(3)リターン
① 「帰還の拒絶」=★英雄は故国への帰還の旅立ちをするにあたって、収穫物(エメラルド板・黄金の羊毛・玉手箱・不老長寿の薬・金銀財宝・眠れる王女など)を持ち帰らなければならないのだが、その困難を予想して責務履行はいったん拒否される(あるいは持ち帰るほど期待される戦利品がない)。→★夢から覚めたくないという本音の気分が報酬の重荷に転移したというふうにも解釈できる。
② 「呪的逃走」=★押し付けられた戦利品(たとえば王女)から逃げ出したくなり、主宰の王や管理者からの呪いを振り払って逃走する。→★追跡者の手から逃れる逃走神話には、たいていは残し物・変種の物の散布などが絡む。→★ヘンゼルとグレーテルはお菓子の家に到達したのに、そこが怖くなって逃げるとき、さまざまな呪文と戦わなくてはならなかった。イザナギは冥界からの逃走にあたっては多様な物を投げ捨てながら走らなければならなかった。
③ 「外界からの救出」=★英雄の逃走が進むには、ときにそこに外部的な超常力が加わる必要がある。→★オズの魔法の国やアリスの不思議の国からの帰還には、外力が手をさしのべる。ダンテが地獄篇の世界を脱出するにも巨人の助力が必要だった。アマテラスの岩戸からの脱出にも外力が加わっている。
④ 「帰路の境界」=★英雄は彼岸から此岸に戻ろうとして、さまざまな境界を逆方向に、かつ上手にまたいでいかなければならない。それに失敗すると英雄は因幡の白兎か浦島太郎になってしまう。→★ここにはリップ・ヴァン・ウィンクルの原型がある。英雄は最後に「時間の旅」の試練を受けたのである。ここにトランジットの問題の本質があらわれる。
⑤ 「二つの世界の導師」=★英雄はついに空間と時間の仕切りを越えて帰還に至る。このとき、これまで仮の姿であったすべての化身たちの正体が、輝きあるいは驚きをもって出現してくる。そこに英雄自身が実は神の仮 の姿であったという逆転も含まれる→★英雄クリシュナは実は宇宙神ヴィシュヌであり、助六は実は曽我の五郎だったのである。
⑥ 「自由と本性」=★こうして英雄が故郷に戻ると、そこは まったく新たな王国・原郷・共同体としての活気に満ちてくる。祭りが挙行され、婚姻が進み、財産が配分される。→★この最後の場面こそ、その後に何度も再現されることになった世界各地の祭りのクライマックスになっていく。