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投稿するまでもないSSスレ 7/7

321名前が無い程度の能力:2010/06/01(火) 00:40:37 ID:RuOPVYeU0


最後の一手。
それは妖忌も同じだった。今までに無い速度で、これ以上に無い力強さで、妖忌は両刀を振るった。
対する紫は、傘を使わなかった。
両腕で、受けた――ように見えた。
刀と腕が触れた、その瞬間に、紫の両腕に結界が現れた。
刀が、結界に阻まれ――

「憤ッ――!」

結界を、叩き斬った。
神速で展開された紫の結界――その結界さえ、妖忌は斬ってのけた。
だというのに。

「残念でした♪」

紫には届かない。
斬った結界の向こうには、スキマが口を開いていた。
ぱっくりとスキマに飲み込まれる二刀――妖忌の手には、何の手ごたえも返ってこない。
慌てて手首を翻す妖忌――その瞬間、スキマの中の二刀によって、スキマが斬られた。
――今まで紫がスキマを使わなかった理由がこれだ。防御に使おうと回避に使おうと、妖忌には全て斬り伏せられる。
故に、結界の向こうにスキマを作った。妖忌に、あるか無きかの隙を作るために。
紫が、防御に使わなかった傘を、思いっきり振りかぶって――

紫の背中から、血しぶきが散った。
紫の背後――今の今まで気配を断っていた妖忌の半霊が、妖忌の姿を取って紫を斬っていた。
これこそが奥の手。八雲紫を斬るために、妖忌が手にした熟練の技――

「!?」

そして背中の傷を、省みもせずに、紫は、妖忌を傘で叩き伏せた。
轟音。
八雲紫の、渾身の妖力を込めた一撃だ。
一瞬で、妖忌の意識が奪い去られる。
その、倒れ付した気を失う刹那の間に、妖忌は理解した。
何故、紫が、結界で己の背中を守らなかったのかを。
いかに不意を突かれたとて、紫ほどにもなれば、反射的に結界を張れるはずだ――妖忌は元より、その結界ごと、紫を斬るつもりだった。
ましてや、紫は四重に強固な結界を張れる。
正面の二刀を阻んだ、二つの結界。
同じ結界で、背中を守れたはずだ。
だから、紫は背中をあえて斬らせた。
結界を張るはずだった妖力で、妖忌を打つほうを選んだのだ。

「あなたの刀、今度こそしっかり受け取りましたわ。そして――」

最後の一言は、妖忌には届かなかった。だが、妖忌は聞かずとも、何を言われるかがわかっていた。

「今度も、私の勝ちよ」




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