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霧雨魔理沙の一日

222名前が無い程度の能力:2014/10/23(木) 03:16:36 ID:zt1f0bok0
20:25
「とりあえず晩御飯でも食べませんか」
文は味噌汁を温めなおし、私のぶんも持ってきてくれた。
一人暮らしの自炊なのかな。
しかし質素だ。麦飯に味噌汁に漬物少々か。
まあ私の好みではあるがな。

しかし天狗の麦飯ってなんかいわくがあったような気がするぜ

223名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/10/23(木) 03:36:51 ID:???0
21:00
今は師走なんだけどな……まあ適当なことを言ってでも、
何か押し付けたいものがあるんだろう。
「これです!」
文が示したのは、大きな箱型の機械――印刷機だ。
以前こいつが新聞社で使っているのを見たことがある。
「こいつはお前の商売道具じゃないのか?」
「無縁塚で拾ったものなんですが、河童に作らせたものに比べると性能がいま一つで。
 かといって捨てるには勿体ない。なら誰かに預けて、取材先で試し刷りをするのに活用した方が良いかと思いまして」
なるほど。プレゼントにしては気前が良すぎると思った。
妖怪の山以外にも新聞作りのための拠点が欲しいということなんだろう。
まあこちらとしても貰っておいて損はない。年賀状もこれを使えば労せずに書けそうだ。

224名前が無い程度の能力:2014/10/24(金) 09:50:28 ID:R8ZHvQcUO
21:08
さて、持ち帰ろうか…ってこんな大物どうやって運ぶんだ?
私自身ホウキに乗って吊り上げればかなりの物は運べるが…
「私が運んであげましょうか?」
「えっ?文、できるのか?」
「ええ、私がここに持ってきたのですから」
そう自信ありげな文をまじまじと見てしまう。
私より少し背が高いくらいの文にそんな強力があるのか…妖怪はやはり違うのかね?
「ただ…私ら鴉天狗は夜目があまり…運ぶのは明朝でかまいませんか?」
ああ、運んでくれるなら何時でも構わない。

かくして私は今夜、文の事務所で泊まることになったぜ。

225名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/10/24(金) 13:39:37 ID:???0
21:31
夕方から夜にかけて眠っていたので、あまり眠くはない。
とはいえミニ八卦炉も香霖に預けたままだし、
夜の妖怪の山はほっつき歩くには危険だ。
文は机に向かって記事の文章を練っているようだ。
暇だからって、邪魔しちゃ悪いか……と思っていたら、向こうから話しかけてきた。

226名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/10/25(土) 12:32:26 ID:???0
21:40
「ここに戻る前、夜雀の屋台で八目鍋をいただいたんですが」
「うまそうだな…やっぱり冬は鍋か」
「ええ、ですがあの味をどう表現したものか…と」
「お前そんなに表現にこだわる奴だったか?普段なら鍋の写真をでかでかと載せて、
 見出しにうまい!とでも書いておけば良しとしたもんだろ?」
「鳥鍋に対抗するためにも気合入れて記事を書いてね!と店主に念を押されまして」
「そりゃ他人事でもないのか。てっきりあの引きこもり記者の影響で文章に凝るようになったのかと」
「それだけは絶対に無いですね!」
言いながら、がしがしとペンを走らせる。もうすぐ仕上がりそうだ。

227名前が無い程度の能力:2014/10/25(土) 21:29:18 ID:zR4VZenkO
22:05
「一息いれましょう」
文はお茶を出してくれた。
干し柿をつまみ熱いほうじ茶をすすると、なかなか美味い!。いいもん食べてる。
それから文の書いたグルメ記事を読ませてもらったが、なんかこう要を得なかった。
そこで私も記者になったつもりであーだこーだ話合った結果、“鳥鍋より美味しい”という見出しと内容に落ち着いた。
「う〜ん、おかげさまでなかなかの記事に仕上がりましたよ!…さて、休みますか」
文は満足げにそう言うと机の下から大きな寝袋を取り出す。
「ではお先に」
ミノムシみたいな格好で床一面に積み上げた書類の山のスキマにごろり、と横たわった。
鴉天狗の習慣で部屋の灯りは落とさない。
こうこうと明るい中に響く文の静かな寝息。
私も何だか眠たくなってきたな…。

228名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/10/26(日) 11:52:10 ID:???0
6:02
目が覚めた。いつの間にか眠っていたらしい。
慣れない部屋で時計がどこにあるのか分からないが、
窓から入る日差しから普段より早く起きたのが分かる。
しかし既に文の姿はない。机の上に置手紙があった。
『朝刊を配りに行ってきます。ついでに印刷機は魔理沙さんの家に持っていっておきます』
私の用事はついでか…文がどうやってあの重い機械を運んだのか、見る機会を逸したらしい。

229名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/10/27(月) 08:20:08 ID:???0
6:31
流し台を借りて顔を洗い、朝食を食いに帰るかと事務所を出た所で、
写真に撮られた。はたてだ。何でこんな所に。
「まさか天狗の新聞社から人間の魔法使いが出てくるなんてね…これはスクープね!」
とっさにミニ八卦炉を取り出そうとしたが、持っていなかった。
「……消せ」
「嫌よ。私は今から、夜雀の屋台の新メニューを記事にするために取材に行くんだから」
「その記事なら今文が配りに行ってるぜ。お前は朝刊の配達に行かなくても良いのか?」
「配達ならとっくに終わったわよ。なら、なおさらこのスクープは逃せないわね。
 詳しいお話を聞かせてもらえないかしら?」

230名前が無い程度の能力:2014/10/27(月) 21:25:55 ID:VJUNjHGUO
06:52
仕方ない…別に隠すこともなかったから昨夜からのことを洗いざらい話した。
はたては“ケータイ”を片手にふんふん、と熱心に聞き入っている。
「しかし、こんなのがスクープになるのか?」
「文が山の外に拠点を作ることが分かっただけで収穫よ!」
「しかし、まだ稼動してない。しばらくしたら私の家に来るといい」
うん、そうね!とはたては上機嫌で朝食をおごるという。
「はい、これ」
紙袋を受けとると温かい!
中には紙皿に乗ったパンと紙コップに入ったコーヒーだ。
「意外にハイカラなんだな…山に店があるのか」
「ううん、人里から朝一番で運んでくるんだそうよ」
なんでも、若手の天狗が始めた新商売で人里からデリバリーをしてるらしい。
「里より少し割高だけど…山を下りることを考えたらね」
とかなり好評のようだ。
私はピンときて
「なあ、それを記事にしたらどうだ?。里の店も取材したら広告料が取れるかも知れないぞ」
「それいい!早速そうするわ!」
はたてはパンとコーヒーを両手に文字通り飛び上がった。
と、向こうから訪問者がやって来た。
椛と白狼天狗の一団だ。

231名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/10/28(火) 13:19:18 ID:???0
7:00
椛は厳しい表情でこちらを睨んでいる。
「ここは普通の人間が無闇に入っていい場所じゃないって、
 何度言ったら分かるんですか!」
「まあそう言うなって。今日は招かれて来てるんだから」
「……まったくこれだから烏天狗は」
小声でぶつぶつと何か言っている。
「私たちとしては、あまり長居しないでほしいのですが」
「ああ、そろそろ帰ろうかと思っていたところだぜ」
「分かりました。では私が人里まで送っていきましょう」
「……」
「知り合いのよしみで。本来なら妖怪の住処に人間が一人で来たら、
 捕って食われても文句は言えない立場かと思いますが」
「分かった。お願いするぜ」
文に無断で帰ってしまうことになるが、
あいつは神出鬼没な奴だしどうせまた後で会うことになるだろう。

232名前が無い程度の能力:2014/10/28(火) 22:04:35 ID:XwYSxW6UO
07:08
「小休止!」
椛は背後の白狼たちに号令する。
彼らは装備をがちゃつかせながらそれぞれ腰を下ろし始めた。
「15分したら出発します」
「悪いな」
私は事務所に戻るとできる範囲で片付けにとりかかる。
一宿一飯の仁義だからな。
貸してもらった毛布をたたみ、床の原稿の山を寄せて通路をつくる。
文の机の書類をなんとかまとめて仕事ができそうなスペースは作れた。
鍵が分からないので戸締まりはできないが、まあ盗まれる物はないだろう(と思う)。
表に出たら椛がさりげなく耳打ちする。
「文さんからの言付けです…河童の里で合流したいとか」
「河童の?」
「ええ、例の印刷機のことですけど、もう一度メンテナンスしてもらうとか」
「で、その里はどのあたりなんだ?」
すでに8名ばかしの白狼天狗が横一列に整列して待っていた。
「…今から案内します」
そういって手をあげると椛の小隊員たちが縦一列で進み出す。
私も彼らについて行く。

233名前が無い程度の能力:2014/10/29(水) 06:07:12 ID:feueX2gY0
★とOですね

234名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/10/29(水) 10:03:12 ID:???0
7:32
文は河原の岩に腰掛けて、所在無げにしていた。
「おう、文!おはようだぜ」
「ああ、魔理沙さん…と椛、おはようございます」
私は、他の白狼天狗達に哨戒を任せた椛と二人で河童の住処に来ていた。
「あの印刷機を河童がメンテしてくれるんだって?」
「そのつもりだったんですけどね…どうもメンテじゃ済まないようです」
「というと?」
「元々外の人間が作った機械ですからね。河童の技師としてはどうも気に入らない所もあるようで。
 だから保守管理というより、改造になりそうです」
そこに作業を中断したらしいにとりが、胡瓜を齧りながら現れた。
真冬だっていうのに、どこで作ってるんだろう……

235名前が無い程度の能力:2014/10/30(木) 14:51:45 ID:w3i.RVsQO
7:38
「おはよう盟友」
「ああ、おはよう」
にとりが手を上げてやってくる。
「お、おはよう文さん」
「……」
朝から待たされ続け、かなり不機嫌な文に向かい「いや〜工場長と設計主任が首を縦にふってくれなくて」
と、苦笑いで釈明をするが
「で、どうなんです?」
文は無表情だ。
「それを今から説明するそうだから一緒に…」
と、なだめるように促したものの、
「…ほう、そうですか」
文はがんと動こうとしない。
「い、いやこっちから説明に来るのが筋だとは思うけど二人とも工場を離れられなくてその…」
見た目にうろたえる盟友を見かねたのか椛が
「にとり、こないだ預かってもらった装備のことだけど…」
「えっと、それなら仕上げてあると思うよ?」
「なら私も行こうかな…」
そう言ってすたすた歩き出した。
「…行きますか」
文も観念したのかため息ひとつして腰を上げる。
私も続いた。

河童の里は川沿いにそった先にある。私はにとりと歩いていたが、気がつくと川面からなにやら大きな音が聞こえてきた。
聞き覚えのない、連続音だ。
「あれは何の音だ?」
にとりはにやりと
「ほら、あれ」
指差す先に大きな建物、河童自慢の工場たちだ。

236名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/10/31(金) 10:13:50 ID:???0
7:50
「キューカンバーミサイルとハイドロブレードどっちを付けるのが良いと思う?」
…………印刷機の話だよな?
「あと自爆スイッチは外せないよね?」
「やめてくれ…折角大掃除が終わったばかりだっていうのに」
私は何もしてないけどな。予想通りというか、期待外れというか、
どうも魔の付く改造を施そうと考えていたらしい。
「基本はできてて、後はオプションに何を付けるかって段階なんだけれど」
天狗にしろ河童にしろ、山の妖怪たちは仕事が早すぎる……

237名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/11/01(土) 21:41:44 ID:???0
8:03
基本のカスタマイズは既にできているという話だったので、私の家まで運んでもらうことにする。
危険なオプションは要らない。断固として。
文は梱包された印刷機を紐でぶら下げると、魔法の森に向かって飛び立った。
天狗って腕力もあるんだなぁ……
「後はあいつに送ってもらうから良いぜ」
「そうですか。では私は山の哨戒に戻りますね」
椛に手を振って、文の後を追う。にとりは少し残念そうな顔をしていた。

238名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/11/03(月) 01:51:45 ID:???0
8:09
「そいつを……」
文と二人並んで魔法の森へ向かっていたところ、
正面に立ちふさがった影がある。
「渡してもらおうかしら!」
正邪だ。文のぶら下げた印刷機を指さしている。
「貴女、これが何だか知っているんですか?」
「当然知ってるわよ!貴重な物なんでしょ?」
知らないようだ。
「こんな朝から妖怪に襲われるとは思わなかったぜ」
「私を普通の妖怪と思ってもらっちゃ困るわ!」
「普通の正義の味方としては、強盗を許すわけにはいかないな」

239名前が無い程度の能力:2014/11/03(月) 09:19:12 ID:dwNv/vxEO
8:11
「なら差し上げますよ」
えっ?とばかりに文はあっさりといってのけた。
「さあ、どうぞ」
「お、おう」
正邪は紐(針金のワイヤーだ) を受けとるとふらふら飛び始める。
「大丈夫か?」
「さあ?しかし魔理沙さんの所まで運んでもらいましょうか」
文は八ツ手の扇で軽く煽ると風が印刷機を正邪ごと引っ張って流れて行く。
「う、うう…」
露知らず正邪は汗だくになって進むが高度はどんどん下がっている。
打出の小槌を使って小さくすれば…と思うが両手がふさがって無理なようだ。
(このまま落ちるな…)
と思って下を見たら建物が見えた。
香霖堂だ。

240名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/11/04(火) 04:25:53 ID:???0
8:12
正邪は屋根を突き破って香霖堂の中に落ちた。
私達も後に続いて――屋根の穴から入る。
印刷機はちゃぶ台を押し潰して茶の間の中央に鎮座していた。
梱包が解けているが、本体には傷一つ無いようだ。
最初に見た時と明らかに別物のように見える。改造しすぎだろう……
正邪はそのすぐ近くにへたり込んでいた。まだ意識がはっきりしていないようだ。

241名前が無い程度の能力:2014/11/04(火) 23:04:22 ID:LO5pSx3gO
8:20
「うわっ!何ですか!」
飛び出してきたのは本読み妖怪。あまりの事態に仰天して固まっている。
「やれやれ、朝食中でないのが幸いだな…」
諦めとも付かない表情でこーりんが天井を仰ぐ。
畳2つくらいの空間から空が覗いている。
「まあ大体は状況がわかったよ」
「悪いなこーりん」
「すみません…こればかりは責任を取らせていただきますよ」
私と文の言葉に頷くと、正邪に声をかけた
「朱鷺子、水をもってきてくれ」
湯飲み一杯飲ませたあと部屋の角に横にさせた。それからめざとく印刷機に目をつけて、
「ほう…」
としばらく離れる気配はない。

242名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/11/06(木) 02:38:51 ID:???0
8:22
「屋根の弁償のことなんだが……」
やがて、呟くように言い出した。
「壊したのは正邪だぜ」
「この機械を譲ってもらえないだろうか?」
「これは私の」
「そうですね……私も魔理沙さんの家よりここにあった方が、
 拠点として利用しやすそうです。構いませんよね?」
「ああ、使い方を教えてくれるなら構わない」
私の言葉をさえぎって、香霖は文と交渉を始めた。
「魔理沙もここで使っていけば良いだろう。
 どうせきちんとした文章なんてたまにしか書かないんだろう?」
確かにそうなんだが、蒐集家として手に入れかけたものを易々と手放したくはないな……

243名前が無い程度の能力:2014/11/06(木) 10:18:21 ID:M0miuxK2O
8:30
「それは売り物かい?」
入口の方からの声に振り向くとナズーリンだ!
無縁塚の拾い物を売りに来たらしい。
「いえ、これは店主さんの所有になりまして…」
気まぐれだろうか文は“いくら支払うつもりでしたか?”などと聞く。
「そうだな私なら…」
と口にしたの金額にその場全員が驚いた。
文が目を丸くして
「お寺が買うのですか?」
「いや、私個人の出資だよ」
「金持ちなんだな」
「こつこつ小金を貯めてきたのさ…私にも大出費だよ」
と、肩をすくめるが
「しかし、元はとれる」
と自信ありげだ。
「出版業を始めるのでしょうか?」
「門徒(お寺の信者)向けに週報か月報を出そうと思ってね」
聞くところによれば催し物や門前市の知らせを載せるとか。
「しかし、意外だな。寺と距離を取ってるかと…」
「君たちは誤解してるようだが私のご主人はあの寺の本尊さ。離れられる訳がないよ」
と苦笑する。
「きみの主人、寅丸星は毘沙門天の代理だね。毘沙門天は商業神であってね…」
こーりんがなにやらうんちくを語り始めたが命蓮寺門徒には里の商家も多いと聞く。なるほどネズミの自信もうかがえるわけだ。

244名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/11/06(木) 21:14:34 ID:???0
8:33
「これはお寺に買っていただいた方が良いかもしれませんねー」
文が流し目で香霖の方を見る。香霖はついっと上に目をやる。
屋根の穴から冬曇りの空が見える。屋根に積もった雪がぽたぽたと落ちてくるが、
印刷機にはかからない。既にちゃぶ台があった場所からはどけられている。
「屋根の修理と後片付けはこいつにやらせることにして」
文がこっそり逃げ出そうとしていた正邪の襟首をがしっと掴む。
私は関係ないことを訊いてみた。
「そういえば河童はただでこいつをメンテしてくれたのか?」
「ええ……まあ、そうですね。ただ、インクは河童から買ったものじゃないと使えません」
ただの技術バカなのかと思ったら、案外ちゃっかりしている。
文は自分が使う分のインクも私に買わせるつもりだったんだろうか……

245名前が無い程度の能力:2014/11/06(木) 23:57:31 ID:M0miuxK2O
8:40
「ナズーリン、きみはここで印刷物を作ればいいんじゃないかな?」
「ほう?」
こーりんの提案にナズーリンは興味深げだ。
「天狗が新聞を刷る時間の合間にきみの分を印刷するのさ。ノウハウは彼女が…」
「ええ!もちろんです。機械の操作や紙面作りは任せて下さい。よければ配送だって…私の新聞と一緒にですが」
文が食いついてくる。
「なるほど…しかしタダではあるまいね?」
「聞くところによると資材費が発生するようだ。僕の敷地内の賃貸料、機械使用料もあるしね」
「なるほど運転資金か!で、いかほどかな?」
こーりんは金の取れない文より支払いの良さそうな相手に話を振っているようだ。文も渡りに舟、とばかりに乗っている。
「そうですね、当座の資金としては」
口にした金額はナズーリンの買い取り提示額の4分の1、しかし大金であるが。
「よし、乗った」
ナズーリンと文が握手する。それから尻尾の先に吊るしたバスケットから革袋を取り出す。
「では、これは使用料もろもろと資材費分で」
銀貨が数枚。手渡されたこーりんが真顔になる。
「なら、こちらで作業員もつけるよ」
そう言って正邪を横目で見る。

246名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/11/07(金) 23:44:56 ID:???0
8:41
立ち直ったらしい正邪は文の手を振り払って立ち上がると叫んだ。
「烏や鼠風情がこの正邪様をこき使おうだなんて畏れ多いっ!
 そこの半端な魔女と手羽先も恐れ戦け怯え竦めっ!
 くだらん機械も貧相な店も、まとめてひっくり返してやるっ!」
…………すげぇ、一瞬で全員に喧嘩を売りやがった。

247名前が無い程度の能力:2014/11/08(土) 01:26:47 ID:iiL8VW2k0
8:45
なんだかどんどん事態がややこしくなるが、私はそんなことよりおなかがへってきた。
和食派の私が今朝はパンをあわただしくちょこっと食べただけだからな。
よし、ちょっとおやつでも探すことにしよう

248名前が無い程度の能力:2014/11/08(土) 16:30:58 ID:8aKHyHJIO
8:48
店の方に出てみると朱鷺子がおかゆをすすっている。少し分けてもらいながらカウンターを見たら私のミニ八掛炉がある!
手にして見るとメンテナンスも済んでるようだ。
それから、おや?見覚えのある陰陽玉や人形が…
「天邪鬼の子から店主さんが預かったもので…」
正邪のマジックアイテムだ!…まだ持っていたのか。
こーりんの奴、介抱しながらえげつないことを…
しかしマジックアイテム、これは研究のチャンスだぞ…。
向こうからの正邪の声が急にうわずり、小声になった。事態を把握したのか?
「八雲紫に突きだすか、ここで働くか?」
こーりんの最後通知を聞きながら私は風呂敷にアイテムを叩き込む。
「ま、魔理沙さん!」
「心配するな、借りるだけさ」
そう笑って店を出た。

249名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/11/09(日) 14:53:15 ID:???0
9:01
家に帰りつき、お粥だけでは足りなかったので、
ありあわせの物を簡単に料理して食べる。
本棚があったスペースを見ながら、
ここに置くものを探しに出かけていたことを思い出す。
結局印刷機は手に入らなかったし、自分で何か用立てるか……
錬金術で作るか、召喚魔法で探そうか……などと考えながら、
正邪のマジックアイテムを指先で弄んでいた。

250名前が無い程度の能力:2014/11/10(月) 19:07:27 ID:VNZR8ESIO
11:15
やばい!つい寝てしまったよ…朝早かったからかな?
とりあえずお茶を飲もうか。
ミニ八掛炉で小降りのポットに湯をわかす。
そういえは“たま”…咲夜のコピー珠江はどうなったのかな?
砂糖を入れた濃いめのお茶を一息ですすると紅魔館に行ってみるかと決めたぜ。

251名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/11/11(火) 01:48:29 ID:???0
12:08
「よぉ、パチュリー!」
吸血鬼姉妹も門番も寝ていたので、すんなり中に入ってくることができた。
「あら、また来たの?本なら貸さないわよ」
「いや、例のホムンクルスを見に来ただけなんだがな」
「心配しなくてもちゃんと生きてるわ。上で咲夜と大掃除をしているはずよ」
「お前は大掃除は終わったのか」
「せっかく片付いたのに散らかしに来た黒いのを掃除したら終わりね」
「ずいぶんだな。ところで、年賀状を書く魔法について知りたいんだが」
ずい、と顔の前に本が突き出される。『自動筆記魔法』と表題がある。
「何だよ。本は貸さないんじゃなかったのか?」
「あげるわ。新年早々貴女の下手な字を受け取るのも興がそがれるしね」
ええと、著者は……パチュリー・ノーレッジ……こいつの本かよ。
やたら煩雑な表現や余計な記述が多くて読みにくいんだが……
貰えるものはありがたく貰っておこう。

252名前が無い程度の能力:2014/11/12(水) 21:36:45 ID:e5NkuBQwO
12:15
とりとめもなく雑談していたらドアが開き
「お待たせしました」
小悪魔がお茶を持ってきた。
「ありがとう」
パチュリーのカップに黒い液体が注がれる。
熱くて香り高いコーヒーだ。
押してきたカートの上にはパイや果物、焼き菓子の皿。量がけっこうあるけどもう昼時だったか。
「魔理沙さんもどーぞ」
カップにはコーヒー、ミートパイを一皿受けとる。
「悪いな」
「いえいえ〜別にお礼なんてしてくれなくていいんですよ〜」
私は苦笑して
「何をしてほしいのか?」
「館に入る前、門を見ましたか?ほら美鈴さんの詰所のとこ…」
小悪魔いわくそこに今年、門松を飾るらしい。
「悪魔の館に門松に注連縄?大丈夫なのか?」
「レミィが言って聞かないのよ。しかも門松は博麗神社に注文してるのね」
たしかに霊夢は毎年手作りにしていたがよく引き受けたもんだ。
「なるほど。で、いつ受けとる?」
「今日の午後。でも私も小悪魔も忙しいのよ」
「わかった」
私はコーヒーを一気のみしてカップを差し出す。
二杯目を注いでもらいながらまずは腹ごしらえといくか。

253名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/11/13(木) 10:24:11 ID:???0
13:06
食事を済ませて正門に向かうと、美鈴が石臼を洗っていた。
「……何やってるんだ?」
「昨晩お嬢様が石臼で挽いた年越し蕎麦が食べたいとおっしゃっていたので、
 準備をしているんです」
明日は大晦日か。里のそば屋は毎年満員になってしまうし、うちはどうしようかな……。
自分できのこ蕎麦を作るか、神社にでもたかりに行くか……

254名前が無い程度の能力:2014/11/13(木) 21:35:31 ID:yhsSzy02O
13:09
門松の件を話したら目を丸くして
「無理しないで下さいね」
かなり大きなものらしい。
まあ、なんとかなると博麗神社に飛ぶ。
鳥居のあたりで霊夢がいつものように掃除をしていた。
「門松を?ええ、できているわよ」
霊夢の住居の玄関、その土間にいくつか出来上がったのが置かれていた。
「いつから商売始めたんだ?」
「針妙丸と萃香がはりきっちゃってね…」
初めは博麗神社用だったのが評判で依頼が来たのだとか。
「代金は取ってないわ。縁起物って萃香たちはタダで作ってるんだもの」
霊夢は苦笑する。
しかし一寸法師の子孫と鬼が協同作業なんてまた変な話だぜ。
あ、針妙丸には正邪の件を一応伝えておくかな…。

255名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/11/14(金) 12:34:21 ID:???0
13:15
「正邪が道具屋に捕まってこき使われてるんですか?
 まああれには良い薬でしょう。しばらくこき使われさせておきなさい」
針妙丸は少し驚いたようだったが、何事も無かったかのようにに門松づくりに戻った。
正邪が悪さをしては懲らしめられるのは、見慣れているのかもしれない。
萃香は作業の手を止めると、傍らの門松を背負い上げて歩いてきた。
「もうこんな時間か。じゃあこれは私が届けてやるよ」
私が運ぼうかと思っていたんだが、萃香が更に三つもの門松をぶら下げて飛ぶのを見るに、
手伝いは要らないようだ。ついでに他の注文も片付けてしまうのだろう。

256名前が無い程度の能力:2014/11/15(土) 08:45:16 ID:jG361THwO
13:22
さて用件は片付いたしあとは年越しそばか。
霊夢に聞いたらまだ用意はしていないという。
「いつもは紫のいいつけで藍が持ってきてくれるし、最近は早苗もおすそわけしてくれるわ」
しかしまだ用意がないぜ…
「忙しいんでしょ?藍は紫が冬ごもり前だし、早苗は神社の仕事で手一杯じゃないかしら」
まあ、いつだって構わしない、なんて平然としている。
「年を越そうが越すまいがそばの味なんて変わらないじゃない…それより」
汚れた神社で年を越すなんて考えたくない、だと?
「だから、あんたも手伝いなさいよ」
おっと悪いな!私は突然“急用”を思い出して神社を逃げ出したぜ。

257名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/11/15(土) 16:57:29 ID:???0
14:20
人里に下りて、ぶらぶらと散策する。年の瀬とあって、
どこも慌ただしい雰囲気に包まれている。
荷物を背負って走り回る人、家の埃をはたくのに余念がない人、
怒鳴るような大声で話し合っている人達、
何の為に並んでいるのかよく分からない行列などの合間を縫って歩いていると、声をかけられた。
「おや?おやおや、珍しい御本をお持ちですね」
本居小鈴だ。パチュリーに貰った本を見出したらしい。
「魔法の御本でしょうか?」
「ああ、年賀状を書く魔法だぜ」
「それは面白い。良かったら使っているところを見せていただけませんか?」
鈴奈庵で紙と筆を借りて年賀状を書くことになった。

258名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/11/16(日) 17:07:18 ID:???0
16:202
筆が勝手にさらさらと年始の挨拶を綴っていくのを眺めながら、
温かいお茶と醤油煎餅をいただく。
難解なパチュリーの本を解読したり、デザインや文面を決めたり、
魔法陣の調整をしたりで、実際に動かすまでに2時間近くかかってしまった。
それでも小鈴は満足したようで、
「見事なものですね……」
と呟いて、筆の動きに見入っている。彼女の目から見ても、なかなかの達筆なようだ。
筆の動きに合わせて、結った髪がひょこひょこと揺れる。

259名前が無い程度の能力:2014/11/17(月) 12:48:46 ID:dDYXomq6O
16:34
「うわぁ、魔法ってすごいですね」
小鈴は眼を輝かせている。
まあそうだ、とうなづいてると
「私も魔法使いになれますか?」
私は言葉に詰まった。
魔法を使える使えないではなくこの幻想郷で“魔法使い”がどういう立場なのか…知らないのは無理もないか。
目の前の小鈴は昔の私だ。
「難しい…かなぁ…」
「ですよねー」
小鈴はからから笑うので私もつられて苦笑してしまった。
母親だろうか?奥から誰かが小鈴を呼んでいる。
「はーい、ちょっとまっててくださいね」
店の奥に駆けてゆく背中を見ながら私は思う。
家族と一緒にまっとうに生きること。
それは私には決してできない魔法なんだぜ?小鈴。

260名前が無い程度の能力:2014/11/17(月) 14:11:46 ID:2kF2STls0
16:40
「客が来たみたいだぜ」
奥に行った小鈴に声をかける。里の人間のようだ。
貸本屋は里が慌しいこの時期閑古鳥が鳴いてるのかと思っていたが
意外と里人の客も来るもんなんだな


って、げえっ、おと…親父!!

261名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/11/17(月) 14:32:55 ID:???0
16:42
「ごめんくださーい、誰かいませんかー」
私が固まっていると、親父は奥に向かって声を上げた。
「はいはーい」
小鈴が出てくる。
「本を返しに来たんだが」
言いながら風呂敷に包まれた本の束を下ろす。
「ええと、一、二ぃ……これでお貸ししていた本は全部ですね。
 料金はお貸しした際にいただいております。また何か借りていかれますか?」
「いや、今借りると年を越してしまうからな。三箇日が明けた頃にまた来るよ」
親父は小鈴に軽く頭を下げると、店を出ていった。
私の姿は最初から見えていたはずなのに、完全に無視されていた。
こいしにでもなった気分だった。
私の方も里に来る時は親父の家や姿を極力目に入れないようにしていたから、
不満に思うようなことでもないのだろう。
しかし不思議と気持ちがくさくさして、自分が動揺していること自体がまた不愉快だった。

262名前が無い程度の能力:2014/11/17(月) 20:41:41 ID:dDYXomq6O
16:50
「魔理沙さん?」
小鈴の声にはっ、とした。しばらく物思いにふけったようだ…らしくないぜ!。
「あっ、いやすまん」
「また、お茶を入れますね」
「悪いな…ところで今の客だが…よく来るのかい?」
「霧雨の旦那さまですか?ええ、とても本がお好きなんですよ」
本が好きすぎて蔵書で床が抜け今はもっぱら貸本専門になってる、と小鈴は笑った。
「そういえば、魔理沙さん。霧雨って名乗ってましたけどご親戚なんですか?」
思い出した。
魅魔さまに弟子入りした時、私の記憶は周囲から一切消されていたことに。

263名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/11/18(火) 14:20:41 ID:???0
17:48
小鈴と茶飲み話に興じていると、時たま客が現れては本を返していく。
「借りたままで年を越そうという人はほとんどいないようですね」
小鈴がちらとこちらを見る。私だって返したぜ。強引に回収されただけだが。
年賀状を書く筆はまだ止まらない。今は朱で年賀の挨拶を入れている。
墨が乾くのを待っていると、遅くなってしまいそうだな……
「夕飯も食べていかれます?」
「いや、そこまで世話になるわけにはいかないかな。
 悪いが仕上がった年賀状を一晩だけ預かってもらえないか?
 明日また取りに来るから」
この分だと六時過ぎには仕上がるだろう。
その後、使った魔法関係のアイテムだけ回収して帰ることにしよう。

264名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/11/19(水) 17:20:11 ID:???0
18:22
鈴奈庵から出ると雪が降っていた。
「傘をお貸ししましょうか?」
「いや、良いよ。大雪って程でもないし。
 飛んでいくからあまり関係ないからな」
箒にまたがり、魔法の森を目指す。
やがて、眼下に鬱蒼とした黒い森が姿を現す。
静かな夜だった。妖精一匹見当たらない。
しんしんと雪の降り積もる音だけが聞こえるようだった。

265名前が無い程度の能力:2014/11/20(木) 10:47:15 ID:bL9InK1MO
18:30
そろそろ家かな、と眼をこらして見たらおや?
下の方をふらふら飛んでいるのが…寉青娥だ。
「おい、どうした?」
弾幕戦でもやったのか、衣服は少しくたびれてすすけて見える。
「あら、魔理沙さん。こんな時間にどちらへ?」
「そりゃこっちの台詞だ。私は家に帰るが、ここから先には人家はないぜ?」
「それは幸いですわ。では…」
声に疲れを感じる。
誰かに追われているのか?いつもの雰囲気はない。
得体の知れない邪仙のことなど知った義理ではないが…
真下には家の屋根。
私は青娥に箒を寄せ
「なんだ、良ければ寄ってくか?」
相手は驚いた顔をし、救われたような笑顔でうなづいた。

266名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/11/20(木) 12:32:16 ID:???0
18:53
米を炊き、茸のスープを作り、大根を煮て、魚の干物を焼く。
漬物を添えれば、夕飯のできあがり……と。
「意外に器用なのですね」
「意外にとは心外だな」
魔法使いは器用でないとやってられないぜ。
青娥はまだ何があったのか話そうとせず、適当に話をはぐらかしていた。
こちらとしても、厄介事は夕食の後の方が助かる。
二人分の食事が卓上に並んだ。

267名前が無い程度の能力:2014/11/21(金) 05:42:33 ID:jITsiHa60
19:03
びっくりしたぜ。
自画自賛ってわけじゃないが、予想をはるかに上回るおいしさだ。
素材のほのかな風味を味わい分ける和食派の幸せだぜ。
粗食の霊夢にまで婆くさいと言われたりもするが、
当の私が満足で幸せなんだから気にならないぜ。
まさか比喩でなく本当にほっぺたが落っこちるとは思わなかったが
さてどうしたものか。

青娥はさいわい黙々と食ってて私のほっぺたには気づかなかったようだが
やけにおとなしいな、青娥の口には合ってるのかな

268名前が無い程度の能力:2014/11/21(金) 06:40:17 ID:SsDUfUa2O
19:10
「…生き返りました」
食事を終えた青娥は丁寧に頭を下げてきた。
「よせよ!…しかし仙人も飯は食べるんだな」
考えてみればそうだ。たしか食事はいらなかったはずだが…しかし青娥はよく食べた。小ぶりな食器だけど飯と汁をおかわりしてるし。
「別に霞(かすみ)を食べて生きている訳ではありませんのよ」
青娥は苦笑いして立ち上がった。
「お茶を入れますわね」
慣れた手付きでテーブルの食器を片付け、キッチンへ滑るような足取りで向かう。
かすかに香る、香水の残り香…声をかけ、制止するひまも与えない所作だった。
ポットに火をかけ、食器を洗い始めたが今度は私が客のような気持ちだぜ…。

269名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/11/21(金) 15:30:22 ID:???0
19:21
青娥の淹れたお茶は不思議な香りがしたが、うまかった。
茶菓子の落雁をつまみながら、
「それで、何があったんだ?」
と水を向ける。
「何かがあるのはこれからですわ」
そう言って袖で口元を隠し、目だけで笑う。
元気になったのは良いが、いつもの胡散臭さが戻っている。
「何か企んでるのか?」
「企んでいるのは私だけではありません」
企んでるのか。
「明日、正確には明晩ですわね。面白いものをご覧に入れましょう」
明日……大晦日か。何か派手なことをやろうとしているようだ。
「その準備に追われていましてね。芳香にも手伝わせてはいるのですが、
 正直に申しますとかなり疲れ気味です。他の連中の企み事も探らないといけませんし、
 今晩も休めそうにありませんわ」
「異変なら私は解決に行くつもりなんだが……」
「そう危険なものではありません。ご心配なさらぬよう。
 そうですね……人里にいらっしゃるのが、一番見やすいと思います」
人里か。里人を巻き込むような異変なら、霊夢だけでなく慧音も黙っていないだろうが……
「繰り返し申し上げておきますが、御心配には及びませんよ」
そう言って茶を啜る。それ以上具体的なことを教えるつもりはないようだった。

270名前が無い程度の能力:2014/11/22(土) 12:41:26 ID:JTit93/kO
20:40
そのあととりとめのない話をしてから風呂をすすめた。
家の風呂は地底から湯を引いてるんだぜ!
青娥が入浴してる間に浴衣を用意した。
私の寝間着じゃ小さすぎるし、これくらいしか着せるものがない。
ストーブに薪をくべて室温を上げる。
「いいお湯でしたわ」
「そりゃ結構だ」
下ろした長い髪を拭きながら浴衣を着た青娥はまるで別人の様に見えた。

さて、我が家に寝所はひとつしかない。
一応客人だからとベッドをすすめたが
「いけません。湯冷めしますし、女の子が…肌によくありませんわ」
「私は慣れてるから構わないんだが」
ソファーで寝ようとする私をさえぎって強引にベッドに引き込まれた…!
「寝相は悪い方だぜ?」
「おかまいなく。では」
おやすみなさい、と隣で横になってる。

…邪仙との一夜はちょっとどきどきだぜ。

271名前が無い程度の能力:2014/11/23(日) 12:55:26 ID:ieio6aUEO
23:50
案の定寝付けない…
別にナニをされるわけではないだろうがどうも落ち着かない。
当の青娥はすぐに寝息をたててしまった。邪仙め!。
窓から月明かり。外の雪は止んだようだ。
さて、もう何回めだか。眼をつむって眠ることを試みるが…。
「お休みになれませんの?」
「なっ!起きてたのかよ」
「いいえ、充分に休ませていただきましたのよ」
そういってこちらに顔を向ける。
窓辺の雪のせいか部屋は明るい。はっきり表情が分かるほどだ。
「魔理沙さんが眠くなるまでどうぞ、お相手いたしますわ」
なんて、くすくす笑われた。
まるで子供あつかいだな。
しかし…まあ、こちらもそうさせてもらおうかな。

272名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/11/24(月) 08:19:20 ID:???0
6:03
目が覚めた。いつの間にか寝入っていたようだ。
既に青娥の姿は無い。布団にもほとんど乱れた様子はない。
私が眠りに就くと、早々に出ていったようだ。何のつもりだったんだろう。
そういえば忙しいと言っていた。またどこかで暗躍しているのかもしれない。
ベッドを抜け出し、服を着替える。今日は大晦日。
青娥は何かが起こると言っていた。霊夢ほどには鋭くないが、私の勘もそう告げている。
いつもより少しフリルの多いスカートを履き、いつもと違う髪飾りを付ける。
帽子もいつもより華やかなものを。朝食の前に散歩に出ようかな。

273名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/11/25(火) 06:45:02 ID:???0
6:22
家の外は雪がうっすらと積もっていた。
寒いな。カーディガンを一枚羽織る。
鳥の足跡一つ無い雪を踏みしめて、まだ薄暗い森の中を歩く。
茸を見つけると、バスケットに放り込む。
森の中は静かで、私の足音以外には何も聞こえない。

274名前が無い程度の能力:2014/11/26(水) 12:45:17 ID:lwJQmVXkO
6:28
わき水の出てる泉に来た。
置きっぱなしにしてるブリキのコップで喉を潤そう。
起き抜けの水がうまい!
ここはまだ凍っていない。
正月を越して、大雪が降る前にくみ置きをしておくか…。
さて、踏みあとをたどりながらもと来た道を戻る。
家の前にきて気がついた。
正月飾りがまだだった!
いろいろあったからなぁ…一夜飾りでは仕方ないし今年は良しとするか。

275名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/11/26(水) 16:05:31 ID:???0
7:01
ご飯、味噌汁、だし巻き玉子、漬物を作って食べる。
食後に熱くて渋いお茶を飲むと、元気が出てきた。
散歩で回収してきた茸を大鍋に放り込み、魔法の素材を作っておく。
その合間に回収されていなかった本を読んでいると、
外が明るくなってきているのに気が付いた。

276名前が無い程度の能力:2014/11/27(木) 09:57:20 ID:p3IRmu86O
8:20
小鈴の店に年賀状を取りに行きたいが少し早すぎるな…。
二杯めのお茶をすすってベッドに仰向けになる。
気が付いたんだが部屋の中がいつの間に整頓されていた。
青娥のしわざのようだが足跡すら残さず(例の壁抜けの術だろうか)消えてしまった。
そういや今日、人里で何かやらかすらしいが、私としては年越しそばをいかに手に入れるかが問題なんだな。

277名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/11/28(金) 04:35:29 ID:???0
9:02
暖かい家の中でゆっくり過ごすのも悪くはないが、出かけることにする。
適当に寄り道しながら行けば、鈴奈庵にも常識的な時間に着くだろう。
弾幕ごっこになっても大丈夫なように装備を整え、
マントを羽織って箒にまたがる。薄手で動きやすいマントだが、
魔法で寒さを防ぐので冬空を飛んでも大丈夫だ。
天気も良いし大晦日で浮かれているのか、魔法の森の上空にいつもより妖精が多い。
昨晩が嘘のような賑やかさだった。

278名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/11/28(金) 23:54:21 ID:???0
9:16
血の気が多い妖精が弾幕で襲ってくるのを、
イリュージョンレーザーで撃墜しながら飛ぶ。
ぼろぼろの姿のままで年を越すことにならなきゃ良いがなぁ……と少し同情する。
たまに貫通したレーザーが関係ない妖精まで撃ち落としてしまう。
……気の毒だが仕方ないぜ。
森を抜けた辺りで、ミスティアが屋台を引いているのが見えた。
弾幕ごっこを切り上げて、近くに降り立つ。
「よぉ、店主。八つ目蕎麦はあるかい?」

279名前が無い程度の能力:2014/11/29(土) 09:18:33 ID:W.sMHjVwO
9:24
「ごめんなさい、今日はもうカンバンなの」
和服に割烹着のおかみさんは食材は品切れだし釜の火も落としてしまって料理もできないという。
仕方ない、営業は夜だけだものな。
ところで今年の仕事は今日で終わりか?
「ええ、今夜里の近くまで出ればお客さんたくさん来られるけど…」
まあ、ゆっくり過ごすのもいいよな。
「あ、でも今晩年越しそばを作るの、妹紅さんのところで」
年末夜回りする自警団にふるまうというのだ。
「そりゃいい。私もご相伴にあずかりたいね」
「なら夜警を手伝ってね。慧音先生も喜ぶわ」
「はは、分かった。1名予約な」
これから一眠りするおかみさんと別れて人里へ飛ぶ。
青娥の言ってた件、妹紅たちに伝えておくか…。

280名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/11/29(土) 18:44:41 ID:???0
9:45
香霖堂まで来ると、正邪がぶつくさ言いながら雪かきをしていた。
「意外に真面目にやってるみたいだな」
「あ、元凶が来た」
「それはお前だ」
「で、今日はまた弾幕ごっこ?」
「いや、年越し蕎麦をいただきに来た」
「あんたの分は無いわ」
「お前の分があるだろ」
「酷い奴だ。盗み食いに来たのか?」
「実のところ単に暇つぶしに来ただけだぜ。ちょっと邪魔するよ」
「ここを通りたくば私を倒してからにしろ」
「お前と遊んでる暇はない」
「何をつぶしに来たのよ」

281名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/11/30(日) 20:51:16 ID:???0
9:48
店内に入ると、響子が来ていた。
店番をしている朱鷺色の羽の妖怪に何か話している。
こちらに気付いたのか、振り返って叫ぶ。
「あ、いらっしゃーい!」
「……声が大きい。あと、何であんたが言うのよ」
店番が顔をしかめる。
「おう、いらっしゃったぜ。お前は買い物か?」
「いえいえ、実は今晩お寺で鳥獣伎楽の年越しライブをやるので、
 ここの妖怪さんとか店主さんにも来てほしいなって。あなたも来てね!」
「パンクでしょ……私はうるさいのは苦手」
店番の妖怪は手元の本に目を落としたままで言う。
「鳥獣伎楽って二人組だったよな?
 鳥の方なら今夜は自警団に年越し蕎麦を作るって言ってたぞ」
「…………あの鳥頭、また忘れてるなっ!どっちに行った!?」
だいたいの場所を説明してやると、響子は「ぎゃーてーっ!」と
謎の叫びを残して店を飛び出していった。
「うるさいのが一人いなくなった。で、もう一人のうるさいのは何の用?」
蕎麦をたかるのは正邪に話した軽口だったが、この分だと夜になってもありつけるか分からないな。
「店長!かけそば一つ!」
「帰れ」

282名前が無い程度の能力:2014/11/30(日) 22:50:59 ID:wuYBvOKk0
>「お前と遊んでる暇はない」
>「何をつぶしに来たのよ」
こう言う掛け合い好きだw

283名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/12/01(月) 18:43:52 ID:???0
9:51
香霖が店の奥から出てきた。
「魔理沙か、おはよう」
「お、おう、おはよう」
「君のミニ八卦炉のことだが」
「それならこの間回収させてもらったぜ」
「なら良いんだ。うまく使えているかな」
「今朝早速試し撃ちしてみたが、悪くない感じだぜ。例の印刷機の方はどうだ?」
「ナズーリン君が今晩お寺でやるライブや法会の宣伝を刷っていったよ。
 これなんだが、一部持っていくかい?」
なかなか綺麗に印刷してある。温かい蕎麦や甘酒も振る舞われるようだ。
「守矢神社が初詣の集客を考えているらしくてね。それに対抗してのイベントみたいだよ」
青娥が話していたのはそのことか。つまり道教側も何か対抗策を用意しているんだろう。
初詣参拝客争奪戦か…………面白くなってきそうだぜ。

284名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/12/02(火) 16:53:43 ID:???0
10:02
香霖堂を出て、鈴奈庵に向かう。
今日は営業していないようだったので、裏に回って戸を叩く。
「ごめんくださーい」
程なく、小鈴が顔を出した。
「おはようございます、魔理沙さん」
「おはようだぜ」
年賀状はもう乾いていた。
折れ曲がらないよう気を付けて、しまっておく。
「じゃあここにもまた明日、改めて一通持ってくるからな」
そう言うと、小鈴はおかしそうに笑った。

285名前が無い程度の能力:2014/12/02(火) 23:01:55 ID:1b7ZGuS2O
10:15
ほうきを片手に人里の大通りを歩く。
道はきれいに掃かれていて、門松やら注連飾りやらすっかり大晦日な雰囲気だ。
さすがに店を開けているところはないが、まだ行商の人達が走り回っていて、それなりに買い物する客も多いな。
と、向こうから風呂敷包みを手に小走りで駆けてくるのが…上白沢慧音だ。
向こうも私に気が付いたようだ…挨拶がてら青娥の一件も伝えておくかな。

286名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/12/03(水) 11:49:33 ID:???0
10:17
「何だ?今は忙しいんだが」
「教師も走る月だからか。実は青娥が……」
「ああ、その話なら聞いている。今晩何か催し物をするそうだな。あと走るのは僧侶だ」
「耳が早いな」
「本人から聞いたんだ。一応危険が無いように、
 私が監督役として見にいくことになっている」
慧音が対応するなら私が気を張る必要も無さそうだな……
「守矢神社や命蓮寺でも何かやるそうだが」
「それもあの仙人から聞いた。妖怪の山や妖怪寺に、
 里人が不用意に近づいては危険だと言っていたが……
 胡散臭さでは似たようなものだしなぁ」
「大丈夫だと思うか?」
「命蓮寺には妹紅に行ってもらうことにした。
 守矢神社の方は博麗の巫女に眼を光らせておいてもらいたかったが、
 博麗神社も新年の参拝客を迎える準備で忙しいらしい。
 まあ、あっちにも巫女はいるし、多分大丈夫だろう」
普段の閑散とした神社の様子を思うに、大した準備は要らないと思うのだが。
夜までにはまだ時間があるし、私もいったん帰って、明日の初マスパの準備でもしておくか。
小走りに去っていく慧音の背中を見送りながら、そんなことを思った。

287名前が無い程度の能力:2014/12/03(水) 22:51:49 ID:Ssq80Oh.O
10:21
しまった!。
年越しそばのこと忘れてた…

話を聞けばミスティアの方も妹紅たちの方もたぶん難しいだろう。今さら小鈴にたのむのも悪いしな…と頭に紅魔館が浮かんだ。
美鈴がそばを打つなんていってたな。あそこは大所帯だし少しは分けてもらえるかな?…と高度を下げた。
おや?いつもの門に美鈴の姿はなく、代わりに長い棒切れを持ったメイド妖精が数人固まっている。
今日は強行突破は置いといてまずはお取り次ぎ願うとするかな。

288名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/12/05(金) 06:43:36 ID:???0
11:08
「ああ、魔理沙さんですか?いらっしゃい」
エプロン姿の美鈴が出てきた。
「門番をさぼって何やってるんだ?」
「さぼってるわけじゃないですよ。
 咲夜さんがおせち料理の仕込みをするので、手伝っていたんです」
「蕎麦はもう食べ終わったのか?」
「いいえ、お昼にお出しする予定です。魔理沙さんも召し上がっていかれますか?」
「お、良いのか?」
「代わりに妹様と遊んであげてください。
 お嬢様とパチュリー様が大図書館で何か相談事をされているので、
 退屈しておいでです」
退屈したフランの相手か……昼飯前には少しきついかもしれない。

289名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/12/06(土) 02:39:32 ID:???0
11:12
紅魔館の地下、自分の部屋にフランはいた。
周りには色鮮やかな正月遊びの玩具が散らばっている。
独楽、羽子板、やっこだこ、福笑い……
力加減を誤ったのか、いくつか粉々に砕けてしまっているものもある。
「あ、魔理沙。かるたやろー」
「まだ早いんじゃないか?」
「へへ、明日に備えていろいろ準備してたらつい夢中になっちゃって」
まあ弾幕ごっこよりは安全かな。
近くでサボっていたメイド妖精を捕まえて、札を読ませる。
「ひ、ひゃくやふるきけんのしのぶにもー」
…………何だ?
「って読めるところだけ読むなっ!」
「はぁいっ!」
取り札が床ごとはじけ飛んだ。これは危ないぜ。

290名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/12/07(日) 10:49:58 ID:???0
11:32
「あはは、魔理沙と遊ぶのが楽しくてちょっと本気になっちゃた」
フランが笑う。言ってることはかわいいが、やってることはかわいくない。
と、そこに突然咲夜が現れた。
「妹様、お蕎麦ができましたよ」
「私の分もあるか?」
「残念ながらあるわ」
「ありがたい、いただくぜ」
咲夜に続いて、私とフランは地下室を後にし、食堂へ向かう。

291名前が無い程度の能力:2014/12/08(月) 15:51:25 ID:PusXCcNMO
11:42
紅魔館での昼食!
咲夜の案内で正装した妖精メイドたちが並ぶ廊下を進む。
一足早い年越しそばを食す訳だか案内された食堂は…
大きな洋式のテーブルに真紅のクロス。銀の燭台に花瓶。まあ、これは分かる。
しかし、席に置かれているのがナイフとフォークとはどういう事だ?
「お嬢様はこちらの方が馴れてますから…」
咲夜はそういうがなんか趣きがないぜ。
そうこう言ううちに料理が運ばれてきた。
前菜の鱒の燻製や揚げたての天ぷらは申し分なく旨い。
グラスに注がれた白ワインを飲みながら塩でなくてんつゆで食べたいと思ったが。

292名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/12/09(火) 02:18:08 ID:???0
11:45
蕎麦は温かい月見蕎麦と冷たいおろしそばの二種類だった。
コシがあって旨い。ずぞぞっと音を立てて啜る。
「私の手打ちそばですから」
そう言って美鈴がずるずるっと音を立てて啜る。
彼女だけ箸を持っている。自前なのだろう。
レミリアが露骨に顔をしかめる。
「レミィ、去年も言ったけど、あれが蕎麦を食べる場合には正しいマナーなのよ」
そう言いながらも、パチュリーは静かに蕎麦を口に運んでいる。
「分かってるわよ」
レミリアもそう答えると、蕎麦を食べ始めた。
フランがずずっと音を立てて蕎麦を食べるのを見て、時折複雑な表情になる。

293名前が無い程度の能力:2014/12/09(火) 22:31:25 ID:KodjiEZ.O
12:03
おろしそばは大きなざるに盛られていて好きなだけ取り分けることができた。
レミリアもフランもよく食べる。ホントに和食派なんだな…あのパチュリーもお代わりしたが、たしかにそうしたくなる味わいだった。
そばの山はどんどん減ってゆく。無くなればメイド妖精がすかさず持ってきた(咲夜がゆで時間をいじってるようだ)。
月見そばは木製の小ぶりなどんぶりに入って出てきた。
熱い汁をすすれば、食事の〆にはぴったりだった。
最後にお茶がわりにそば湯をもらえば、なんとも優雅な昼食会は終了した。

294名前が無い程度の能力:2014/12/10(水) 02:28:17 ID:SYuDyQe60
12:10
さて、食後にお茶か果物でも出るのかな
年越しに借りてく本でも見つくろってこようかな

295名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/12/10(水) 08:22:45 ID:???0
12:15
「魔理沙、お腹もいっぱいになったし、弾幕ごっこしよ!」
「では、地下室を広げておきますね」
「しばらくフランをお願いね」
あー……そうなるのか。普段より待遇が良いと思ったら、こういう展開か。
にこやかなレミリアたちの笑顔を恨めし気に見ながら、
フランに引きずられるようにして地下室に戻った。

296名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/12/11(木) 20:00:37 ID:???0
14:31
「ちょ、ちょっと待った……休憩だ」
「えー、もう疲れちゃったの?」
2時間近くぶっ通しでフランと弾幕ごっこをして、もう体力も魔力も限界だった。
初めて弾幕ごっこをした時より、フランの持久力が増している気がする。
あるいはペース配分が上手くなったのかもしれない。
「もう煙も出せないぜ……夜までには回復しておきたいし、
 今日はここまでで勘弁してくれ」
「夜に何かあるの?」
人里周辺では大晦日のお祭り騒ぎが割と知られているようだったが、
紅魔館ではそうでもないのか。

297名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/12/15(月) 09:09:42 ID:???0
14:33
「お茶にしましょうか?」
「突然後ろに立つなよ」
咲夜が良いタイミングで現れた。
こいつがタイミングを外すことなんて無いのだろうが。
咲夜に導かれて図書館に入ると、
先に紅茶を飲んでいたパチュリーがちらっとこっちを見た。
「随分派手にやっていたようね。できれば建物は壊さないでくれるかしら」
そういえば最近一回倒壊したところだったか。
「そこは咲夜が何とかしてくれるから大丈夫」
フランはしれっとそう答えて席につく。私もパチュリーの向かいの席についた。

298名前が無い程度の能力:2014/12/15(月) 20:49:50 ID:WMBXi4iUO
14:40
「だいぶやり合ったようね?」
パチュリーは呆れたような顔で笑い、ハンカチを差し出した。
顔にススが付いていたようだ。
「すまんな」
顔を拭くのを見ながらまだにやついている。
困った子供を見るような顔だが…なぜか悪い気はしなかった。
「…おせちに作ったのだけれど」
咲夜が重箱を出したとき、お茶を吹きこぼしかけた。
「大丈夫よ、これは只の味見。見返りなんか要求しないわよ」
レミリアは苦笑して咲夜にふたを開けさせる。
中身は…おっ!栗きんとんか!
早速口に入れるが、むむ…普通のきんとんの味では…。
「お嬢様の口に合わせましたの」
なるほど、これは洋菓子の味だ。しかし
「うまいな、これ!」
紅茶によく合う。
これで金が取れるぜ、なんて言いながらぱくついているのをレミリアたちが満足げに見ていた。

299名前が無い程度の能力:2014/12/17(水) 23:25:11 ID:MjDhJNdoO
14:51
「良かった、人間の口に合って」
レミリアの奴、変なことを言うなと思ってたら咲夜が重箱を持ってやって来た。
「博麗神社に届けて欲しいの」
「ああ、お安いご用さ」
咲夜はきれいな赤い風呂敷で重箱を包む。
立派な蒔絵の入った三段の入れ物は、あきらかに私と待遇の差を表していて苦笑いしてしまう。
まあ、霊夢が一目置かれているのは仕方がないか…。
博麗神社毎年恒例の忘年会は今年はやらなかった。
酉の市とかで一般の参拝客が増えたとかで妖怪連中が遠慮したようだ。気にしすぎな気もするが、ここが大物らしい配慮ということかな…。
美味いお茶を二杯ほど引っかけると席を立つ。
「ごちそうさん、よい年を」
レミリア達に礼を言って今日は門から館を出た。さて、明るいうちに出かけようか。

300名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/12/18(木) 00:22:35 ID:???0
15:26
博麗神社はいつもより小奇麗になっていた。
霊夢が気合を入れて掃除をしたのだろう。
境内に下りると、ルーミアが社の縁に腰掛けているのが見えた。
「あ、おいしそうなのが来た」
おせちのことだよな。
「お、来てたのか。霊夢はいるか?」
「いるわよ」
返事をしたのはルーミアではアなく、霊夢本人だった。
何か作業をしていたらしく、割烹着姿で裏手の方から姿を現した。
「紅魔館のおせちを持ってきてやったぜ」
「奪ってきたの?」
「人聞きの悪い。頼まれて届けに来たんだよ」
「何か最近配達屋みたいね」
そう言いながら、霊夢は重箱を受け取った。
「うちでも作ったのに」
「随分早いな」
「今夜頃から参拝客がひっきりなしに訪れて忙しくなるから」
それはないと思う。

301名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/12/19(金) 05:25:48 ID:???0
16:31
「そろそろ―――出た方が良いわよ」
…………んっと、居間に上がり込んで茶を飲んでいたつもりが、
いつの間にか眠ってしまっていたようだ。
「出るって、どこへ?」
「人里に行くんでしょ?私は参拝客を出迎える準備があるから行かないけど」
こいつが動かないってことは異変というほどの事態でもないのか。
「ああ、起こしてくれたのか。さんきゅ。じゃあ、行ってくるぜ」
「お土産はお餅でいいわ」
「いってらっしゃーい」
ルーミアも蕎麦をずるずると啜りながら見送ってくれた。
里に向かって飛びながら、あれも霊夢が作ったのだろうかと考えていた。

302名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/12/20(土) 13:38:10 ID:???0
17:00
冬の陽は落ちるのが早い。人里に着いた頃にはもう辺りは暗くなっていた。
と、その闇を裂くように妖怪の山の上から光の筋が降りてくるのが見える。
麓あたりまで降りてきたところで、それが筋と呼ぶには余りに巨大な、
階段になっていることが分かった。白玉楼に続く石段を思わせるような光の階段が、
妖怪の山の上の方まで伸びている。さらに麓の方から人里まで、
光の道がずんずんと伸びてくる。その先頭にいるのは早苗だった。
里までたどり着くと、早苗は声を張り上げた。
「これは八坂神奈子様のお力で作られた、守矢神社まで続く一日限りの大参道です!
 神奈子様の加護により悪しき妖怪どもの手からは、盤石に守られています!
 この道を登り切り真の信仰を示してくださった方には、
 今年一年の家内安全商売繁盛豊作豊漁大願成就に至るまで、
 幅広い御利益をお約束しましょう!」
…………常識に捉われない真似をするなぁ。
御利益に釣られたのか、参道に向かって歩み始める人たちの姿が見える。

303名前が無い程度の能力:2014/12/20(土) 15:23:10 ID:lysHFLwYO
17:03
私も興味本意で参道に近づいてみた。
と、前の方から歓声があがる。
見ればなんと!参道の階段が動いている!
参拝者(妖怪も混ざってる)は歩かずして神社へ行ける訳だ。
そうと知ってか、かなりの人数が参道に向かって流れ始める。
…しかし、帰りはどうするんだろう?、なんて思いながら私も動く階段に乗ってみようかな。
おそらく河童の技術だな、なんて考えながら並んでいると
「皆のもの、聞けーい!」
振り向けば物部布都だ負けずに大声を張り上げていた…。

304名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/12/21(日) 09:49:09 ID:???0
17:04
霊廟の方だ……何だ、あれ?
巨大な、城と見紛うほど巨大な霊廟が、天を突くようにそびえ立っていた。
ぼんやりとした燐光がその威容を照らし出す。
壁の周りををぐるりと回って飛ぶ木の船、その上に布都の姿があった。
「はーはっはっは、見たか者ども!大陸から伝わりし道教の秘術!
 この廟に馳せ参じし者には、長き封印から解き放たれた聖人が、
 さらなる奇跡をご覧に入れよう!」
う、胡散くせぇ……近くにいた里の人々も、一歩退いている。
逃げ出しそうな姿勢の奴までいる。
すると、霊廟の中から現れた人影が二つ。青娥と屠自古か。
近くにいた年配の男にすっと近寄り、耳元で二言三言囁くと、
男は誘い込まれるように廟の中へと入っていった。
その後も周囲にいた若い女、少年、老婆と次々に近寄って何事か話しかけているようだ。
話しかけられた者は皆廟に向かって歩み始めている。
それに釣られたのか、話しかけられていない者たちまで、開かれた扉へと歩きだしていた。

305名前が無い程度の能力:2014/12/22(月) 02:19:48 ID:6glZbicIO
17:10
うーむ
腕を組んで空を仰ぐ。
最早異変レベルな気もするが、さりとて関わるにはあまりにバカバカしくもあるな。
「魔理沙さ〜ん!」
振り向くと小鈴が手を振っている。
「なんか凄いですね!先にどっちへ行きますか?」
顔を上気させ、相変わらすテンション高いな…
いつものエプロン姿でなくえんじ色のケープを身に付けたよそ行きの格好はなかなか可愛らしいが。
その後ろには稗田阿求。
いつもの和装に毛織りの肩かけを巻いた彼女は、小鈴や周囲の興奮とは対照的にえらく醒めた雰囲気だ。
「なあ、一体何なんだこれは」
「私が聞きたいくらいですよ」
記憶者は苦笑すらしないで答えた。
両陣営から阿求には事前に知らされていたらしいが、ここまでとは思っていなかったようだ。

306名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/12/22(月) 14:04:08 ID:???0
17:11
その会話を遮るように爆音が響いた。寺の方だ。
「鳥獣伎楽の年越しライヴ、はっじまーるよーっ!!!!」
「私たちの歌で煩悩も浮世の憂さも忘れるのよーっ!!!!」
あいつらか……無事に合流できたようだ。
程なく、ノリの良い音楽がここまで届いてきた。
「激しいですね……」
小鈴は少し怯えたような表情で呟いた。

307名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/12/23(火) 14:00:02 ID:???0
17:14
箒に跨り、すっと早苗の所まで飛んでいき、訊いてみた。
「よぉ、早苗。この階段を登っていくと、守矢神社までどれくらいかかるんだ?」
「こんばんは、魔理沙さん。足腰の弱い方でも明日の朝には着きますよ」
「ずいぶんとゆっくりだな」
「あまり速く動かすとかえって危険ですし、
 できるだけ自分の足で登って信仰を示していただきたいのです」
他の宗教施設に行かせないよう囲い込む意味もあるのだろう。
「私は箒で山の上までひとっ飛びだけどな」
「今晩はやめた方が良いと思いますよ。
 一応山の妖怪たちに話は通してありますが、
 人間が大勢山に入るので、飢えた妖怪たちが襲ってくるかもしれません。
 参道は神奈子様のお力で守られていますが、
 それ以外の安全までは保障しかねます」
ふむ……守矢神社に行くとなると他の所は諦めないといけないかもな。
「ご利益は間違いなしですので、魔理沙さんも是非大参道をお登りください」

308名前が無い程度の能力:2014/12/23(火) 15:59:23 ID:O4fn3sc6O
17:18
最近運動不足だし、ご利益も捨てがたい…が明日の朝までならいろいろ見て回りたいこともあるからな。
ということで今度は布都の隣に箒を寄せた。
「よう!」
「む!魔理沙どのか?」
集客中だったので一瞬いやな顔をしたが、
「おお、わが霊廟に参りたいとな!よい心がけであるな!」
なんて上機嫌で袖から一枚紙切れを出してきた。
「整理券だ、これをもって向こうに並ぶがよいぞ」
このちび仙人もどきが得意気に指差したのは延々と並ぶ行列。その整理券をみると番号がふってある。
数字が四けた…。
「なあ、裏口とかないのか?」
「何を申すか!太子の延命長寿の秘技を受けたくば順番に並べい!」
やれやれ、秘術には興味深々だがまたの機会になりそ…と、おや?向こうで青娥が私を手招きしているぞ。

309名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/12/24(水) 15:39:16 ID:???0
17:20
「こっそり先に入れてあげても宜しいですわよ」
「話が分かるな」
「あちらのお嬢さん方も一緒に」
阿求と小鈴の方に目をやりながら話す。
話がうまいと思ったらそういう魂胆か。
阿求は里の名士だし、小鈴も知識人と言っていいだろう。
あの二人が来れば、釣られてやって来る人間は多いに違いない。
「そういえば慧音はどうしたんだ?」
「危険が無いか建物の中で見てくださっていますわ」
なるほど……慧音に監督してもらうと言いつつ、
彼女のことも客寄せに利用しているようだ。

310名前が無い程度の能力:2014/12/24(水) 22:51:26 ID:ajCnr9CEO
17:23
「私たちを?」
私の説明に阿求は首をひねった。
青娥とは初対面ではないらしいが、少し警戒しているようだ。
そんな事を知ってか知らずか向こうで青娥はにこやかに手を振っている。
「行きましょう!」
逆に小鈴が食いついてくる。“不老長寿の秘術”に反応したようだ。
「あんたの若さで不老ってねぇ」
阿求は呆れたそぶりだが、やがて折れた。
「ようこそ霊廟へ!さあ、これを」
阿求と小鈴に青娥の渡したのは「取材」と書かれた腕章。なるほどこれなら無理なく入れるわけだ。
「魔理沙さんには…」
おっ!なんだ?…と手渡されたのはデッキブラシと紙袋!
さらに箒を手にしている私は清掃係に仕立てられたようだ。
「ではこちらからご案内〜」
青娥に導かれ、私たちは裏の出入口から中に入った。

311名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/12/25(木) 10:27:41 ID:???0
17:27
建物の廊下はすらりと並んだ蝋燭に照らされてはいるものの、やや薄暗い。
「広いですね」
「短期間にこんな巨大なもの、よく建てられたな」
青娥はふふっと声を出して笑う。
「いや、実は見た目ほど広くも巨大でもない」
廊下の先から声がした。
「困りますね、先生。そんなに早くネタばらしされては」
「他の里の者には言ってないよ」
慧音の姿が見える。
「幻術か」
そういえばあるものを無いように見せたり、
無いものをあるように見せたりするのは慧音の十八番だった。
「ああ。そう大きくもない人里からすぐに4桁もの人が集まるわけないだろう。
 実際の収容人数がそう多くないから、ああやって外に行列ができる」
「慧音が巨大な建物や膨大な人数の幻を見せているのか?」
「まさか。私はただ幻術に気付いただけだよ。見せているのは邪仙様たちだ」
「邪な思惑なんてありませんわ。あくまでただのデモンストレーションですよ」
青娥は苦笑して、そう応じた。

312名前が無い程度の能力:2014/12/26(金) 22:59:54 ID:FGF/6FKwO
17:32
「さて、ここからは本当の舞台裏をお見せしますわ」
指を口に当て、片眼をつむってみせた青娥はいきなり廊下の壁をめくった。
建物は布張りだったのか!
青娥を先頭に小鈴、阿求、慧音そして私…と思ったら
「おー、どーしたー?」
ひょい、と宮古芳香が飛び付いてきた。
…おばけ屋敷じゃないよな?ここは
「あらあら芳香ちゃん」
なんて小声で制してからこちらをご覧あれ、と手招きする。
幕の向こうからざわついた人の声が聞こえてきた。
そのスキマをのぞくと…
マントを羽織った、あの独特の髪型の後ろ姿。
その手が頭上にかかげるのは…なんと、あの毘沙門天代理の持ってる宝塔だ!

313名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/12/27(土) 13:32:31 ID:???0
17:34
「……と、このように物寄せの術をお見せした。
 失せ物でお困りの者は試すがよい。
 他に悩み事を抱えた者はおるか?」
そこで聴衆が口々に喋るのを片手で制して、
「なるほど。屠自古、薬棚の三十一番の中身を。
 そこの方には時節を掴む術をお教えしよう。
 そちらの方には心を鎮める術を教えてやろう。試すがよい……」
聴衆の悩みに応じた道具や術を授けているようだ。
「あんなにほいほい教えちまっていいのか?」
小声で青娥に訊く。
「問題ないだろう。半分以上は暗示のようなもののようだ」
やはり小声で、慧音が答えた。そういう知識もあるらしい。
「あの宝塔は寺から術で盗んだものじゃないのか?」
「あの術はあくまで失せ物が見つかりやすくなるだけですよ」
今度は青娥が答える。ということは――また失くしたのか、あそこのご本尊は。

314名前が無い程度の能力:2014/12/28(日) 01:18:17 ID:DbFw.rRIO
17:45
30人以上はいる霊廟参りの人々の質問…というか悩みを一人づつてきぱきさばいてゆくのは見ものだった。
「では、これまで」
頃合いをみて屠自古が出口に誘導してゆく。
基本謝礼なしだというが出口付近にあつらえた箱からは小銭が入れられる景気よい音が響いていた。
「さて、ようこそ我が霊廟へ」
豊聡耳神子はこちらに振り向いて微笑んだ。
「ああ、この宝塔…これは正式に寅丸星どのからお借りしたものですよ」
意外だったが毘沙門天と神子は縁があるらしい(これは慧音も認めていた)。
「きみ…」
マントをゆらして、神子は小鈴の方に近づいた。
「不老長寿の秘術って…うそなんですか?」
ぐっ、とにらみつける小鈴に神子は静かに頭を下げた。

315名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/12/28(日) 11:53:30 ID:???0
17:48
「そう、不老の術は長寿の術ではない」
「年老いないだけで死ぬってことですか?」
「いや、そうではない。年老いず、死なない術はある。
 しかしそうして生き永らえても、それは言祝ぐべきことではない。
 ゆえに不老の術は長寿の術ではない。
 老いて死ぬのは苦しいことだが、その中に見出される慶びにこそ祝うべき価値がある」
「じゃあ長寿の術とは?」
「即ち、生き、長じ、老い、そして天寿を全うするための術。
 日々の心がけ次第で貴女にも使える」
話を聞いた小鈴は少しがっかりしたようだが、もう怒ってはいないようだった。

316名前が無い程度の能力:2014/12/28(日) 12:56:16 ID:DbFw.rRIO
17:53
「友人が失礼を…」
あらたまって前に出た阿求を神子は立てた人指し指を笑顔で振ってみせた。
「…きみたちの友情には敬意を表したい」
小鈴がびっくりして顔を赤くした。
「申し訳ない…そう聞こえてね」
片眼をつむり、耳当てを指で叩く。そうだこいつは心の声が聴こえる、って言ってたな。
小鈴は阿礼乙女の為に不老の術を聞きたかったのか。
阿求が呆れた口調で小鈴に何か言ってるが何故か眼が少しうるんでた。
「うむ、さすが正徳王…含蓄のある言葉だ…」
腕を組んで聞いていた慧音が深くうなづいた。
屠自古がちらりと神子を見ながら
「太子、次の面談が…」
「ああ、分かった」
神子はもう一度こちらを向いて
「短い時間ですまないね。また何かあれば霊廟に来なさい、少しは役にたてるといいけどね」
そしてマントをふわり、となびかせ腰の剣を鳴らすと
「では、次の方々。入られよ!」
万人の悩みを受け止める横顔を見ながら私たちはまた幕の内側に戻った。

317名前が無い程度の能力:2015/01/01(木) 11:08:38 ID:KFtMgh8QO
08:50
新年だぜ、正月だぜ。
あのあと町中をぶらぶらして慧音の寺子屋で仮眠させてもらい、今博麗神社に来たぜ、来たぜ…。
って、誰もいない。
霊夢は寝ているようだが昨日の張り切りは無駄に終わったようだな。
参拝者が誰もいない拝殿はそのまま朽ち果てているようだ。
ニ礼ニ拍手をしたあと私はその空っぽの賽銭箱に(なぜそうしたか分からんが)マスタースパークをぶちこんだ。
賽銭箱は紙くずのようにバラバラに吹き飛んでしまった。

318名前が無い程度の能力:2015/01/01(木) 18:52:04 ID:Sa32.jPQ0
08:55
さて、元日の朝から一仕事したし、帰ろうと神社に背をむけると
背後から怒涛の足音が迫ってきた。
霊夢だな。
新年のあいさつでもしようかと振り向く前に何かがすごい勢いでぶつかってきて
私の帽子やほうきや服は紙くずのようにバラバラに吹き飛んでしまった。
陰陽玉かな

319名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2015/01/03(土) 16:58:22 ID:???0
8:57
吹き飛ばされた先に大きな大根のようなものが横たわっていた。
「新年早々師弟揃ってどうして余計なことばっかりしてくれるのよ!」
師弟って――魅魔様!?
魅魔様は抜かれた大根のように横たわって動かない。
霊夢の方を見れば、服こそ普段通りだが、あちこちに絆創膏が貼られていて、
激しい戦いの後のようだった。
「何があったんだ?」
「折角針妙丸と萃香のおかげで参拝客が集まっていたのに、
 何を勘違いしたのかそいつが悪霊オーラ全開で現れたものだから、
 皆逃げちゃったのよ!」
「それで大喧嘩していたと……」
「参拝客を迎えるために着ていた新しい巫女服も破かれちゃうし、本当に災難だわ」
その後普段の巫女服に着替えたようだ。
「それで、あんたはどうしてうちの賽銭箱をぶっ壊してくれたのかしら?」
黙って逃げようとしたが、動けない。気が付くと周囲にお札が貼られている。
結界か。箒もミニ八卦炉も――離れた位置に飛んで行ってしまっている。
霊夢は周りに陰陽玉を飛ばしながら、お祓い棒とお札の束を構えた完全武装だ。
魅魔様は徹底的に叩きのめされたらしく、目を覚ましそうにない。
このままだと私も同じ運命をたどることになるだろう――絶体絶命だぜ。

320名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2015/01/04(日) 11:29:20 ID:???0
8:58
「つい魔が差してな」
「ならその魔、祓ってあげるわ!」
返答が気に入らなかったのか、どうあっても攻撃するつもりだったのか、
霊夢の完全武装からの攻撃が飛んできた。
私は魅魔様の足(尻尾?)をつかむと、手首のスナップを効かせて霊夢の方へと投げつけた。
魅魔様が私の身代わりになってくれている隙に、結界をふりほどいて飛ぶ。
箒無しで飛ぶのは好みじゃないが、そんなことは言っていられない。
霊夢が攻撃に全力を傾注していたためか、どうにか結界からは逃れられた。
振り返る暇も惜しんで、使い魔を展開する。ミニ八卦炉も回収したいが、間に合わないだろう。
――『スプレッドスター』――
使い魔を4つ展開し、ようやく霊夢の方を確認する。
と、眼前にパスウェイジョンニードルが迫っていた。
スプレッドスターで叩き落とす。危ない所だったぜ。

321名前が無い程度の能力:2015/01/05(月) 00:48:09 ID:NBPAYOQQO
9:03
「霊夢、正直に言うがな」
やばい、勝ち目がない…と本能的に悟ったとき私の口が勝手に動き始めた。
「その賽銭箱には金(きん)が隠されているんだぜ」
「どこにあるってのよ!」
「箱の周りの板の中にさ。よく見ろ!」
こんなとっさのでたらめに騙される霊夢じゃないが
「あっ、あれかしら!?」
偶然、ガレキの中に光るものがある。それは賽銭箱の金具だが。
「そうだ、ほらそこにもあるぞ」
霊夢は背を向けて前屈した。
そのチャンスを逃さない。
閃光の速さで手を組み人差し指を合わすと一気に目標に突きだした。
必殺のカンチョー。
第二関節までぶちかませ!
のぞけり、あぐぅ、と巫女らしかぬ声を上げる尻にひと蹴りかますと、泥の中に沈んだ。
私は悠々と道具を拾い、神社をあとにしたぜ。


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