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漫画講座論
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『スティング』(ジョージ・ロイ・ヒル監督)
『スティング』はなぜ観客を騙せるのか?
http://togetter.com/li/77555
6.登場人物の配置はこうだ。不況のさなか、食い詰めた詐欺師達が、金持ちのギャングの親玉にノミ屋の詐欺を仕掛けるという構造だ。そして動機としては仲間の復讐がある。
7.ところで、敵というのは悪い奴というだけでは足りない。「悪くて強い」、これが物語上では敵としての重要な要素である。では強さを表現する時にどうするか。アマチュアのライターは足し算を使う。子分が大勢いる、権力と通じている、金を持っている……。
8.逆に『スティング』は引き算だ。この親分をストイックにしている。酒を飲まず、女にも手を出さない。ギャンブルは高級カジノだけ。つまり引き算だ。これでは、詐欺師にはとりつく島もない。これが強みだ。
9.こういう難攻不落のキャラクターをつくりあげておいて、1カ所“ほころび”を作る。この親分、列車内でのポーカーが好きらしい。しかも金持ちの癖に自分でイカサマをする(巧い! ある意味ビョーキだ)。じゃあ、まずは、ここから攻めていこうというわけだ。
10.主人公達は、イカサマのポーカーで徹底的に勝つ。そして、頭に血が上った相手がイカサマで逆襲してきたところを、さらにその裏をかいて、大勝ちし、大いに恥をかかせる。
11.さらに、仲間の一人が「あれイカサマだよー」とチクる。親分としては腹が立たない筈がない。そう、これは、相手に復讐心を起こさせて、その復讐心を利用して復讐するというひねり技なのである。
12.そして、ここまでの騙しのテクニックは観客にも丸見えである。これを倒叙型という。観客は自然と詐欺師達と一緒になって親分を騙しているような錯覚に陥る。そう、ここ、これがこの映画の話法の罠なのだ。
13.前半の展開から、物語の情報はすべて与えられていると観客は信じる。しかし、実は観客に与えられる情報は巧みにコントロールされているので、コロリと騙される。こういうわけだ。
14.この映画は巧みなトリックで観客を騙しているのではない。観客を騙すのに大きく貢献しているのは、観客のストーリーを読み取る力(習慣)だ。さて、この映画で観客がついつい引っかかるのが、殺し屋の正体がバレるくだりと、FBIのくだりである。ここを見てみよう。以下、ネタバレあります。
15.まず、食堂の幸薄そうな女主人が実は殺し屋だったというバレがある。ここで観客はまずあっと言わされる。なぜか?
16.ハリウッド映画のストーリーは、大抵、事件というメインプロットと人間関係からなるサブプロットが寄り合わさっている。この人間関係でよくあるのが、ラブストーリーである。
17.『スティング』にはヒロインがいない。それで、この女主人が出てくると「あー、これはラブストーリーの流れだな。渋い顔してるが、ヒロインとして見てればいいんだな」とつい観客は思ってしまうのである。ところがロマンスのプロットだと思わせて、ピストルが出てくる。ショックだよこれは。
18.FBIのくだりも、物語の法則を利用して観客を騙している。この映画のストーリーは「主人公達が計画を立ててそれを遂行する」という大枠からなっている。これをとりあえず「計画モノ」と呼ぼう。
19.計画モノは、「うまく行くはずだったのに、計算が狂ってうまく行かなくなる。さあ、どうする」という展開が非常に多い。この物語の法則が観客にインストールされているから、FBIの登場を「計画遂行の危機」として読みとってしまうのである。
20.トリックそのものはさほど複雑ではない。もっと言えば、あまり複雑なトリックは映画に向かない。ここで観客を騙しているのは、観客が知らず知らずの間に学んだ物語の法則なのである。
21.だから映画ファンであればあるほど、二度三度見ても、そしてネタがわかっていても、「騙されたい」と不思議な気持ちになる映画である。
22.観客は騙されたことを大喜びし、劇中では、騙された当人は騙されたことに気がついていない。これが『スティング』の粋なところだ。
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