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●事情によりこちらでSSを投下するスレ 4●
1
:
tun
:2011/08/11(木) 01:48:49 ID:???
プロバイダー規制や本スレの空気などでSSを投下できない人が、
本スレの代わりにこっちでSSを投下するスレ。
sageるとIDが???になるので恥ずかしい人にはお勧め。
521
:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2012/05/12(土) 17:35:22 ID:???
>>502-511
の続き
522
:
1/7
:2012/05/12(土) 17:35:58 ID:???
・風邪を引いて休んだツンデレの家に男が見舞いに来たら その4
驚いて体をビクッと震わせてしまうが、何とか取り乱さずに私は弟に向き直った。
『何でこっちに顔出してくるの? 大人しく向こうにいなさいってば』
「だって、お菓子なくなっちゃったからさ。お母さんに聞いたら、ねーちゃんに断わっ
て、少し分けて貰って来なさいって」
私は、呆れてため息をつく。全く、母もこういう時くらい気を遣って大輝を寄り付か
せないようにしてくれればいいのに何で真逆な事をするんだろうと。
「あ、いいよ。好きなだけ持って行っても」
別府君がお菓子の盛ってある皿を差し出すと、珍しく大輝が礼儀正しく頭を下げた。
「あ、すみません。それじゃあ、ちょっと貰います」
大輝がチョコやらクッキーやらおかきやらを適当に自分が持って来た皿に取る。それ
を見つつ、私は小さく愚痴った。
『……大体、二人にしてはお菓子の量が多過ぎなのよ。お母さんってば何を張り切って
るんだか……ホント、バカみたいなんだから……』
どうせ男の子が初めて家に来たもんだから、テンション上がったに決まっている。本
当にそういう所は困った親だ。
「ん? ねーちゃん、今何か言った?」
どうやら、大輝に聞こえてしまったらしい。私は澄ました顔で首を横に振った。
『別に、何でもないわ。いいから、用が済んだらとっとと向こう行きなさいよね』
しかし大輝はリビングから出て行こうとはせず、私を無視して別府君に向き直った。
「あのさ、別府さん。ちょっと聞きたいんだけど」
『ちょっと、大輝』
何やら好奇心満々な大輝を制しようと、私は厳しい声を出す。しかし大輝はうっとう
しそうな顔で私の方を向くと、口を尖らせた。
「いーじゃんかよ。俺にもちょっと話させてくれたって。ね、いいでしょ? 別府さん」
「え? ああ。俺は構わないけど」
別府君がそう答えてから、私に向かって少し我慢していてくれというように頷いてみ
せる。私としては、大輝が何か余計な事を言い出しかねなくて嫌だったが、別府君にそ
う諭されては、黙るしかなかった。
523
:
2/7
:2012/05/12(土) 17:36:19 ID:???
「あのさ。ねーちゃんって、普段学校ではどんな感じなんですか?」
『ちょ、ちょっと、大輝』
質問の内容に、私はまた、慌てて止めようとした。学校での私を家族に知られるのも
嫌だったし、家での私を別府君に知られたくも無い。しかし大輝は私を全く無視して、
ワクワクした顔で別府君を見ていた。
「うーん…… 大人しくて、真面目で……友達と話してる時も、はしゃいだりする事は
なくて、休み時間も本とか読んでる方が多くて、イメージで言えば物静かな感じってと
ころかな?」
別府君が語る私のイメージに、私自身もついつい真剣に聞き入ってしまった。別府君
が見ていた私のイメージが、私がそうありたいと願っていた姿に近かったのでホッとす
る。しかし、次の大輝の一声が、またも私を慌てさせた。
「へーっ? ねーちゃんが、物静か……ねえ?」
「あれ? 何か意外だった?」
キョトンとする別府君に頷き、大輝が何故か得意そうな顔で答え始める。
「だって、物静かって…… ねーちゃんてさ。家では……」
恐れていた事態に、私は即座にチョコを一つ手に取ると、抜く手も見せずに大輝の顔
に向かって投げつけた。それは的確に大輝のおでこを捉える。
「あいてっ!!」
咄嗟におでこを押さえ、大輝が私に向き直った。
「何すんだよ、ねーちゃんっ!!」
『余計な事言わないの。人様に身内の恥を晒してどうするつもりなのよ。貴方は』
てっきり、まだ言い返してくるかと思ったのに、大輝はいきなりプッと吹き出した。
「……貴方……だって……普段ぜってーそんなこと……って……やっべ……超おもしれー……」
決めた。別府君が帰ったら、大輝は絶対にシメる。もうただでさえパジャマ姿での応
対で十分恥を晒しているのに、この上家での私をあれこれバラされたら、もう別府君の
顔をまともに見ることすら出来なくなってしまう。女の子の恥を、しかも密かに想って
いる人にバラそうとしたらどういう事になるか、大輝にはきっちり教育しなければ。
『勝手に笑ってなさい。いっそそのまま笑い死ねばいいわ』
そう吐き捨ててから、別府君を見ると彼は興味津々な様子で私達を見ていた。
『何? 私のことジッと見て。何かあるの?』
524
:
3/7
:2012/05/12(土) 17:36:45 ID:???
何か嫌な予感に駆られつつ聞くと、別府君はハッとした顔になり、それから慌てて答える。
「いやその……委員長がさ。何かこう……弟さんと絡むのって、何か意外な感じだな」
そう感想を漏らす別府君に、私はワザとらしく呆れたため息をついた。
『確かに、弟がいるなんて言った事はないけどね。でも別に全然意外でもないと思うけ
ど。というか、弟がいて何か悪い?』
厳しい言い方で相手の意見を封じ、同時に興味も殺ごうとした。別府君は急いで弁解する。
「ああ、ゴメン。気に触ったかな……? 今まで、委員長と弟っていうイメージが無かっ
たからさ。しかも、性格真逆で、快活な感じだし」
『真逆で快活って……じゃあ私は暗いってこと?』
揚げ足を取ってみせると、別府君は慌てて否定する。
「いや。暗いとはちょっと雰囲気が違うと思うんだけど……笑う時も絶対大笑いとかし
ないしさ。上手く言えないけど……」
その時、またしても大輝が口を挟んでくる。
「へーっ。姉ちゃんってさ。家だと普通にしゃべるんだけどな。ていうか、どっちかっ
てと怒ってばっかだけど。あ、あとお笑いの――」
調子に乗ってしゃべる大輝に、私は慌てて立ち上がって背後に回ると、手で口を押さ
えて封じた。もがこうとする大輝を押さえつけ、耳元に口を近付けると、別府君に聞こ
えないよう小声で脅した。
『アンタね。これ以上余計な事言ったら、絶対許さないから。後で死ぬほど酷い目に遭
わせるけど、いい?』
弟と姉とはいえ、大輝はまだ中学生でしかもすばしっこいが背も小さく力もそんなに
強い訳ではない。まだ、知恵を使えば色々と逆襲は出来るし、力技以外でも、弟を酷い
目に合わせる方法はいくらでもある。
『全く…… 病み上がりなのに余計な運動させないでよ』
大輝を放し、ソファに戻ると大輝がつまらなそうに文句を言った。
「ちぇっ。ゴメンね、別府さん。姉ちゃんの事、色々話したかったけど、言ったら殺すって」
『ちょっと、大輝っ!!』
瞬時に私は、大輝を睨み付ける。せっかく小声で言った事を一言でバラされたら、何
の意味もない。しかも、余計大げさに言ってるし。
525
:
4/7
:2012/05/12(土) 17:37:10 ID:???
「ハハハ。怖いな委員長」
冗談交じりに言って、別府君が笑う。ほら。変な印象植え付けられたじゃない、と私
は内心舌打ちする。
『もう、いい加減邪魔しないで向こう行ってなさい。いいわね?』
強い口調で大輝に命令すると、大輝は不満そうに口を尖らせた。
「何だよ。せっかく姉ちゃんの面白い話が出来ると思ったのに。つまんね」
『人をネタにして面白がるんじゃないわよ、このバカ!!』
リビングから出て行く大輝に後ろから怒鳴りつけてから、私は両肘を膝の上に乗せて
前屈みの格好でため息をついた。
「ゴメン。何か、余計な事色々話しちゃったみたいで」
済まなそうな顔で謝る別府君を見て、私は軽く首を横に振る。
『いいわよ。元々は家に上げた母と、余計な事ばかりしゃべる大輝が悪いんだから。も
っとも、それに乗った別府君にも責任ないとは言えないけどね』
それを聞いて、うぐ、と別府君が呻く。どうも私には、多少なりとも別府君のせいに
する癖が付いているようだ。これは少し、反省する余地がある。
「だからゴメンって。それより、委員長少し疲れてない?」
もう一度頭を下げてから、今度は気遣うような顔をして、別府君が私を見た。
『うーん……そうね。少しは……』
言いかけて、私ははたと迷う。ここで疲れたと言ってしまったら、別府君が帰ってし
まうのではないだろうかと。それは残念だが、しかし一方ではこのまま家にいられると、
私の本性がますます明らかになってしまう危険性も十分にある。葛藤の末に、私は決めた。
「どうしたの?」
途中で言葉を切った私を不審に思ったのか、別府君が聞いてくる。それに私は首を振っ
て言った。
『ううん。やっぱりちょっと疲れてるみたい』
口に出してしまってから、やっぱり少し後悔する。しかし、すぐに私は思い直した。
こんな状況で下手に本性を曝け出すくらいなら、今日は我慢した方がいい。これできっ
かけは出来たんだし、欲張らない方がいいと。
「そっか。やっぱり病み上がりだもんね。ちょっと、無理させちゃったかな?」
予想通り、申し訳無さそうな顔を見せる別府君に、私は首を横に振った。
526
:
5/7
:2012/05/12(土) 17:37:33 ID:???
『無理してるって思ったら、その時点で即、お帰り願ってるわよ。何で私が別府君相手
に無理して接待しなくちゃならないのよ』
「アハハ。そりゃ、確かにそーだ」
いつもと変わらぬ毒舌を吐いた私に、別府君が安心したように笑う。それから、傍に
置いてあったバッグに手を掛けて引き寄せた。
「でも、いつまでも委員長に相手させて、万が一ぶり返させたらマズイし。今日はここ
で失礼することにするよ」
『そう。なら、玄関まで送るわ』
努めて冷静に、私は頷いて立ち上がった。続いて別府君も立ち上がり、キッチンの方
に声を掛けた。
「すみません。今日はお世話になりました。お茶とお菓子ありがとうございました。美
味しかったです」
すると、母が顔を出し、笑顔を見せた。
『あら? もう帰っちゃうの。ごめんなさいね、大したおもてなしも出来なくて』
「いえ。とんでもないです。本当にご馳走になっちゃって」
ペコリと別府君が頭を下げた。普段、学校でしか見てないからか、私は意外と礼儀正
しい一面を彼が持っていることに驚くと共に感心する。
『いいええ。良かったらまた遊びに来て。涼香も喜ぶでしょうし』
「喜ばないわよ」
典型的な挨拶の言葉とはいえ、我慢出来ずに小さくツッコミを入れると、即座に母の
お叱りが飛んで来た。
『こら、涼香。そういう事は言わないのっ!!』
『知らないわよそんなの。大人の嘘に付き合ってられないわ』
ツン、とそっぽを向く私に、母が呆れた声を出した。
『全くこの子ってば、いつまで経っても子供なんだから。少しは別府君のしっかりした
態度を見習いなさい』
「あ、いえいえ。僕の方こそ委員長――涼香さんには、いつも迷惑ばかり掛けてますから」
私はチラリと横目ではにかんだ笑顔を見せる彼を見た。今ちょっと、名前で呼ばれた
事にドキリとしてしまったのは秘密だ。
『もういいでしょ。行くわよ』
527
:
6/7
:2012/05/12(土) 17:37:56 ID:???
別府君の方に手を伸ばし、手首を掴むと私は軽く引っ張って促す。
「あ、ああ。それじゃあすみません。今日はこれで失礼します」
もう一度お辞儀をする別府君に、母は微笑みながら頷いてみせた。
『ええ。じゃあまた、是非』
二人のやり取りを終えるまで待ってから、私と別府君は玄関に戻った。無言で靴を履
く別府君を、私も無言で見守る。それから立ち上がると彼は、私に向き直った。
「今日はゴメン。軽くお見舞いというか、様子窺うだけのつもりだったのに、却ってい
ろいろとお世話になっちゃって」
『……まあ、仕方ないわ。悪いと思ってるなら、私が学校に出てから、何か軽い埋め合
わせでもして。それで清算にしましょう』
無愛想な言い方をしたが、私はちょっぴり期待を込めてはいた。これでまた一つ、別
府君と繋がりが保てる。彼とこうして約束を続けていければ、少しずつ、親密度も増し
ていけるのかもしれない。
「了解。それじゃあ、委員長が気を遣わない程度のお礼を何か考えとくよ」
ニッコリと笑って頷く彼に、真顔で私も頷き返す。
『急ぐ必要はないわ。どのみちそんなに期待もしてないし』
「そんな事言わないでくれって。まあ、期待され過ぎても文句言われるから困るけど、
少しくらいは期待してくれた方が、こっちもやる気出るってもんだぜ」
『だから、そんなに、って言ったのよ。分からない?』
言い方によって受け止められ方が変わるけど、ほぼ同じ意味の事を言っていると仄め
かすと、それに気付いて別府君が頭を掻いた。
「いや、ゴメン。まあ、その……そういう事ならいいんだ。うん」
済まなそうな態度で謝る彼を見るといつも、もう少し柔らかな物言いすれば良かった
かなと反省する。しかし、いつもそれは、口に出してしまった後の事だ。軽く自己嫌悪
に陥りつつ、だから私はいつものように、それにはもう触れずに話を先に進める。
『まあ、明日からは普通に学校行けるから。もう安穏とした日々はないと思いなさいよね』
私としては冗談交じりに言ったつもりだったのだが、全くユーモアがなかったらしく、
別府君は慌てて手振りでそれを否定した。
「いやいやいや。今までもちゃんとやってたから。ホントだって。明日来れば分かるし」
528
:
7/7
:2012/05/12(土) 17:38:24 ID:???
私はフン、と鼻を鳴らす。半分はその言葉の信憑性を疑って。残りの半分は冗談が下手くそだった事に対して。
『そうね。じゃあ、明日を楽しみにしてるわ』
私の言葉に、別府君が頷く。それがキッカケになって、彼はバッグを肩に掛けて手を
軽く上げた。
「ああ。それじゃあ……また、明日な」
『ええ。また明日ね』
別府君がクルリと踵を返す。玄関のドアハンドルに手を掛け、回す。そして、私の見
ている前で、彼はゆっくりと外に出て、最後に私の方を振り返って笑顔で手を振ると、
ドアを静かに締めた。
続きます。
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