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●事情によりこちらでSSを投下するスレ 2●

9053/4:2010/03/30(火) 20:56:23 ID:xlp9C.T.
「尊さん……」
「な、なんだ、この鬼畜めぇ……」
「愛してます」
「ふぇっ!?」
 鳩が豆鉄砲食らったような顔で、尊さんは俺をまじまじと見る。
「いや、尊さんが言わないなら、その分俺が言えばいいかなって」
「う……ぐ」
 みるみるうちに真っ赤になる顔。あぁ、可愛いなぁ。本当、いつ見ても飽きない。思わずため息を漏らしそうになる。
こちらも付き合いは長いから、これしきのことで願いが達せられるとは思っていない。俺もそこそこ意地になるタイプ
だが、この人には到底叶わないので、いつも折れるのは俺のほうだ。それでもいいと思えるから、不思議なものである。
 年甲斐もなく暴れて乱れた息を整え、からかいすぎたことを謝ろうと口を開く。
 ――その瞬間だった。

「……あいして、りゅ」

 それは恐ろしく早口で、言葉の意味が持つイメージとはかけ離れた吐き捨て口調だった。声自体も小さかった上に、
最後も微妙に噛んでいたが、それ以上にこちらが追い詰められるような必死の形相に、言葉を失ってしまう。
 続けて、怒涛のような言い訳が始まる。
「か、勘違いするな! 大体、お前にできて、私にできないことがあるわけないだろう。ただ、ちょっと『愛してる』
と戯れに言うくらい何だと言うんだ。お前のような万年精神年齢幼稚園児が、私を見下すなど100年早い。解ったか!
 こら、なにをニヤけている!!」
 とても『愛してる』の一言を噛んだ人とは思えない滑らかな説教だが、俺の顔はもはや蜂蜜漬けになったんじゃない
かと思うほど、甘く崩れてしまっていた。喉の奥から出てくる笑いが止められない。
「ふふ……ははは……」
 続けて『可愛いなぁ』と言いそうになったが、思いとどまる。そのカードを切ったら、多分この人は耐えられなくな
って、全力で今の体勢から抜け出そうとするだろう。覆いかぶさられて、真っ赤な顔を見られているという状況から、
なりふり構わずに逃げ出そうとするだろう。それは、まだ後でいい。
「こら、聞いているのか! ニヤニヤするなーーー!!」
 叫び声を聞きながら、俺は奥さんがその発想に気付くまでの間、可愛い姿を網膜に刻み続けたのだった。




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