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投稿するまでもないSSスレ 7/7
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カサンッ
足に何か当たり、それは転がっていく。近くのガラクタの山にぶつかってそれは動きを止めた。
─む、なんだ?
私はそれを拾い上げる。筒の形をした容器。茶筒だ。
これは・・・・・・綺麗な茶筒、高級な茶筒。そう、霊夢の所からくすねてきていた、玉露の茶である。
霊夢が棚の奥に大切にしまっていたお茶・・・・・・
『そうだわ、今日とてもいいお茶が手に入ったの、一緒に飲みましょう』
霊夢が言っていた。いいお茶とはきっとこれの事だ。まだ茶筒は開けられた形跡は無い。
私と飲むために、あけずに取っておいたのだろう。
いつ来るのかもわからない私を、大好きなお茶を我慢してまで待っていくれた。
一緒に味わうために。喜びを分かち合うために。
でももうこの茶は彼女とは飲めない。彼女はもういないからだ。
疑問が沸く。
なぜ霊夢は出かけたのだろう。何故霊夢は人里に?
何か用事でもあったのだろうか。私が戻ってくるまでの短い時間を急ぐほどの。
薬を買うのだったら人里か永遠亭にいくのだが、それは私が作ってやると言った。
だから別の用事だ。私たちが人里にいく思い当たる理由といえば、残るは材料調達ぐらいなものだ。
食材を求めて・・・しかしそれほど急ぐ理由ではあるまい。体調が悪いと言ってたならなおさらだ。
じゃあ何故?・・・・・・私は手元の茶筒に目を向ける。茶に関係する何かだろうか?
湯のみやら急須やらは足りている。無ければ私が持っていく。茶を飲むのに必要なもの。
茶菓子とか・・・・・・・・・・・・──まさか
まさか霊夢は茶菓子を買いに?高級な茶には高級な茶菓子が最高の組み合わせだ。
高級な菓子など霊夢の家には普通置いて無い。そこまで金銭的余裕はないからだ。
私と一緒に飲むために、私と一緒に食べるために、私と一緒に味わうために・・・
霊夢は私のために・・・・・・人里に行く途中、妖怪に襲われて命を落とした。
私のために・・・・・・
「くそっ!!!」
私は持っていた茶筒を思いっきり壁に投げつけた。
ゴンッと鈍い音を立て床に落ち、茶筒の蓋が外れ、中から緑葉が飛散する。
部屋に茶の香りが満ちていく。芳醇で、若葉のさわやかな香りが鼻を撫でる。
お茶としては申し分ない香り。本来なら最高の香りのはずだった。
今はとても悲しい香りとなってしまった。
ハァ・・折角心も落ち着いてきたのに何をやっているんだ私は・・・
私は飛散した茶葉の元へ近寄りしゃがみ込むと、手でそれをかき集め始めた。
茶筒に少しずつ戻していく。仄かな香り、心地よい香り、悲しい香り、持ち主がいない香り。
サラサラと音を立てて茶筒の中に注がれていく。
一本も残さず、全てを筒の中に戻した。
霊夢が私の為に用意してくれた茶。ならばこれを飲まなければ霊夢に失礼だと思ったからだ。
もう一度蓋をし、棚の一番良く見えるところに置いた。
これから毎日、いつも霊夢とお茶を飲んでいる時間と同じ時間に、少しずつ飲んでいこうと思う。
霊夢と一緒に。
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