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己の妄想を思いのままにキーボードに叩きつけるスレ
51
:
Akane
:2003/09/23(火) 02:23
「…茜?」
「ずっとこのままなんて、嫌です」
浩平にとっては予想外の反応だった。
「へ?」
浩平はあまりの素っ頓狂な返事に一人で慌ててしまった。
「な、なんで?」
それでも茜は無言で側に寄って、隣に座り、遠くを見て髪を梳いた。
茜の仕草の一つ一つがとても気になる。
自分はあまりに変なことをきいてしまったのではないかと不安になっていた。
そんな浩平の表情を見て茜はくすりと笑って言った。
「…明日は」
夕日に映る茜の微笑みはとても悩ましげで。
「きっと明日の私は今日の私より浩平の事が好きだから…」
そんな茜の表情が浩平を余計に慌てさせた。
「あ、茜っ」
「茜…キス…」
「浩平そればかりです…」
変わらない、いつものやりとりも、どこかぎこちない。
そんな空気を払うかのように一際強い風が二人を吹きつけた。
その風に促されてか、スカートを抑えていた手をそのままに、茜は再び立ち上がった。
ゆっくり浩平の方に振りかえる茜の表情は終始穏やか。
沈黙。
茜にはほんのわずかな時間でも、浩平には長く感じられた時間。
その殻を破ったのは、遠くを見つめる茜の言葉だった。
「それに……変わらないなんて、できません」
――想い続けた私でさえ、あなたに出会って変われたのだから。
ふと暗くなるベンチ、公園、空。
灯が街の奥に沈み、そして夕闇が顔を出した。
今日という日の光は、茜の金色の髪に全て吸いこまれていった。
「浩平も、私も、歳をとり大人になる」
「時間が街も人々もぬりかえて変化していきます」
最後の光を振り払って、茜は浩平を見つめた。
「それが」
「あなたが永遠を捨てて選んだ……私達の世界です」
茜の後ろに広がる世界。木々のざわめき、遠くからは甲高い子供の声。
そして浩平の後ろからも婦人の歩く足音がコツコツと。
――えいえんはあるよ
浩平が何度も聞き、何度も呟いた台詞。
やさしい夕闇に包まれた茜の言葉が、過去の痛みを全てかき消していった。
「変わってゆく世界で、やっと……二人になれたんですから」
そう言って微笑む茜に、ようやく浩平は精一杯の笑顔で応えることができた。
「私は……もっと浩平を好きになりたいです」
「だから…このままなんて嫌です……」
この時浩平は本心からこの世界に戻れたことに、茜に、感謝した。
この世界の全てが、浩平の心を開放した。
「じゃあ……永遠って何だろうな」
「あると思うんだろ?」
永遠……。それはまさしく、自分にとっての永遠の命題。
茜になら答えが秘められていると、そんな確信があった。
「…………」
ちょっと困った顔をしても、茜の雰囲気はやわらかなまま。
さっきまでと同じ、穏やかな口調。
「……『好き』が大きくなってゆく日々を、そう呼んでもいいかも知れません」
出会ったあの日
救われたあの日
失ったあの日
帰ってきてくれたあの日
どの日も―――――――
あなたへの「好き」が募っていった
「明日の私をもっと好きでいて下さい」
「明日の浩平をもっと好きでいますから」
もう迷いはない。夜空の片隅で強く輝く星もそう語っていた。
「…わかった」
その横で穏やかに輝く星もまた訴える。
「あの人や浩平の見た永遠というものは、私には見えないけど」
浩平に向かって一歩踏み出す。
「浩平を思う日々が……」
いつまでも真っ直ぐに自分を見つめる茜に精一杯の笑顔で応えて。
「きっと私の永遠」
そっと胸で抱きとめた。
たった二人
想いが募ってゆく
それがきっと――
「俺達の永遠だな」
§§§§§§
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