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小説スレ

18雷光:2005/08/16(火) 12:43:50 ID:.q56yq5Y
「ぐ……るぁああああぁっ!」
怒号と共に鉤爪一閃。
過剰な力と魔力の奔流は衝撃波を生み、本来の間合いを超えた。
白銀の閃きはスケイルの胸を捉え――
「……ちぃっ!」
異常なまでの無抵抗感に脊髄が反応し、神はすぐさま振り貫いた腕を軸として前方へ跳躍した。
その瞬間、先ほどの位置を朱の閃光が劈く。
「……ほぅ、もう見切ったか」
「ぐぅ……賢しい、奴らよ……」
焼け爛れた傷口が疼くのか、腕のあった場所を強く握りしめながら呟く。
最早先ほどまでの優勢感など微塵も無く、今はただ焦燥と怒りに瞳が澱んでいた。
その惨めな姿に、ナナシは苦笑を漏らす。
「自分の力に溺れたから、そうなる」
重量をものともせず器用に剣を回転させ、ナナシは構えを取った。
神もゆっくりと、片腕を構える。
呼吸音が、鼓動が、吹き荒む風の音すら掻き消し耳を劈く。
先に動いたのは――やはり、怒気に理性を砕かれた神であった。
「シィ――――ッ!」
「ぬぅっ!?」
上段に構えていたナナシだったが、放たれたのは予想に反し蹴りであった。
声帯の限界高音を突破し、風鳴りのように擦れた咆哮を耳に、ナナシは咄嗟に身を伏せる。
更に剣を抱きかかえるようにして前転し交差、抜け切ると同時に剣を軸足に奔らせた。
だが、切り裂くはずだった脚はとうに地面と決別しており、空を切る。
――空かっ!?
見上げるまでもなく、ナナシは存在変換を試みた。
おそらく『封印』切れを悟り、再び術式を展開するつもりであろう。――『封印』は強力だが、どうにも維持力に欠ける。
単体では理力に脆いナナシにとってはそれは由々しき問題であり、最優先事項であった。
身に感じた重量が失われ、代わりに新たな存在が具現化を始める。
何か神はぐずぐずとしているようだが、いつ『波動』か『雷光』が放たれるかもわからない。
軽い焦燥を感じつつ、スケイルは具現化を終えた。肉に馴染む間も無く杖を振るい、術式を編み上げる。
術式妨害を象徴する、光で編まれた五芒の呪縛。何の造作もなく、スケイルはそれを神に叩きつける――
「詰めが甘いぞ、小娘ぇっ!」
スケイルは、目を疑った。
放った術式が虚空でそのベクトルを失い、何をするでもなく空中に静止している。
――これは……まさか!?
スケイル達は失念していた。神が持つ、もう一つの術式の存在を。
「『反射』……」
呆然と、その名を呟く。
神は主導奪還に笑み、返答した。
「失血が思いの他頭を冷ましてくれたわ……」
神は笑んだまま手を振りかざす。
それはまるで、キャッチボールを精一杯届かせようと力む幼子のようで――
「受け取るがいい。熨斗付きだがなぁっ!」
怒号と共に静止していた術式は逆ベクトルを得、代わりに術者を拘束した。
理力的に無防備となったスケイルの目に、淡い閃光がいくつも映る。
――変換を――っ!
刹那、追撃の『雷光』が、無数に曇天を迸った。


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