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イラスト・SSスレ

10空憂 愛:2011/07/17(日) 00:46:12
>>9

「むむむ、この手にすっぽり収まる感じがいいのにぃ!」
「ふ、ふざけんなァ!」
「そんなこと言って、嬉しいくせに……」
「う、嬉しくなんかないッ!」
 みずっちはそうは言うものの、顔が真っ赤だ。私はにやにやと笑みを浮かべて見せる。
 そんな私を見て、みずっちは、わなわなと震えた。
「ねえ、愛ちゃん」
「なぁに、みずっちぃー?」
 みずっちは、ゆっくりと私に詰め寄ってくる。ほんと可愛いやつだぜ。
「知ってる? それされるのってねぇ、すっっっごい恥ずかしいんだよッ!!」
 そう叫ぶや否や、みずっちは私に飛び掛った。
 それを予想していた私は、華麗にそれをかわして見せる。
「へへーん! 悔しかったらやり返してごらんなさい〜。できたらだけどねぇ〜」
 私はみずっちに背を向けて駆け出した。みずっちは慌てて私の方に手を伸ばすが、空しく空を切った。
「ま、待てェ!」
 背後を振り返り、私はみずっちが追いかけてくるのを確認する。彼女の速さに合わせつつも、追いつかれないように走る。
 みずっちとの差は大分ある。
「ふふん。この私に追いつこうなんて、百年――……」
 ふと道の先に視線を戻す。黒塗りの高級車が目に入った。
 私は思わず立ち止まる。
「――つ、つかまえたぞッ! って、どうしたの?」
 みずっちは私の肩ごしに道の先を見た。黒塗りの高級車が、道の真ん中に駐車している。
 じっとその場で様子を伺っていると、車のドアが開いた。体格のいい男二人が、中から出てくる。黒のサングラスに黒いスーツと見るからに怪しい。
 私はみずっちの方を見た。
「みずっちは先、学校に行っててよ」
 その言葉に、みずっちは心配そうに私の顔を覗き込む。
「大丈夫なの?」
 そう言うので、私はへらへらと笑って見せた。
「えー、心配しすぎだよ?」
 しかし、みずっちは、なおも暗い表情を見せている。すでに黒服の男らは、私たちのすぐ側まで来ていた、だが、彼らは話しかけてくるでもなく、ただじっとこちらを見つめている。それが一層、薄気味悪い。
「私の、せいだよね」
「みずっち……」
 みずっちが俯く。私は居た堪れなくて、みずっちをぎゅっと私は抱き寄せた。
「なに言ってんの? みずっちは私の大切な親友だもん。そんなこと気にしないでよ」
「……」
「それに、あいつらはみずっちのことが無くても、最期の最期まで、私の能力について知ろうとしたよ」
「愛ちゃん、でも……」
「もうッ、そんな暗い顔ばっかしてると、さっきみたいに襲っちゃうからね!」
 みずっちは顔を上げる。みずっちの瞳は揺れていた。
 私なんかのために、そんな表情をしてくれる。私はそんなみずっちが大好きだった。
 みずっちは、ふるふると顔を左右に振り、袖で自分の顔をこする。
「わかったょ……。私先行く、学校でね!」
「うん」
 みずっちは、チラッと黒服を睨み、そして、一気にその横を駆け抜けて行った。
 みずっちの姿が見えなくなったのを確認して、私は黒服に向き直る。
「おまたせー」
 そう言うと同時に、額に銃口が向けられた。
「ついて来てもらおう」
 私は思わずため息を吐く。
「レディーに対して、そんなエスコートの仕方って無いんじゃない?」
「抵抗すれば撃つ。ただの脅しではない」
 黒服はそう言いながら、引き金に指をかけた。
「のりわりぃー」
 先程のより、いっそう深くため息を吐いた。
 改めて、私は黒服に向き直る。
「例の件に関しては、会長さんとこの前、直接会った際、これっきりにして欲しいと丁重にお断りを入れたと思いますが」
「会長は、お前の能力を必要としている。これは会長の命令だ」
「私の意志は尊重されないんですか?」
「これは会長の命令だ」
「あなたたちの意志も……?」
 黒服は私の肩を無言で押す。私はつんのめり、黒服の方を見上げた。
「立て」
 手を差し伸べるでもなく、そう告げる。
「もっとさぁ、やり方ってもんがあるんじゃないの?」
 そう言うが、黒服の返事は無かった。
 全く、死の迫った老人というのは、かくも扱い辛いものなのかね。


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