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イラスト・SSスレ

29笹元ころも:2011/07/17(日) 02:16:40
「いい? 絶対にバレちゃだめだからね!?」

「私よりも自分自身に言い聞かせてよね、羽衣ちゃん……」

 どこで手に入れたのかも定かでない黒尽くめの変身グッズに身を包み、果たして二人は希望崎に潜りこんだ。
 武器も、途中でゴミ捨て場に置いてあったのを引っ掴んできただけの物干し竿と洗濯ばさみである。実に心もとない。
 ともかく二人は、覆面を着用した羽衣を衣織が肩車し、あたかも一人の魔人であるかの如く振る舞っていた。

 その名も、笹元ころも。
 二人で一人であることの証左。絆の具現化。愛の結晶。

「あの人、壁に向かって独り言してるよ……」

「すげえ中二力だな……話しかけると殴られそうだし、そっとしておこう」

 周りの連中もその威容に気圧され、二人と会話を試みる者もあまりいないようであった。
 そうしているうちに、いつの間にやら「美人らしい」「中二力も高いらしい」「でもすごい美人らしい」などと勝手なイメージが先行してしまっていた。
 ただ、中にはそんな独り歩きした噂に惑わされてしまった者もいたようだったが――

「ころもちゃあああああああん! 俺と一緒にイイコt――」

「くたばれ!」 バコーン!

「ギャース!」

 ――このように、二人の息の合った連携により撃退されていた。
 このナイスなコンビネーションは、二人が一緒に長い時を過ごしてきたことの賜物でもあったが、それだけでなく、この戦いに身を投じてから、二人は特別のトレーニングを行っていた。
 すべては彼らのような不届き者から身を守るため、そしてこの死闘を生き抜くためである。

「……へへへ、コンビネーション、だいぶサマになってきたじゃんね!」

「はあ、はあ……私は、すごく疲れるんだけど……」

「確かにあたしたち、持久力はないかもだね……足が止まってるところを狙われちゃいけないから、こう、やられる前にババーンと分裂してビックリさせたいよね!」

「ぜえ、ぜえ……なんでもいいよ……」

「でもやっぱ殺されるのはヤだし、危なくなる前から分裂できるよう準備しとこっか。その時はさ、劇的にやりたいから廊下でみんなに見せつけてあげよーよ!」

「ひい、ひい……廊下と教室のちがい、わかんないよ……」

 二人のトレーニングは、放課後の空き教室にて行われた。
 正体がばれたら何をされるか分かったものじゃないから出来るだけ目立たぬようにという理由での選出であったが、魂胆はそれだけではなかった。
 誰もいない教室で、やることだけはしっかりとやっていたのである。

「ひゃあんっ……羽衣ちゃん、そんなトコ舐めたらっ……!」

「んふふ、舐めたらなんだってぇ? 聞こえないなあ♪」

 荒い息遣い。零れる衣擦れ。幽かな水音。
 甘やかな、密やかな、二人だけの時間と空間。

「……衣織ったら、ぴくぴく震えちゃって……きひひ、かわいいぜ」

「あうう、だって……こんなときに、こんなところで、なんて……誰かに見られちゃったら、どうするの――ひうっ!」

「そんなこと言って、いつもより気持ち良さそうじゃないか……あんた、実はこういうの好きなの?」

「やああっ、言わないでったらあ……羽衣ちゃんのばかあ……!」

 周りに魔人が蔓延っているというシチュエーションのためか、はたまた四六時中互いの体温を感じられるためか、二人は平常よりも熱く、激しく、濃厚に乱れた。
 そして、訪れる絶頂――!

「「 っ、あああああんっ!! 」」

 快楽の果てへと達し、身を寄せ合いながら肩で息をつく二人は未だ気付いてはいなかった――己が躰に漲る、何か不思議なチカラを。
 常識を逸脱した存在たちが産み出す瘴気渦巻く空き教室で行為に及んでいたせいであろうか、一時的にではあるが、二人にも魔人能力の片鱗が見え隠れしていたのである。

 脱力し床に寝転がり、空を見上げる少女たち。
 その瞳には、一体何が映っているのか――?

「ねえ、衣織……」

「……なあに? 羽衣ちゃん」

「……もし、無事に帰ったらさ」

「……うん」

「――イチャイチャしよっか」

「ずっとしてたでしょ!?」

 いつもの空き教室に飾られていた百合の花は、例えようもなく美しかった。
 願わくば、この一輪の華が、永久に枯れぬよう――  <終>


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