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汎用スレpart1

230魔の闘技場〜アニーシャ・オン・ステージ ◆h9Hr5c.eFE:2019/01/13(日) 00:12:15 ID:inXrEUOo
いつものようなどす黒い熱気と悪臭に包まれたコロシアム。いつものような皮肉と悪意たっぷりの入場アナウンス。
20戦の間何一つ変わりのなかった試合前の風景の中で、今夜はただひとつ決定的に違うものがあった。
「…ガバノイドのお兄さんたちーっ!! こーんばーんはーっ!!」
アニーシャである。
このコロシアムに招き入れられて以来、さらに遡ればフェネシア陥落の日からずっと険しい顔をしていた彼女が、フェアリー・フォース健在の頃に見せていた、アイドル気取りの堂々たる態度で現れたのだ。
観衆は呆気に取られ、一時的に静まり返った。
「あれあれー? どうしたのかなー? お兄さんたちぃ、みーんなアニーの応援に来てくれてるんじゃないのー?
ほらぁ、おっきな声でお返事して! こーんばーんはーっ!!」
『…こ、これは挑戦者アニーシャ・チェレンコフ! いつにも増して絶好調の様子! 明らかに我々を挑発しているぞーっ!』
取り乱しながらも実況担当のガバが、場の空気を整えようと声を貼り上げる。
「そうだよっ! 今日からは手加減ナシで本気のアニーを見せちゃうから! 対戦者さんはボッコボコにされて泣いちゃうかも〜! ごめんなさ〜い☆」
アニーシャはぺろりと舌を出しながら、内心でしてやったりとほくそ笑んだ。
勝利の第一歩を確実に踏み出した。会場の圧を、自らに纏い付いていた負け犬のオーラを完全に吹き飛ばした。
それを感じて、途端に体が軽くなったような気がした。暗雲のように頭上を覆っていた敗北のビジョンが取り払われ、光が射す。
左手で指鉄砲を作るアニーシャ。上体を少し後ろに傾けて、さりげなく胸を強調しながら、可愛く――
ケット・シーはその挙動を忠実に踏襲し、『運営席』の方角めがけて真っ直ぐ人差し指を突き出す。
「……ばんっ☆」
渾身の決め顔と決めポーズ。「誰にも負けない自分」で自分を武装したアニーシャは、もはや敗北を恐れてはいなかった。
(さあ! ここからがほんとの勝負…!! かかってきなさ…)
『おイタが過ぎるなぁ…お仕置きが必要か…』
唐突にぞくっ、と背筋の冷えるような感触を覚えた。
嫌になるほど聞いてきた実況担当の声だが、こんなに低いトーンの「ガバノイドらしい」声は初めて聞いた。
「…おっ、お仕置きが怖くて、アイドルなんてやってられな…」
『皆様! 挑戦者絶好調につき、本日はサプライズイベントを決行します! 初のレベル2エネミーとの交戦!! スーパーアイドル、アニーシャ・チェレンコフが繰り広げる白熱の一戦をお楽しみあれ!!』
気が付けば、アニーシャは指鉄砲を構えた体制のまま硬直していた。
……レベル2エネミー?
混乱を解きほぐそうと、アニーシャは首を回して会場を一瞥する。
そして、いつもとは違う――否、いつもよりなお強い「圧」が、自分を目掛けて投射されていることをにわかに感じ取った。
(……??)
誰も固唾を飲んで沈黙してなどいなかった。観衆は皆一様に邪悪な笑みを浮かべ、舌舐めずりをしている。幼いアニーシャは自らの行為が、単にガバノイドたちの嗜虐心を煽っただけに過ぎないという事実に、にまだ気付かない。
その時、地震の如くぐらぐらと足元が揺れる感覚を覚えた。


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