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●事情によりこちらでSSを投下するスレ 2●
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願いは叶わず、私の頭上から声が降り注ぐ。その途端、体がビクッと反応した。しか
し、私は彼の方を向かなかった。視線が合えば、きっと体が痺れてしまうに違いない。
だから私は、いつものように完全に彼を無視してしまった。少しの間、別府君が返事を
待つ気配が感じられたが、最初から諦めていたのか、すぐに他の人の所に行ってしまった。
――たかが挨拶くらいなのに……ダメだな私は……
結果として、苦い思いだけが心の中に残るのだった。
しかし、いかに避けようとも同じクラスである以上、会話をしなければならない事を
言うのは多々あるわけで、別府君と席が隣同士だった頃、こんな事もあった。
「あれ……おかしい。ないな……?」
英語の教科書が、机の中にも鞄にも見当たらない。確かに昨夜、勉強をした後ちゃん
と仕舞ったはずなのに。そう思って鞄の中をもう一度見返すと、今日は授業がないはず
の物理の教科書が入っている。
――うわ。英語の教科書と間違えちゃったんだ。昨日、眠かったからなぁ……
毎日教科書を持って帰っていると、たまにこういう事がある。鞄を閉めて机の横に引っ
掛け、さてどうしようかと考え始めた瞬間、横から声がした。
「椎水さん。教科書忘れたの?」
私が必死になって探しているのを横目で見ていたのか、別府君が勘良く聞いてくる。
声を掛けられた事に心臓がビックリしてドキドキし、緊張で全身が硬くなる。しかし、
こういう時は無視するとなまじっか相手の興味を引いてしまいかねないので、私は早口
で答えた。
『忘れた訳じゃないわよ。間違えて違う教科書を持って来ちゃっただけ。いいから構わないで』
感情を抑えてピシャリと言い切る。無論、顔は彼の方なんて見れない。私はこれで会
話を打ち切ったつもりだったが、別府君は、私にとってはとんでもない申し出をして来た。
「なら、俺の教科書貸すよ。ほら」
驚いて私は、反射的に別府君の方を見てしまった。穏やかな顔で教科書を差し出す彼
の姿を見て、それだけで何だか体温が1℃上昇し、心が息苦しくなる。私は慌てて視線を戻した。
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