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投稿するまでもないSSスレ 7/7
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書きなぐった挙句、めんどくさくなった過去作が発掘されたので投げこんでみるテスト。
適当に罵倒していただけたりすると幸い。
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「夜が…焦げていく……」
その小さな声は、大きさに反し、狂おしいまでの慟哭だった。
お願いだ。神よ、もし貴方が居るのなら。何もかも救える力を、抱きとめることの出来る御身をお持ちだと言うのなら、全てを赦す程の心をお持ちだと言うのなら、ほんの一刻、遅らせてくれるだけでいい――
「どうか…夜空を焦がさないで……」
今だけは、世界を光で照らさないで。貴方に慈悲があるのなら。どうか、お願いです。
私はまだ、何一つ伝えていない。
お願い…。
もう……これ以上、私から大切なものを奪わないで。
衣服も髪も乱れ、覗く腕と足には擦り傷だらけ。顔は、とうの昔に止まらない涙でしわくちゃだ。
そこに、瀟洒と呼ばれた少女の姿は無い。
薄汚れたメイド、無力なだけの、歳相応の少女が居た。
「どうか…どうか……お願いです…」
ようやく…ようやく見つけたのだ。自分の居場所を。
『貴方が必要だわ』
そう、言ってくれた。例え、それが使い勝手のいいだけの、行き場所の無い憐れな自分に向けられただけのものだとしても。
『そんなに心を覆わなくても、誰も貴女を怖がったり、拒絶したりしませんよ』
その言葉を、向けられた笑顔を、暖かいと思ったのだ。この場所が、光の差し込まない闇の揺り篭なのだとしても。
「だから…お願い」
声は嗚咽。息遣いは見苦しいほどに乱れ、土に塗れた顔も見るに堪えない。
それでも、真摯に、月と闇に請い願う。
ここが居場所だ。自分の帰る場所だ。私の家だ。
私の、大切な家族皆が住む場所だ、生きていく場所だ。
どんなに里の人間たちに、笑われようと、蔑まれようと、構わない。惨めで、情けなくて構わない。瀟洒でなんかない、みすぼらしくて愚かだと認めます。だから――
「どうか…夜よ。まだ明けないで――」
悪魔の主人に仕える人間が、どんな思いで神に縋り、祈りの言葉を紡ぐのか。
神を信じてなど居ない。どんなに願い、叫ぼうとも、自分を救ってはくれなかったから。信じ、願い、どんなに請おうとも、応えてなどくれなかったから。居たとしても、この世には、信じるものすら救わない神々ばかりだから。世界が優しいというのなら、自分はそもそも此処には居ない。
けれど、願わずには居られない。
長くも無い、綺麗な爪を地面に突き立てて、土と砂を握り締める。
爪の隙間に入り込んだ砂が爪をこじ開け、痛みを訴える。けれど、それがなんだろう。無力に歯噛みし、唇は深く切れ紅に染まっている。力強く握りすぎて、爪が食い込んだ手の平は、とっくの昔に血を流し始めている。
肉体が訴える痛みなど、些細なことではないか。
白み始めかけた夜空で、弱い月光を浴びて輝く羽を持つ少女が言う。
「ねぇ、覚えてる?」
やめて…欲しい。
そんな、静かな声音で。大切な思い出を思い返すように、まるで、お別れをするみたいに言わないで欲しい。
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