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投稿するまでもないSSスレ 7/7
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ナイフもフォークも知らなくて、当然使い方なんて分からなくて。出されたケーキを手掴みで食べた私を、咲夜は叱ってくれたね。
なんで怒られるのか分からなくて、むくれる私に、一生懸命、何度も何度も、ナイフとフォークの使い方を、手を取って教えてくれたね。咲夜は、私の手の冷たさに驚いて、私は咲夜の手は暖かい、なんて言って笑ったっけ。
「嬉しかったよ」
どうして、泣きそうな顔をなさるのですか?
まだ、これからじゃありませんか。お嬢様。咲夜には、分かりません。
「ありがとう。自分の為に、誰かが怒ってくれることも――」
泣いてくれるなんてことも、夢にだって見なかった。
ふわりと、まるで宝石をあしらったような輝く翼を瞬かせ、私の眼前に降りてくると、優しく、そっと目尻を拭ってくれた。
違う、違うのです、お嬢様。
私は本当は、ただ貴女を恐れていただけ。家族だなんだと言っておきながら、心の奥底で貴女を恐れ、怯えていただけ。全て、仮初なのです。
貴女は、私をこんなにも愛してくれていたのに――
「もう、お止めになってください、お嬢様!」
そんなことで、例えこの場所が守られてとしても、それでは意味が無いではないですか。
そんな、誰もが鼻で笑ってしまえそうな、そんな思い出なんかの為に。
「たったそれだけ。そう、たったそれだけなんだよ」
でもそれが、私にとって世界の全てなの。
曇りの無い、澄んだ瞳で告げる。
これが、狂気に愛された少女の姿だと言うのなら、自分は今の今まで、何を見ていたのかと思い知らされる。
「何か一つでも欠けるのがイヤ。私の断り無しに、壊されるのがイヤ。家族を、友達を傷つけられるのがイヤ。もし、私が、この力を持って生まれてきたことに意味があるのなら、この為だったんだよ」
だから、泣かないで。何一つ、恐れることはないのだから。貴女の身に、塵一つほどの災厄だって降り注がせはしないから。
貴女はこの場所で、館に住む皆と、美鈴とパチェと小悪魔と。お姉様と、いつまでも瀟洒に微笑んでいて。
額に口付けを。
泣きそうな声で、最後のお別れを。
「大好きだよ、咲夜――」
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