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【お題で嫁を】お題で簡単にSSを作ってみようか【自慢するスレ】

4537:2009/04/21(火) 21:04:07 ID:7smCPDGM0
「それで、彼は残ってくれた。私の為に、残ってくれたのよね」
 くす、と幽香は少し頬を染めて笑う。もう古びた記憶だが、いつ思い返しても未だに恥ずかしい。
「どうせ残ってくれるなら、早く言ってくれればいいのに」
 実は、もう残ることを決めていたと、後で彼に聞かされた。曰く、彼は彼で幽香の本当の気持ちを知りたかった、とか。幽香は怒ったが、それでも嬉しくて仕方なかった。

 そんな風にして、平穏で満ち足りた生活が始まるはずだった。幽香と彼との共同生活が。妖精と人と立場は違うのかもしれないけれど、それでも気持ちの通い合わせた二人での生活を、少なくとも幽香は満喫する予定だったし、その希望に満ち溢れていた。


 しかし、現実はそうならなかったのだった。二人で獣を狩りに行ったところで、妖怪に襲われてしまったのである。その妖怪は、いくら力ある妖精の幽香にもどうにもならぬ妖怪で、幽香も懸命に戦ったがどうしようもなく、結局彼が幽香の身代わりに攻撃を受けてしまったのだった。
 そうして彼は、あっさり幽香の腕の中で息を引き取った。



 あれから如何程の年月が流れたか覚えていない。あれから幽香は復讐の為に修業を積んで、苦難の挙句にとうとう仇討ちを果たした。その間に気付けば幽香は妖精から妖怪に変わっていて、そして今や妖怪の中でも大妖怪とされるようになってしまった。
「貴方は、こんな風になった私をどう見るのでしょうね」
 ふふ、と笑う。この菊の畑は、彼の墓だ。
「こっちはね、人と妖怪が共存できない苦しい世の中になってしまったの。だから、移住することにしたわ」
 幽香の行く先は、友人の紫の作った結界の中。なんでも彼女は妖怪の楽園を作る、という。一度入ればそうそう出られないだろう。
「本当はずっと貴方と居たかった。ごめんね」
 菊が一斉に風になびいた。それはまるで、彼が自分に答えているかのように、幽香には思えた。
「それでは、これで最後だわ。もう二度と、ここには来れないでしょうし」
 幽香は振り向いた。濃緑の髪がはらり、と白い菊の上に舞う。

「さよなら。愛しの貴方」







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