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イラスト・SSスレ
12
:
空憂 愛
:2011/07/17(日) 00:47:30
>>11
私の能力『d-drager』は、病を引き起こしている病魔を顕現させて引きずり出し、実体化させるだけの能力だ。
人や獣を治したりできるのは、彼らを物理的に対処、もしくは対話によって納得させることができればの話。能力の本質そのものではない。
病魔は人を内側から食い殺す化け物。
その力に強弱はもちろんあるが、病院で治療できる程度のものなら、わざわざ私のところになどやっては来ない。
こいつらが、私に治せと命じる病は、老人がかなりの高齢であるという点もあり、私一人で処理できるキャパシティをはるかに超えた化け物ばかりなのだ。
彼らは、本来、生き物の内に引きこもり、外界に出ることを好まない。
そのような化け物を、無理矢理引きずり出して、事情を言って聞かせたところで、素直に私の言うことなど聞きはしない。
それどころか、彼らはきっとその矛先は、私に向けるかもしれない。
私は黙って化け物に喰い殺されるか、彼らに私という新しい寝床を与えてやるしかない。
そうじゃないにしても、別の誰かが犠牲になる。
どれにしても、割に合わない。
この老人にも、このことは以前に説明した。それに、治した結果どれだけの犠牲が出るかについては、この老人だって今までのことから把握しているはずだが。
黒服の男が、トランクを拾いあげ、その中身を私に見せた。
札束がぎっしりと詰まっている。
ちらっと老人の方を見ると、老人はどうだという顔つきで私を見ていた。
私はつかつかと、黒服に歩み寄り、黒服が手にしたトランクを床に叩き落とした。札が宙を舞い踊る。
私は、キッと老人を睨んだ。
「報酬なんかいりませんので、あなたの今の地位を捨ててください」
「バカを言うな」
老人が鋭い目で私を見る。それでも口元に作られた笑みは崩れていない辺りが、この老人の厚顔さを物語っている。
黒服が私の頭に銃口を強く押し付けた。
老人は言う。
「出来損ないから生まれたような小娘が、調子に乗りよって」
撃鉄の鳴る音が頭の中に響く。
「お前は、黙ってわしを治しさえすればいいんだ」
むかつく。
こいつむかつく。
「なんで私があんたのために命をかけなきゃなんないの? 調子に乗ってんのはあんたでしょ。ふざけんなッ。あんたなんか死んじまえよ!」
私はただひたすら言葉を続けた。
「今、ここで生き延びても、あんたはもう長くないよ。死を怖れて先延ばしにしたところで、死神はあんたの喉元に刃をすでに突き立ててる。あんたは結局、死ぬしかないんだよッ!!」
私の言葉を聞き終え、老人はにっこりと私を見た。
「もう満足か? で、治すのか、治さんのか? お前の選択はどっちだ?」
老人はじっと私を見つめる。
「……」
「さあ、決めろ」
老人が迫った。
こんなところで、こんなやつに殺されたくはない……。
私に選択肢は無い。
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