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投稿するまでもないSSスレ 7/7
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結局の所、人も妖怪も魔女も、美しくなどない。
そういう観点から、出発すべきなのだと思う。
人は堕落するためなら努力を惜しまないし、楽をする為に技術を磨き、やがて科学に発展した。らしい。
科学も化学も、技術も発明も、それ自体に善悪などなく、どう使うかだけだ。それは、魔法も一緒だ。
媒体そのものに善悪など存在するはずはなく、問題は常に担い手にある。
まして、善悪・倫理・道徳、などと呼ばれるものは常に曖昧だ。
時代と場所によって、常に移ろう。
それは、一定以上の数が集まり、共同体を、社会を形成した上で、「そうあることが望ましい」ということを倫理だとか道徳だとか、そんな名前を付けて、ルールというものを作り上げているからに他ならない。
限りない近似値な答えは存在するだろう。それでも、絶対などというものは存在しない。
心によるものなど、絶対などという約束は出来ない。
心を持ち得る生物が約束できる最大のラインは、その想いを持ち続けることではなく、せいぜい、行動が限界だ。
生物の進化と一緒で、変化や進化をやめれば、そこで死に絶えるだけだ。そこで完成した、という可能性を全面否定する気はないが、残念ながら心なんてものは常に未完成だし、その形は時代と場所によって変わる。
そもそも、明確な形など、最初から存在しない。
恐らく、明確な形など、あってはいけない。 のかしら?
つい、首を傾げた。
つまり、私が何を言いたいのかと言えばだ――
「で? それだけ理屈を捏ね繰り回して、何て言ったのかしら?」
さして興味など無いように、薄暗がりの図書館の中で、本に目を落としながら魔女が聞いてきた。
「『貴女はどう思うの?』って、とりあえず言っておいたわ」
「自分で考えろ、自分の足で歩け。っていうところなのかしら?」
「どうかしら」
答えなんて無い、と言いたいのか。それとも、私自身答えが欲しいのか。
私も、さほど興味はないように、視線すら向けずに答えた。視線はさっきから、ずっと本棚に並んだ蔵書に向けられている。
大体、命の重さ、なんてものは巫女の守備範囲外だ。巫女は説法など説かない。そっちは、神社じゃなくて、寺の本分だろう。
そんなわけで、私は、さっきから説法関係の蔵書が詰まった本棚と睨めっこをしている。
というか、そもそも、誰だ? 何を思って、そんな話を吹き込んだのか。犯人には回し蹴りをしてくれよう。あるいは、巫女サマーソルト。
適当に本を抜き出し、パラパラと捲っていると、魔女がこちらに視線を投げかけて声を発した。
「私じゃないわよ?」
「分かってるわよ。アンタなら、聞かれれば、曖昧じゃなくて、形を伴った答えを返すでしょ?」
「あら、嬉しい」
「別に褒めてないわよ」
私は、溜息交じりに本を棚へと返す。望んだような解はそこには載っていなそうだったからだ。
『命の重さ』なんて、そんなの、どう説明しろってのよ。
「あー、めんどくさい」
「言う割に、真面目に考えるんだから、貴方も律儀よね」
「あの娘は真面目に聞いてるんだから、真面目に答えるのが道理でしょ?」
自分で探すのは諦めて、小悪魔が本を持ってくるのを待つことにして、私は視線をようやく魔女へと向けた。
すると、何故か驚いたように、目を丸くして、魔女はこちらを見つめていた。
「なるほど。無重力の巫女、っていうのが、少しだけようやく分かったような気がするわ」
「私は、アンタが何を言っているのかさっぱり分かんないけど」
「私は、褒めているのよ」
ほんと、何でも対等なのね、貴女は。
そんな呟きの後、
「答えは、貴女自身なのかも知れないわね」
魔女は、微笑むように笑った。
「意味が全く分からない」
「多分、貴女にとって『当たり前すぎる』のよ。答えが」
「誉められてるの?」
「えぇ、とっても」
表情にも、声音にも、嘲るような感じは無かったので、悪い気はしなかった。
答えはさっぱり分からなくて、めんどくさいことに変わりは無かったけど。
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