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第2回応援企画

16翻訳者:2017/02/09(木) 22:50:20

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 私は弱かったんだ。
 視線を戻すと、星空女の腕の中には子猫が一匹抱かれていた。にゃあ、と心安げに鳴いていた。黒猫だったその猫は首のところに白い環状の模様が巻かれている。
 それは、あの日、私が絞めた小さな首のようで、暗示するようでいて――。

 きらきらと流星群が背後に落ちる。
 願い事を言うには目移りし過ぎている。
 
 「あら、どうしたのそんな蒼い顔をして。あなたは猫を殺したことなんてない、そうでしょ?」
 チェシャ猫のようなにやにや笑いと真顔を混ぜ合わせたような、ひどく矛盾する表情だった。ここに鏡があれば私はさぞひどい顔をしているんだろう。
 ひざまずいたままの私の顎をくいと上げて、女はその瞳を、私のそれと合わせる。
 「殺したのは、あなたの……」
 「やめて!」
 
 猶予を与えられた。少し考え込むような間合い、ほっとする私。
 「一年間、そうでしょ?」
 
 私は子どもの頃に流行ったヒーローの名前を思い出していた。
 顔の無いヒーロー、自分の名前なのにいつも時間に追われてる。今は忘れられたヒーローの名前は時間マンといった。
 「時間マンの儀式は一度きりよ」
 チックタック、私の一年間、ひとつだけ歳を止めるのをやめたわたし、山乃端一人と同じ時間を生きたくなかったから、本当にいた時間マンに捧げたの。
 
 「お別れを言える?」
 先輩に支えられ、よろよろと立ち上がる。
 あれでも大好きだったんだ。でも、逃げてはいられなかったんだ。二回目はいらない。
 だから言おう。

 「さよなら時間マン……」
 訣別の言葉と共に名前も知らない先輩はパンと私の頬を張った。
 「何するんですか!?」
 「なんとなくよ」

 こうして、無駄な演出効果が途切れても夜は更けていった。
 負けてたまるかバカヤロー!


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