナとリナーはそいつと戦ってるモナよ」
 しぃは、俺の顔をじっと見た。
「それで、ギコとしぃちゃんが巻き込まれたのは…」

 ――――運命。

 嫌な言葉が頭をよぎる。
「たまたま、あそこにいたからモナ」
「私が、あんな時間にギコ君を誘ったから…」
 しぃはうつむく。
 深夜のデートの代償は高くついたようだ。
「過去の事を嘆いても仕方がない」
 リナーは言った。「たまたま不幸に巻き込まれただけだ。特に思い悩む必要はない」
 その通りだ。反省ならば意味はあるが、後悔は不要だ。
「それに、ギコの命に別状はない。入院は必要だろうがな…」
 リナーは、しぃに対する慰めを口にした。
 しかし、あの矢に刺さって息があるという事は…
 
 急に、寒気がした。
 黒いモヤのようなものが、後ろから広がってくる。
 この気配(視覚化されているので、厳密には気配という言葉は当て嵌まらないが) は、間違いない。
 そう、『矢の男』だ。
「…来たようだな」
 リナーも、奴の存在に気付いた。
 しかし、奴が追ってきたということは… 
 しぃ助教授は、まさか…!?

 いや… しぃ助教授の現在の姿を視ることができた。
 ここから20Kmほど離れた場所を走っている。
 かなり離れた位置だ。
 『矢の男』は、瞬間移動を繰り返してここまで来たのだろう。
「何があっても速度を落とすな!!」
 リナーは上院議員に命令した。
 哀れな上院議員は、壊れたように何度も頷く。
「それにしても… なんでこの車の位置が…!」
 俺は呟く。ヘリを落とされた場所からかなり移動したはずだ。
 なぜ、奴に位置がバレたのだろうか。
「恐らく、その『矢』だ」
 リナーは断定した。
 ギコの止血をする時にリナーが抜いた『矢』は、今もシートに転がっている。
「あれを投げ捨てて、距離を開ければ…」
 『矢の男』の追撃から逃れることができるんじゃないか?
「いや、それは得策じゃないな…」
 リナーは言った。何か考えがあるのだろうか。

 『矢の男』は、かなり車に接近してきた。
 俺は窓を開けて顔を出す。
 すでに、目視できる距離まで近づいていた。
「ヘリを落とした能力を使われたら、こんな車は跡形も残らないモナ…」
 あの能力は、大きな脅威だ。
 リナーは、銃を取り出しながら言った。
「この車は80Kmで走行している。流石に狙い撃ちは無理だろう」
 確かにその通りだ。だからこそ、減速を禁じたのか。

 瞬間移動を繰り返しながら、奴は車の真横まで現れた。
 奴のスタンド、『アナザー・ワールド・エキストラ』の姿が浮かび上がる。
 直接、攻撃を仕掛けてくるつもりだ。
「…来るぞ!!」
 リナーは銃を構えた。
 

  /└────────┬┐
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