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小説スレ

5スケイルエンド補完みたいなの:2005/06/17(金) 22:14:34 ID:Z/FPomXM
何時間、そうして哭していたのだろうか。
気付いたときには既に空は暗転し、頭上には微かに欠けた月が朧げに浮かんでいた。
潤んだ目尻を拭い、ぼんやりと空を見上げる。
「……ナナシ様も、同じ星を見ていますか?」
自分も星が好きだと、はにかんだ笑みで答えてくれたあの人。
きっと彼も、空をぼんやりと見上げているに違いない。
そして、同じようにスケイルに問うているのだろう。
例え住む世界が違うとしても、決して共有した時間や想いは途切れはしない。
そうだ。
それならば、何を悲しむことがあろう。
こんなにも近くにあなたが居るのに。あなたを傍に感じていられるのに。
スケイルはもう一度眼を拭い、軽く服の泥を掃うと、しっかりと二本の脚で立ち上がる。
眼に灯った決意は、いつまでも燻る迷いを綺麗に霧散させていた。
――リクレール様たちと、これからどうするかゆっくり話し合わないと。
もしかしたら、気を利かせて待っていてくれているのかもしれない。余計な心配を掛けないためにも、早く戻らねば。
ふと、立ち上がったはずみに、背負っていた荷物がこぼれ出でた。
慌てて拾い集めようとして、ふと違和感に気付く。
「あれ……」
魔王の心臓が、脈動している。
失われたはずの輝きが再びその肉塊に宿り、力強く鼓動している。
冷や汗が頬を伝い、背筋を言いようのない悪寒が襲う。
――もし直感を信じていなければ、何も知らぬまま絶命したに違いない。
突如、心臓が膨れ上がった。
咄嗟に不恰好にスケイルは横っ飛びした。受身も取れず無様に転がったが、何とか全身のバネで体勢を立て直す。
そして彼女は、混乱の中どうにか自分の身に何が起きたかを理解した。
心臓から飛び出た、グロテスクに脈動する数本の触手。
それらが、彼女が数秒前に立っていた場所を深く抉り取っていたのだ。
もし反応が遅れていれば、間違いなく心臓を抉り出されていただろう。曖昧だった悪寒が、確かな恐怖となって膝を笑わせる。


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