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投稿するまでもないSSスレ 7/7
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その日も空は青かった。
とんてん、かんてん。
谷に掘った洞窟。穴から聞こえてくる。
鉄を叩く音。叩く音。
「こんなもんかね。大体」
碧い妖怪が、胡瓜を齧り、呟いた。
――全自動卵割り機。
鶏卵を設置すれば自動で割ってくれる機械。
白身と黄身の分離機能も付属。お菓子作りにも役立つ予定。
「全く。見た目通りというか、見た目に似合わずというか」
モノクロの魔法使いからの依頼。
――卵を綺麗に割れる道具があればなぁ。
何気ない一言。盟友の為に、少女は槌を振るう。
とんてん、かんてん。きり、きり、きり、きり。
ロゴプレートの螺旋を締められて。機械は完成した。
帽子を脱ぎ、髪留めを外し。
汗を拭いて、またすぐに帽子を被るはずだった。
「にとりー、遊びに来たぞー。なんだ、いないのか。
あー?なんだこの面白そうな機械は。せっかくだから貰って行くぜー」
突然の声に驚き隠れ。影から出る前に白黒は再び加速を始めて。
機械の傍に置かれた帽子は。機械と共に持ち去られて。
被るもののなくなった少女は。
「おーい何をするのかねぇ!返してええええ!!」
鍋を被って走り出していた。
「お?なんだあの怪しげな鍋は。とりあえず撃っておこうか!」
閃光が幾筋も放たれる中で。少女はそれでも立ち止まれず。
「おおおお!のっびーるアーンムッ!!」
背負った鞄から伸びる腕、腕、腕。
しかし。箒は尽く機械の指から逃れ。
「じゃあなー」
少女は空の彼方の星と消えた。
魔法の森の小さな家。壁には蔦がうねり、看板の下には茸が芽吹く。
焦り、河童は力の限り走り。そして辿り着いた。
がちゃり。扉が開く。
「おっ、と。どうした盟友、そんな鍋を被って。帽子でもなくしたか」
飄々と告げる。
「返してよ。私の帽子。さもなきゃ、弾幕で勝負させてもらうよ」
淡々と告げる。
二人は、口だけを微かに歪めた。
大波のような青白の弾幕。その中を掻い潜り閃光を放つ。
最低限の動きで白をかわし、無数の腕を伸ばす。
隙間に陣取り、星をばら撒く。
鞄にかすり。服を破り。鍋に当たり。それでも、左右から波を流す。
魔女は焦り前に出て。光学迷彩に隠された腕に掴まれた。
高い空を見つめて。魔法使いは落ちていった。
「あー、負けた負けた。今日のところは引き分けにしといてやるぜ」
「どういう理屈よ。さ、帽子は返してもらうわ」
肩を上下させ、碧い妖怪は手を突き出した。
「ああ、帽子は返すぜ。って機械はいい、の、か……」
白黒の魔法使いは被っていた帽子を脱ぎ。
中から緑の帽子を取り出し。
固まった。
「お前、帽子の下は。成程、そうなってたのか。道理で」
急ぎ、鍋に手を当て。不自然な突起に触れ。それが破れた鉄板だと気づいて。
「きやぁあぁ!?」
河童の絶叫が幻想郷にいつまでも響いていた。
その日も空は青かった。
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