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●事情によりこちらでSSを投下するスレ 4●

1tun:2011/08/11(木) 01:48:49 ID:???
プロバイダー規制や本スレの空気などでSSを投下できない人が、
本スレの代わりにこっちでSSを投下するスレ。

sageるとIDが???になるので恥ずかしい人にはお勧め。

547以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/02(土) 11:39:51 ID:???
ちょっと間が空いたけど、>>535-539の続き


……先週投下した気でいたけど、投下準備だけして出掛けてしまった事にあとから気付いたぜと

5481/5:2012/06/02(土) 11:40:33 ID:???
・風邪を引いて休んだツンデレの家に男が見舞いに来たら その6

 私はガバッと体を起こしてドアを見る。しかし、次の瞬間には再び、毛布を頭から被っ
て両耳をも覆った。
『良くない!! お願い、帰って。今、会いたくないの!!』
 しかし、私に拒否されたくらいでは、別府君は諦めなかった。
「話がしたいんだ。その……何で逃げ出したのかとか、聞きたい事もあるし…… もし、
何か勘違いしてるんだとしたら、その……誤解は解いておきたいから……」
『別に誤解なんてしてないし、見ての通りよ!! もういいでしょ? 帰ってよ。ね……』
 別府君の声を聞くと辛くて堪らなくなる。これ以上、傷口を広げないで欲しい。何で
学校では演技してたのかとか、事情を説明すればするだけ、自分のダメな部分を知られ
ていくだけだ。しかし、耳を澄ませても別府君が一向に立ち去る音はしなかった。
『……どうして帰らないのよ。帰ってって言ってるのに』
 ドアの向こうの彼に問い質す。ややあって、別府君の答えが返って来た。
「……だってさ。このまま別れたら、明日から絶対気まずくなんじゃん。それはちょっ
とイヤだなって思って。だから、ちゃんと話しておかないと」
 別府君が気にして声を掛けに来てくれたのは、それはそれで嬉しい。だからと言って、
気まずくならないなんて無理だ。彼はともかく、私の方が顔を合わせられない。だから
私は、無愛想な口調で突っ撥ねた。
『別に話す事なんて……何もないわよ。見ての通りだもの。好きに思ってくれていいわよ』
 一瞬、彼の返事まで間が空く。このまま帰ってしまうのではないかとドキリとしたが、
少し経ってから、落ち着いた声で別府君の返事があった。
「……じゃあ、好きなように思っていることを話すからさ。独り言だから、委員長が聞
きたくないって言うのなら、聞かないでもいいよ」
 こういう言い方ってズルイと思う、と内心私は愚痴を言う。だって、聞かなくていい
なんて言いながら、気を引く方向に持って行くんだから。しかし、私は何も言わずに黙
って次の言葉を待った。ややあって、彼が言葉を続ける。
「……委員長はさ。イメージが崩れたとか、そういうのを気にしてるんだと思う。いつ
も冷静で凛々しくて、キリッとしている女性に憧れていて、そうなりたいと思っている
から、理想から離れた、家での自分を見られたくなかったってそういう事なんだろうなって」

5492/5:2012/06/02(土) 11:40:53 ID:???
 別府君の言い分は、当たらずとも遠からずという所だった。私は単に臆病な自分を隠
したかっただけで、彼の持つイメージは後から付いて来たものだ。だけど私は敢えて否
定しようとはせず、黙って彼の言葉を聞き続けた。
「けどさ。誰だって普通は、家と外では全然違う自分がいると思うんだ。もちろん俺だっ
てそうだし。だから、そんな事でおかしいとか、みっともないなんて、そんな事は全
然ないと思うよ」
『……本当に、そう思ってるの?』
 私は立ち上がり、ドアの向こう側の彼に向かって聞く。少しでも動揺が声に出ている
ようなら、信用しないと決めて。しかし、彼の答えは明確だった。
「うん。思ってるよ。それに、素の自分を見られるのが恥ずかしいって言うのは、それ
も分かってるし。けれど、俺は委員長が家では弟とふざけ合ったりしてたとしても、そ
れはそれで当たり前の事だと思うし、そういう委員長も新鮮でちょっといいかなとも思ったり」
『え?』
 褒められるとは想像もしていなかったので、私は驚いて聞き返した。すぐに別府君の
答えが返ってくる。
「いや。そういうギャップもいいかなって。学校ではクールで真面目な委員長が、本当
に親しい間柄の人の前では感情を表に出して笑ったり怒ったりするってのもね。それに、
根っ子の生真面目さは全然変わってないし」
 最後の一言に、ちょっと笑いが含まれているのを敏感に感じ取り、私は少しムカッと
した気分になり、不機嫌そうに聞いた。
『……それって褒めてるの? それともからかっているの? どっちよ?』
 すると一瞬間が空き、それから慌てたように別府君が弁解してきた。
「いやいやいや。可愛いなって褒めてるんだって。ただ、話してるうちに今日の委員長
の態度を思い出してさ。家での自分をダメだなんて思うところまで、いかにも完璧主義
の委員長らしいなって思ったら少しおかしくなっただけで」
『やっぱり、ちょっとバカにしてる。可愛いってごまかしてるけど、本当は面白いのが
正解なんじゃないの?』
 可愛いと言われた気恥ずかしさから、それをつい否定して私の頭はバカにされてる方
へと転換してしまう。しかし、今度はすぐさま別府君も否定し返してきた。

5503/5:2012/06/02(土) 11:41:13 ID:???
「本当だって。今にして思えば、地を出すまいと弟さんの前で頑張ってたんだなって分
かるとさ。それも余計に可愛く思えてきて」
『嘘よ。絶対からかってるわ』
「嘘じゃないってば。ドアを開けて、俺の顔を見てくれよ。マジだって顔してるから」
 その提案に、私は躊躇する。こんな状態で面と向かって別府君と相対したら、恥ずか
しくて死んでしまうかもしれない。けれど、このままじゃお互い譲れないまま、引くに
引けない状況が続くだけだ。
「大丈夫だって。俺は嘘は一言も言ってないから。せめて、俺の言う事を信用して貰え
ないと、俺もスッキリした気分で帰れないんだよ」
 最後は懇願するような口調で、別府君が説得して来る。まだ心のどこかで――いや、
むしろ全てが、恥ずかしさから逃げ出したくて仕方が無いが、同じくらい別府君の顔を
見たくなっている自分もいた。少し葛藤した後、私は決意する。
『……分かったわ』
 小さく、同意の言葉を口にして、私はドアに手を掛けた。恐る恐る、僅かにドアを開
け、隙間から別府君の姿を窺う。
「よう」
 何だか、朝の挨拶をするような気軽な口調で、別府君が片手を上げる。
『……何それ? 今日初めて会った訳でもないのに』
「いや。何となく……」
『何となくって、意味わかんないわよ。それ』
 つい、呆れたように言うと別府君は照れたように笑った。別府君も、あらたまって会
うのが恥ずかしかったのかも知れないなと思うと、何故か安堵の気持ちが湧き上がって
来る。
「ゴメン。で、どう?」
 諸々省略して、いきなり答えを求めて来た彼を、私はわざと訝しげに見つめる。
『どう?って、何がよ』
 すると別府君はたちまち困ったような顔になり、あたふたと周囲を見たり、頭を掻い
たりしてから、私の方を窺い見て、小さく聞いてきた。
「えっと、その……俺の事が信用出来るかどうかって話。もしかして……もう一度言わ
なきゃダメだとか?」

5514/5:2012/06/02(土) 11:41:33 ID:???
 それに私は、もっともらしく頷いてみせた。
『当然でしょう? ちゃんと私の顔を見て、キチンと言ってくれなきゃ判断材料になり
はしないわよ。今のこの顔だけ見て判断しろだなんて、出来る訳ないでしょう』
 我ながらちょっと意地悪いかなとは思う。しかし、あんな自分を見られてしまった後
で、こうして面と向かい合うだけでも、私にとっては相当恥ずかしいのだ。彼にだって、
同じような思いをしてもらわなきゃ、割りに合わない。
「……っと……分かったよ。じゃあ、もう一度言うからさ。ちゃんと聞いててくれよ?」
 渋い顔つきで一言前置きをして、コホンと咳払いをしてから彼は顔を上げた。その顔
には、さっきまでの照れ臭そうな様子だとか冗談めかした様な様子は一切なかった。
「……少なくとも俺は、家での委員長もありだと思う。っていうか、普通だと思うし、
むしろああいう感情を表に出してる委員長も可愛いと思ってる。本当の事だし、信じて
欲しいとも思ってるよ」
 全部を言い終えた後、別府君は僅かに視線を落とした。しかし、照れ臭そうに笑った
りはせず、むしろ不安げに私の様子を見守っていた。私はといえば、面と向かって可愛
いなどと言われ、恥ずかしくて全身が熱くて身悶えしたいくらいなのを、懸命に抑えていた。
「……どう? これでも、信じてくれないかな?」
 私の返事が無い事に焦れたのか、別府君の方から答えを催促してくる。私はその間、
一生懸命彼の言葉を反芻し、答えを言おうと努力していたのだが、途中でふと、別の疑
問が湧き上がって来た。答えは決まっていたのだが、その前にまずそれを確かめてみよ
うと決意し、私は顔をうつむかせたまま、小さな声で言った。
『……答えを言う前に……一つ、聞いていいかしら?』
「何?」
 反射的に答える彼の顔が見れないまま、私はそのまま質問に入る。
『……むしろ、普段の学校での私は……別府君にはどう思われていたのかしら?』
 彼の姿を見ていないから分からないが、空いた間が、彼の動揺を窺わせた。少し経っ
て、彼の返事があった。
「えっと……でも、それはさっき弟さんがいる前でも話したと思ったけど――」
『あれはダメ!!』
 強くキッパリと言い切ってから、私は顔を上げて彼を見た。

5525/5:2012/06/02(土) 11:42:08 ID:???
『だって、あんなのよそ行きの答えじゃない。今は私と二人きりでしょう? だから、
ちゃんと本音で話して。家での私を、認めてくれたみたいに』
「一応、嘘は言ってないつもり何だけどなぁ……」
 困ったように、彼は頭を掻く。しかし、その言葉尻を突いて、私は更に追及した。
『嘘は言っていなくても、全部は話していないって事でしょう? なら、キチンと全部話して』
 私をチラリと見て、それからまた、別府君は視線を逸らす。少しの間、迷っていたが、
やがて小さく首を振って顔を上げ、私を見つめて答えた。
「まあ、綺麗だよなって思ってた。目鼻立ちやスタイルがっていうのもあるけど、全身
にまとっていた雰囲気がさ。だけど、若干近寄り難いってのもあったかな」
 近寄り難い、というのは正解だと思う。何故なら、人とのコミュニケーションが苦手
な私が、まさに身につけたかった事だから。それでも、別府君はかなりしゃべり掛けて
来た方だと思っていたのに、やはり彼でもそう感じていた事にちょっと驚く。
「まあ、そんな訳だけど…… 今日のでやっぱり、ちょっと印象変わったかな。うん」
『どういう風に?』
 彼が言葉を切ったので、私が先を促す。少し間を置いてから、頷いて彼は答えた。
「昨日までより、親しみやすくなったなって。だからって、学校での付き合い方を変え
る気はないけどさ。何ていうか、こういう可愛い所もあるんだなって知ったおかげで、
気後れせずに話せるようになった気がする」
『……あんまり、可愛いとか言わないでよ。自分では似合ってないと思ってるんだから……』
 不満気に文句を言うと、別府君は初めて、小さく笑った。
「ゴメン。でも、ホントだよ」
『バカ……ッ!!』
 真顔でこんな事を言われて、嬉しくならない女の子なんていない。ましてや、以前か
ら気になっていた男子に言われたら余計だ。
「で、どう? 今のことも含めて、俺の言ってる事信じてくれたかな?」
 もう一度彼が、今度は堂々と私の様子を窺うように聞いてくる。多分、恥ずかしい事
を言わされて却って気持ちが開き直ったのだろう。一方で私は、聞いたせいでより恥ず
かしくなってしまった。しかし、もう逃げる事は出来ない。それなのに、私はこの期に
及んで悪あがきをした。
『……答える前に、二つ……条件を付けてもいいかしら?』


続く


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