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小説スレ
3
:
零時
:2005/06/17(金) 16:17:14 ID:FlN0wOtU
――六人!
とは言え、この細い坂道でなら後ろをとられる心配は薄い。
一度に掛かってくるのは三人まで、同時に襲いくる刃は二つまでだろう。
ぬかるんだ足場はフットワークを生かすには向かない、ならばその場に体を安定させて迎え撃つのが最上か。
六人の竜人が向かい来る数瞬の間に、ナナシは思考を回転させて戦法を組み立てる。
両者の間を埋めていた空気が竜人の体によって引き裂かれ、距離は瞬く間に詰まっていく。
一人目の白刃が、雨滴を切り裂いて閃いた。
迫る先は喉元、明らかに必殺を期している。
しかし、その刃は喉に触れる寸前でナナシの左腕に真下から薙ぎ払われた。
左腕に填められたガントレットが、竜人の刃を受け止め、
トーテムの憑依によって強化された腕力は事もなげにその刃を打ち払ったのである。
常の人間であれば反応すら敵わないであろう剣の一撃をあっさりと受け止められた竜人は、驚きに意識を占領された。
目の前の敵を打倒する事のみに占められるべき思考に、空白が生まれる。
その空白を貫くように、イーグルブレイドが唸りを上げて閃いた。
迫る先は喉元、明らかに必殺を期している。
その刃は、先ほど同じ部位に加えた己の一撃よりも遥かに速く、重く、回避不可能なモノで―――
ざん。
驚愕に侵された思考は、そこで途切れた。
(――ひとり!)
宙を舞う竜人の首にはもはや見向きもせず、ナナシは次なる敵へと素早く視線を走らせた。
――近い。
多人数で戦うときは、波状攻撃が基本である。
そして、彼らはそれを弁えていた。
一人目の攻撃から寸時の間もなく、剣を振り抜いた直後で僅かに体勢を崩したナナシを追い詰めにかかる。
二人目、三人目の刃がほぼ同時に、しかし僅かの誤差を持って荒波のごとくに襲い掛かってきた。
ひとつは側頭部を、ひとつは胴体を薙ぎ払うように突き進んでくる。
しかし、そこでもナナシの反応は図抜けて素早かった。
たった今そっ首を飛ばした竜人の体を覆うプレートメイルに手をかけて、思い切り引き寄せる。
己の脇腹を目掛けて伸びてきた刃が、寸分の狂いも無く突き立った。
もはや命と頭部を持たない、一人目の竜人の脇腹に。
もうひとつ。
側頭部を狙って飛び込んでくる刃、その腹に、鞭のようにしなやかな軌道を持って飛び込んできたものがあった。
足。
ぎん、と鈍い音を立てて刃が跳ね飛ぶ。
女性らしいしなやかさを持った長い足が、寸分の狂いも無く竜人の刃を蹴り飛ばしたのだ。
人間業とは思えないスピードと、細い足からは想像も出来ない脚力に、竜人の腕がびしり、と痺れる。
その寸時に足が地に付き、再び爆発的な加速力をもって竜人の首に襲い掛かる。
触れた。
ごきり。
雨音の中に鈍い音を響かせて、二撃目の足が竜人の命と首の骨を刈り取った。
(ふたり―――三人)
その一呼吸後には、同朋の肉に突き立った刃を引き抜くのに手間取った三人目の竜人の首が飛んでいる。
一瞬と言ってもいいほどの間に半数の同朋を失った竜人が、驚愕の表情とともにこちらへ憎悪の眼差しを向けていた。
(一度に――来る)
ほんの一呼吸の間を置いて、三人の竜人が意を決したようにリズムを合わせて波状攻撃をしかけてきた。
その一呼吸が。
ナナシの集中を終わらせていた。
「―――降り注げ、降り注げ、降り注げ……我等の敵を、穿ち焦がせ」
多人数との戦闘を考慮して、用意していたフォース………『雷光』。
稲光が、三人の竜人を打ち貫いた。
もとより剣によっての戦いを旨とするナナシの意思の力はさほど高くなく、故に雷光の威力も決して強いモノではない。
しかし、雨に降り込められて濡れそぼった竜人の体は、ナナシの意思力を補って余りあるほどに雷光の威力を増した。
竜人の絶叫が雨の中に響く。
その絶叫は、生まれた隙を逃さず降り注いだ三つの剣閃によって、断ち切られた。
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