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小説スレ
2
:
零時
:2005/06/17(金) 16:15:41 ID:FlN0wOtU
雷が鳴り出した。
『それ』は、そこに立っていた。
紺色のマントを身にまとい、長い黒髪を後ろで括ったその姿は、どうやら女性であるらしい。
まとったマントも艶のある美しい黒髪も、降りしきる雨滴にさらされて濡れそぼっているが、
彼女自身はまったくそれを気にしている風ではなかった。
女は無表情に、ただそこに立っている。
その瞳は鋭く貫くような力を持って、自らが立つ坂の始まりを見詰めている。
その先に在るのは………その瞳が見詰めるのは、どうやら。
「気に食わんな」
私か。
「……七匹か。思ったよりは少ないな」
ナナシの隣で、クロウはそう呟いた。
たかが辺鄙な街ひとつ潰すのに、数はいらないということであろう。
しかし。
「全員……かなり、手馴れている、みたい」
応じるように呟くナナシの声色に、楽観や安堵の色は欠片も見られない。
クロウに目を向けることなく、なおも竜人の群れに視線を固定させたまま、言葉を続ける。
「それに、何より」
「ああ……間違いないと見ていいだろう」
二人の視線が、一点に向けて注がれた。
その先に在るのは………その瞳が見詰めるのは、どうやら。
「あれが、魔王」
「……たった一人で、何かできるとでも思っているのか?」
坂の上に立った人間がまるで居ないかのように、悠然とした足取りでナナシの前に立った魔王は、
ゆっくりとした口調でそう言葉を投げつけた。
冷然とした、目前の人間をケシ粒ほどにしか意識していないような口調。
大柄な竜人の中でもさらに巨大な、雲をつくような長躯がナナシを見下ろす。
女性としてはやや長身の部類に入るナナシにも、まさに壁にすら見えるような巨躯であった。
「…………」
その巨躯を前にしても、動じることなく鋭い視線を魔王の視線とぶつけて、ナナシは僅かに腰を落とした。
腰に提げた鞘から、鞘走りの澄んだ音とともにイーグルブレイドが引き抜かれる。
雷鳴。
降り注ぐ雨の中に響き渡った轟音と雷光を跳ね返し、刀身が一瞬の閃光を生み出した。
「………来るぞ」
ナナシの横で、この場ではナナシにしか聞こえない声をクロウが低く呟いた。
「……殺せ。」
魔王のその声と、低く差し上げた右手が合図となった。
思い思いに剣を引き抜いた六人の竜人が、きらめく白刃を構えてナナシへと襲い掛かった。
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