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イラスト・SSスレ
1
:
無限遠かなた
:2011/07/17(日) 00:32:30
稼ぎましょう。
2
:
空憂 愛
:2011/07/17(日) 00:40:35
空憂 愛 キャラ説
*泡-BUBBLE-
両親は、金に狂っていた。
愛は貧しい家庭に生まれる。
◇
「将来、俺がせってぇ幸せにしてやる!」
男は女にそんな約束をした。
男は女の兄であり、女は男の妹であったが、二人は互いに互いを愛し合っていた。
周囲の視線を撥ね付けるように、男は懸命に努力する。
勤勉。その言葉がよく似合う人であり、女も、そんな男を甲斐甲斐しく支えていた。
しかし、生活は一向に豊かにならず、それもあってか、二人はまるで、互いに互いを慰めあうかのように愛を紡ぎ合っていった。
「すまん」
男が女に謝る。男の名は、亜貴、女の名は有為という。
有為は赤ん坊を抱いていた。赤ん坊の名は愛。二人は愛の両親だった。
有為は微笑む。
「まだ、お祖父ちゃんから借りたお金があるから」
しかし、亜貴の顔は深刻だ。彼には仕事がない。
以前まで働いていた町工場は、有為とのことが噂になり、退職を勧告された。
亜貴は必死に工場に残れるよう掛け合ったが、周囲の視線は冷たかった。
噂は尾ひれをつけて、瞬く間に広がる。もはや、この町に亜貴と有為の居場所は無かった。
「本当に、すまん」
亜貴は有為に頭を下げる。いや、下げることしかできなかった。
3
:
空憂 愛
:2011/07/17(日) 00:42:20
>>2
「……クソッ」
亜貴は独り公園で呟いた。
空には満月が輝いている。夜風が冷たく彼の頬を撫でた。
日中、面接を受けにあちこちをまわったが、どこの会社もその反応は芳しくない。
小さな町だ。どこに行っても、亜貴は有為との関係について尋ねられた。亜貴はなんとかそれを濁そうとしたが、かえって不信感を抱かれ、さらに言及された。
言及されれば、正直に話すしかない。なぜなら、亜貴は、有為との関係を否定したくなかった。
自分たちは間違ったことはしていない。
亜貴はそう固く信じることで、妹との関係を正当化し、この貧しく辛い生活の中で自分を保つことができていた。
(どうして……! どうしてなんだよ……! 俺たちが何したって言うんだ……!)
だが、亜貴も気づいてはいた。自分たちはまだ若く、現実は甘くはない。だが、それを認めた瞬間、有為との関係は終わりを告げる。
彼らの両親は、車の事故で亡くなっていた。彼らは祖父の元に身を寄せることになったが、祖父と両親は互いに絶縁状態であった。祖父は両親に対してと同様、亜貴と有為に対しても冷たく当たった。一緒に暮らすことさえ拒んだ。そして、祖父は二人を屋敷から追い出し、二人に学校の側にあった古い空き家を買い与える。
二人はまだ学生であり、二人っきりではさすがに生きてはいけない。そのため、祖父は最低限の学費と生活費は毎月、使いのものに渡すよう申し付けていた。
だが、その額は文字通り最低限であり、二人が目いっぱい節約してようやく食べていけるかいけないかという額だった。
二人は祖父に、頭を必死に下げ、共に暮らせるよう頼んだ。そんな二人を、祖父は嘲り、容赦なくあしらった。そして、自分の住む屋敷には、二度と顔を出すことが無いよう命じた。
亜貴と有為は、一つ屋根の下で二人きりになった。
二人の関係は、このときから狂い始める。ただの仲の良い兄妹でしかなかった二人が、これをきっかけに互いを異性として意識し始め、男と女になった。
有為が亜貴の子を妊娠していると知って、祖父は待っていたと言わんばかりに二人を勘当した。
そして、二人に無断でアパートを引き払い、彼らの居場所を奪う。
絶望する二人に、祖父は金を貸した。返す必要はない、という言葉を添えて。
それは、二人を思いやっての餞別などでは決してなく、単なる手切れ金としての意味合いしかなかった。そのときの、祖父の自分たちを蔑むような眼差しを見て、亜貴と有為は、祖父と決して分かり合うことなど出来ないと悟る。
亜貴と有為の関係は、祖父の手によって、学校にも広まっていた。学校は有為に、亜貴の子を堕ろすよう告げる。
しかし、学費も払えず、これから先の見通しもない彼らにとって、我が子は希望だった。
亜貴と有為は高校を退学し、祖父の手から逃れるようにして、遠くの町で暮らし始めた。
亜貴は大学への推薦が決まっていたが、それを蹴って有為と暮らす道を選んだ。
二人の幼馴染であり親友であった男は、亜貴の代わりに有為の面倒を見てもいいと言ってくれた。その男は信用のできる友であったが、亜貴は一点においてその友を信じることができなかった。
親友は、有為のことを愛していた。また、有為も自分と関係を持つ前は、親友に対して恋心を抱いていた。
亜貴は不安だった。
有為が自分から離れて、親友の元に行ってしまうことが。
その不安は無意識なものであり、亜貴はその不安に気づけなかった。そのため、責任と強情を混同し、親友の提案を蹴った。
4
:
空憂 愛
:2011/07/17(日) 00:42:40
>>3
(お金がいるんだ……! 俺は父親なんだ……!)
愛の将来のためにも、貯蓄をしておきたい。しかし、今の亜貴の収入では、どれだけ切り詰めても貯蓄などする余裕はない。
アルバイトでも何でもすれば、収入の面では何とかなるかもしれないが……。それでも将来の不安は残る。まだ幼い愛を残して、一人出稼ぎに行くわけにもいかない。
それに有為は、母親だが、まだ自分からすれば子どもだ。できるだけ自分が側にいて、有為の心の支えになりたい、と亜貴は考えていた。
しかし、この現実を前に、あれもこれもとなすには、亜貴もあまりにもまだ子どもだ。
亜貴は今になって、有為を受け入れてしまったことを後悔しそうになる。
本気で頑張ればなんとかなる……そう考えていた。祖父の言葉が蘇る。
『お前みたいな若造に何ができる?』
祖父が正しかったのかもしれない。
だが、その祖父の言葉を受け入れていれば、今頃、有為を、そして愛を抱きしめることはできなかった。
そう考えると、やはり祖父の言葉は受け入れられないのだ。
(何、考えてんだよ)
亜貴は自分の中の弱い心を打ち消すように、大きく声を張り上げた。
こんなことじゃダメだ。
頭ではそう分かっている。しかしこの先いったいどうしたら……。
亜貴は頭を抱える。そのとき、視線の先に、何か紙切れのようなものが落ちているのに気づく。
亜貴はそれを拾い上げた。
(何だこれ?)
よく見ると、それは宝くじだった。日付を確認すると、恐らくまだ期限は切れていない。
(……これも運試しか)
亜貴はそう思い、それをポケットに入れる。
一万でも当たっていれば、そんな些細なことを祈りながら。
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