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小説スレ

20スケイル幻想譚:2005/12/11(日) 06:25:00 ID:9CvTpzGU
ぼろ布となったマントを、口で咥えてそっと持ち上げる。
「……ぇ?」
思わず、声が漏れた。
見えた光景に、神は己の視覚を疑った。
マントの下にあったのは――
刀身が真っ二つに割れた、太陽の剣ただ一つ――
歓喜から一変、神の背中に最悪の事態を知らせる悪寒が走る。
もし、総ての手が想定内の茶番だったとしたら?
先手を奪う以前に、既に先手を、主導権を奪われていたとすれば?
――そう、詰んでいるのは、自分だとしたら?
膝がだらしなく笑い始めた。
あのナナシを相手取ることにおいて。
後手を取ることがどれだけ愚かであるか、身をもって知っていたから。
ざわざわ、と風に煽られた木々が焦燥を代弁する。
――どこだっ!?
四方八方を見渡すが、ほぼ一色に染まった銀世界に差異を見出すことができない。
だがいるのだ、近くに、今も隙さえあらば神を殺さんと!
「上……かぁっ!」
見上げた空は、相変わらず雪がちらほらと舞うほぼ曇天一色。
その瞬間、神は自分の失態に気づいた。
そう、これが、この刹那が隙。
「いいや……」
ふと聞こえたナナシの声。
それは神にとって、死刑宣告にも等しい、冷たい声。
そして声が……笑った。
「――下だよ」
始めから、相手の手のひらの上だったのだ。
雪は薄いといえど、発見を鈍らせる程度には隠すことができる。
そして、神の行動をある程度先読みし、じっと待ち構えていた――
「ひっ……」
ただ、恐怖のみが声として漏れ出でた。
今置かれた状況にだけでなく……ナナシの、異常なまでの戦闘技能に。
身体は、とうに竦んで動きを停止していた。変換反応の光が足元から漏れる。
――最初に感じたのは、足元から脳天への焼けるような剣撃の痛み。
だが、その痛みは次第に、『冷たさ』に変わっていった。
「な……っ!?」
静止した思考の中、状況の理解が叶わない。
そんな神をあざ笑うかのように、ナナシは空を舞っていた。
その手にあるは、もう一つの剣――聖なる月の剣。
「魔力と魔力は互いに寄せ合う」
笑いながら、剣を神の頭目がけて据えた。
「剣自体が無茶な魔力放出に耐え切れなかったようだが、うまく避雷針になってくれたよ」
ナナシの力に重力加速度が加算され、鉄槌のごとく脳天に下された。
衝撃は頭蓋を砕き、切っ先を脳に到達させる。
そして、刹那に響く、絶対零度の冷気!
「ぁ――――」
「ツーアウト、ってな」
――断末魔さえ凍りついた。
直に凍結され脳細胞が膨張して破損、そして脳死。
神は、二度目の死を迎えた。


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