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投稿するまでもないSSスレ 7/7

322名前が無い程度の能力:2010/06/01(火) 00:41:49 ID:RuOPVYeU0


一方、妖夢は半霊を使わなかった。あえて、自らの剣技のみで幽香に挑んだ。
幽香の振るった、大振りの傘。
妖夢はそれを、まずは楼観剣――長刀で受け止め――

「――っぐ――」

当然、それだけで受け切れはしない、幽香の膂力に押し切られそうになる。
妖夢は立て続けに白楼剣――小太刀を楼観剣に重ねる形で振り下ろし、食い止める。
だが、それでもまだ、足りない。
幽香の力に、妖夢は吹き飛ばされそうになり、だが、それでも。

「ぐ――――ぁぁああああ!!」

無理やり、傘を受け流した。
風圧だけで脳震盪を起こしかける、それほどに強烈な一撃を、何とかやり過ごす。
そして、受けた刀を返し、
がら空きの、幽香の体に叩き込もうとして――

「……え?」

振った刀が、両手で掴み取られた。
幽香の体は、がら空きなどでは無かった。
両手が、しっかりガードに回されていた。
あの、傘が受け流された瞬間に。幽香は、両手を傘から離していたのだ。

「なかなか頑張ったわよ、貴女――次があったら、またやりましょう♪」

そして、刀を封じられ、身動きの取れなくなった妖夢に、幽香は力強く踏み出し、
渾身の頭突きを、妖夢の脳天に、

まともに当たっていれば、妖夢は死んでいた。
事実、妖夢は死を覚悟していた。
死を覚悟しながら、生を望んだ。
考えてやったことではない。修練の結果に身に着けた動きでもない。
本能が抗った。

幽香の頭突きを、妖夢の頭突きが受け止めた。

完全に不意を突かれた。幽香は最後の瞬間に、勝利を確信してしまっていたのだ。
予想外の衝撃を受け、わけがわからなくなっていた。
だがそれでも、幽香の両手は二刀を握っていた。しっかりと、巌のように固く。
だから、妖夢は刀を手放した。
刀に力をこめたままの幽香の体がよろけ、たたらを踏む。
その幽香のみぞおちを。
妖夢の抜き放った、鞘の一撃が、正確に貫いた。



背中に負った傷を治そうともせず、紫は幽香と妖夢の決着を見届けた。否――治すだけの妖力が勿体無かっただけのことだ。
その紫の前で、妖夢が幽香を打ち倒した。
これ以上は無い決着だった。
急所を突かれた幽香は、そのままずるずると崩れ落ちた。
ぴくりとも動かなくなる――死んだわけではないが、しばらく起き上がれないのは確実だった。
そして、鞘の一撃を放った妖夢は、倒れた幽香を反射的に目で追っていた。
反射的に。
そう、意識してのことではない。

「妖夢、あなた――」

紫が声をかけた。びくん、と、妖夢が声に反応する。
一瞬、意識が紫に向いた。
紫の目に、焦点が合った。

「あ、……紫、様……?」

だが、意識が戻ったのは、その一瞬だけだった。
幽香の頭突きを受けてから、ずっと気絶したままだった妖夢は、それだけを呟いて、また気を失い、今度こそ地面に倒れ伏した。

「あらあら、自分が気絶してたことにも気付いてなかったみたいね――」

結果だけ見れば、幽香と妖夢は相討ちかも知れない――だが、本人たちはどう思っただろうか。
気絶した幽香の顔は、悔しげに眉を寄せている。
気絶した妖夢の顔は、誇らしげに目元を緩めていた。

「ファイトの結果だけ見るなら、私たちの勝ち、ってことになるんでしょうけどね」

そんな単純なものではないし、何より幽香は納得しないだろう、そう考えながら――
緊張の糸が切れた紫は、そのまま大地にぶっ倒れた。





以上です。こんな稚拙な文章を読んでいただき、ありがとうございました。




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