したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |
レス数が1スレッドの最大レス数(1000件)を超えています。残念ながら投稿することができません。

●事情によりこちらでSSを投下するスレ 2●

9064/4 終わり:2010/03/30(火) 20:57:38 ID:xlp9C.T.
 ――さて、しばし経って。
「で、これは一体どういうこってす?」
「うん、お返しだ」
 尊さんは笑顔でこちらを見た。俺はといえば、椅子に荷造り用のビニールテープでぐるぐる巻きにされている。身動
き一つ取れません。ついでに言えば、シャツの襟元からどこからか持ってきた棒切れを突っ込まれ、それに頭も縛り付
けられているため、首すら動かせない。
 そして、俺の正面にはテレビの画面がある。尊さんはDVDプレーヤーにディスクを入れた。
「ま、ゆっくり楽しんでくれ。本当は私も愛するお前にこんなことはしたくないのだが、やはり躾というのは重要だか
らな」
 Sっ気たっぷりの笑みだった。
 やがて、画面にはおどろおどろしいタイトルが現れる。
 ――そう、誰にだって、苦手なものはある。
「じゃぁ、私は買い物に行って来るから」
「え、待って! 尊さん! 一人にしないで!!」
 ここ何年か、ハロウィンの時期に公開される、シリーズものの映画だった。画面では憐れな被害者が、台の上に大の
字に繋がれて居るところだった。時間が来れば、彼の上を振り子式で往復している刃物は、確実に腹を両断してしまう
だろう。
「それじゃ、ゆっくり楽しんでくれ」
「み、尊さん! せめて灯りは!!」
「安心しろ、ちゃんと消していってやるから」
 パチン、と照明が落とされる。
 そう、俺の苦手なもの、それは『ホラー映画』。特にスプラッタっての? 痛い系はマジで無理。この状態では、耳
をふさぐことも目をそらすことも出来ない。目を閉じても、声だけで十分すぎる。いや、むしろそっちの方が――
「あ、しまった。私としたことが忘れていた。ほら」
 無情にも、ヘッドホンがセットされた。凄まじい臨場感で、刃が空を切る音が鼓膜を蹂躙する。その合間に、尊さん
の声が聞こえた。
「買い物から帰ってきたら、ちゃんと相手してやるからな?」
「いや、待って! 行かないで! 死にたくないぃぃぃ!!」
「ゲームオーバー」 
 尊さんの影が消える。廊下からの灯りが細くなる。
 ――そして、暗闇になった。




掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板